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第一章 7 "無法宙域と惑星ネロル"
しおりを挟む--- **無法宙域、ポート・スクラップヤードにて** ---
ステルス艦「ナイトフォール」が、艦船の残骸と金属の破片で埋め尽くされた着陸場に、ぎこちなく着陸した。ここの雰囲気は混沌と危険に満ちており、屈強な男たちや恐ろしい姿の異星人たちが、重武装で闊歩していた。全ての視線が、敵意を込めて彼らに注がれていた。
「あまり歓迎されてないみたいね」ライラがライトの隣で囁いた。
「奴らは誰も歓迎しないさ…金以外はな」ライトは返した。
彼らは巨大な海賊に導かれ、騒がしい闇市を抜け、ステーションの中心部、海賊のリーダーの司令室へと向かった。それは豪華な部屋ではなかったが、高等級の戦闘艦の残骸を巧みに改造して作られていた。破壊された戦艦の操縦席から作られた「玉座」に、一人の女性が座っていた。彼女は燃えるような赤い髪を長い三つ編みにし、片目には傷跡が走っていた。彼女こそが、「スクラップ・クイーン」の異名で知られる、ヴァレリアナ船長だった。
「インワン・フリーダム…」ヴァレリアナは、嘲笑の色を浮かべた声で言った。「撃ち合うのが専門だと思っていたが、我々のような卑しい『商人』と交渉するために時間を無駄にするとはな」
「今日、我々は兵士として来たのではない」ライトは冷静に答えた。彼は海賊女王の目を、臆することなくまっすぐに見つめた。「ビジネスマンとして来た。ビジネスと、そして生き残りの話をするためにな」
ヴァレリアナは軽く笑った。「生き残り?死にかけているのはお前たちの方だろう。お前たちの小さな艦隊が、連邦に何ができる?」
「我々の敵は、もはや連邦だけではない」ライトは言った。「『機械獣の群れ』の噂は、あんたも聞いているだろう」
「噂は噂だ」ヴァレリアナは言い返した。「子供を脅すための作り話さ」
「作り話ではない」ライラが一歩前に出た。彼女は携帯用のホログラムプロジェクターを起動し、戦闘艦を引き裂く機械獣の群れの残忍な映像と、黒く飲み込まれた惑星ザムの姿を部屋の中央に映し出した。「これは二日前の我々のセンサーからのデータだ。これが、我々全員に訪れようとしているものだ」
ヴァレリアナの顔から笑みが消え、その眼差しは険しくなった。
「それが私に何の関係がある?」
「大ありだ」ライトは続けた。「今、連邦は混乱している。奴らは自身の交易ルートさえ守れていない。あんたのビジネスは破綻寸前だ。そして、機械獣が連邦を片付けた後、奴らがあんたが中立か海賊かなんて気にすると思うか?奴らは全てを飲み込む…あんたのステーションもな」
ヴァレリアナは玉座に深くもたれかかった。「面白いことを言う。それで、お前たちの提案は何だ?」
「我々は惑星ネロルを奪取する。あんたたちが欲しがっている希少鉱物の産地だ」ライトは言った。「我々は、補給と脱出のためのあんたたちのネットワークと秘密のルートが必要だ。その見返りに、闇市場でのネロル産鉱物の独占取引権をあんたに与える。あんたは、このセクターで最も裕福な人間になるだろう」
