やがて桜になる

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第1章 落葉襲来 編

第13話「正面衝突」

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~本編に入る前に~
前回の投稿をしてから少し経った後に、時空魔法の解説のようなものをあとがきに書くのを忘れていたことを思い出し、慌ててあとがきに追加しました。申し訳ございません。

それと魔具についての説明ですね。以前も出てきましたが、ここで次いで何で解説してしまおうかと。
・魔具
魔力を込めることにより様々な力を発揮する道具。ただ、誰でも作れる物ではなく、エデンでも作れる人間は少ない。


それでは本編へ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「よう、紅葉。久々だな。」

光が収まりそこにいたのは口角を上げ、不敵に笑う落葉であった。
前回宮瀬の記憶で見たのと同様、180cmほどの身長に黒い和装と肩にかからない程度の黒い頭髪。

「兄さん、やはり来たんですね」

「おうよ。こちとら可愛い妹に会いたくてたまらなかったんだぜ?」

記憶で見た時より明らかにテンションが高い。いまだに不敵に笑う落葉は不気味であり、恐怖してしまう。

「戯れ言はどうでもいい。宮瀬さんを連れていくんだろう?」

だが、決して視線を逸らすことはしない。落葉の黒い瞳から目を逸らさずに睨む。

「そりゃそうだ。ところでよ、見たとこ戦闘に慣れてねぇようだが、シナンを一発ぶん殴ったのはお前か?」

「ああ」

「ハッハッハッ!シナンもこんなガキにやられてんじゃ情けねぇ!」

心底可笑しそうに笑う落葉。明らかなテンションの違い、戦闘前でテンションが上がっているのだろう。

「宮瀬さんを渡さないと言ったら力ずくでも奪いにくるんだろう?」

「そのために来たんだ。で、お前はどうすんだよ?」

「なら………落葉、お前を倒す!」

「そうこなくちゃな!」

落葉が右腕で水平に空を切るとシナンの時と同様に俺達は眩い光に包まれる。
しばらく俺と宮瀬さんは腕で目を覆っていたが、光が止んで目を開ける。
そこはまっさらな空間でドーム状のようだった。
ようだったというのも、まっさらな空間で感覚でしか捉えられないからだ。

「さて、あんま待たせんなよ」

正面からの落葉の声に視線を合わせる。明らかに先程とは殺気が違う。
だが、しっぽを巻いて逃げる気はない。

「さあ、いくぞ!」

鞘から刀を抜き中段に構える。
落葉も腰にかけた刀を抜き中段に構える。その瞬間俺は宮瀬さんに振り返り

「今だ宮瀬さん!」

「はい!」

俺の掛け声に合わせて宮瀬さんは俺たちの真上に真っ黒な小石を投げる。
瞬時にその石は光だし、俺たちを照らす。

「な!?紅葉、お前!!」

「兄さん……これであなたはただの人間です!」






「そもそもあの速さありえないんです。」

「とは言ってもなぁ…。宮瀬さん、何かないの?」

決戦当日の昼食中、俺たちは落葉の対策について話していた。
別に落葉との戦いを放棄するわけではない。だが、あの神速の剣技と瞬間移動のような体捌きは反則だ。
どうしても気後れしてしまう。

「確かにあの体捌きは瞬間移動のようですし、剣技は目にも止まらぬ速さです」

ですが、と付け加え宮瀬さんは話を続ける。

「前者は間違っていて、後者はその通りなんです」

「というと?」

宮瀬さんの言葉の真意が分からず、聞き返す。

「あれは瞬間移動のようではなく瞬間移動なんです」

「いや!ますますダメじゃないか!」

瞬間移動では目で捉えることは不可能だ。それでは対策もへったくれもない。だが、宮瀬さんは落ち着いてぐさい、とこちらを制止し、話を続ける。

「確かに瞬間移動なんですが、魔法の1つではあるんです。」

「魔法の1つ?」

「はい。元々時空魔法の名前の由来は時間と空間を操ることから来てるんです。そして時空魔法の低級魔法では座標移動も可能なんです。よく考えなくても兄も宮瀬家の一人。時空魔法が使えるんです。」

