隠遁勇者の魔界再生~英雄譚のその先で……~

武無由乃

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ヴァンドレイク王国編

第九話 旅の剣士は無双する

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 その時、俺は最早数を数えるのも億劫なほどの魔物に囲まれていた。

???「おーい――、カーネル? そのまま動くんじゃないぞ?」
カーネル「たすけてたすけてたすけて……」
???「うむ……、少々心配な部分はあるが、勝手に動くことはないな!」

 俺は、膝を抱えてうずくまり、震えるだけのカーネルを見て苦笑いしながらそう言った。
 周囲の魔物達――、人と獣が合成されたような狼種獣人の、そのうちのリーダー格らしき巨体の一人が俺に向かって言葉を発する。

魔物指揮官「がははは……、貴様が、かの戦鬼将軍を退けたと噂の旅の戦士ロー・デューマンであるな?!」
ロー「む……、まさか、そっち方面の仕返しで来たのかな?!」
魔物指揮官「そのとおりである!! 我は魔王軍配下、戦鬼将軍直轄――、戦闘魔物戦隊は【黒衣牙狼隊】である!!」
ロー「ほう……、あのおっさんの――」

 その俺の言葉に、魔物は怒り顔で答える。

魔物指揮官「貴様!! ガルンテル閣下をおっさんなどと呼ぶな!! 不敬であるぞ!!」
ロー「あのおっさん……、ガルンテルっていう名前なのな――」
魔物指揮官「あ……」
ロー「教えてくれてありがとう。ついでと言ってはなんだが――」

 そこまで言いかける俺に向かって、魔物たちは問答無用とばかりに襲いかかってくる。俺は背中に合計5本装備している幅広両刃長剣――、いわゆるブロードソードの1本を手にして中段に構え、身を低くして魔物の集団を迎撃した。

ロー「魔物と、魔族って、どこがどう違うんだ?」
配下の魔物たち「が……?!」

 魔物たちが俺に群がってきた瞬間、おれは小さく呟きつつその手の長剣を不可視神速にて振るう。その瞬間、群がる魔物たちの大半がその身に大きな斬撃跡を得て、血を吐きながらその場に倒れていった。

魔物指揮官「く……、太刀筋が見えぬ――だと?!」
ロー「申し訳ないが、俺は明確に命を狙って来る相手に、理由もナシに慈悲を向けることはないぞ? まあこの数相手でさらに友人を守らなきゃいけないから、そのヒマがないって話だが。……それとさっきの質問の答は?」
魔物指揮官「貴様に語る言葉などない!!」
ロー「むう……、やっぱり?」

 魔物たちは死を恐れる様子もなく、俺に向かって襲いかかって来る。俺は背後のカーネルの無事を確認しつつ、その手の長剣を縦横無尽に振るい続けた。
 しばらくそうしていると、その魔物指揮官の表情が明確に青ざめ始める、まさに無数にいた配下たちの七割あまりが、すでに地面に倒れ伏していたのだ。
 俺は神速で振るい続けて、すでにボロボロになってほぼ自壊した状態のブロードソードを投げ捨てる。そのまま、残り4本のうちの一本を手に構え直して言った。

ロー「教えてくれないだろうが……、君たち一体何人いるの? 疲れてきたし……、もうそろそろ撤退しない?」
魔物指揮官「く! 貴様ら!! 相手の疲労は濃いぞ!! 一気に制圧せよ!!」
ロー「む……、不味いこと言ったかな?」

 俺は苦笑いしながら、その腰の裏に8本準備された投擲ナイフを左手で握って引き抜いて、一瞬の深い深呼吸の後に俺の【至上固有特性エルダースキル】を乗せたうえで投擲した。

 ――【至上固有特性エルダースキル:神域剣技】。

 その投擲ナイフは自壊しつつ、光線のような軌跡を残し衝撃波を纏いながら空を疾走る。
 その衝撃波が魔物たちの集団を跳ね飛ばし、生えている木々すら吹き飛ばして太い一本の道を作った。
 その光景を茫然とした様子で眺める魔物たち。――俺は静かになるべく感情を込めずに言った。

ロー「お前達はそのガルンテル閣下に言われて俺を襲っているのか? ならば……、そいつは結局俺のことを見くびっていたってことだな? お前たちじゃただ全滅して無駄死にするだけだと理解しろ……」
魔物指揮官「ぐ……」
ロー「あと、人類圏にこうして集団でいる魔物を見た以上――、これから傷つく人々を減らすためにも、お前らの事を見逃すわけにはいかないんだ。だから――、もしここから生き延びられたら、こんな俺と戦い死ぬ可能性があることを正しく理解して、そのまま魔王軍に帰らずに――、どっかに隠れて余生を平和に過ごせ。それが出来ないならば……」

