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第1章 落葉襲来 編
第8話「あなたの孤独」
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この感覚は……また来れたようですね……西条さんの記憶に。
しかし、今回は最初から前向きな感情が西条さんから伝わってきます。
何かを楽しみに待っているようですが………。
川が静かに流れる音、虫の静かな鳴き声が自然に囲まれた夜の広場にこだまします。涼しげな風が吹き抜けていき清涼感が心地いいです。
キャンプファイヤーでしょうか。広場の中心には薪が組んであって西条さんを含む子供がそれを囲んでいます。
周りの子供を見ると村沢さんもいます。見た感じ前回より幼いでしょうか。つまり以前見た記憶より前の西条さんの記憶。
そして子供達の輪の中心の薪の前には70歳程の腰は曲がり、顔には皺がよくできた女性が座っていて先端が赤い棒……あれはマッチですね。マッチを箱で擦っています。
しかし何度やれどもそれはうまくいきません。次第に西条さんの不安な感情が伝わってきます。周囲の子供達の顔も曇っていきそわそわとし始めます。女性は申し訳なさそうにごめんね、待ってね。と繰り返しますがいつまでも経ってもマッチに火はつきません。
「ばあちゃんどいて!」
西条さんが待ちきれないといった様子で一歩前に出ます。
「航、いいのよ別に」
女性は優しく西条さんを制止しますが西条さんはいいからいいからと言って聞きません。
女性は根負けしたのか3歩ほど距離をとります。
「よし!」
西条さんは両手を合わせて強く念じます。魔力の高まり!?
西条さんの体の内側から魔力の高まりを感じます。
これは炎魔法ですね…。今の接続なしの西条さんより明らかに高い魔力です。
西条さんが手を合わせて集中すること数秒後、薪に勢いよく火がつきました。
しかし炎は次第に大きくなっていき……
「きゃあっ!」
勢いを増した炎は飛び散り女性の服の下部に燃え移り服がじりじりと燃えひろがっていきます。
西条さんは何が起こったか分からずただ茫然と立ち尽くします。周囲の子供達もパニックになり、どうしたらいいか分からず、立ち尽くす子、騒ぎ立てる子、逃げ出す子で溢れていました。その光景を目にして西条さんの感情がどんどんと真っ白になっていきます。
「佐野さん!」
バケツに水を汲んできた村沢さんが水を女性、佐野さんにかけて、火を消して女性の安全を確認しています。女性は大事ないようですぐに、落ち着き柔和な顔つきで火傷をしてないか村沢さんの安全確認を受けます。
佐野さんの火が消えて西条さんの気持ちも落ち着いてきた時、
ゴツッ
左腕に微かな痛みが走ります。
西条さんは左腕を抑えながら視線を左に移すとそこには石を持った複数の子供が異物を見るような目で西条さんを睨み付けていました。
「で、出ていけ化け物!」
「ばあちゃんになんてことするんだ!」
「妖怪!」
「気持ち悪りぃんだよ!」
浴びせられる罵声、怒号。
西条さんの感情は真っ白から恐怖、混乱へと変わっていきます。
どこにもいかないこの感情……。
ただ、西条さんの中に留まり、蝕んでいくようです。
感情がそれらで埋め尽くされる前にその場から走り去り、ただひたすらに山に向かって走っていきます。
坂を登り続け、ついに疲れ果てて坂に座り込み涙が溢れてきて泣き出します。
こんなことをしたかったわけじゃない。皆で楽しくやりたかっただけ。ばあちゃんが困っていたから助けようとしただけなのに。
そんな整理されていない感情が乱雑に溢れかえります。泣き続けどれ程時間が経ったでしょうか。
「あんたさっきの……」
涙を拭い顔を上げると、走ってきたのか額に汗を浮かべて息を切らせた村沢さんがいました。
「私は村沢 彩華。であんたは?」
「西条航……」
「西条航…。あの炎は航がやったの?」
「ああ……そうだよ」
西条さんはぶっきらぼうに答えて顔を反らします。
「あんたやるじゃん」
「え」
西条さんのうつむいていた顔が上がり、歯を見せて笑う村沢さん。
「あんなん、あんたにしかできないでしょ?。私の歓迎会でいいもん見せてもらっちゃった」
「うるせぇ!気安く言ってんじゃねぇよ!お前に何が分かるんだよ!」
西条さんの感情は一気に怒りに変わり坂を一目散に下っていき、冷たい空気が際限なく肺に入ってきて次第に息が苦しくなります。
しかし、走っている最中、途端視界が光に包まれ、視界が塞がれます。
眩しさに目を眩ませますが、次第に光量が弱くなっていき視界に映ったのはプールサイド………。先程と周囲の子供の年齢は変わらないようです。
皆、西条さん以外は強い日差しの中、プールで遊んでいます。西条さんはただ一人、プールサイドで座り込んでいました。
「やっほ。あんた、またなんかやっちゃった?」
そう言って、近づいてきたのはプールから上がってきたばかりで髪までしっかり濡れた村沢さん。着ている水着もスクール水着で実に健全です。
「チッ、うるせぇな。近寄んなよブス」
「あはは、ブスは言われ慣れたかな。横失礼するよ」
「勝手にしろ」
ぶっきらぼうな物言いの西条さんの横に村沢さんは座ると一息つきます。
「この間はごめん。私が無神経だった」
「もういい。」
「そっかありがと。で、何やっちゃったの?」
村沢さんは西条さんの顔を覗き込みますが西条さんはそれに合わせて顔を逸らします。
「いちいち構うなよ。お前もいじめられるぞ」
「大丈夫大丈夫。私、いじめられるプロだから!」
胸を張って自慢気にする村沢さん。
「変なやつ」
「で、私はいじめられても平気な訳だから話してもらえる?」
再び西条さんの顔を覗き込み、笑う村沢さん。
「………水をかけた」
「水?」
「………皆で遊んでいたら、知らないやつから水をかけられたから怒って水を暴走させてぶつけた」
「ありゃま………で、どうなったの?」
「そいつらから化け物とか出ていけとか言われた……」
西条さんは急に水をかけられて、しかも相手は謝るばかりか化け物退治だと次第に強めていったことに腹が立ったのだと言います。
「ならさ。しばらく私とだけ遊ぼ?。ほら、私もいじめられやすいし。孤児院の中は狭いからすぐに飽きちゃうかもだけど」
村沢さんの言葉に顔を向けるとにっこり歯を見せて笑っていました。
「お前も孤児になったなら分かるはずだ。いくら他人に構ったって意味なんてねぇよ。どうせいつかはいなくなるんだ。だから俺に構ったって……」
「難しいこと言わないのー」
村沢さんは西条さんの髪を両出でぐしゃぐしゃとかき混ぜます。西条さんは振り払おうとしますが、力の強い村沢さんに押さえ込まれて弄られ続けます。
「や、止めろよ!」
「えへへ」
村沢さんは西条さんの頭を弄るのを止めると西条さんの正面に座り直します。
「じゃあさ、私が航のお母さんになってあげようか?」
「は?バ、バッカじゃねぇの!?」
「おー、よしよし」
「頭を撫でるなー!ガキ扱いすんじゃねぇ!」
暴れる西条さんを押さえ込みながらじゃれる村沢さん。
これが西条さんと村沢さんとの繋がりの始まりなのでしょう。
子供達が騒ぐ声、西条さん達が騒ぐ声、周囲の音が聞こえなくなり視界は次第に崩れていき夢の終わりを告げます。
ああ、村沢さんが羨ましい。
こんなに嫉妬したのは初めてです。
そして何より西条さん………あなたはそれでも魔法を使って私を守ってくれるのですか?