「なるほど。時空魔法の空間の方ってことか。」

しかし、低級で瞬間移動ができるとは時空魔法、チートすぎやしないか?
今更ではあるが。

「はい。恐らくそれを詠唱の省略で極限まで詠唱を短くして、瞬間移動のように見せかけているのかと。」

「なるほど。だけどあの剣技の速さはなんなんだろ?」

あれは瞬間移動では説明がつかない。剣技を速めるあまり、腕だけ瞬間移動させて神速の剣技に見せかけてもそれでは腕と体がバラバラだ。

「恐らくなんですが、時空魔法の時間の方ですね。あれは……加速です。」

「加速?」

「はい。術者の指定した範囲の時間を加速させることができる魔法です。」

「なるほど。つまり振りかぶった瞬間に落葉さんの周りだけ時間を加速させてあの剣技が出てくるわけか。」

これで2つとも納得はいった。納得しただけだが…。

「本当はもっと早く気付くべきだったんですけど、幼い頃から兄の速さを見ていたら疑うこともなく…。よく考えなくても非現実的なんですけど……」

悔しそうに苦笑いする宮瀬さん。
だけど俺もあんな環境で育てば、恐らく宮瀬さんと同じように疑うことはなかっただろう。

「納得はした……けど、対策はできてないんだよね…」

「そこで、です!こんな物を作ってみました!」

宮瀬さんポケットから黒い小石を取りだし、掲げて胸を張る。その顔は得意気でいわゆるドヤ顔というやつだ。

「それは…」

「これは一定範囲の時空魔法だけを封じる魔具です。有効なのが、時空魔法だけというなんとも汎用性に欠けるものですが…。」

最後の方は肩を落として自信無さ気な宮瀬さん。こういうところも可愛らしい。

「つまり宮瀬さんも時空魔法が使えなくなる?」

「はい…。でも兄は間違いなく私の魔法を封じてきます。」

「なら、ってことか。」

「はい、それと……」

宮瀬さんは椅子から立ち上がり、棚の後ろから何やら黒い鞘に納められた刀を持ってきた。

「先程の魔具同様、この10日あまりで作ったものです。魔力を込めるとその属性に応じて効果を発揮します」

宮瀬さんから受け取った刀は見た目より軽く、俺でも振れそうだった。

「落葉さんが来るまでにちょっと振っておくよ」








「チッ、面倒なことになったな」

「さっきまでの余裕がありませんね?」

「ほざけ!!」

こちらの挑発に乗ってきて一気に距離をつめて振りかぶった!

キィン!

落葉の袈裟斬りを刀で受け止め、金属と金属のぶつかり合う音が空間に反響する。つばぜり合いには持っていかず押し込んでから距離をとる。
確かに落葉の斬撃は速いが見えないわけじゃない!

「チッ、やっぱ使えねぇか。」

落葉は顔を歪めて舌打ちをする。
宮瀬さんの予想外の妨害に焦っているのか、動きが単調だ。これなら勝機はある!
俺は刀に風の魔力を込めて風を刀に纏わせる。

「今度はこっちからいくぞ!」

なんの工夫もない突進で一気に距離をつめて斬りかかる。

キィン!!

当然だが受け止められる。
だが、これでいい!

「!?」

落葉が自分の腕に目をやると僅かだが流血していた。風を纏った刀を振ったことで小さなカマイタチができて、それが落葉の腕を切ったのだ。

「ざけんじゃねぇ!!」

「うおっ!」

落葉は一気に力を込めて刀で押し込んできた。完全に押し込まれた形となった俺は後ろに倒れかかりそうになり体勢を崩す。

「もらったぁ!」

落葉の横薙ぎ!!
咄嗟にバックステップで回避を試みるが間に合わない!

「っ……!!」

腹を浅くだが広範囲に切られて流血する。そこまで多く出血してはないないが、普通に暮らしていたらまずここまでは出血しない。
傷が浅いのは落葉が来る前に宮瀬さんがかけといてくれた防壁魔法のお陰だ。とはいえ宮瀬さんのことを知り尽くした落葉さんの斬撃は完璧には受け止められないようだ。

「西条さん!!今回復を!」

後方で待機していた宮瀬さんが回復の詠唱を始める。

「させるかよ!」

落葉は持っている刀を天に掲げると刀が光出す。あれは恐らく宮瀬さんの魔法を封じるもの。宮瀬さんの詠唱が止まってしまったのがその証拠だ。

「さあ、これで正真正銘一対一だぜ」

「望むところだ」

後ろで心配そうにこちらを見つめる宮瀬さんに大丈夫と声をかけてから落葉に向き直る。

二人同時に地面を蹴り、一気に距離を詰めて互いに振りかぶる!今だ!

