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chapter,7
05. 妖精王の再来と復活の聖女(中編)《1》
しおりを挟む転移魔法を使ったヒセラとリシャルトが飛ばされたのは”魔女の森”の南部に位置するちいさな墓地だった。
てっきりホーグが魔物を操って侵略しているブレーケレの街中に飛ぶと思っていたリシャルトは、緑に覆われ鬱蒼とした森のなかで顔をしかめる。
「ここは?」
「”魔女の森”ですね。シュールトさまの魂はこちらで眠っているみたいです」
「眠っている?」
「肉体から引きずり出された魂は強いショックを受けて記憶を手放して、無垢な状態になってます。通常なら冥界で死神の審判を待つのでしょうが、霊獣リクノロスの魔力によってこの場に引き留められている状況です」
「そうか。シュールト……」
「ホーグに奪われた肉体へ魂を返却すれば記憶を取り戻す可能性はありますが、肉体に手を加えられていることを考えると、それは難しいでしょうね」
「ああ。だが、リクノロスの魔力によって彼の魂はこの地で眠っているのだな。それを取り戻すことで、俺は完全体のリクノロスを手に入れられる、と……」
リシャルトの問いにヒセラがこくりと頷き、蔦で覆われた古木を指差す。
「ここは、魔女たちのお墓なんです。奥には歴代の大魔女が祀られている霊廟もあります。あたしも”魔女の森”を出ないで生涯を過ごしていたら、ここで眠ることになっていたと思います」
「……まさか、ジゼも?」
「はい。あたしの代わりに魔女として眠りにつきました。デ・フロート家のお墓に彼女は入れなかったんです」
当然のように答えるヒセラに、リシャルトは黙り込む。自分が本来結婚するはずだったデ・フロート家の令嬢が魔女として森の寂しい場所に葬られているという現実は、ヒセラが想像していたよりも衝撃的だったのだろう。だが、ジゼルフィアがそう願ったのだ。『眠るなら、精霊たちのいる”魔女の森”のなかがいい』と。
「デ・フロート家は聖女ジゼルフィアを第一王子リシャルトへ嫁がせたという実績と引き換えに、”魔女の森”の保護を続けています。彼らにとって魔女は精霊同様、平行する世界を均すための道具です。ハーヴィック王家に仕える他のマヒの一族と異なり、彼らは”時”のちからで世界に干渉できる気まぐれな創造神の末裔とも言われているので」
「それは俺も知っている。彼らを動かすためには世界樹を燃やすしかないと、大精霊ミヒャエルが言っていたからな」
「……ならば話は早いです。世界樹を燃やすとこの世界は無の状態になります。滅びるとも言えるでしょう。リシャールさまが死に戻る前の世界では、一部が焼けたことで、精霊たちの存在も焼失したと世界樹自身が教えてくれました」
「ヒセラは世界樹を焼いてもいいと考えているのか?」
「まさか。そんなことしたらあたしたちまで消えてしまいますよ? あたしはこの歪でもリシャールさまとともにいられる世界で彼方の子を産みたい……!」
「俺もだ。ヒセラがいなくなってしまうのなら、世界樹を焼いてすべてをなかったことにするなど……死に戻る以上に嫌だ」
さわさわと流れる清涼な風がふたりを包み込む。そういえば、”魔女の森”のなかにいるのにいまのリシャルトは精霊たちから嫌われていない。きっと傍に自分の子を宿したヒセラがいるからだろう。リシャルトはヒセラを抱き締めて囁く。
「ジゼとヒセラは魂を分裂させることで俺を救ってくれた。今度は俺が、シュールトとひとつになって霊獣リクノロスを完全召喚させる」
「!」
「大精霊ミヒャエルやデ・フロート家の当主に文句を言いたいことはそれなりにあるだろうが、まずはリクノロスが守っているであろうシュールトの魂を確保するのが先だ」
その言葉にヒセラも首を縦に振る。
戦場でリシャルトは霊獣リクノロスの憑依召喚を行おうとしている。ホーグと魔妃を止めるため。
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