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chapter,7
06. 妖精王の再来と復活の聖女(後編)《1》
しおりを挟む「おい、空を見ろ! 魔力が渦巻いている……もしや天界から妖精王が降りてくる?」
「いや、ハーヴィック第一王子リシャルト殿下だ! 弟王子の死を報らされて、御自ら出陣なさったのだろう……っ、なんて力だ」
「では、隣にいるのは……?」
「聖女ジゼルフィアさまだ……! 妖精王の再来と言われるリシャルト殿下に嫁いだ奇跡の聖女……!」
ざわざわと声を荒げる騎士たちと、圧倒される魔法のちからに魔物たちが凍りついていく。リシャルトが霊獣リクノロスを完全体にしたことで花鳥とのあいだにあった冥穴の禍々しい気配が浄化されていく。ヒセラは九つの尾を拡げたリシャルトに抱きついたまま、戦場を見渡す。
ヒセラとリシャルトが転移した先ではハーヴィックの王城騎士団と花鳥公国の魔物たちが睨み合っていた。騎士団長のシュールトを殺され、肉体を奪われた現実から逃げるように残された騎士たちは戦いに身を投じ、王城から派遣された魔術師や四大精霊に連なるマヒの一族もその場凌ぎの結界を張り、これ以上ハーヴィック国内へ魔物を進めないよう抵抗していた。
そしてヒセラは発見する。リシャルトが魔物を制圧しているというのに、その様子をどこか面白そうに見つめている黒づくめの男と……彼にぐったり寄りかかっているミルクティ色の髪の女性の姿を。
「――あれが、魔法将軍ホーグとシュールトさまの肉体に入った魔妃? まるでジゼじゃない!」
「悪趣味だな。肉体を魔法で似せるとは」
リシャルトとヒセラの声に気づいたのか、ホーグがふいと顔をあげる。
「ようやく来たね。ジゼ……やっぱりほんものの方が美しいな」
そしてあっけなく人形のようになっているシュールトの肉体を手放し、ホーグはヒセラの方へ熱い視線を送る。
彼が本物だと思い込んでいる聖女ジゼルフィアの登場を、マヒエラは信じられないものでも見たかのように目を丸くする。
ホーグによって冥界から地上へ渡る肉体を手にいれたマヒエラだったが、彼女の魔力は地上に馴染まずホーグの手を借りることでしか魔法を扱うことができない状況だった。ホーグがわざとそう仕向けたのかと憤る彼女に彼は聖女に似せた肉体を愛でながら宥めすかしているばかり。それもこれも、リシャルトの傍にいる聖女、ヒセラの魔力を手にいれてそれを自分に渡すからだと思っていたが……ホーグはすでに魔妃への興味を失っていた。
「なぜだ、花鳥の魔法使いよ――!?」
「”取引”は冥界から地上に出すまでだったはずですよ。あとはご自由に」
「ご自由に、だと……」
「さすがに妖精王の再来と呼ばれるリシャルト王子にこのまま消されるわけにはいきませんから」
ホーグの変わり身の早さにヒセラは唖然とする。つまり、彼は自分が霊獣リクノロスに消された先の記憶を持っているということだ。
「ホーグ?」
「ジゼ。約束したよね。いつか君を迎えに行く、って――前世では怒りのあまりひどいことをしてしまったし、いまも敵対していることに変わりはない。けれど、僕は君さえいればそれでいいんだ。”取引”で魔妃を利用して、花鳥を操って、戦争を起こして聖女を奪うなんて大それたこと考えて、ここまで実現することはできた。だけど、妖精王の再来と呼ばれる男に消される未来だけは僕ひとりでは変えられない。だからジゼ、君の聖女としてのちからを僕に渡してくれないか。そしてともに」
「断る」
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