ヴァレリアナは長い間考え込んでいた。「面白い提案だ。死にかけている者にしてはな」彼女は冷酷に微笑んだ。「何がお前たちに、ネロルを奪取できると思わせる?」
「我々には失うものがないからだ」ライトは即座に返した。「我々は生存のために戦う。だが、あんたは金のために戦う。今、その二つは同じものになろうとしている。我々の軍は、間もなくあんたの玄関先まで広がる戦争を戦っている。我々は、勝者のテーブルの席をあんたに提供する。もう一つの選択肢は、機械獣のテーブルの食事になることだ」
再び部屋に沈黙が訪れた。ヴァレリアナはライトを睨みつけ、やがて大声で笑い出した。「ハハハ!気に入ったぜ、元第7部隊。その目は、傷ついてもなお、死ぬまで噛み付こうとする狼のようだ」
「こうしようじゃないか」彼女は言った。「まずはネロルを奪取して、この目で見せてみろ。お前たちが、死にかけているただの理想主義の反乱分子ではないことを証明しろ。お前たちに投資する『価値』があることを、私に見せろ」
「その後で、『ビジネス』の話をしようじゃないか」
ライトは頷いた。すぐには同盟者を得られなかったが、彼は協力の種を蒔いたのだ。今や全ては、惑星ネロルでのマキの任務の成功にかかっていた。
---
炎と黒煙が、惑星ネロルの首都の空へと立ち上っていた。マキの攪乱任務は見事に成功した。長年虐げられてきた住民たちは、流された噂を信じて蜂起した。ギデオンと潜伏していたゴースト部隊が主導する小規模な破壊工作は、駐留する連邦軍を大混乱に陥れた。彼らは都市の多くの地区で制御を失った。
マキは最も高い超高層ビルの屋上に立ち、高解像度の双眼鏡で自らの仕事の成果を眺めていた。全ては計画通りだった…その時までは。
彼女の頭上の空が暗くなり始めた。それは雲ではなかった。大気圏を突き抜けて降下してくる、巨大な戦闘艦の影だった。
「これは一体…」近くに潜んでいたサイラスがコムリンクで囁いた。
「増援か」マキは冷たく返したが、心の中では異常を感じていた。「早すぎる。そして、規模が大きすぎる」
無数の連邦戦闘艦が空を埋め尽くした。そして最も恐ろしかったのは、首都の上空にゆっくりと浮かぶ巨大な「浮遊要塞」と、マリアン・コンバインの「ウィンターズ・クレスト」に匹敵するほどの大きさを持つ、新たな母艦だった。
そして突然、惑星上の全ての通信チャンネルが乗っ取られた。連邦軍高官の制服を着た一人の男のホログラム映像が、都市中に映し出された。彼の表情は平坦だったが、その眼差しには残忍さが満ちていた。
**<惑星ネロルのテロリスト諸君、お遊びは終わりだ>** 彼の声が響き渡った。**<私は第3強襲艦隊『タイラント』、ケイレン将軍だ。速やかに降伏せよ。さもなくば、歴史から抹消されることとなる>**
惑星ネロルの状況は、最悪の極みに達していた。
--- **同時刻、旗艦「ヴィンディケーター」艦橋にて** ---
「司令官!ネロル星系で大規模なワープアウトを検知!連邦艦隊です!」レーダー士官が叫んだ。
メインホログラムスクリーンに、威容を誇る「タイラント」艦隊の姿が映し出された。多くの士官の顔に、動揺の色が浮かんだ。彼らは完全に罠にはまったのだ!
