Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―

ささゆき細雪

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monologue,3

唯一の愛を乞うシューベルト + 6 +

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 何度も何度も「すきだ」と言い聞かせて、泣き出してしまった彼女をお姫様抱っこして、寝室へ戻る。いやいやをするように首を振るネメに、「俺にはお前しかいないんだ」とやさしく髪を撫でながら、深く口づけをする。蕩けるような接吻を与えれば、彼女は頬を真っ赤にして、「ン」と可愛い声をあげる。愛人としてではない、花嫁としてお前を抱きたい。そう囁けば、ネメが観念したのか「本気?」と首を傾げる。
 何を当たり前のことを、と笑いながら夜着を脱がせて、ふだんよりも丹念に彼女にふれる。

 施される愛撫を前に、それ以上ネメは抵抗しなかった。

「俺にはお前しかいないんだ」
「アキフミ」
「お前だって、俺以外の男にこんなこと、させたいとは思わないだろう?」
「だ、だってわたしは――ンっ」
「愛人だなんて言わせねぇよ」

 ここでも土地とピアノを守るため、自分は愛人どまりなのだと言いたげな彼女を前に、俺は口づけで誠意を表す。
 舌を絡ませて、唾液をたっぷり混ぜ合わせて、たらりと垂れる銀糸のような涎が唇の先を飾る。そのまま、唇だけでなく額に、頬に、双眸に、鼻のあたまに、顎の先に……顔以外の場所にもキスを届ければ、彼女は甘い声で啼きはじめる。首に、鎖骨のくぼみに、胸の膨らみに……

「あぁっ」
「ネメはここを舐めらるのがすきなんだよな。たっぷり吸って舐めてあげるからね」
「ひっ……あっ、らめっッ」
「ネメの胸、こんなにおおきかったかな……俺がたくさん揉んだから?」
「はうっ」

 乳首を咥えながらネメが恥ずかしがる言葉を口に乗せれば、彼女は瞳を潤ませて俺の前で吐息を漏らす。俺の手と口で喘ぐうつくしいネメの姿を堪能しながら、すでに潤みはじめている蜜口にも指を伸ばす。
 くちゅり。
 ハッとするネメを制して、俺の指は愛液を掬いとっていた。敏感な場所にまぶして、刺激を与えれば、それだけで彼女は軽く達してしまう。乳首を吸いながら秘芽を指先で捏ねる俺に悶えながら、ネメの絶叫が響く。

「イっちゃう、イっちゃうのぉ――ッ!」
「イって。俺なしじゃなきゃいられないって、もう、わかっているだろう?」
「~~~ンっ」

 そのまま三本の指を愛蜜でまみれた彼女の花園へ差し込み、ぐりぐりと膣壁を擦りたてていく。俺とひとつになる前に、こんな風になかを耕したのは実は初めてかもしれない。きゅうきゅうと締め付ける蜜洞の動きに、危うく理性を持っていかれそうになる。

「アキ、フミッ……アァッ」
「ああ、こんなにドロドロにして……かわいい。大切に抱くからね、俺の花嫁さん――クっ」
「――あぁ、ぁんっ!」

 寝台のうえでひとつに繋がった瞬間、ネメの身体が痙攣する。最奥まで一息に打ち込まれた俺のいきりたった分身を前に、彼女は滂沱の涙を流す。挿入されたものを必死になって締めつけながら、俺の肩をきつく抱く彼女をさらに気持ちよくさせようと、前後に腰を動かせば、それだけで信じられないほどの快感が駆け抜けていく。ダメだ、吐精る……!
 それなのに、昂りはおさまる気配を一向に見せない。彼女の方を見れば、恥じらいながら、小声で呟く。

「もっと、して……」

 そんなこと言われたら、いつまでも抱いてしまうというのに。おそろしいことに彼女は俺の理性を容易く壊してしまった。
 汗と涙と体液にまみれながら、俺はネメを抱きつづけていた。


