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第一部 新婚夜想 大正十三年神無月〜大正十四年如月《秋〜初春》
破魔のちからと形見の鏡 03
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* * *
仏蘭西から取り寄せられたという薄絹を贅沢に使用した夜着を着せられて、音寧は戸惑っている。
「ああ、やはり貴女にレエスは似合うな。白い肌をより美しく魅せてくれる」
「……そう、でしょうか」
黒振袖で祝言を行って以来、音寧は有弦に洋服ばかり着せられている。それか、裸か。
震災以降、普段着は着物よりも非常時に着脱が便利だからと洋装が推奨されはじめ、民衆の間でも標準化されてきてはいるものの、静岡で暮らしていた際は和装ばかりだった音寧からすると馴れないのが現実である。有弦の方が洋装で過ごして仕事をしていることが多いため、結婚当初は洋服の着方を彼から教わることが日課になっていたほどだ。
たしかにボタンやジッパーなど、慣れれば着替える時間がかからないため手早く準備をすることができる。それに、有弦いわく洋装の方が脱がせるのも簡単だ、と……
「いまは観賞しているだけだよ。すぐに脱がせるわけがないじゃないか。せっかくおとねのために作らせたのだから」
「でも、恥ずかしいです……なんだかすうすうします」
繊細なレエスがあしらわれた月白の色をした夜着はとても薄く、音寧の身体を包むというより飾る、という表現の方が正しいくらい、肌を隠す面積が狭い。辛うじて胸元にお椀のような支えがついてはいるものの、すこし動いただけで乳房がこぼれだしてしまいそうで、落ち着かない。
下半身の方も似たような状態で、下肢を隠してはいるものの、下着をつけない仕様なので茂みの部分に直接刺繍の部分があたってしまう。これでは足を開いたら秘処が丸見えだ。
「この部屋に姿見がないのが惜しいな。そうだ、貴女が持っているあの鏡を使おう。いいよね」
「あ、はい」
思わず頷いてしまったが、音寧が綾音の形見として受け取った鏡を有弦が使って、何かおかしなことが起こったらどうしようと今になって気づく。けれども時すでに遅し。
「ほら、かわいいだろう? 西洋のお姫様みたいで」
「……これが、わたし?」
仏蘭西から取り寄せられたという薄絹を贅沢に使用した夜着を着せられて、音寧は戸惑っている。
「ああ、やはり貴女にレエスは似合うな。白い肌をより美しく魅せてくれる」
「……そう、でしょうか」
黒振袖で祝言を行って以来、音寧は有弦に洋服ばかり着せられている。それか、裸か。
震災以降、普段着は着物よりも非常時に着脱が便利だからと洋装が推奨されはじめ、民衆の間でも標準化されてきてはいるものの、静岡で暮らしていた際は和装ばかりだった音寧からすると馴れないのが現実である。有弦の方が洋装で過ごして仕事をしていることが多いため、結婚当初は洋服の着方を彼から教わることが日課になっていたほどだ。
たしかにボタンやジッパーなど、慣れれば着替える時間がかからないため手早く準備をすることができる。それに、有弦いわく洋装の方が脱がせるのも簡単だ、と……
「いまは観賞しているだけだよ。すぐに脱がせるわけがないじゃないか。せっかくおとねのために作らせたのだから」
「でも、恥ずかしいです……なんだかすうすうします」
繊細なレエスがあしらわれた月白の色をした夜着はとても薄く、音寧の身体を包むというより飾る、という表現の方が正しいくらい、肌を隠す面積が狭い。辛うじて胸元にお椀のような支えがついてはいるものの、すこし動いただけで乳房がこぼれだしてしまいそうで、落ち着かない。
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「この部屋に姿見がないのが惜しいな。そうだ、貴女が持っているあの鏡を使おう。いいよね」
「あ、はい」
思わず頷いてしまったが、音寧が綾音の形見として受け取った鏡を有弦が使って、何かおかしなことが起こったらどうしようと今になって気づく。けれども時すでに遅し。
「ほら、かわいいだろう? 西洋のお姫様みたいで」
「……これが、わたし?」
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