しかし、ジャックは静かに立っていた。彼の目は、スクリーン上の情報を素早く分析していた。
「艦隊の規模は大きいが、護衛の戦闘機が少なすぎる。そして重巡洋艦はほんの一握りだ」彼は自分に言い聞かせるように呟いた。「これは主力艦隊ではない。最も強力な即応部隊だ。奴らは自信過剰だ」
「どうしますか、司令官?」ヴァレリウス司令官が尋ねた。「我々のチームが、あそこに閉じ込められています!」
ジャックは別の通信スクリーンに向き直った。そこには既にベアトリス提督の姿が映っていた。
「提督、どうやら連邦は、この盤面に女王を投入してきたようだ」ジャックは言った。「奴らの艦隊は強力だが、まだ全戦力ではない」
「我が艦隊はまだ修理が完了しておらぬ。全面戦争は不可能だ」ベアトリスは正直に答えた。
「貴官の全艦隊は必要ない」ジャックは言い返した。彼の目は輝いていた。「必要なのは、貴官の『城』だけだ。艦『ウィンターズ・クレスト』は、間違いなくこのセクターで最も強力な戦闘艦。奴らが母艦を送り込んできたのなら、我々も我々の母艦で応えよう!」
彼は地図を指差した。「貴官の旗艦をこの座標にワープさせろ。私の艦隊が前衛となって突入し、突破口を開く。そして、『ウィンターズ・クレスト』の主砲で、奴らの母艦を直接破壊する!蛇の頭を断ち、我々の兵を奪還する!」
それは、無謀で、極めて危険な計画だった。
ベアトリス提督はその計画を静かに見つめ、やがて、決意を固めてゆっくりと頷いた。
「マリアン・コンバインの栄光に懸けて、『ウィンターズ・クレスト』、参戦いたす」
--- **再び惑星ネロルにて** ---
マキは依然としてビルの屋上に立ち、地上部隊の展開を始める連邦軍を見ていた。状況は絶望的に見えた。
しかしその時、ジャックの声が彼女のヘッドフォンから聞こえた。
**<マキ、持ちこたえろ。今、向かう>**
**<そして、我々は吹雪を連れていく>**
ジャックの声が終わると、マキは再び空を見上げた。遠く離れたどこかで、同盟結成以来、最大の宇宙戦争が、今、始まろうとしていた。
---
戦争の渦へと向かう同盟艦隊の中心、マリアン・コンバインの母艦の美しい艦橋内で、雰囲気はかつてないほどの緊張に包まれていた。
「提督!ジャック司令官の計画は無謀すぎます!」ウィリアム王子が焦った声で抗議した。「彼は我々に旗艦を、王国の象徴全てを、突撃の最前線に危険を冒して投入させようとしているのですよ!」
ベアトリス提督は、ホログラムスクリーンの前で静かに立っていた。「計算されたリスクです、王子。ジャック司令官の評価は正しい。ケイレン将軍の艦隊は強力ですが、急遽派遣された軍です。迅速かつ決定的な突撃こそが、我々が優位を取り戻す最良の機会です」
「しかし、『ウィンターズ・クレスト』を失えば、我々の民の士気は崩壊しますぞ!」ウィリアムは反論した。
「兄上…」ステラ王女の澄んだ声が割り込んだ。彼女は兄の隣に歩み寄った。「インワン・フリーダムの兵士たちは、彼らが知りもしない惑星を解放するために命を懸けようとしています。私たちが共に受け入れたばかりの理想のために。もし私たちが真の同盟者であるならば、彼らが私たちのために血を流している間、盾の後ろに隠れていることなどできますでしょうか」
彼女は兄の目を深く見つめた。「彼らに見せなければなりません。マリアン・コンバインの栄光と勇気を」
妹の言葉に、ウィリアム王子は沈黙した。栄光、そして義務。彼が人生を通じて教えられてきたことだった。「わかった…」彼はついに認めた。「王国の栄光のために。提督、ワープ準備を」
--- **場面転換:惑星ネロル** ---
爆発音と銃声が首都中に鳴り響いていた。マキは影の中を亡霊のように動き、手に持った高出力のエネルギーカタナで、部隊から離れた連邦兵を静かに、そして迅速に暗殺していった。一方、ギデオンとサイラスは、住民の反乱軍と共に激しいゲリラ戦を繰り広げていた。彼らは時間を稼いでいた。一秒一秒を、血と命で。
--- **場面転換:ライトの「ナイトフォール」にて** ---
ポート・スクラップヤードを離れた後、ライトとライラはステルス艦「ナイトフォール」で、傭兵たちの拠点「ステーション・ヴァルハラ」へ向かうため、危険で知られる小惑星帯を航行していた。
「警報!」ライラが叫んだ。「連邦の偵察艦三隻!待ち伏せよ!」
小惑星の影から飛び出してきた、小型で機敏な三隻の連邦戦闘艦が、即座に彼らに向かって発砲してきた!
