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chapter,6
05. 聖女ジゼルフィアの終焉(後編)《3》
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マヒエラ・デ・フロート。妖精王の妻となりながら罪を犯し冥界の最奥に封じられた魔女。
ハーヴィック王家から追放され後に悪魔の妃と呼ばれるようになった彼女は本名を記録から消され、”魔妃”という名残だけがデ・フロート家のミドルネームに加わることとなった。
そのデ・フロート家の始祖として”時”の大精霊ミヒャエルから寿命を削られるという”枷”をはめられていたマヒエラだったが、彼女が人間でありながら妖精王の妻に選ばれたことで精霊と魔法が地上を潤し、大陸に新たな文化を、文明を興していく。
妖精王は人間たちが精霊と魔法とともに暮らせる王国を作るべくハーヴィックの建国に携わり、マヒエラも周辺諸国との外交や異界との交流を手伝っていた。ハーヴィック王家からは名前を抹消されている彼女だが、当時のことが隣国の魔法使いの間で言い伝えとして残されていることもあり、花鳥公国では異界では”取引”を行う精霊王として密かに存在を認められていた。
――が、ハーヴィック王国では人間でありながら妖精王の前では魔女として生き、”時”に抗って罪を犯した愚かな女であった。ゆえに”魔妃”という名称もいつしかほかの四大精霊の加護を請け負う”マヒ”と混同され、いまではデ・フロート家も”魔法”の一族と同列に扱われている。
「ハーヴィック王家はお前のことなどすっかり忘れている。なぜいまになって出てきた」
「おおこわいこわい。”時”の流れに逆らうことはそんなに悪いことなのかえ?」
「デ・フロート家は旧大陸の世界樹を管理している。そのことを知っていながらお前は」
「ジゼルフィアを生き返らせたいと思わなんだ?」
ミヒャエルの言葉を遮って、マヒエラが囁く。
それはまるで――悪魔の囁き。
「聖女ジゼルフィアは死んでなどいない。”魔女の森”で花嫁修行に明け暮れておる」
「あれはジゼじゃない」
「じゃが、デ・フロート家の当主は娘が死ぬことよりその後のことを考えるので忙しかったみたいだからの」
「あれはジゼじゃねぇ」
「先の世界で分裂した聖女のことを別人だと、あくまでお主は主張すると」
「……それは」
先の世界で聖女ジゼルフィアは悲劇的な死を遂げ、冥界で審判を受ける際に大精霊の祝福を使って魂を分裂させた。ミヒャエルの反対を押し切って。ジゼルフィアはそれをデ・フロート家の栄華のためだと言っていたが、ミヒャエルはそのときの彼女の思惑に気づかないふりをした。
『――リシャルトさまを悲しませたくない、それだけですわ』
ハーヴィック王家から追放され後に悪魔の妃と呼ばれるようになった彼女は本名を記録から消され、”魔妃”という名残だけがデ・フロート家のミドルネームに加わることとなった。
そのデ・フロート家の始祖として”時”の大精霊ミヒャエルから寿命を削られるという”枷”をはめられていたマヒエラだったが、彼女が人間でありながら妖精王の妻に選ばれたことで精霊と魔法が地上を潤し、大陸に新たな文化を、文明を興していく。
妖精王は人間たちが精霊と魔法とともに暮らせる王国を作るべくハーヴィックの建国に携わり、マヒエラも周辺諸国との外交や異界との交流を手伝っていた。ハーヴィック王家からは名前を抹消されている彼女だが、当時のことが隣国の魔法使いの間で言い伝えとして残されていることもあり、花鳥公国では異界では”取引”を行う精霊王として密かに存在を認められていた。
――が、ハーヴィック王国では人間でありながら妖精王の前では魔女として生き、”時”に抗って罪を犯した愚かな女であった。ゆえに”魔妃”という名称もいつしかほかの四大精霊の加護を請け負う”マヒ”と混同され、いまではデ・フロート家も”魔法”の一族と同列に扱われている。
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「デ・フロート家は旧大陸の世界樹を管理している。そのことを知っていながらお前は」
「ジゼルフィアを生き返らせたいと思わなんだ?」
ミヒャエルの言葉を遮って、マヒエラが囁く。
それはまるで――悪魔の囁き。
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「あれはジゼじゃねぇ」
「先の世界で分裂した聖女のことを別人だと、あくまでお主は主張すると」
「……それは」
先の世界で聖女ジゼルフィアは悲劇的な死を遂げ、冥界で審判を受ける際に大精霊の祝福を使って魂を分裂させた。ミヒャエルの反対を押し切って。ジゼルフィアはそれをデ・フロート家の栄華のためだと言っていたが、ミヒャエルはそのときの彼女の思惑に気づかないふりをした。
『――リシャルトさまを悲しませたくない、それだけですわ』
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