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コーデリアの部屋を出てすぐ、ガブリエルは下僕に頼みシャロンに手紙を届けさせた。
来て欲しいと頼んだのだ。
シャロンはコーデリアの生い立ちも預かった経緯も何も知らないが、今コーデリアの不安を和らげることが出来るのは彼女しかいないと思ったのだ。
コーデリアにとってシャロンは特別な女性だ。
初めてこの屋敷に来た時から、シャロンの胸の中で眠ることがコーデリアにとって一番安心出来ることなのをガブリエルも知っている。
シャロンならコーデリアを愛しているし、何も知らなくてもコーデリアを治められるはずだ。
今コーデリアにすべて話すという選択肢もあるが、まだ早い。
コーデリアが思い悩むほど成長しているのはわかったが、この先の運命を受け入れるまでには育っているとは言い難い。
コーデリアは女王になる。それが決まっている。
自分の出生と生い立ちを受け入れ。母に着せられた罪を知ってなおそれを下した国の君主として立ち、国と国民に人生を捧げなくてはならないのだ。
悲劇を受け入れ許し、無実の母を罵り自分を無視した人々も含めて愛さなくてはならない存在になるのだ。
まだ心が幼く、国や君主という存在が希薄な今では復讐心だけが育ってしまう可能性があると思った。
自分のアイデンティティを知りたいと思うことは当たり前だし知らないままで思い悩み続けることもかわいそうなのはわかっているが、女王になることが決まっているコーデリアが復讐心だけでその地位に立てば暴君となり国が壊れかねない。
例えばガブリエルだけを恨むのならそれを受け入れることは出来る。
しかしガブリエルはコーデリアが女王になり賢く国を治め、誰からも愛される存在になってほしい。
大きな責任も伴うが、マイルスやダイアナに支えられ幸せになって欲しいのだ。
自分が経験したわけではないからコーデリアの生い立ちを簡単に理解したり忘れろとは言えない。
それでも受け入れ、だからこそ弱いものにも寄り添える。そんな女性であり女王になって欲しい。
復讐心で憎しみに生きず、心穏やかに国を治めて欲しい。
感情だけでうかつにはコーデリアの知りたいことを話すことは出来ない。
慎重に、成長に合わせて適切なタイミングで話さなくてはならない。
計画通りなら、あと二年でそこまで成長させなくてはならない。
*****
「わたしが聞いておくことはある?」
夕飯後に到着したシャロンが聞いたが、ガブリエルは首を振った。
「なにも聞かずにコーデリアを治めてくれ。君にしか出来ない」
シャロンはガブリエルの頬を撫でた。
久しぶりのシャロンの温もりだった。
最近ではシャロンと男女の関係はすっかりなくなり、ふたりの間にあるのはコーデリアだけだ。
「あなたも酷い顔しているわ。コーデリアのことだとそんな顔もするのね」
「頼めるのも君しかいない」
「すっかりパパだわ」
ガブリエルは否定しなかった。
以前は父親ではないしそんなのは冗談じゃないと思っていたはずなのに、コーデリアがかわいくてしょうがないのだ。
自分に父性というものがあるならこれがそうだろうと思っている。
娘のように成長を楽しみに思い、心配し、愛している。
三年間ガブリエルの時間のほとんどを捧げて来た。コーデリアもそれを受け取りガブリエルが大好きだと純粋に伝えて来た。そうなるのも仕方のない。
コーデリアが知らない男と手を繋いでいたことが気に入らないのも、幸せを心から願うのも娘のように愛しているからだ。
小さなコーデリアが縋ってくるたびにガブリエルの庇護欲が湧き、コーデリアの成長と共にガブリエル父性が育てられていたのだ。
コーデリアが今どれほどの不安の中にいるのか思うだけでガブリエルも胸が締め付けられたが、ずっとここに居ていいのだという一言を言ってやれなかった。
明らかな嘘を吐くことが出来なかった。