「しっかり掴まってろ!」ライトは叫び返し、自ら操縦桿を握った。眠っていた戦闘機パイロットとしての本能が、再び目覚めた。
「ナイトフォール」はプラズマ弾の雨を紙一重でかわし、ライトは巨大な小惑星に向かって機体を向け、それを盾にした。「ライラ!奴らのロックオンシステムを攪乱しろ!」
「やってる!」
ライトは最も無謀な機動を行った。彼は小惑星の表面を翼が岩に擦れるほどギリギリで飛行し、機体を180度回転させ、即座に主砲を撃ち返した!
弾丸は敵艦一隻に直撃し、火の玉となって爆発した。しかし、残りの二隻がすぐさま追跡し、プラズマ魚雷を発射してきた!
「魚雷、10秒で着弾!」ライラが報告した。
「いいぞ!」ライトはにやりと笑った。彼は最も密集した小惑星群の中心に向かって直進し続けた。
「三、二、一…」
カウントが終わると同時に、ライトは最後の瞬間に別の巨大な小惑星の陰に機体を滑り込ませ、二発の魚雷を小惑星に激突させ、大爆発を引き起こした!
彼はその爆風を推進力として利用し、小惑星群から脱出することに成功した。そして、彼らの目の前に現れたのは、小惑星全体をくり抜いて作られた巨大な宇宙ステーション、「ステーション・ヴァルハラ」だった。
--- **傭兵の巣窟、ステーション・ヴァルハラにて** ---
少し薄汚れた姿のライトとライラは、重装甲の傭兵二人に連行され、あらゆる場所から集まった傭兵たちでごった返す通路を歩いていた。ここには海賊の巣窟のような混沌はなく、規律ある力強さと危険な雰囲気に満ちていた。
彼らが連れてこられたのは司令室だった。戦争兵器の残骸から作られた玉座に、片腕が機械の義手、片目が赤いサイバネティックレンズの巨漢が座っていた。彼こそが、ヴァルハラ傭兵部隊の最高指導者、ヨーリック司令だった。
「インワン・フリーダム…」ヨーリックの声が、しゃがれた合成音声で響いた。「連邦の検問を突破してここに来るとは、勇敢か、あるいは愚かかのどちらかだろう。そして、ヴァルハラの司令官は、そのどちらのタイプの人間にも時間を無駄にしない」
彼は点滅しないサイバネティックの目でライトを見つめた。「用件を言え。そして、私の時間を無駄にするな」
---
ヨーリック司令のしゃがれた合成音声が、静かな司令室に響き渡った。重装甲のサイボーグ護衛兵が彼に襲いかかろうと身じろぎする中、ライトは男の赤いサイバネティックの目を臆することなく見つめ返した。
「あなたの時間は貴重だ。我々の時間も同じだ」ライトが口火を切った。「単刀直入に言おう。インワン・フリーダムは、連邦との全面戦争を開始する。そして、あなたの全部隊を雇い入れたい」
その大胆で率直な言葉に、室内の何人かの傭兵が小さく笑った。
「連邦との戦争だと?」ヨーリックは笑った。それは乾いた、金属が擦れるような笑い声だった。「反乱分子なら、これまで嫌というほど見てきた。奴らは立ち上がり、そして死んでいく。結末は皆同じだ。支払い能力のない死体になるだけだ。連邦はお前たちの兵士一人に対して、百万の兵を持っている。お前たちの『戦争』は、ただの『集団自殺任務』だ。そして私は、誰かの理想のために部下を死なせはしない」
「それは以前の話だ」ライトは即座に言い返した。「連邦がその弱さを露呈する前の。奴らが『機械獣の群れ』という見えない敵に攻撃され、陣形を乱される前の。そして、三つの主要勢力のうち二つが手を組む前のな」
