やがて桜になる

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第1章 落葉襲来 編

第14話「きみ/あなたがいるから」

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5/20(月)
翌朝起きると魔力が回復している………
かどうかも分からない。
いまだに俺単独で魔法が使えるのが不思議だという状況。分かるはずもない。
だが、疲れはしっかり取れており体は軽い。宮瀬さんはいつも通り朝食をちょうど作り終えたところのようでコップを持ってきていた。

「さ、西条さんおはようございます」
「おはよう宮瀬さん」

体を起こすと体が若干痛むが特に日常生活には支障はなさそうだ。宮瀬さんはまだ少しぎこちないがほとんどいつも通りだ。二人で食卓につき、食べ始める。
落葉の一件も片付き、非常にのんびりとした朝に感じる。
雀の鳴き声と窓から差し込む朝陽が心地よくてついウトウトしてしまう。
昨晩腹や腕を切られたのが嘘みたいだ。

「落葉、いつになったら帰ってくるんだろうね……」

「分かりません……ただ、兄も地球のことは詳しくは知らないはずなんですが……」

「どうするんだろ……」

やはり馬鹿なのかもしれない。
いや、間違いない。馬鹿だ。とりあえずあのシスコンのことは放っておいて学校に行く準備をする。
宮瀬さんは暑くなってきたせいか、予め買っておいた半袖の白いシャツに灰色のカーディガンを羽織り、白のロングスカートを履いていた。清楚で非常に宮瀬さんらしさが出ていてまじまじとつい見つめていると顔を逸らされてしまう。

まだ関係はぎくしゃくしたままだが、大きな支障もなく平和に学校生活を過ごす。あんなことがあった後にこんだけ普通に生活ができるんだから落葉のあの薬?は凄いのかもしれない。
何事もなく過ごし、放課後になれば三木田はバイトで尾鎌さんは用事があるらしく宮瀬さんと帰宅する。

帰宅するといつもの日常が何だったのかということを若干体が忘れていることに驚く。ここ最近は鍛練やら、落葉の件で気が張りっぱなしで忘れていたのだろう。
二人でたわいない話をしながらたまには商店街で買い物をしようという話になり、商店街に繰り出す。

家で二人で話していた時間は思っていたより長かったようで、家を出る時には辺りはだいぶ暗くて近所の子供達も家に帰る途中だった。商店街に向かい二人で歩いていると金髪の白人系の人が何やらうろうろしていた。

「何やら困っているようですね…。」

「ちょっと声かけてみる。あのー」

「オウ!ナンデショウカ?」

片言の外国人と話しはじめる。 
かなりハンサムな金髪の白人で身長も高いので若干見上げる感じで話さなければならない。話を聞いた感じ観光客の方で、どうやら巫女石を見たいらしい。

「巫女石ですか?」

「ああ、学校の裏山にある………まあ、観光資源擬きみたいなものだよ。」

しかし、あれを見に来る外国人がいるなんて……もしかして初なのでは?
特に断る理由もないし、用事があるわけでもなし。加えてここからそんなに遠くはないので案内することにする。

「宮瀬さんはいい?」
「はい、大丈夫ですよ」

宮瀬さんの了承も得たので再び外国人と話し始める。

「えと、もう暗いですけど行きますか?」

「タスカリマース!センキューデス!」

両手を握られてぶんぶんと振られる。
異次元交流よりなぜか文化の差を感じるという不思議現象である。巫女石に着くまで話しながら行ったわけだがこの外国人、デリックさんはアメリカから日本の地方の文化に触れに来てこの街をたまたま選んだらしいが、いざ来てみたら巫女石がどこにあるかさっぱり分からなかったそうだ。

「イヤー、ホントにタスカリマシタ。アシタ、コチラヲデナケレバナラナイノデ!」

日本語はほぼ完璧である。デリックさんの国の話を聞きながら学校の裏山を登り、いつもの鍛練広場を通りすぎて巫女石のある広場に着く。

「これが巫女石……」

見上げる宮瀬さんとデリックさん。
俺も初めて見た時は少し驚いたが、
ただの石である。しめ縄のお陰で見た目がありがたそうに見えるだけだ。
と、前までは感じていたのだが、なぜだか少しありがたみを感じるのは外国人のデリックさんがいるからだろう。
改めて見てみると意外とありがたみがあるのかもしれないなどと考える。

「ヒトメミレテヨカッタデス!デハ、オレイニ……」

「西条さん!」

「うわっ!」

唐突に宮瀬さんに突き飛ばされ尻餅をつく。

「み、宮瀬さん!何を………」

そこで言葉が出なくなった。尻餅をついて座り込んだ俺の顔に落ちてきた水滴。どろっとしていて赤黒い。
それでいてすぐに固まっていく………。
顔を上げて水滴の正体を探ると……宮瀬さんがデリックに刃物で胸を貫かれている……!!

「あっれ~?こいつは戦闘能力皆無なはずなんだけどなぁ?よく分かったねぇ?」

「かはっ!」

片言ではなく流暢に余裕そうに笑うデリックとは対照的に宮瀬さんは血を吐いて、足元に鮮血の水溜まりを作り始めていた。
そこまでいってようやく事態を飲み込め、急激に怒りが湧いてきた。

「てめぇ!」

立ち上がりすぐさま飛びかかり、殴りかかるがかわされ、よろけて体勢を崩す。振り向けばデリックは宮瀬さんから刃物を抜いていて、宮瀬さんは血の海を広げながら倒れていた。

「てめぇ!何が目的だ!ぶっ殺してやる!」

頭に血が登り、思考がうまくまとまらずただ出てきて言葉を乱暴にぶつける。

「おいおい、落ち着けよ。彼女さん死んじまうぜ?」

我に返り、デリックの後ろで倒れている宮瀬さんに目をやる。
大丈夫。回復の魔方陣ができている。
一命はとりとめたようだ。

「よそ見してると死んじまうぜ!」

正面から飛んでくる刃物を反射的にかわす!。
が……刃物だけ!?
デリックはそこにはおらず、ただ飛んで来た刃物をかわし、刃物は後方の草むらに入る。

「驚いたかな?お前にゃ俺は捉えられないよ。なんたって俺の姿はもう誰にも見えないんだからな!」

「西条さん……後ろ!」

振り絞った宮瀬さんの声をたよりに振り向くとナイフが飛んできて、背中を反らして間一髪でかわす。ナイフが自立してこちらに飛んでくる……超能力……いや魔法か?

「へぇ、よくかわしたねぇ」

「答えろ!目的はなんだ!」

「ま、死ぬ前に教えてやってもいいか。てかさお前、その嬢ちゃんがどんだけヤバイやつか知ってて必死こいて守ってんのか?」

「………」

無言で顔を逸らす宮瀬さん。
しかし、俺はよく考えれば宮瀬さんのことは全然知らない。

「なんだ、やっぱ知らねぇのか。
嬢ちゃんが地球にきてから数日して計測してたら、あらまビックリ!小国1つなら余裕で吹き飛ばせるくらいの魔力量をお持ちではありませんか!」

煽るようなデリックの口調が気にならないほどに驚愕していた。格が違うとは思っていたが、まさかそこまでとは…。

「でさ、そんな逸材を簡単にエデン?の連中も手放さないわけじゃん?
でもさ狙ってんのも俺ら魔法協会もいっしょなの」

「魔法協会……?」

聞きなれない単語だ。宮瀬さんからその単語が出なかったのなら、エデンのものではなさそうだが。

「おうよ。地球中の魔法が使える選ばれた者達を集めた場所よ。昔はくっだらねぇことやってたみたいだが、今は純粋に魔法を研究してんだよ。
でさ、嬢ちゃんくらいの魔力回路があれば、それを引っこ抜いて利用すれば研究が大幅に進むかもって話。どう?差し出す気になった?」

「なわけあるか!」

「ま、だよね………じゃあ死んでもらおうか!」

地球中の魔法師、気になる言葉もあったが四方の草むらからナイフが!
1本ずつかわしていくが、少しずつ腕や足を掠めていき、徐々に服に血の斑点ができていく。
前後左右から際限なく飛んでくるナイフ。ただのナイフだが、数が多すぎる!
全てかわしきるころには全身斑点だらけになっていた。
かすり傷だけで致命傷ではないが、いつまでもこの状態だと負ける。

かわしているうちに宮瀬さんとも距離が離れてしまう。
宮瀬さんの様子も気になり、そちらに目をやるとアイコンタクト?
何やら4時の方向の木に視線を向けている。もしかしてあそこにいるのか?
下手に動いたら気づいたことを勘づかれる。ナイフを拾い………振り向き様に4時の方向の木に一か八か投げる!
投擲したナイフは木に向かって一直線!

キィン!

弾いた!やっぱそこにいるんだ!

「チッ、どうやって気づいたか知らねぇが、こうなりゃ手加減はしねぇぜ!」

デリックは魔力を高めているのか攻撃が一旦止む。その間に急いで宮瀬さんに駆け寄る。出血は収まったようでほっとする。

「宮瀬さん!次は!?」

「わ、分かりません…。私は探知に優れた魔法師ではありませんから…。先程までは感じたデリックの魔力が感じられません。それより今のうちに接続を……」

宮瀬さんに接続してもらう間、ナイフは飛んでこない。やつもそうとう魔力を込めているようだ。

「接続……完了です!」

宮瀬さんの傷もだいぶ収まってきたようで声に張りが戻ってきていた。
接続をしていつも通りオーラを纏い力が湧いてくる。

しかし、接続をしてもデリックがどこにいるか分からなければダメージは与えられない。

「今度はこんなんでどうだ!」

またも前後左右の草むらからナイフが飛んでくる!スピードはさっきと変わらない!これならかわせる!

「!?」

かわしたはずなのに腕に切り傷。
なぜ……

「西条さん!ナイフには風魔法がかかっています!」

宮瀬さんに言われてナイフをかわしつつ凝視してみると……確かに俺が落葉に使ったのと同様にナイフは風を纏っていた。

強化された身体能力でかわし続けるが数が増えた上に、風を纏い始めたナイフは見た目より攻撃範囲が広く手も足も出ずにいた。

「どうすれば……」

確実にこちらを追い詰める、四方から来るナイフをかわしてるうちにまた宮瀬さんと離れてしまう。
これじゃ回復魔法が受けられない。
どうやらデリックは宮瀬さんを狙う気はないようなのが幸いだが…。

しかし、デリックが日が沈んだこの暗闇の中、どこにいるのか検討もつかず全身血だらけになり、接続をしていてもかわすのに限界を感じ始めていた。
だが、かわしているうちに接続状態での身体強化の使い方を感覚で掴み始めており、なんとか上手く強化の強弱を使い、かわす。
自分では使えないのに接続状態だと使えるこの感覚にもようやく慣れてきた。

「ハハハ!女1人守れないで無様なもんだな!だが、お前はなぜそこまでしてその女を守る?いい女がほしいなら魔法協会からやるぜ?」

相変わらずこちらを煽るようなデリックの口調にイラつくが、確かにそうだ。
文字通り死ぬような目に会うのはシナン、落葉戦を含めて今回で3回目。
いくら宮瀬家の使命に納得がいかないからといって、俺は命をかけるような男であったか。

「なあ?死んじまうぜ?その女じゃなきゃダメかぁ?」

ゲラゲラと笑う姿の見えないデリックの声が広場に反響する。
そうだ、「宮瀬 紅葉」である必要………
理由……。
宮瀬さんは正直、容姿が凄い好みだ。
だがそれだけだろうか?
シナンの時は勢いで戦っただけだろう。
だが、落葉の時は?
明らかな戦力差があった。だが俺は

『私を信じて立ち向かって』

この一言で動いたのか?
いや、それもあっただろうが違う…。
宮瀬さんは俺を受け止めてくれた。

『私が側にいますから』

宮瀬さんの顔が浮かぶ。
ああ、そうか。
宮瀬さんがいる安堵感。
宮瀬さんといたい。
宮瀬さんが愛おしい。
それだけで俺は命をかけられる!

「宮瀬さんじゃなきゃダメだ!」

「ほぉ、そぉかい。じゃ、ここでくたばりな!」

再び四方から風を纏ったナイフが飛んでくる。ナイフをかわしながら、ふと疑問に思った。
なぜやつは室内で俺達を襲わず、こんな場所を選んだのか。
室内のように狭い場所の方がこの浮遊するナイフで俺を仕留めやすかったはずだ。

それは室内にあって『夜』の外にはないあれのせいだ!
俺は頭程の火炎弾を作り、広場の中心真上に浮かべ、あたりを見回す。
ナイフが体中を掠めていきどんどんと体力を奪っていく中、必死にあるものを探した。

そう……光があってこそ見えるものを……
見つけた!
俺は正面に捉えた『影』に向かって頭上に浮かべていた火炎弾をぶつける!
何もなかったはずの場所が勢いよく人型に燃え始める。

「ぐあぁぁぁぁ!あちぃ!あちぃよぉ!」

火炎弾をぶつけられ正体を現したデリックは既に火だるまだった。
燃え盛る火炎。全身をところどころ焼かれているデリック。
デリックの悲鳴は広場に響き渡り、
ここで消火してもただでは済まないだろう。

「終わりだ!観念してどこへなりと消えろ!」

「た、頼む!!消してくれ!悪かった!お前らにはもう関わらないし、協会も抜ける!だから」

俺は消火するために水魔法の詠唱を始めたがそこでデリックの命乞いは途絶えた。
いや、デリックは消えた!?
俺の火炎弾より大きな火炎弾が真上から突如降ってきて文字通り灰となった。
地面を焼く炎も無視して反射的に見上げるとそこには黒いローブで全身を覆った何者かが浮かんでおり、徐々にゆっくりと降りてきて途中で止まる。

「お前は誰だ!」

「誰だ、か…。さあな。とりあえず敵とだけは言っておこう。だが安心したまえ。今すぐ手を出そうというわけでもないし、今はやれないんでね。」

終始ハイテンションなデリックと違い淡々と話す黒ローブの男。
声からして男であろうと推測がつく。

「ただ、私は宣戦布告にきたのだよ。」

「宣戦布告?」

「ああ、我々魔法協会は宮瀬 紅葉を君から奪うということさ。では、いずれまた会おう。」

「待て!」

しかし、俺の言葉を聞くことなく男は上昇していき飛び去る。
呆気にとられて俺と宮瀬さんは宙を見上げていたが、空中から滝のように水が降ってきて地を焼く炎を一瞬で消しさる。
おそらく証拠隠滅のためにやつが出した魔法であろう。
緊張が解けたせいか、急に体中の傷が痛み始めて耐えられず倒れる。

「西条さん!」

傷口がすっかり治まったのか、宮瀬さんがすぐさま駆けてきて膝枕してくれる。

「今回復を!」

宮瀬さんの焦りを伴った詠唱とともに緑の魔方陣が出てきて全身の傷が塞がっていくが、体はまだ動かない。

「こんなになるまで…………私、西条さんがいなくなったら…!」

俺を抱き締める宮瀬さん。ああ、やっぱり宮瀬さんといると……幸せだ。
いまだに曖昧な気持ちだけど『幸せ』という確かな感情は嘘偽りなかった。

「俺も宮瀬さんがいないとダメだ。宮瀬さんじゃなきゃ嫌なんだ…」

「私もですっ!初めてだったんです……私を『宮瀬 紅葉』として認めてくれたのは西条さんだけで ………私じゃなきゃ駄目だと言ってくれてっ!それだけで嬉しくて!」

「ああ、宮瀬さんでよかった…。傷は大丈夫?」

「なんで西条さんはそうやって私の心配ばかりっ!……もっと自分にもその優しさを向けても!私の前ならないても泣いてもいいじゃないですか!」

「ははは、普段は自分のことばかりだよ……。勝手に傷付いて、勝手に拗ねて……でも宮瀬さんが好きだからこうなるんだ……」

「…!!」

俺からも宮瀬さんをそっと優しく抱き締める。
言ってから気付いた。ああ、でもそうだったのか。俺、宮瀬さんが好きなんだ。可愛いだけじゃなくて俺を受け止めてくれて、勝手に拗ねても受け止めてくれて……… 認めてくれた。
だから愛おしくて、命をかけて守って………。
そうだ。俺は宮瀬さんを1人の女性として好きなんだ。