「!?」

だが、落葉だけ一瞬動きが止まる。
雷魔法による電気で落葉の腕を一瞬だが、痺れさせたのだ。
だが、この一瞬で十分だ!

「くらえ!」

俺はそのまま斬りかかる!
落葉より早い!

「!?」

だが、一瞬にして足元が揺らいで体勢を崩す。

「しまった!?」

電撃が落葉の脚までいっていなかったため足払いをされた!?

「おら!」

落葉の突きが横っ腹を掠める。

「っ…!」

腹部を正面、横と斬られて激痛が走る。
必死に痛みを堪えて膝をつかないように耐える。
大丈夫、まだやれる!
たが、長くはもたない。
勝負を賭けにでた俺は地面を蹴ってつばぜり合いをしかける!

キィン!!

幾度となく受け止めては攻めてはを繰り返す。
まだ負けられない。
まだ宮瀬さんとぎくしゃくしたままだし、宮瀬さんに対するこの気持ちも分からない。
まだ!まだ!負けられない!

「うぉぉぉ!!」

俺は何度目か分からない突進で距離を詰めてつばぜり合いにもっていく。

キィン!!

歯をくいしばって決して放さないようにつばぜり合いを行う。
落葉とお互い目を合わせ、決死の覚悟で押しきる!

「うぉぉぉ!」

「あめぇんだよ!」

「!?」

つばぜり合いに負けて吹っ飛ばされて背中から打ち付ける。
一瞬呼吸が止まった後、喉、背骨、肺と上半身全身に激痛が走る。

「っ……!」

急な右腕の痛みに視線を向けるとそこには落葉の刀が突き刺さっていた。

「あぁぁぁぁ!!」

視界に入るとより痛みを自覚して右腕にも激痛が走る。右腕に出来た赤い斑点はみるみる広がっていき、俺の服を染め上げていく。

「素人にしちゃよく耐えた方だ。今楽にしてやる」

俺に跨がって立つ落葉の冷えきった声に顔を向けると最初のような不敵な笑みはなく、冷酷な目をしていた。
落葉は刀を俺の腕から抜き、振りかぶる。
死を覚悟し、目をつぶる!

「西条さん!」

宮瀬さんが叫びながら走ってくる音が聞こえる。
ごめん、宮瀬さん。約束守れなかった…。
刀が空を斬る音がしてついに俺の命はそこで絶える………………はずだった。
一向に痛みが来ず、恐る恐る目を開けると落葉は笑っていて、刀は鞘に納まっていた。だが、先程の不敵な笑みではなく、からかうようなやんちゃな笑みだ。