その言葉に、室内の笑い声は止んだ。ヨーリックのサイバネティックの目がわずかに細められた。「マリアン・コンバイン…ベアトリス提督の誇り高き艦隊が、ジャックの亡霊と手を組んだと。面白い」
「だが、絶望した者同士の同盟が、勝利を保証するわけではない」ヨーリックは続けた。「葬式が盛大になるだけだ。金はどうだ?戦争には金がかかる。お前たちは、どこから私への支払い金を持ってくる?」
「ここからです、司令官」
ライラが一歩前に出た。彼女は携帯ホログラムを起動し、部屋の中央に惑星ネロルの3D映像と、複雑な地質スキャンデータを映し出した。「惑星ネロル。初期評価によれば、地表下の『ネオ・タイベリウム』鉱床は、闇市場で500兆クレジット以上の価値があります」彼女はよどみなく言った。「我々は雇用契約を提案します。5年間の全生産量の20%の分け前。加えて、惑星解放が成功した暁には、莫大な初期契約金を即金で支払います」
ヨーリックは武器の玉座に深くもたれかかった。「まだ手に入れてもいない惑星の20%か。大胆だな」
彼の赤い目が、再びライトに向けられた。「教えろ、キャプテン。お前は元第7部隊だ。連邦がどう動くか、よく知っているはずだ。何がお前に、他人が失敗し続けた戦争で、『お前』が勝てると思わせる?」
ライトは、その機械の目をまっすぐに見つめ返した。「なぜなら今回、俺は理想のために戦っているのではない」彼は平坦な声で言った。「俺は、二つの致命的な過ちを犯した敵と戦っている。一つ目、奴らは『機械獣の群れ』を過小評価した。そして、二つ目…」
「…奴らは俺を敵に回した」
氷のような沈黙が部屋を支配した。その言葉は単純だったが、声に込められた決意は、鋼鉄の山のように重かった。
ヨーリックは長い間黙っていたが、やがてゆっくりと頷いた。
「フン…その覚悟、この時代では希少品だ」彼は言った。「よかろう。ただの『約束』に全戦力を投じるつもりはない。だが、私も賭け師の一人だ」
「私の最高の一個中隊を貸そう。『ウォー・ハウンド』。私の最も有能な中尉が率いている。彼らは、お前たちの惑星ネロル解放作戦に参加する」
「もしお前たちが成功し、惑星と鉱床を本当に手に入れたなら、その時は、ステーション・ヴァルハラと私の全軍が、お前たちの指揮下に入ろう。もちろん、相応の値段でな」
「だが、もしお前たちが失敗すれば…」彼の目が細められた。「私の『ウォー・ハウンド』が、お前たちの死体から報酬を回収しに行く。それでいいな?」
「ああ」ライトは短く、力強く答えた。
「いいだろう!」ヨーリックは初めて笑みを見せ、金属の歯を覗かせた。「レックス中尉!出ろ!」
特別に改造された重装甲をまとった一人の男が、闇の中から現れた。彼の体はガーよりも一回り大きく、装甲の至る所に戦闘の傷跡が刻まれていた。彼はヨーリックに頭を下げ、戦いを渇望する目でライトを見た。
「これより、『ウォー・ハウンド』はお前の指揮下に入る、ライトキャプテン」ヨーリックは言った。「私を失望させるなよ」
---
宇宙戦争は、本格的に火蓋を切った!旗艦「ヴィンディケーター」率いるインワン・フリーダム艦隊が、連邦の「タイラント」艦隊と激しく衝突した。両軍の小型戦闘艦が、狂った蜂の群れのように弾丸を撃ち合った。
そして、同盟軍の切り札が到着した。母艦「ウィンターズ・クレスト」が、連邦軍の陣形の上空にワープアウトしたのだ。その巨大で優雅な姿は星の光を完全に遮り、主砲「アイス・ファング・キャノン」が閃光を放った。巨大な極低温の青いエネルギービームが、ケイレン将軍の母艦「タイラント」に直撃した!
連邦の母艦は甚大な被害を受け、エネルギーシールドは砕け散り、側面装甲が引き裂かれた。艦橋にいたケイレン将軍は、敵を過小評価していたことを即座に悟った。「撤退だ!全艦に撤退を命じろ!」彼は狂ったように命令した。「地上部隊は見捨てろ!生き延びろ!」
士気を失った連邦艦隊は混乱の中で撤退を開始し、同盟艦隊が彼らをネロル星系から完全に追い払う機会を与えた。
--- **惑星ネロル地上にて** ---
母艦の撤退は、地上にいる連邦兵の終わりを意味した。上官に見捨てられたと知り、彼らの士気は崩壊した。そしてその瞬間、革命軍の増援が到着した。
「ウォー・ハウンド」の複数の降下艇が戦場の真っただ中に着陸した。レックス中尉率いる重装甲の傭兵たちが、マキのチームと住民の反乱軍に合流し、生き残った連邦兵を最後の波として包囲、掃討した。
戦闘は、最後の連邦兵部隊が降伏を宣言する声と共に終わった。惑星ネロルは、解放された。
--- **ライトの帰還** ---
その歓喜の中、ステルス艦「ナイトフォール」が、残存する戦闘区域を突破し、無事に同盟艦隊に帰還した。ライトは旗艦「ヴィンディケーター」に着艦し、すぐさま艦橋へと向かった。彼は、ジャックとベアトリス提督がホログラムスクリーンに映る勝利の光景を見ているのを目にした。
「司令官、提督」ライトは敬礼した。「交渉は、成功裏に終わりました」彼の隣に、レックス中尉のホログラム映像が現れた。「『ウォー・ハウンド』中隊、契約の準備ができました、司令官」「ポート・スクラップヤードのヴァレリアナ船長も同様に合意しました。ここでの我々の成功を条件としてですが」ライトは続けた。「彼らの秘密の補給ルートと情報ネットワークは、今や我々のものです」
ジャックはライトに向き直った。彼の顔に、心からの、そしてこの上ない誇りに満ちた笑みが浮かんだ。「やったな、キャプテン」彼は言った。「君はただ傭兵を連れてきただけではない。我々に軍とネットワークをもたらした。見事だ」
--- **希望の夜明け** ---
今や、戦争は完全に様相を変えた。惑星ネロルでは、同盟軍の技術者と労働者が、直ちに「ネオ・タイベリウム」の採掘を開始した。彼らは、新たな二つの同盟者、海賊と傭兵への信頼を築き、報酬を支払うために、昼夜を問わず働いた。
「ヴィンディケーター」の艦橋で、革命の指導者たちは未来を見据えていた。
「ネロルの資源と、我々の新たな同盟者をもってすれば…」ベアトリス提督が、初めて希望に満ちた声で言った。「ついに、我々は惑星マリアを、我々の故郷を、奪還する計画を立てるに足る戦力を手に入れたのです」
ライトは星図を見ていた。黒くなった惑星ザム、同盟軍の青色に変わったばかりの惑星ネロル、そして遠く、まだ敵の赤色に染まる惑星マリア。戦争はまだ長い。しかし今や、彼らはもはや影に隠れる小さな反乱分子ではない。「ザン・セクター解放軍」として、全てを取り戻す準備ができていた。
---
ライト、レックス中尉、そして(ホログラム越しの)ヴァレリアナ船長が、新たな二つの同盟の成功を報告した後、「ヴィンディケーター」の艦橋の雰囲気は、かつてないほどの希望に満ちていた。
「素晴らしいぞ、キャプテン」ジャックは満足げにライトに言った。「今や我々は、軍と、ネットワークと、資金を手に入れた。我々に欠けているのはただ一つ、真の敵が何なのかを知ることだけだ」
全員の視線が、最高の解読チームによって分析されている「キメラ計画」のハードディスクに注がれた。
「ライラも解読チームに加わっている」ジャックは付け加えた。「彼女の報告によれば、データは複雑に暗号化されているが、アイギス・ステーションの破壊が予備のキーサーバーを損傷させたようだ。それが我々に突破口を与えた。予想よりも早く解読できるだろうとのことだ」
まるでジャックが話し終えるのを待っていたかのように、情報士官のコンソールで警報が鳴った。「司令官!データが…データが解読されました!メインホログラムスクリーンに転送します!」
艦橋にいた全員が、一斉にメインスクリーンに目を向けた。そこに現れたのは、兵器の設計図ではなく、複雑な「制御信号」の系統図と、極秘の実験を記録したビデオクリップだった。
映し出された光景に、誰もが言葉を失った。それは、連邦の科学者からの信号によって「命令」され、模擬ターゲットを攻撃する機械獣の群れの映像だった。彼らは、まるで操り人形のように一糸乱れぬ動きを見せていた。
「神よ…」ベアトリス提督が小さく呟いた。彼女の顔は青ざめていた。「マリアでの攻撃は、侵略ではなかった。自作自演だったというのか!」
「奴らは機械獣を生物兵器として利用していた…」ウィリアム王子が、怒りに震える声で言った。「我々を排除し、自らが救世主となる状況を作り出すために。あの畜生どもめ!」
恐るべき真実が、暴かれた。連邦はただの独裁者ではなく、全ての災厄の背後にいた戦争犯罪者だったのだ。
ジャックは、血管が浮き出るほど固く拳を握りしめた。「マリアだけではない。ザムもだ。奴らは、自分たちの実験の痕跡を隠蔽するために、惑星一つが丸ごと飲み込まれるのを意図的に放置したのだ」
彼はライトに向き直った。その眼差しには、冷たい決意が満ちていた。「キャプテン、我々の計画は変更だ。今マリアを解放しに行けば、我々の艦隊を連邦の機械獣の群れに差し出すようなものだ」
「待て」ジャックは手を上げた。「まだ終わりではない。君が聞かなければならないことがある」
彼は再びコントロールパネルに触れ、ホログラムスクリーンは解読された音声ファイルに切り替わった。それは、ある連邦の科学者の音声記録だった。
**<実験記録734、アリス・ソーン博士。キメラ計画>** その声は興奮と恐怖が入り混じっていた。**<プロトタイプ『エレクター=カイ』は、予想以上の成果を上げている。信号巣は機械獣の集合意識を抑制し、下等な個体は我々の命令を完全に受け入れる>**
**<だが…だが、その安定性には問題がある。信号が一瞬でも中断されると、奴らはただ自由になるだけではない。恐ろしい逆連鎖反応が引き起こされる。奴らの攻撃本能が千倍にも増幅され、もはや制御不能な『狂乱』状態に陥るのだ。真の災厄と化す>**
**<最高司令部は、これを『欠陥』ではなく、『特殊機能』と見なしている。最終的な焦土作戦のための自爆装置のようなものだと。だが私は怖い。我々が創り出したものは『手綱』ではないのではないかと。我々はただ、『爆弾の信管』を握っているだけなのではないかと>**
音声ファイルは終わり、艦橋には不気味な沈黙だけが残された。
「神よ…」ベアトリス提督は呟いた。「ならば、あの送信ステーションを破壊すれば…」
「そうだ」ジャックは平坦な声で返した。「そのステーションの管轄下にある全ての機械獣が狂乱する。連邦の艦隊さえも区別なく、目に入るもの全てを攻撃するだろう。それは、最も危険な諸刃の剣だ」
彼は再びライトを見つめた。その眼差しには、期待と、そして重圧が込められていた。
「君の任務は変わらない、キャプテン。だが、賭け金は、以前とは比べ物にならないほど高くなった」
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