身代わり聖女は「君を孕ますつもりはない」と言われたのに死に戻り王子に溺愛されています

ささゆき細雪

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奨励賞記念番外編 殺し愛の果て

《4》

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「ジゼ。愛してる」
「……ホーグ」

 潤んだ瞳でホーグを見つめるジゼルフィアに、そっと口づける。そういえば気持ちを伝えるキスをしたのはこれが初めてかもしれない。リシャルトから彼女を取り戻すので精一杯で、強引に身体を繋げて抱き潰した後に殺してしまったことを憂いながら、ホーグはジゼルフィアに愛を囁く。

「ずっと、こうしてみたかった。身体が弱くて子作りなんてとてもじゃないって言っていた君とひとつになりたかった。愛しているがゆえに抱き殺したあのときの僕は狂っていた。だけどあれも僕だった。君を怖がらせて怒らせて、傷つけて尊厳を奪った。それなのに君は僕に愛想をつかさないで、そのうえもうひとりの自分を生み出して身代わりの聖女を仕立ててしまった! なんだか僕が莫迦みたいじゃないか」
「ホーグは莫迦のままでいいんです。わたしのことが好きすぎて滅茶苦茶にしたくなっちゃうホーグのままで」
「だけどそうしたらまた君にひどいことをしてしまう。ほんとうはもっと君を気持ちよくさせたい、リシャルト王子と聖女ヒセラのように愛し合って周りから祝福されるような関係になりたい、だけど僕じゃ……」
「いいんですよ。そう希って」
「ジゼ」

 後悔とともに弱音を吐くホーグをぎゅっとジゼルフィアが抱きしめる。まるでかつての聖女そのままのように。
 そして唇がふれる。ジゼルフィアの方からホーグの口腔へ舌が入り込み、ホーグは目を白黒させる。

「!?」
「すきよ」

 ジゼルフィアの突然の告白に、ホーグは絶句する。

「もっと自分に狂っても大丈夫、だから気持ちを抑えつけないで」

 だってここは時空の狭間。寿命も体力も凌駕した世界だから。
 ホーグとジゼルフィアが倒れこんだ草原では、相変わらず種から花を咲かせるさまざまな花々が目まぐるしく成長を繰り返している。
 この場で時間が止まっているのは、ホーグとジゼルフィアのふたりだけだ。

「わたしも。転移する前に、貴方とひとつになりたい」
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