嘘でもいい今だけのために言ってやればよかったのだろうか。
ガブリエルはシャロンならなんとか出来るとは思っていたが、なかなか寝付けなかった。
翌朝シャロンが部屋来て、ガブリエルの目が赤いことを笑った。
「コーデリアはあなたを信じているわ。わたしもあなたを信じている。今はそれしかないわ」
ガブリエルは感謝して頷いた。
「ありがとう。それで充分だ」
今はただ信じてもらう事しかガブリエルにもない。なにも言えないのだから。
朝食のコーデリアは普段よりは大人しかったが、きちんと挨拶も出来たし笑顔も見せたのでガブリエルはほっと胸をなでおろした。
*****
コーデリアの十六歳の誕生日は盛大にやろうと言い出したのはシャロンだ。
この国の女性にとって十六歳は特別だ。
社交界へのデビューが出来る年齢であり、結婚も出来るようになる。
最近は十六前でもワンピースからドレスを着ている貴族の娘も多いが、コーデリアはずっとワンピースとエプロンだったのでこの日を境に普段着もドレスに替える。
社交界デビューは注目を集め出自を探られるのは困るのでさせられないが、大人の女性として扱われる年齢になるのだ。
盛大と言っても先の理由で誰かを招待したりする予定もないが、普段とは違った食事やラリサと相談してホールサイズのケーキも作るとシャロンは張り切っている。
ガブリエルもプレゼントを用意していた。
これもこの国の慣習のようなものだが、父親が娘の社交界デビューの歳に渡すプレゼントとされている物だ。
本来ならグレッグ前王がコーデリアにプレゼントするはずの物だ。
昼間はワンピース姿でガブリエルの講義を受けていたコーデリアだったが、夕食の前にシャロンが支度を手伝い始めてのドレス姿で階段を降りて来たのを見てガブリエルは不覚にも鼻の奥がツンとした。
コーデリアの大好きな鳥、オオルリと同じ瑠璃色のボールガウンドレスを着て。大人っぽい装いに少し化粧もしている。
いつも両サイドに三つ編みで下ろしていた髪はハーフアップに結われ、シャロンの真似をして巻き毛にした絹糸のような金髪を肩の上で弾ませている。
あの汚くて痩せっぽちだったコーデリアが、たった三年でこんなに女性らしくなっていたのだと初めて気が付いたような気分だ。
長いようであっと言う間の三年だった。この先の二年も気が付けば過ぎてしまうのだろうかと思うと、まだ先だというのに寂しさが胸に去来する。
まったく。これでは本当に父親だと思うのだが、その代わりのようなものなので仕方がない。
グレッグ王が生きていたらこの姿をどんな目で見ただろう、エロイーズ妃が生きていたらどれほどこの日を喜んだだろうと思うと。その代わりにガブリエルが感慨を深くなっているのだ。
シャロンの言う通り十六歳は女性には特別だったのだ。ちゃんとしてあげてよかったとガブリエルは思った。
「どう? おかしくない? シャロンが髪はやってくれたのよ」
初めてのコルセットの違和感に窮屈そうにしながらも、大人のドレスにしたことのない髪型や化粧で少し照れながらガブリエルの前でクルリと回って見せる。
「見違えた。とても似合っている」
「馬子にも衣裳とは言わないでしょうね?」
「馬鹿を言うなシャロン。この美しい娘にそんなこと言うほど無粋ではないぞ」
ガブリエルが手放しで褒めるのでコーデリアは耳まで赤くなって照れた。
食事の支度が整うまでリビングで三人で過ごしながら、ガブリエルはコーデリアにプレゼントを渡した。
四角の平たい箱を受け取るとリボンを解き、ベルベッドの箱を開ける。
「うわぁー……」
コーデリアは声を上げ顔を輝かせた。
今回十六歳を迎えるにあたって、ドレスや手袋、靴やバッグなどの小物に加え宝石はどうしようかとシャロンに言われた。
アディンセル侯爵家の資産があればいくらでもとはいかないがコーデリアがこの先の生涯に充分足りるくらいの物は買い揃えられる。
しかしガブリエルは買わなかった。
やはり最初の宝石はこれと決めていたからだ。
