身代わり聖女は「君を孕ますつもりはない」と言われたのに死に戻り王子に溺愛されています

ささゆき細雪

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chapter,7

03. 聖戦開始、その先に。《2》

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「……リシャールさまのわからずや!」
「わからずやなのは君の方だ。ホーグは君をジゼルフィアだと思っている。前回同様に俺を絶望させるつもりか」
「で、でも」

 リシャルトが死に戻る前の世界では魔妃の存在はここまで明るみに出ていなかった。ジゼルフィアが一度目の死で魔妃と”取引”したことで地上の人間に可視化され、平行し続ける世界の歪み、ひいては”時”の精霊が俯瞰している時空の歪みが旧大陸一帯に影響しているという認識を生み出したのだ。
 そう考えるとたしかにジゼルフィアはデ・フロート家を裏切ったとも言えなくもない。不完全な娘だとミヒャエルが嘲っていたのは彼女が”理”を破り罪を犯した妖精王の妻に取り入ったからだ。
 だけど、ヒセラはもうひとりの自分の暴挙のおかげでリシャルトと結ばれ、彼との間に子どもを持てた。花鳥の要求を無視してヒセラが王城に引きこもったままでもリシャルトがホーグを討ち取れば表向きの戦争は終わるだろう。だが、それでは魔妃の野望を真の意味で終わらせることができない。ジゼルフィアの心臓を持ったままの彼女がおとなしくしているとも限らない。
 それに大陸内で起きている戦乱は精霊の消失と魔物の出現による冥界の異変とも関係している。ヒセラが生まれたことで妖精王は消失したと世界樹は教えてくれた。天界にいた不老不死の妖精王が消えたことで精霊のちからは弱まり、冥界に封じられていた魔のモノが地上に干渉することで人間のあいだに争いが生じ、それを糧に封じられていた魔妃が表にちょっかいを出そうと蠢きだしたのだ。この事態の間接的な原因になっているヒセラが気に病むのは当然のことだし、放っておくわけにはいかないと彼女は痛感しているのである。
 そんなヒセラの想いに気づいていながらも、リシャルトは彼女に危険なことをさせたくないと渋い顔をしている。

「ホーグは魔妃と取引をして冥穴から魔物を召喚する術を手にいれているようだ。これはハーヴィックでいう闇の精霊魔法に近いが、彼は人間に対しても容赦なく闇魔法を放つだろう。公女が消えた当初は軍事政権となったクーデター後の花鳥公国で影のように隠れていた彼がいつしか傀儡を操る魔法将軍までになり、精霊と魔法との訣別を唱えながらも隣国に執着する上層部をけしかけて我が国に魔物を攻め込ませている状態だ」
「冥穴の結界は作用していないのですか?」
「弱い魔物は冥界の外に出ることはないが、ホーグが操っているのはそれよりも人間の形に似た魔物だ。軍人に紛れてブレーケレまで入り込み、敵味方関係なく精神に干渉してくる厄介な相手ゆえ、王城魔術師も苦戦している。そんなところに貴女を連れていけるわけ」
「逆よ。魔法使いを翻弄することにも長けた相手だから、あたしが前線に行くの!」
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