いえ、恐らく西条さんもこの記憶は封じ込めていたのでしょう。
ですが今日のショッピングモールでの一件で恐らく記憶がこじ開けられて茫然と……。
湧いてきたのは同情ではありませんでした。
西条さんの力になりたい。
そばにいてあげたい。
守ってあげたい。
そんな気持ちが強くなっていきます。
なぜでしょうか。そのなぜが分かりません。そこまで思考したところで思考は闇に落ちていきました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~登場人物~
佐野美千代147cm 36kg
航と彩華の孤児院の管理者。
航が幼少の時に、既に高齢で腰が曲がってきていた。
しかし、今回は最初から前向きな感情が西条さんから伝わってきます。
何かを楽しみに待っているようですが………。
川が静かに流れる音、虫の静かな鳴き声が自然に囲まれた夜の広場にこだまします。涼しげな風が吹き抜けていき清涼感が心地いいです。
キャンプファイヤーでしょうか。広場の中心には薪が組んであって西条さんを含む子供がそれを囲んでいます。
周りの子供を見ると村沢さんもいます。見た感じ前回より幼いでしょうか。つまり以前見た記憶より前の西条さんの記憶。
そして子供達の輪の中心の薪の前には70歳程の腰は曲がり、顔には皺がよくできた女性が座っていて先端が赤い棒……あれはマッチですね。マッチを箱で擦っています。
しかし何度やれどもそれはうまくいきません。次第に西条さんの不安な感情が伝わってきます。周囲の子供達の顔も曇っていきそわそわとし始めます。女性は申し訳なさそうにごめんね、待ってね。と繰り返しますがいつまでも経ってもマッチに火はつきません。
「ばあちゃんどいて!」
西条さんが待ちきれないといった様子で一歩前に出ます。
「航、いいのよ別に」
女性は優しく西条さんを制止しますが西条さんはいいからいいからと言って聞きません。
女性は根負けしたのか3歩ほど距離をとります。
「よし!」
西条さんは両手を合わせて強く念じます。魔力の高まり!?
西条さんの体の内側から魔力の高まりを感じます。
これは炎魔法ですね…。今の接続なしの西条さんより明らかに高い魔力です。
西条さんが手を合わせて集中すること数秒後、薪に勢いよく火がつきました。
しかし炎は次第に大きくなっていき……
「きゃあっ!」
勢いを増した炎は飛び散り女性の服の下部に燃え移り服がじりじりと燃えひろがっていきます。
西条さんは何が起こったか分からずただ茫然と立ち尽くします。周囲の子供達もパニックになり、どうしたらいいか分からず、立ち尽くす子、騒ぎ立てる子、逃げ出す子で溢れていました。その光景を目にして西条さんの感情がどんどんと真っ白になっていきます。
「佐野さん!」
バケツに水を汲んできた村沢さんが水を女性、佐野さんにかけて、火を消して女性の安全を確認しています。女性は大事ないようですぐに、落ち着き柔和な顔つきで火傷をしてないか村沢さんの安全確認を受けます。
佐野さんの火が消えて西条さんの気持ちも落ち着いてきた時、
ゴツッ
左腕に微かな痛みが走ります。
西条さんは左腕を抑えながら視線を左に移すとそこには石を持った複数の子供が異物を見るような目で西条さんを睨み付けていました。
「で、出ていけ化け物!」
「ばあちゃんになんてことするんだ!」
「妖怪!」
「気持ち悪りぃんだよ!」
浴びせられる罵声、怒号。
西条さんの感情は真っ白から恐怖、混乱へと変わっていきます。
どこにもいかないこの感情……。
ただ、西条さんの中に留まり、蝕んでいくようです。
感情がそれらで埋め尽くされる前にその場から走り去り、ただひたすらに山に向かって走っていきます。
坂を登り続け、ついに疲れ果てて坂に座り込み涙が溢れてきて泣き出します。
こんなことをしたかったわけじゃない。皆で楽しくやりたかっただけ。ばあちゃんが困っていたから助けようとしただけなのに。
そんな整理されていない感情が乱雑に溢れかえります。泣き続けどれ程時間が経ったでしょうか。
「あんたさっきの……」
涙を拭い顔を上げると、走ってきたのか額に汗を浮かべて息を切らせた村沢さんがいました。
