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開闢の始まり

成果報告3

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蒼いショートヘアに、触覚ともとれる癖毛。
くりくりとした目に、メイにも満たない身長。
そして、らしくないメイド服。

「これが...スプリウェル...様...?」

「これとは失礼な!僕は立派な古龍であるぞ!」

無い胸を張る少女に、テンニーンは目を丸くする。

「か、かわいいっ...!かわいいかわいいかわいいかわいい!!!」

思わず漏れた感想。
口元を手の平で覆い、フェイリスが感嘆の声をあげた。

「そうでしょう、そうでしょう!」

自信満々に頷くメイに、苦笑を漏らすデミドラン。

辺りは既に日が登り、五人は朝食を取っていた。
新しく増えた面子にテンニーンとフェイリスは驚いている。
勿論、少女のメイド服はメイのチョイスだ。

「ところでウェルちゃん、岩山丘の件に心当たりは無いかな?」

メイが一番聞きたかったのはこれだ。
近くに潜んでいたならば、『ラプシヌプルクル』に関しての何かが分かるはずだ。

「僕は身を潜めてたから、わかんないなぁ。」

すんなりと『ウェルちゃん』を受け入れた古龍は、少し申し訳無さそうにしている。
デミドランが外から分からないのであれば、内からでも分からないのは納得出来なくは無い。

「うっ.....!」

ここでフェイリスが、右肩を抑えて苦しみ出した。

「フェイリスさん!大丈夫ですか!?」

「あ、あぁ、大丈夫だ。少し傷が疼いただけだ。」

すぐさま支えたテンニーンが、それはいけないと手当をしにテントへ連れ添っていった。

「ねぇ、僕あの子ちょっと怖い。」

「ハハッ、いつか襲われるかもな?」

自身の貞操の危機を訴えるスプリウェルに、デミドランは悪戯な笑みを向けた。




手当をする為に、フェイリスの右肩を顕にする。
テンニーンは、その状態に思わず息を飲んだ。

「こ、これはっ...!!」

ケロイド状の何かがフェイリスの肩を覆っている。
心做しか、それが鼓動している様にも思えた。

「どうした?何かまずいものでもあったか?」

「い、いや。何も。確かにちょっと傷が酷いのでチャチャッと治療しちゃいますね!」

おかしい。
どう考えてもおかしい。
これは傷などではない。
色的にも、広さ的にも。
しかし本人にその自覚がない。
剥がそうとしても、完全に癒着していて皮膚との境目が見つからない。

「はいっ、治りましたよ!」

「あぁ、ありがとう。」

傷薬を塗り、包帯を巻いて治療は終わらせた。
この事をメイに言うべきか、まだわからない。
恐らく彼女の事だ、既に知っているのだろう。
フェイリスを不安にさせる訳にはいかない。
ここは笑顔で切り抜けよう。




一同は談笑もそこそこに、野営を片付けた。
そしてギルドへの道程を再開する。
その間に、テンニーンは例の傷の事をメイに打ち明けたが、やっぱりねと軽くあしらわれてしまっていた。

先頭を意気揚々と歩くのは新加入の蒼き少女スプリウェル。
鼻歌交じりにパーティーを率いている。
そしてそれを微笑ましげに眺めるフェイリスとメイ。
後ろをデミドランとテンニーンが固めていた。

このペースであれば昼頃にはハンターズギルドへ到着しそうである。
一抹の不安を残しつつも、一行の初任務は上出来な結果で終わろうとしていた。


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