46 / 58
Episode 2 聖バリス教会の脅威
Chapter 15 動く大群狼
しおりを挟む
大陸歴990年――。
月が7月に変わったばかりのこの日、アスト達はデルバートに滞在していた。
先のラギルスとの最後の戦いからすでに数日が過ぎていたが、アスト達は討伐士組合で何をするでもなく、今日もただ集まって黙って食事をするだけであった。
「ふう……」
また、リディアが溜め息をつく。これで今日何十回目であろうか。それに反応するように、アストも溜め息をついた。
「あのさ……」
不意にリックルがアスト達に声をかける。
「暗い……暗いよ……。もう少し、何とかしないとダメになるよ」
「……そうだな」
リックルの言葉にアストが同意する。
「このまま、溜め息ばかりついて、無為に過ごすのは良くない。何より、俺達にはやるべき仕事があるはずだ」
「それは、そうだけど……」
リディアが暗い顔でアストを見つめる。
「なにか、やる気も何も消え失せたように、何をする気も起きないよ」
「リディア」
リディアの言葉はもっともだ、この間まで楽しく喋っていたラギルスが死んだのだ。そのショックは、アスト達の心を思いの外深く傷つけていた。それでもアストは、なんとか気分を奮い起こす。こんな姿をラギルスに見られたら、彼はどれだけ嘆くか想像できた。
「リディア……立て……。ラギルスに叱られるぞ?」
「その通りだよ……」
不意に誰かから声をかけられる。
「ジェラさん?!」
リディアが声の主を見て叫ぶ。
ジェラは微笑みをたたえてそこに立っていた。
「もういいんですか?」
アストがジェラに問いかける。
ジェラはアーロニー村でラギルスを弔い、この街に帰った直後から、塞ぎ込んで部屋から一歩も出てこなかったのだ。皆が心配するのは当然であった。
「もう、大丈夫さ。あたしにはラギルスとの赤ちゃんがいるんだ。嘆くばかりじゃ、赤ちゃんを守れやしないからね」
「ジェラさん」
ジェラの瞳には、強い意志が宿っている。
つい先程まで、部屋にこもって泣くばかりだったジェラを見ていたリディアは、驚きの表情でジェラを見た。アストは心の中で思う。
(そうか……。まさしく母は強しだな……。嘆くばかりじゃダメだと、彼女が一番理解しているんだ)
そのジェラの姿は、その場にいる誰よりも強く見えた。
「どうやら、心配ないようですね」
不意に、アスト達に声をかける者がいた。
「マーマデューク!」
ジェラがその声の主の名を叫ぶ。
「はい……、大事な相棒の死に目にもあえず。このような遅い到着で申し訳ないです」
そう言って、申し訳なさそうに頭を下げるのはマーマデュークであった。
「私が居れば、ラギルスを逃がすぐらいはできたはず…….」
「マーマデューク……」
「……」
「怒るよ?」
ジェラがマーマデュークの言葉を遮る。マーマデュークは素直に謝る。
「そうですね……。ラギルスの死は誰のせいでもない。彼はやるべきことを、自らの意思で決めて、そして旅立ったのでしょう」
「そうだ……。最後まで無茶な馬鹿野郎だったよ」
ジェラがそう言って笑い、マーマデュークもそれにつられるように笑った。
「しかし、マーマデューク。お前どうしてここにいるんだ?」
ジェラがマーマデュークに問う。
マーマデュークは真面目な表情になって、ジェラに答えた。
「ええ、じつはここに貴方達と一緒に滞在している、バルディというかたに呼ばれまして……、何やら大切な話があるとか……」
「バルディさんに?」
アストがマーマデュークに向けて疑問符を飛ばす。
そう、バルディとフィリスもまた、アスト達と一緒にデルバートに滞在していた。その彼らは、今日はまだ討伐士組合に顔を出していないが。
――と、丁度その時、討伐士組合の扉を開いてバルディ達が入ってきた。バルディ達はアスト達と共にいるマーマデュークを見て、頷いてからアスト達のところへとやってきた。
「ふむ……。揃うべき者は揃っているな」
「バルディさん」
バルディの言葉にアストが反応する。
「何か話しがあるんですか?」
「ああ、これからのソーディアン大陸の未来に関わる話しがある」
「!」
アストの言葉に対するバルディの答えを聞いて、その場の皆が驚きの表情を浮かべる。
「大陸の未来って……。いきなりだね」
ジェラが笑いながらバルディを見る。
バルディは至って真面目な表情で答える。
「今からの発言は、まさしく大陸の未来を決める言葉だ、そうだな? フィリス……」
「ええ……」
バルディの後ろにいたフィリスが真剣な表情で前に出る。