   * * *


 三日三晩かけて彼女に求婚し、ようやく寝台の上で彼女から「是」という応えをもらった翌朝。
 目を真っ赤に腫らしたネメにリストの「愛の夢 第三番」を弾いていた俺のところへ客人が現れた。スーツケースを持った立花だ。
 俺とネメは身なりを整えて、応接間へ向かう。そこには立花以外にも、ふたりのスーツ姿の男がいた。

「社長、お待たせいたしました。援軍を連れてまいりましたよ」
「援軍?」

 そっくりな顔立ちをしたふたりを前に、俺は凍りつく。

「アキフミお兄ちゃん、元気ぃ!」
「多賀宮の生意気なお嬢ちゃんはオレたちに任せとけ。あと、お袋にアキフミ兄ちゃんがご執心なのはピアノじゃなくて初恋のひと本人だって言っておいたから安心して」
「……安心できるかっ!」

 父親違いの年齢の離れた双子の弟、フミヤとタカヤが、どうやら俺の援軍らしい。援軍? と呼べるほどの戦闘力もなさそうだが……
 恨めしそうに立花を睨むが、彼女はくすくす笑っている。

「ひとりで暗く思い悩まれるより、仲のいい弟さんたちと話し合われた方が最善の道が開けると思った、それだけのことですよ」
「別に仲は良くないぞ……」
「そんなこと言わないでアキフミお兄ちゃん、軽井沢の恋人、紹介してよ! なんなら一緒に遺産探し手伝うから」
「遺産じゃない、遺言書だ……」

 どこまで調べてきたのだろう、双子たちは遺言書探しも一緒にする気になっている。
 たとえネメが遺産を無事に相続し、俺が彼女を妻に迎えたとしても、彼らには一銭も与えないぞ、と心に誓うのだった。


   * * *


 人たらしの双子の弟たちは添田をはじめとした屋敷の人間にも容易く取り入り、当たり前のようにネメも彼らの話術に飲み込まれていた。

「ずっとアキフミお兄ちゃん悩んでいたんだよ。社長の妻に貴女を迎えて大丈夫なのか、って。社長夫人になったら人前でピアノを弾く機会が増えて彼女の負担になるんじゃないか、って。だけどお見合いした生意気な女を妻にするのは耐えられない、って」
「そんなことを彼が?」
「あくまでオレたちの想像だけど」

 応接間に楽しそうな声が響く。大学を卒業した双子たちも紫葉不動産のグループ会社に就職し、切磋琢磨しながら仕事に取り組んでいるという。俺の花嫁探しの話題は双子たちの会社でもたいそうな話題になっているそうだ。

「お互いに想いあっているのに、どうして一歩を踏み出さないの?」
「ネメさんの相続が落ち着いたら、なんて言っていたら他の男に掻っ攫われちゃうよ、アキフミお兄ちゃん」

 雲野ホールディングスの御曹司のことも調査済みらしい。立花が「どっちが良縁かってきかれたら常識的には雲野さんです」とあっさり伝えてきたが、それを聞いたネメが「わたしは紡さんとは結婚しません」ときっぱり言い放ったのを見て「が、社長もいい男ですよ」と俺をフォローする。

 昨晩の彼女を思い出し、だらしない表情になってしまった俺を、呆れたように弟たちが見つめている。

「なんだか心配して損したかも。お兄ちゃんとネメさん、ラブラブじゃない。いいなあ初恋のひととの結婚」
「彼女なら義父さんも認めてくれると思うけどなあ」

 ラブラブ? とネメの方を見れば、彼女も困った顔をして、けれども嬉しそうに頬を赤らめている。俺のことを、愛人以上に想ってくれるのだろうか。

「だけど……アキフミ」
「ネメ。言っているだろ。俺はお前がバツイチだろうが、気にしないし、両親にも社員たちにもお前を認めさせてやるって」
「そうじゃないの……」

 何が?
 俺が首を傾げると同時に、来客を告げるチャイムが鳴った。
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