「ど、どういうことだ……」

「兄さん?」

こちらに着いた宮瀬さんも俺も理解が追い付かずただ戸惑っていた。

「どういつもりですか?」

「ああ、別にもう攻撃する必要がなくなっただけだよ。」

意味が分からず、俺も宮瀬さんも戸惑ったままで、いまだに理解が追い付かずにいた。

「攻撃する必要がなくなった?」

「ああ、お前たちと戦う必要はなくってエデンと戦うってことだ。その証拠にエデンと地球のパスを繋ぐ転移装置に魔力爆弾を設置してきた。今頃爆発した頃だろ」

「は、話はよく分かりませんが、兄さんはエデンを裏切ったんですか?」

「まあ、そうなる」

さらっと答える落葉。まるで最初からこうする手はずだったかのように。

「でもなんで裏切りなんて……」

「決まってるだろ!」

「きゃっ!」

落葉は宮瀬さんを抱きしめる。反射的に起き上がり、身構える俺だったが





「紅葉のいない世界なんてぶっ壊れちまぇぇぇぇぇぇ!!!」





「は?」

突然の落葉のシャウトに思わず気が抜けてしまう。
俺も宮瀬さんも呆気にとられるが、先に口を開いたのは宮瀬さんの方だった。

「兄さん、まずは西条さんの治療をしてください。あと気持ち悪いんで離れてください」  

「おっと、そうだな。なんかショッキングなことを言われた気もするが!」

落葉は開きなおって、こちらに向き直る。

「ほら、服を脱いで寝転がれ。」

「あ、ああ」

ここから戦っても勝てる望みは限りなく薄いので疑いつつも、服を脱いで仰向けに寝転がる。

「兄さん……本当に…」

「安心しろって。昔から嘘だけはついたことなかったろ?」

「そ、そうですが…」

宮瀬さんも不安になりつつもこうするのが最善の手だと理解しているようで、すっきりしない表情だ。

「安心しろ!さっきから殺すつもりはなかった!」

「嘘をつけぇぇぇ!!殺気満々だった……っ!!」

白い歯を見せて親指を立てる落葉にイラッときたら傷口が痛み始めた。

「騒ぐからだ。おとなしくしてろよー」

落葉は俺に手を向け気の抜けた声を出すと、すぐに緑色の魔方陣が俺の寝ている場所に現れ、みるみる傷口を塞いでいく。まるで早送りの映像を見ているようだ。ものの数秒で傷口は完璧に治ってしまった。

「ほ、本当に治った……」

「兄さんは魔法学院の人体魔法学科首席で回復の魔法は私なんかよりはるかにできるんです。」

「ハハハ!褒めるなよ紅葉~」

明らかにキャラが変わった落葉についていけないのは俺だけでなく、宮瀬さんも顔を歪めて微妙な心持ちといった様子だ。
俺は起き上がり、服を着る。

「裏切ったと言ったが、お前はエデンがどうなってもいいのか?まさか、エデンの崩壊のことを知らないわけじゃないだろ?」

「ああ、勿論だ。俺にも家族はいるし、友人もいる。だが、何もしていないわけじゃない。西条、だったか。お前は紅葉から話は聞いているようだな」

「ああ、宮瀬さんが命をかけて儀式を行わないとエデンが崩壊するって話だよな。」

「その通りだ。だからこそ俺もなんとか代用になる魔法はないか調べるために儀式を行う術式について調べ始めた。だが、あれが書かれた本はエデンでも最高機密でな。エデンのトップが保持しているんだ。」

落葉は苦い顔で話始める。

「いくら宮瀬家の者と言えど中々触れられるものでもない。儀式を行う紅葉でさえそこまで目にする機会は多くない。」

「そうですね。私も定期的に儀式を行うのに問題がないかテストをするときに少し触れるくらいです。」

だが、と落葉は付け加え話始める。

「俺は忍び込んでは、儀式の術式を解読していたんだ。中々難解で一部しか読み解けていないが、おかしな点が2つ。」

「おかしな点?」

「ああ、まずは無駄がありすぎるんだ。いらない詠唱をさせられる。
そしてもう一つはミスリードだ。ただ、無駄なだけじゃなくて一見必要そうに見えるが無駄。」

疑問はある。明らかに執拗なまでに解読させないようにしている。
確かに重要なものだが、厳重に保管すればいいだけだ。盗まれても崩壊を防ぐ儀式なのだから悪用のしようがないと思うのだが。

「私は地球に来てから覚えてる限りで記憶を辿ってみても難解すぎてよく分かりませんでした……。」

「まあ、てなわけでそう簡単には代用は見つからないってことだ。だが!」

落葉は声を張り上げると右手を天井に掲げ、手を広げて真っ黒な玉を床に落とす。その途端煙を上げて、大量の本が降ってきて一瞬にして本の瓦礫をつくる。

「な、なんだこりゃ!?」

「あれ?紅葉は使わなかったのか?
こっちに来る時の荷物は圧縮玉に入れていたんだと思ったんだが」

宮瀬さんの方を見ると顔を真っ赤にして顔を伏せていた。

「焦っていて何も入れてきませんでした……」

あ、うん。よく分からないけど、いつもみたいにドジったらしい。

「で、その圧縮玉ってのは何なんだ?」

「まあ、簡単に言えば物を極限まで小さくして入れておくもんだ。」

なるほど。つまりこの本はあの真っ黒な玉に入っていたわけか。

「こっちでも引き続き解読は行っていく。さて、この空間にいつまでもいる必要はないしそろそろ出るか。」

落葉は圧縮玉を本の瓦礫に落とすと、
煙を上げて一瞬にして本は消えて圧縮玉だけが残り、それを回収する。

「さ、目を瞑れー」

落葉さんの気の抜けた声に合わせ目を瞑るとここに来た時同様の眩い光に包まれる。数秒で光は収まり目を開けると、俺の家に着いていた。

「さて、来て早々悪いが、俺もちとこっちで調べなきゃならんこともあるからな。失礼するぜ!」

落葉は窓を開けるとベランダから飛び出して暗闇に消えていってしまった。
本当に宮瀬さんと兄弟なんだろうか。
常識もない上に重度のシスコン。
たったこの数分で落葉のイメージがガラリと変わり、宮瀬さんとしばらく唖然としていた。








~エデン~

「くそっ!いきなり転移装置が爆発した!!」

「何者かが魔力爆弾を仕掛けたと思われる!」

「対応を急げ!魔力漏れを起こすな!」

エデンにあるとある施設。
ここはエデンと地球を繋ぐパスを作る転移装置が設置されている。
幾何学模様が描かれたサークルに、その外周に柱が8本。それ以外に目立った物もなく、窓もない。光は円柱状のこの施設の天井と壁に取り付けられた照明のみだった。

しかし、落葉の仕掛けた爆弾により柱は粉々になり、サークルも原形を留めないほどクレーターができており、施設は荒れ果てていた。

「紅葉様がいれば転移装置を使わずとも済んだんだが………」

「その紅葉様が逃げ出したから困ってるんだろ!!」

「しょうがないだろ!紅葉様の防壁魔法をギリギリまで総出で削ったのに壊す前に転移してしまったんだ!転移装置を使わずにパスを繋ぐなんて、計り知れない魔力だ!」

「落葉が不在だったせいか!やはり落葉のように対策をしてないと厳しいものだな……」

「喋ってる暇があるなら復旧作業に移れ!」

施設内は紅葉の逃亡に続き起こった爆発で混乱状態だった。
紅葉の逃亡だけならば、施設の職員達に責任はないだろう。だが、転移装置が爆破されたとなればそうはいかない。故に職員達は急ピッチで原因究明と復旧にあたっていた。

バァン!

施設の大扉を閉じる音に職員達は振り返り静まりかえる。
そこには仮面を着けた中肉中背の黒髪の少年がいた。少年はサークルに向かって静まりかえった職員達を素通りし歩いていき、サークルの前で止まった少年は声を張り上げる。

「まずは復旧作業ご苦労!大神官様の側近の東堂だ!皆、私の前に集まってほしい!」

職員達は駆け足で集まる。その姿が東堂がどれ程の権力があるか、そして大神官がどれ程大きな存在かを示していた。

「まずは大神官様からの伝言だ。復旧作業ご苦労。そちらの被害は耳に入っているがこちらも手を離せない状況だ。出来る限りの支援はするのでこれからも復旧に励むように。ということだ。」

職員達は東堂の話を聞いている間は頭を垂れて静まりかえっていたが、話が終わると一斉に頭を上げる。

「もう一つ私からだ。これを見て欲しい」

東堂が水晶を懐から取り出し両手で支えて念じる。すると曇りがかっていた水晶に少しずつ映像が映る。

『紅葉のいない世界なんてぶっ壊れちまぇぇぇぇぇぇ!!!』

そこには紅葉に抱きつき絶叫する落葉の姿があった。心なしか水晶に向かって笑っているようにも見える。

「くそ!落葉め、裏切りやがったな!」

「爆弾はあいつの仕業か!」

「ぶっ殺してやる!」

職員達は再び騒ぎ始め、施設内に落葉に対する罵倒が響き渡る。

「だが!」

東堂の声で再び静まりかえる。

「安心してほしい!復旧が終わり次第、大神官様の右腕であるこの私が落葉を責任を持って討伐しよう!だから諸君は復旧に専念してほしい!」

「「「うぉぉぉぉ!!」」」

職員達は先程の罵倒を上回る声量で一気に歓声をあげる。

「落葉も終わったな。 」

「短い命だったな。若いのに可哀想なやつだ。」

「ま、東堂様が行ってくださるなら安心だ。なぜなら」






東堂様は5属性魔法、時空魔法以外のあらゆる魔法を完璧に使いこなすのだから。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~回復魔法と防壁魔法について~
回復魔法
レンジは広くなく、移動し続ける者にかけるのも困難。
詠唱時間もそれなりに取られるため、戦闘中に使うのは難しい。


防壁魔法
半球状の防御壁を対象者に張る魔法。
対象が移動し続けていると、かけるのが非常に困難。
他者にかける防壁魔法は術者にかけるより効力は薄い。


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