シャロンもそれがわかったので、宝石の買い物はしなかった。
コーデリアが開けて声を上げたそれは、パールのチョーカーだった。
一連のものだが巻きも照りも最高級のもので、中央に取り外しの出来る大粒のダイヤが下がっている。
「この国の娘は父親から初めて貰う宝石はパールのチョーカーと決まっているのよ」
コーデリアの横からそのパールのチョーカーを覗き込み、シャロンが説明した。
「ガブリエルは父親じゃないのに……」
「そんなようなものだ」
「違うのに……」
コーデリアの顔が切なくなる。
シャロンの話を聞いて、本当の父親からもらいたかったと思ったのだろうか。
当たり前かもしれないが、やはりまだあの日のことを引きずっているのだとガブリエルは思った。
だた信頼してほしいうことがどれほど難しいことかと、苦しくなる。
信じるだけでは疑問は消えたりしないのだから。
コーデリアの様子に気が付いたシャロンがパールを持ち上げた。
「着けてあげるわ」
首に手を回し留め具を結んだ。
初めて首にかかる重さに、コーデリアはくすぐったそうにした。
「ガブリエル、ありがとう。とても嬉しいわ」
「そうか、よかった。よく似合っている」
言ってから沈黙が落ちる。
コーデリアの笑顔は本当のものではないからだ。
ほんの数秒前にパールを見た時の輝きが、もう消えてしまっている。
「本当に似合っているわよ。鏡見てきたら?」
「うん」
シャロンに促され玄関ホールの鏡を見にコーデリアが行くと、シャロンはガブリエルに向き直った。
「複雑なのよ。わかるでしょ?」
「わかっている」
ガブリエルは両手で顔を覆って擦った。
わかっているがコーデリアが悩んでいる事がガブリエルにも辛かった。
コーデリアの為のことだとしても、いつものような笑顔が見られないのは淋しかった。
出来ることは残り二年で何でもしてやろうと思った。
コーデリアに残された時間も二年なら、ガブリエルに残された時間も二年しかないのだ。
来て欲しいと頼んだのだ。
シャロンはコーデリアの生い立ちも預かった経緯も何も知らないが、今コーデリアの不安を和らげることが出来るのは彼女しかいないと思ったのだ。
コーデリアにとってシャロンは特別な女性だ。
初めてこの屋敷に来た時から、シャロンの胸の中で眠ることがコーデリアにとって一番安心出来ることなのをガブリエルも知っている。
シャロンならコーデリアを愛しているし、何も知らなくてもコーデリアを治められるはずだ。
今コーデリアにすべて話すという選択肢もあるが、まだ早い。
コーデリアが思い悩むほど成長しているのはわかったが、この先の運命を受け入れるまでには育っているとは言い難い。
コーデリアは女王になる。それが決まっている。
自分の出生と生い立ちを受け入れ。母に着せられた罪を知ってなおそれを下した国の君主として立ち、国と国民に人生を捧げなくてはならないのだ。
悲劇を受け入れ許し、無実の母を罵り自分を無視した人々も含めて愛さなくてはならない存在になるのだ。
まだ心が幼く、国や君主という存在が希薄な今では復讐心だけが育ってしまう可能性があると思った。
自分のアイデンティティを知りたいと思うことは当たり前だし知らないままで思い悩み続けることもかわいそうなのはわかっているが、女王になることが決まっているコーデリアが復讐心だけでその地位に立てば暴君となり国が壊れかねない。
例えばガブリエルだけを恨むのならそれを受け入れることは出来る。
しかしガブリエルはコーデリアが女王になり賢く国を治め、誰からも愛される存在になってほしい。
大きな責任も伴うが、マイルスやダイアナに支えられ幸せになって欲しいのだ。
自分が経験したわけではないからコーデリアの生い立ちを簡単に理解したり忘れろとは言えない。
それでも受け入れ、だからこそ弱いものにも寄り添える。そんな女性であり女王になって欲しい。
復讐心で憎しみに生きず、心穏やかに国を治めて欲しい。
感情だけでうかつにはコーデリアの知りたいことを話すことは出来ない。
慎重に、成長に合わせて適切なタイミングで話さなくてはならない。
計画通りなら、あと二年でそこまで成長させなくてはならない。
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「わたしが聞いておくことはある?」
夕飯後に到着したシャロンが聞いたが、ガブリエルは首を振った。
「なにも聞かずにコーデリアを治めてくれ。君にしか出来ない」
シャロンはガブリエルの頬を撫でた。
久しぶりのシャロンの温もりだった。
最近ではシャロンと男女の関係はすっかりなくなり、ふたりの間にあるのはコーデリアだけだ。
「あなたも酷い顔しているわ。コーデリアのことだとそんな顔もするのね」
「頼めるのも君しかいない」
「すっかりパパだわ」
ガブリエルは否定しなかった。
以前は父親ではないしそんなのは冗談じゃないと思っていたはずなのに、コーデリアがかわいくてしょうがないのだ。
自分に父性というものがあるならこれがそうだろうと思っている。
娘のように成長を楽しみに思い、心配し、愛している。
三年間ガブリエルの時間のほとんどを捧げて来た。コーデリアもそれを受け取りガブリエルが大好きだと純粋に伝えて来た。そうなるのも仕方のない。
コーデリアが知らない男と手を繋いでいたことが気に入らないのも、幸せを心から願うのも娘のように愛しているからだ。
小さなコーデリアが縋ってくるたびにガブリエルの庇護欲が湧き、コーデリアの成長と共にガブリエル父性が育てられていたのだ。
コーデリアが今どれほどの不安の中にいるのか思うだけでガブリエルも胸が締め付けられたが、ずっとここに居ていいのだという一言を言ってやれなかった。
明らかな嘘を吐くことが出来なかった。
嘘でもいい今だけのために言ってやればよかったのだろうか。
ガブリエルはシャロンならなんとか出来るとは思っていたが、なかなか寝付けなかった。
翌朝シャロンが部屋来て、ガブリエルの目が赤いことを笑った。
「コーデリアはあなたを信じているわ。わたしもあなたを信じている。今はそれしかないわ」
ガブリエルは感謝して頷いた。
「ありがとう。それで充分だ」
今はただ信じてもらう事しかガブリエルにもない。なにも言えないのだから。
朝食のコーデリアは普段よりは大人しかったが、きちんと挨拶も出来たし笑顔も見せたのでガブリエルはほっと胸をなでおろした。
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コーデリアの十六歳の誕生日は盛大にやろうと言い出したのはシャロンだ。
この国の女性にとって十六歳は特別だ。
社交界へのデビューが出来る年齢であり、結婚も出来るようになる。
最近は十六前でもワンピースからドレスを着ている貴族の娘も多いが、コーデリアはずっとワンピースとエプロンだったのでこの日を境に普段着もドレスに替える。
社交界デビューは注目を集め出自を探られるのは困るのでさせられないが、大人の女性として扱われる年齢になるのだ。
盛大と言っても先の理由で誰かを招待したりする予定もないが、普段とは違った食事やラリサと相談してホールサイズのケーキも作るとシャロンは張り切っている。
ガブリエルもプレゼントを用意していた。
これもこの国の慣習のようなものだが、父親が娘の社交界デビューの歳に渡すプレゼントとされている物だ。
本来ならグレッグ前王がコーデリアにプレゼントするはずの物だ。
昼間はワンピース姿でガブリエルの講義を受けていたコーデリアだったが、夕食の前にシャロンが支度を手伝い始めてのドレス姿で階段を降りて来たのを見てガブリエルは不覚にも鼻の奥がツンとした。
コーデリアの大好きな鳥、オオルリと同じ瑠璃色のボールガウンドレスを着て。大人っぽい装いに少し化粧もしている。
いつも両サイドに三つ編みで下ろしていた髪はハーフアップに結われ、シャロンの真似をして巻き毛にした絹糸のような金髪を肩の上で弾ませている。
あの汚くて痩せっぽちだったコーデリアが、たった三年でこんなに女性らしくなっていたのだと初めて気が付いたような気分だ。
長いようであっと言う間の三年だった。この先の二年も気が付けば過ぎてしまうのだろうかと思うと、まだ先だというのに寂しさが胸に去来する。
まったく。これでは本当に父親だと思うのだが、その代わりのようなものなので仕方がない。
グレッグ王が生きていたらこの姿をどんな目で見ただろう、エロイーズ妃が生きていたらどれほどこの日を喜んだだろうと思うと。その代わりにガブリエルが感慨を深くなっているのだ。
シャロンの言う通り十六歳は女性には特別だったのだ。ちゃんとしてあげてよかったとガブリエルは思った。
「どう? おかしくない? シャロンが髪はやってくれたのよ」
初めてのコルセットの違和感に窮屈そうにしながらも、大人のドレスにしたことのない髪型や化粧で少し照れながらガブリエルの前でクルリと回って見せる。
「見違えた。とても似合っている」
「馬子にも衣裳とは言わないでしょうね?」
「馬鹿を言うなシャロン。この美しい娘にそんなこと言うほど無粋ではないぞ」
ガブリエルが手放しで褒めるのでコーデリアは耳まで赤くなって照れた。
食事の支度が整うまでリビングで三人で過ごしながら、ガブリエルはコーデリアにプレゼントを渡した。
四角の平たい箱を受け取るとリボンを解き、ベルベッドの箱を開ける。
「うわぁー……」
コーデリアは声を上げ顔を輝かせた。
今回十六歳を迎えるにあたって、ドレスや手袋、靴やバッグなどの小物に加え宝石はどうしようかとシャロンに言われた。
アディンセル侯爵家の資産があればいくらでもとはいかないがコーデリアがこの先の生涯に充分足りるくらいの物は買い揃えられる。
しかしガブリエルは買わなかった。
やはり最初の宝石はこれと決めていたからだ。
シャロンもそれがわかったので、宝石の買い物はしなかった。
コーデリアが開けて声を上げたそれは、パールのチョーカーだった。
一連のものだが巻きも照りも最高級のもので、中央に取り外しの出来る大粒のダイヤが下がっている。
「この国の娘は父親から初めて貰う宝石はパールのチョーカーと決まっているのよ」
コーデリアの横からそのパールのチョーカーを覗き込み、シャロンが説明した。
「ガブリエルは父親じゃないのに……」
「そんなようなものだ」
「違うのに……」
コーデリアの顔が切なくなる。
シャロンの話を聞いて、本当の父親からもらいたかったと思ったのだろうか。
当たり前かもしれないが、やはりまだあの日のことを引きずっているのだとガブリエルは思った。
だた信頼してほしいうことがどれほど難しいことかと、苦しくなる。
信じるだけでは疑問は消えたりしないのだから。
コーデリアの様子に気が付いたシャロンがパールを持ち上げた。
「着けてあげるわ」
首に手を回し留め具を結んだ。
初めて首にかかる重さに、コーデリアはくすぐったそうにした。
「ガブリエル、ありがとう。とても嬉しいわ」
「そうか、よかった。よく似合っている」
言ってから沈黙が落ちる。
コーデリアの笑顔は本当のものではないからだ。
ほんの数秒前にパールを見た時の輝きが、もう消えてしまっている。
「本当に似合っているわよ。鏡見てきたら?」
「うん」
シャロンに促され玄関ホールの鏡を見にコーデリアが行くと、シャロンはガブリエルに向き直った。
「複雑なのよ。わかるでしょ?」
「わかっている」
ガブリエルは両手で顔を覆って擦った。
わかっているがコーデリアが悩んでいる事がガブリエルにも辛かった。
コーデリアの為のことだとしても、いつものような笑顔が見られないのは淋しかった。
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