 俺は静かに魔物たちを睨んで、静かな声で呟く。

ロー「それでも戦うと言う者に対しては、俺は慈悲も容赦もない――」
魔物指揮官(これは我らが勝手に行っていること……、ガルンテル閣下の命令ではない……が)
魔物指揮官「我らは誇りにかけて退くわけにはいかん!!」
ロー「そうか……、ならばその誇りに対して、俺は最大の敬意と――、慈悲なき死をもって応えよう」

 魔王軍が、その軍勢をもってヴァンドレイク王国への本格的侵攻を開始して数カ月後――。
 ――この日、戦鬼将軍直轄――、戦闘魔物戦隊の一個中隊、総勢132名がたった一人の旅の剣士によって全滅した。


◆◇◆


●ロー・デューマン/年齢:不明/性別:男性
★クラス:勇者Lv57
★能力値:
【腕力/STR】才能値:4.5/基本能力値:28/最終能力値:406
【器用さ/DEX】才能値:4/基本能力値:23/最終能力値:359
【素早さ/AGI】才能値:4.8/基本能力値:29/最終能力値:432
【魔力/MAG】才能値:5.5/基本能力値:32/最終能力値:494
【知恵/INT】才能値:4.3/基本能力値:26/最終能力値:387
【精神/WIL】才能値:5.2/基本能力値:31/最終能力値:467
【耐久/CON】才能値:5.2/基本能力値:34/最終能力値:470
★クラススキル:意志剛体(意志が折れない限り高い各種防御耐性を得る)、神域剣技(短命である人類では到達不能な刀剣戦闘が可能)、神の目・偽(魔法を見抜いて解体・無力化できる。実体のない霊体系魔物に通常武器でダメージを与えられる)
★パーソナルスキル(個人技術):独自剣術(父親オリジナル)、看破一閃(現状の必殺技。魔法や幽体など本来攻撃出来ない対象を破砕する。使用後武器が破損する)
★装備:両刃長剣(ブロードソード。市販されている軽量安価片手剣。神域剣技や看破一閃を使用すると壊れる)5本、補助短剣(投擲ナイフ。市販されている軽量安価短剣。神域剣技や看破一閃を使用すると壊れる)8本、普通の衣服(自前の肉体のものに比べて、一般的な防具の防御力がかなり低いため、基本的に防具は着ない)
★解説:
 主人公。モブ顔の旅の戦士。いまだ勇者の称号を持っていない時代の勇者。――クラス自体は勇者なのだが。
 根っからの楽天家にして、常に前向きな思考の熱血漢。明確な敵である魔物・魔族にすら優しい、ある意味で【聖人】。
 軽量安価な片手剣や短剣を無数に所持しているという、見た感じ異様に見える謎の戦士。魔王軍の脅威にさらされている場所に現れては、その国などに協力して魔王軍を退けている。
 全力を出せば一騎当千の実力を持つが、所持する武器が彼の能力に見合わずすぐ破損するため、完全な全力を出すことが出来ない。
 クラスが【勇者】である以上、世間に対し自分が勇者である事を公表すべきなのだが、今のところ様々な理由からその決心がついていないようである。

●カーネル・グリント/年齢:20歳/性別:男

★クラス:魔術師Lv19
★能力値:
【腕力/STR】才能値:1/基本能力値:5/最終能力値:14
【器用さ/DEX】才能値:2/基本能力値:12/最終能力値:37
【素早さ/AGI】才能値:1.5/基本能力値:10/最終能力値:28
【魔力/MAG】才能値:2.7/基本能力値:17/最終能力値:80
【知恵/INT】才能値:3/基本能力値:20/最終能力値:90
【精神/WIL】才能値:2.2/基本能力値:14/最終能力値:65
【耐久/CON】才能値:1.8/基本能力値:13/最終能力値:35
★クラススキル:上限解放(全魔法)
★パーソナルスキル(個人技術):知識魔法(そこそこ高度なものまで)、戦術魔法(護身的なもののみ)
★装備:魔術師の杖(魔法補助具)、魔糸の外套(魔力を込めた糸によって編まれている一般的な防御服)、各種魔術具
★解説:
 一年前に勇者に救われてのち魔術学院で一度別れ、再びヴァンドレイク王国へとやってきた勇者への道案内を買って出たヘタレ魔術師。
 クラスLvや能力値の違いを見てわかるが、本当の意味でただの道案内役である。とりあえず、今の彼を、勇者が立ち向かうレベルの敵に対する戦力にカウントしてはならない。
 戦闘以外では役に立つかもしれんがそこまでである。
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