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chapter,7
03. 聖戦開始、その先に。《1》
しおりを挟むヒセラがリシャルトの子を妊娠したことは極秘とされた。前回のように騒ぎ立てることでホーグを激昂させるのを退けたいためである。
花鳥公国から聖女ジゼルフィアの身元を要求されていると教えられたヒセラは自分のままならない身体を恨みながらリシャルトに言い返す。
「とっとと差し出せばいいのです。そうすればホーグは自分が求めている聖女が偽物だと認識するでしょうから」
「そんなことできるか!」
侍医の診断によると妊娠超初期と呼ばれるもので、これからつわりらしいつわりが出てくるだろうとのことだった。倦怠感と眠気と異常な食欲に苛まれているヒセラは、自分の身体がこの先思い通りに動かせなくなることに戦々恐々としている。
だが、先の世界でリシャルトの子を身籠った聖女ジゼルフィアはそんな状態でホーグと向き合っていたのだ。それを考えると自分はまだ動ける、ならば動けるうちに敵国へ行けばいいという安直な考えに至ってリシャルトに怒られている。
「花鳥の狙いはあたしが持つ魔力なんですよ。向こうの国が冥界の魔妃を通じて魔物に操られているのだとしたら聖女のちからでぜんぶ封じ込めれば問題ないと思うんですけど」
「話はそう簡単じゃない」
「魔妃がジゼの心臓を媒介に妊娠したあたしが持つ魔力を使って地上に復活することを目論んでいるから、ですか?」
ヒセラの冷静な指摘に、リシャルトが黙り混む。
冥界に封じられた魔妃は花鳥の支配を経て、地上に復活しハーヴィックも自分のモノにしようとしている。このままだと精霊魔法が根強く残るハーヴィックの肥沃な土地と”魔女の森”のなかにある世界に枝葉をひろげる世界樹を破壊し、魔物たちを蔓延らせることで大陸全土を支配し、”時”をも凌駕する存在に成り代わってしまうだろう。冥界へ封じられた妖精王の妻による壮大な復讐劇は幕を開けたばかりだ。
「それも、世界樹が君に伝えたのか」
「ええ。魔妃はホーグを利用して聖女の魔力を奪おうとしています。彼女はジゼの心臓を使って実体を取り戻すため……」
「理解した。やはり君を外に出すことはできない」
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