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しおりを挟む総合商社雲野コーポレーションは幅広い産業分野を取り扱っている。不動産業、物流としてのサービス業、コンビニエンスストアの出資に総合販売など、とにかくなんでも商材となるものを国内外へ卸している。樹理の父、樹が社長をしている株式会社トミツリイはその取引仲介先のひとつだ。
なんでも樹の父親世代から雲野コーポレーションの社長と懇意にしていたらしく、気に入られた樹が女だったら先代が嫁に迎えたいという逸話まで残っている。さすがにそれはできないからと、樹が結婚して子が生まれたら孫と結婚させたらいいという思いつきで、雲野紡と冨居樹理の婚約が決められてしまったのだ。
なお、貴糸は妾の子だからと先代からはいないものとして扱われていたため、紡が樹理の婚約者として充てがわれたのである。
「酔った足でホテルに素直に入るなんて、警戒心なさすぎでしょ」
「んっ……はぁ、ぁん」
「まぁ、これから襲おうとしている俺が言うことでもねぇか」
「おそ、う、の?」
「イヤならやめるよ」
「ううん……つづけて」
当時の樹理はまだ三歳で婚約の意味が理解できなかったし、十五歳の紡も似たようなものだっただろう。ただ、紡の異母弟で五歳の貴糸も一緒に樹理のもとへ毎週のように遊びに来てくれていた。紡を親戚のお兄ちゃんくらいにしか思っていなかった樹理は、彼が社会人になってから少しずつ距離を取りはじめたことを残念に思ったが、それでも貴糸の方がことあるごとに樹理の家に寄り道してはおすすめの本を貸してくれたり、美味しそうな輸入おやつを分けてくれたりしていたから寂しくはなかった。もしかしたらおやつで餌付けされていたのかもしれない。それだけ当時小学生の樹理は貴糸の訪れを楽しみにしていたのだ。
けれどその穏やかな日々は高校一年生の夏に、紡による婚約破棄によって崩れ去った。
「ああ……スーツ姿のジュリちゃんに俺、欲情してるわ」
「あたしじゃなくて、スーツに欲情してる、の?」
「んなわぇねぇだろ。つーか酔いはもう覚めたか」
「まだふわふわするけど、意識はちゃんとしてるよー? ねえ、キスより先のこと、キートと、したいな……ダメ?」
「ッ! 反則だろそれ……ダメなものか。十年前にはできなかったこと、たくさんしてやるよ」
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