「宮瀬さんこそ俺の前だけなら泣いてもいいじゃないか。いつも独りで世界にただ1人だけ。そんなの淋しくないわけがない」

「西条さんだって辛かったじゃないですか!いつも除け者にされて……!」

宮瀬さんは強く俺を抱きかえす。

「ははは、優しい宮瀬さんも好きだよ。」

「わ、私も西条さんが好きです!西条さんの好きな気持ちに負けないくらい!私を私と認めてくれて、一緒にいると明日がどうしようもなく楽しみになる西条さんが好きです!」

「俺も大好きだよ。いつも何かあるとすぐ慌てちゃうドジな宮瀬さん、俺を受け止めてくれた宮瀬さんが大好きなんだ」

俺達はその後もお互い負けじと好きだ、好きだと言い合い、互いの気持ちを確かめあっていた。
しかし、お互い決着がつかずにいて均衡を破ったのは宮瀬さんだった。

「わ、私はもっともっと好きですからこのくらいしちゃいます!」

「!?」

突如唇と唇が触れ合い、柔らかでしっとりと感触が唇に触れる。
しかしそんな感触も束の間、宮瀬さんは舌を口の中に入れてきて、そちらの感触に気をとられる。俺も反射的に舌を出して宮瀬さんの舌に絡める。
舌を絡めるといやらしい水音がちゅぱちゅぱと静かな広場でよく聴こえる。

「んちゅっ………れろ…」

加えて宮瀬さんの息を継ぐときに漏れるいやらしい声も合わさりどんどんと気分が昂っていく。
お互いの吐息が直に当たる距離。
互いに確かめ合い、自分の存在を確かに伝え合う時間。
確かにいやらしい気持ちにはなるが、興奮より宮瀬さんが、自分がここにいる、宮瀬さんにこれだけ愛されて宮瀬さんをこれだけ愛していると感じられる感動の方が強かった。

「西条さん……」
「宮瀬さん……」

息継ぎをするためにお互い名残惜しくも唾が糸を引きながら唇を離し見つめ合う。
だが、すぐに宮瀬さんが恋しくなり今度は俺から唇を重ね舌を入れる。
宮瀬さんがほしい、離したくない。
そう思えば思うほど舌は奥に入っていき宮瀬さんの口内を犯す。
宮瀬さんもそれに応えるようにこれでもかというくらい舌を奥に入れてくる。

お互いの舌を再び絡め合い、先程より激しく求めあう。
舌を絡めていくうちに舌のぬるぬるとした感触にも興奮していきどんどんと体が熱くなっていく。
唇はふやけてきて、舌も痛くなるほど互いの存在を確かめ合う。俺がここにいる、宮瀬さんがここにいるんだと。
どちらかが欠けてはもう俺は俺じゃない。そう思えるほど互いを確かめ合った。

「ぷはっ………」
「はぁはぁ……」

唇を離すと酸素を求めて息を継ぐ。
正直どれだけしていたか分からない。
息は苦しいが興奮と感動、その2つが合わさってこれ以上ない幸福感に包まれていた。それは宮瀬さんも同じなのかお互いに顔を合わせて微笑み合う。

「帰ろうか………家に」
「はい!」

とびきりの笑顔の宮瀬さんと夜の山道を手を繋いでゆっくりと下っていく。
俺達の旅路はようやく始まったばかりだ。





第1章「落葉襲来  編」完


---------------------
~登場人物~
デリック 188cm 75kg
魔法協会の1人。観光客のふりをして航に学校の裏山の巫女石に案内させる。
航に敗れた後、黒フードにとどめを刺される。
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