「私は村沢 彩華。であんたは?」
「西条航……」
「西条航…。あの炎は航がやったの?」
「ああ……そうだよ」
西条さんはぶっきらぼうに答えて顔を反らします。
「あんたやるじゃん」
「え」
西条さんのうつむいていた顔が上がり、歯を見せて笑う村沢さん。
「あんなん、あんたにしかできないでしょ?。私の歓迎会でいいもん見せてもらっちゃった」
「うるせぇ!気安く言ってんじゃねぇよ!お前に何が分かるんだよ!」
西条さんの感情は一気に怒りに変わり坂を一目散に下っていき、冷たい空気が際限なく肺に入ってきて次第に息が苦しくなります。
しかし、走っている最中、途端視界が光に包まれ、視界が塞がれます。
眩しさに目を眩ませますが、次第に光量が弱くなっていき視界に映ったのはプールサイド………。先程と周囲の子供の年齢は変わらないようです。
皆、西条さん以外は強い日差しの中、プールで遊んでいます。西条さんはただ一人、プールサイドで座り込んでいました。
「やっほ。あんた、またなんかやっちゃった?」
そう言って、近づいてきたのはプールから上がってきたばかりで髪までしっかり濡れた村沢さん。着ている水着もスクール水着で実に健全です。
「チッ、うるせぇな。近寄んなよブス」
「あはは、ブスは言われ慣れたかな。横失礼するよ」
「勝手にしろ」
ぶっきらぼうな物言いの西条さんの横に村沢さんは座ると一息つきます。
「この間はごめん。私が無神経だった」
「もういい。」
「そっかありがと。で、何やっちゃったの?」
村沢さんは西条さんの顔を覗き込みますが西条さんはそれに合わせて顔を逸らします。
「いちいち構うなよ。お前もいじめられるぞ」
「大丈夫大丈夫。私、いじめられるプロだから!」
胸を張って自慢気にする村沢さん。
「変なやつ」
「で、私はいじめられても平気な訳だから話してもらえる?」
再び西条さんの顔を覗き込み、笑う村沢さん。
「………水をかけた」
「水?」
「………皆で遊んでいたら、知らないやつから水をかけられたから怒って水を暴走させてぶつけた」
「ありゃま………で、どうなったの?」
「そいつらから化け物とか出ていけとか言われた……」
西条さんは急に水をかけられて、しかも相手は謝るばかりか化け物退治だと次第に強めていったことに腹が立ったのだと言います。
「ならさ。しばらく私とだけ遊ぼ?。ほら、私もいじめられやすいし。孤児院の中は狭いからすぐに飽きちゃうかもだけど」
村沢さんの言葉に顔を向けるとにっこり歯を見せて笑っていました。
「お前も孤児になったなら分かるはずだ。いくら他人に構ったって意味なんてねぇよ。どうせいつかはいなくなるんだ。だから俺に構ったって……」
「難しいこと言わないのー」
村沢さんは西条さんの髪を両出でぐしゃぐしゃとかき混ぜます。西条さんは振り払おうとしますが、力の強い村沢さんに押さえ込まれて弄られ続けます。
「や、止めろよ!」
「えへへ」
村沢さんは西条さんの頭を弄るのを止めると西条さんの正面に座り直します。
「じゃあさ、私が航のお母さんになってあげようか?」
「は?バ、バッカじゃねぇの!?」
「おー、よしよし」
「頭を撫でるなー!ガキ扱いすんじゃねぇ!」
暴れる西条さんを押さえ込みながらじゃれる村沢さん。
これが西条さんと村沢さんとの繋がりの始まりなのでしょう。
子供達が騒ぐ声、西条さん達が騒ぐ声、周囲の音が聞こえなくなり視界は次第に崩れていき夢の終わりを告げます。
ああ、村沢さんが羨ましい。
こんなに嫉妬したのは初めてです。
そして何より西条さん………あなたはそれでも魔法を使って私を守ってくれるのですか?
いえ、恐らく西条さんもこの記憶は封じ込めていたのでしょう。
ですが今日のショッピングモールでの一件で恐らく記憶がこじ開けられて茫然と……。
湧いてきたのは同情ではありませんでした。
西条さんの力になりたい。
そばにいてあげたい。
守ってあげたい。
そんな気持ちが強くなっていきます。
なぜでしょうか。そのなぜが分かりません。そこまで思考したところで思考は闇に落ちていきました。
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