「フィリスさん?」
アストのその言葉には反応せずに、静かにフィリスは語り出した。
「私は、今の大陸の様子を知るため、これからのボーファスの行くべき道を知るために旅をしてきました。そして、その中で多くの悲劇を見てきました。はっきり言って、これから起こるであろう災厄を回避するには、大陸の全人類が手を取り合う必要があります」
「災厄?」
リディアのその問いにフィリスは答えを返す。
「白の民の天帝継承者は、代々ある能力を受け継ぎます。それは遠隔未来視。私はそれで、ソーディアン大陸の滅びを見たのです」
「!!」
「だから、私はその回避法を探すべく、異邦人であるバルディを顧問として、大陸を旅していました」
ジェラがフィリスに言う。
「でも、全人類が手を取り合うって言っても。聖バリスの連中は……」
「ええ、たしかに彼らはあまりに手段が強引です。大陸に悲劇をまく役にしか立っていません。でも、彼らとも手を結ばないと、災厄は回避出来ない……」
「でも……」
リディアがそう呟く。フィリスはその呟きを聞いて頷いた。
「……そう以前までは思っていました」
「え?」
フィリスの言葉にアストが疑問符を飛ばす。
フィリスはそれに答えた。
「私の考えは間違いでした。それが今回の一件で分かりました。聖バリス教会のやっている実験こそが、ソーディアン大陸を破滅に導く災厄の前兆だと理解できました。だから、私はこの場で、天帝フィリガナムの名において宣言します」
フィリスは――天帝フィリガナムは、一瞬考えてから宣言したのである。
「我がボーファス帝国は、聖バリス教会圏諸国を正すために、かの国々に向かって宣戦布告をする!」
それを聞いた、その場にいる全ての人は、驚愕の表情を浮かべた。
◆◇◆
大陸歴990年7月の初め――。
ついに、南東の群狼、ボーファス帝国が動いた。
ボーファス帝国十二狼軍は、集結しジグラバットの大防壁へと進軍した。聖バリス教会圏諸国は、その大軍勢に対抗する為に、統一使徒軍を再編成するしかなくなった。
こうして、カディルナ中部地方に侵攻していた軍勢は一時撤退するしかなくなり、彼らに占領されていたハーヴィスは解放されたのである。
今までにない大戦争が始まろうとしていた。
月が7月に変わったばかりのこの日、アスト達はデルバートに滞在していた。
先のラギルスとの最後の戦いからすでに数日が過ぎていたが、アスト達は討伐士組合で何をするでもなく、今日もただ集まって黙って食事をするだけであった。
「ふう……」
また、リディアが溜め息をつく。これで今日何十回目であろうか。それに反応するように、アストも溜め息をついた。
「あのさ……」
不意にリックルがアスト達に声をかける。
「暗い……暗いよ……。もう少し、何とかしないとダメになるよ」
「……そうだな」
リックルの言葉にアストが同意する。
「このまま、溜め息ばかりついて、無為に過ごすのは良くない。何より、俺達にはやるべき仕事があるはずだ」
「それは、そうだけど……」
リディアが暗い顔でアストを見つめる。
「なにか、やる気も何も消え失せたように、何をする気も起きないよ」
「リディア」
リディアの言葉はもっともだ、この間まで楽しく喋っていたラギルスが死んだのだ。そのショックは、アスト達の心を思いの外深く傷つけていた。それでもアストは、なんとか気分を奮い起こす。こんな姿をラギルスに見られたら、彼はどれだけ嘆くか想像できた。
「リディア……立て……。ラギルスに叱られるぞ?」
「その通りだよ……」
不意に誰かから声をかけられる。
「ジェラさん?!」
リディアが声の主を見て叫ぶ。
ジェラは微笑みをたたえてそこに立っていた。
「もういいんですか?」
アストがジェラに問いかける。
ジェラはアーロニー村でラギルスを弔い、この街に帰った直後から、塞ぎ込んで部屋から一歩も出てこなかったのだ。皆が心配するのは当然であった。
「もう、大丈夫さ。あたしにはラギルスとの赤ちゃんがいるんだ。嘆くばかりじゃ、赤ちゃんを守れやしないからね」
「ジェラさん」
ジェラの瞳には、強い意志が宿っている。
つい先程まで、部屋にこもって泣くばかりだったジェラを見ていたリディアは、驚きの表情でジェラを見た。アストは心の中で思う。
(そうか……。まさしく母は強しだな……。嘆くばかりじゃダメだと、彼女が一番理解しているんだ)
そのジェラの姿は、その場にいる誰よりも強く見えた。
「どうやら、心配ないようですね」
不意に、アスト達に声をかける者がいた。
「マーマデューク!」
ジェラがその声の主の名を叫ぶ。
「はい……、大事な相棒の死に目にもあえず。このような遅い到着で申し訳ないです」
そう言って、申し訳なさそうに頭を下げるのはマーマデュークであった。
「私が居れば、ラギルスを逃がすぐらいはできたはず…….」
「マーマデューク……」
「……」
「怒るよ?」
ジェラがマーマデュークの言葉を遮る。マーマデュークは素直に謝る。
「そうですね……。ラギルスの死は誰のせいでもない。彼はやるべきことを、自らの意思で決めて、そして旅立ったのでしょう」
「そうだ……。最後まで無茶な馬鹿野郎だったよ」
ジェラがそう言って笑い、マーマデュークもそれにつられるように笑った。
「しかし、マーマデューク。お前どうしてここにいるんだ?」
ジェラがマーマデュークに問う。
マーマデュークは真面目な表情になって、ジェラに答えた。
「ええ、じつはここに貴方達と一緒に滞在している、バルディというかたに呼ばれまして……、何やら大切な話があるとか……」
「バルディさんに?」
アストがマーマデュークに向けて疑問符を飛ばす。
そう、バルディとフィリスもまた、アスト達と一緒にデルバートに滞在していた。その彼らは、今日はまだ討伐士組合に顔を出していないが。
――と、丁度その時、討伐士組合の扉を開いてバルディ達が入ってきた。バルディ達はアスト達と共にいるマーマデュークを見て、頷いてからアスト達のところへとやってきた。
「ふむ……。揃うべき者は揃っているな」
「バルディさん」
バルディの言葉にアストが反応する。
「何か話しがあるんですか?」
「ああ、これからのソーディアン大陸の未来に関わる話しがある」
「!」
アストの言葉に対するバルディの答えを聞いて、その場の皆が驚きの表情を浮かべる。
「大陸の未来って……。いきなりだね」
ジェラが笑いながらバルディを見る。
バルディは至って真面目な表情で答える。
「今からの発言は、まさしく大陸の未来を決める言葉だ、そうだな? フィリス……」
「ええ……」
バルディの後ろにいたフィリスが真剣な表情で前に出る。
「フィリスさん?」
アストのその言葉には反応せずに、静かにフィリスは語り出した。
「私は、今の大陸の様子を知るため、これからのボーファスの行くべき道を知るために旅をしてきました。そして、その中で多くの悲劇を見てきました。はっきり言って、これから起こるであろう災厄を回避するには、大陸の全人類が手を取り合う必要があります」
「災厄?」
リディアのその問いにフィリスは答えを返す。
「白の民の天帝継承者は、代々ある能力を受け継ぎます。それは遠隔未来視。私はそれで、ソーディアン大陸の滅びを見たのです」
「!!」
「だから、私はその回避法を探すべく、異邦人であるバルディを顧問として、大陸を旅していました」
ジェラがフィリスに言う。
「でも、全人類が手を取り合うって言っても。聖バリスの連中は……」
「ええ、たしかに彼らはあまりに手段が強引です。大陸に悲劇をまく役にしか立っていません。でも、彼らとも手を結ばないと、災厄は回避出来ない……」
「でも……」
リディアがそう呟く。フィリスはその呟きを聞いて頷いた。
「……そう以前までは思っていました」
「え?」
フィリスの言葉にアストが疑問符を飛ばす。
フィリスはそれに答えた。
「私の考えは間違いでした。それが今回の一件で分かりました。聖バリス教会のやっている実験こそが、ソーディアン大陸を破滅に導く災厄の前兆だと理解できました。だから、私はこの場で、天帝フィリガナムの名において宣言します」
フィリスは――天帝フィリガナムは、一瞬考えてから宣言したのである。
「我がボーファス帝国は、聖バリス教会圏諸国を正すために、かの国々に向かって宣戦布告をする!」
それを聞いた、その場にいる全ての人は、驚愕の表情を浮かべた。
◆◇◆
大陸歴990年7月の初め――。
ついに、南東の群狼、ボーファス帝国が動いた。
ボーファス帝国十二狼軍は、集結しジグラバットの大防壁へと進軍した。聖バリス教会圏諸国は、その大軍勢に対抗する為に、統一使徒軍を再編成するしかなくなった。
こうして、カディルナ中部地方に侵攻していた軍勢は一時撤退するしかなくなり、彼らに占領されていたハーヴィスは解放されたのである。
今までにない大戦争が始まろうとしていた。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる