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Chapter 0
Section 9: 迅龍浮上す
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ケミカルライトの光に照らされ、艦橋の各機器が目前に顕になる。そこは統合戦闘指揮所――、要は航宙艦【迅龍】のブリッジである。
室内長5m、室内幅4m、という広さのブリッジは一見すると狭くも見える。そして、そのブリッジの後部に鎮座している【球体】こそが、この航宙艦の統合管理をする【管理殻(Admin Shell)】なのである。
管理殻とは、【管理体】が航宙艦を始めとする施設を管理するために入る統合管理区画のことである。
主に球型と棺型の二種類があり、小型艦は棺型である場合が多く、しかしながらゆったり座れる球型の方が人気である。
どちらも専用の宇宙服を身に着け、大型のインターフェイスヘッドセットを装着し、口にリキッド及び水注入用のチューブをセットする。
宇宙服は俗に言うぴっちりスーツではなく、野暮ったい現代の宇宙服によく似た外見をしている。
これはその服自体が、最大数ヶ月そのまま管理核内から出ずに生活できるようにと、生命維持装置としての各種機能を付与されているからである。
無論、トイレや風呂などの機能(各種身体洗浄機能)も付加されており、管理体が清潔に暮らせる程度の豪華な機能を持った宇宙服である。
一度、更衣室へと向かって、真新しい管理体用宇宙服を身に着けたティアナは、現在は天井に位置している【管理殻】の入口を開いてその中へと入っていった。
しばらくすると電子音が響いて艦内放送が流れた。
【主機及び補機の各機能に異常なし――、リアクター起動、各セクションへの電力供給開始。次元ジャイロ姿勢安定システムの起動を確認、バランサーの補正開始。ブリッジ内の要員は室内の手すりなどに捕まって自身の身を固定してください。今からブリッジの重力方向を変更致します】
ジオ達はその言葉を聞いて、近くの手すり等を掴んで重力変更を待った。
――次の瞬間、室内の重力が反転して、今まで天井であった場所が床として自身の肉体に認識される。
「よし――、要員は各座席に座れ」
エリオットの言葉に、アラン、ドミニク、ジェレミア、そしてロバートが各座席へと向かった。
「俺達はどうする?」
ジオがそう言うと、エリオットは少しため息をついて言った。
「ミィナは通信士としてオペレーター席へ、ジオ……お前は――、最後部の司令席にでもついてろ」
「む……了解」
その言葉に、ジオとミィナもそれぞれの席へと向かった。
艦長席へとついたロバートは、一息ため息を付くと、その場の皆に向かって声をかけた。
「これより本艦は――、惑星クランの大気圏……、宇宙空間へと脱出後――、ヴェロニア艦隊の包囲を抜けて、一路――、惑星グシオンへと向かう」
そのロバートの言葉にブリッジ内の全員が頷いた。
――ジオは言う。
「惑星グシオンは、ここから最も近いアンネリース海賊団の領域惑星だ、さすがのヴェロニアもアンネリースと事を構えることはしないはず」
「そうだといいが……」
ジオの言葉にエリオットが苦笑いしながらそう呟いた。
「……まあ、とにかく。一度俺達の安全を確保することが重要だから……、日程では約三日の旅になるな」
「それには……、まずはこのひっくり返った艦をもとに戻さなければならんが……」
ジオの言葉にロバートが続ける。それを聞いてエリオットが頷いた。
「まあ……なんとかなるさ。ドミニク……、とりあえず俺の操艦に合わせて、機関出力の調整を頼む」
「わかった……、指示をくれ」
エリオットの言葉にドミニクが笑って答える。
【では……、各オペレーターは各機能のシステム確認をお願いします】
艦内にティアナの声が響く。それに反応するように各席から声が響いた。
「索敵士――、各種センサーオールグリーン。スッキリくっきり見えてるよ」
「砲術士――、各砲門に異常見られず。いつでもいける」
「機関士――、機関の出力状況異常なし」
「航法士――、各機器に異常なし。いつでも飛ばせるぜ」
その言葉を聞いたロバートは、一つ頷くとブリッジ全体に響く声で号令を発した。
「迅龍――、浮上開始! 船体を安定化せよ!!」
「機関出力、低で安定! 重力場展開、浮力の発生を確認!!」
「おし――、船体起こし!! 始めるぞ!!」
ゆっくりと浮上を始める【迅龍】は、一定の高さまで上昇すると、縦坑道側面を掠ることなくその状態を上下逆に反転させてゆく。
それはまさに神業であり、エリオットの操艦技術の高さの証明だと思えた。
「よし! すげえぜおっさん!!」
「おっさんじゃねえ! エリオットだ!!」
エリオットは笑いながら操縦桿を微妙に動かし、【迅龍】を平行に安定させてゆく。
そして――、
【船体安定を確認――、ご苦労さまですエリオットさん】
そのティアナの言葉にエリオットは笑って手を上げた。それを聞いたロバートは次の命令を下す。
「迅龍、急速浮上――、艦首を空へ! 大気圏離脱開始!!」
「aye aye sir!!」
ブリッジに声が響き――、そして迅龍は艦首を空へと向けた。そして、次の瞬間、艦尾スラスターがまばゆく発光する。
ゴゴゴ……!!
その空間に低音を響かせながら迅龍は空を目指して動き始める。それは、縦坑道を抜けた瞬間に、さらに加速を始めてそのまま大気圏の外を目指した。
「みんな――、準備はいいな? 宇宙空間に出た瞬間に、ヴェロニア艦隊との交戦が予測される」
そのロバートの言葉にブリッジの全員が真剣な表情で頷いた。
――かくして、ジオ達の旅の始まりは告げられ、越えるべき初めての試練が立ちはだかったのである。
◇◆◇
「惑星クランより航宙艦が浮上してきます!」
「……」
「航宙艦の大気圏突破まで約5分ほどだと思われ」
そのオペレーターの言葉にヴェロニアは黙って手を挙げる。それを見た【アガルタ】艦長が命令を下す。
「各艦は先程の指示通りコンバット・ボックスを形成して前進! 浮上してくる航宙艦を航行不能にした後に拿捕する!!」
その命令が各艦に伝達されて一斉に動き始める。
ヴェロニア率いる艦隊は――、
【Lemuria級戦列砲艦四隻】【Canaan級高速砲艦三隻】【120m級突撃艦二隻】、そして旗艦に【Agartha級高速砲艦】という陣容であり、ジオたちにとってはあまりにも突破が困難な試練であった。
――果たして、この包囲網を突破できるのか?!
室内長5m、室内幅4m、という広さのブリッジは一見すると狭くも見える。そして、そのブリッジの後部に鎮座している【球体】こそが、この航宙艦の統合管理をする【管理殻(Admin Shell)】なのである。
管理殻とは、【管理体】が航宙艦を始めとする施設を管理するために入る統合管理区画のことである。
主に球型と棺型の二種類があり、小型艦は棺型である場合が多く、しかしながらゆったり座れる球型の方が人気である。
どちらも専用の宇宙服を身に着け、大型のインターフェイスヘッドセットを装着し、口にリキッド及び水注入用のチューブをセットする。
宇宙服は俗に言うぴっちりスーツではなく、野暮ったい現代の宇宙服によく似た外見をしている。
これはその服自体が、最大数ヶ月そのまま管理核内から出ずに生活できるようにと、生命維持装置としての各種機能を付与されているからである。
無論、トイレや風呂などの機能(各種身体洗浄機能)も付加されており、管理体が清潔に暮らせる程度の豪華な機能を持った宇宙服である。
一度、更衣室へと向かって、真新しい管理体用宇宙服を身に着けたティアナは、現在は天井に位置している【管理殻】の入口を開いてその中へと入っていった。
しばらくすると電子音が響いて艦内放送が流れた。
【主機及び補機の各機能に異常なし――、リアクター起動、各セクションへの電力供給開始。次元ジャイロ姿勢安定システムの起動を確認、バランサーの補正開始。ブリッジ内の要員は室内の手すりなどに捕まって自身の身を固定してください。今からブリッジの重力方向を変更致します】
ジオ達はその言葉を聞いて、近くの手すり等を掴んで重力変更を待った。
――次の瞬間、室内の重力が反転して、今まで天井であった場所が床として自身の肉体に認識される。
「よし――、要員は各座席に座れ」
エリオットの言葉に、アラン、ドミニク、ジェレミア、そしてロバートが各座席へと向かった。
「俺達はどうする?」
ジオがそう言うと、エリオットは少しため息をついて言った。
「ミィナは通信士としてオペレーター席へ、ジオ……お前は――、最後部の司令席にでもついてろ」
「む……了解」
その言葉に、ジオとミィナもそれぞれの席へと向かった。
艦長席へとついたロバートは、一息ため息を付くと、その場の皆に向かって声をかけた。
「これより本艦は――、惑星クランの大気圏……、宇宙空間へと脱出後――、ヴェロニア艦隊の包囲を抜けて、一路――、惑星グシオンへと向かう」
そのロバートの言葉にブリッジ内の全員が頷いた。
――ジオは言う。
「惑星グシオンは、ここから最も近いアンネリース海賊団の領域惑星だ、さすがのヴェロニアもアンネリースと事を構えることはしないはず」
「そうだといいが……」
ジオの言葉にエリオットが苦笑いしながらそう呟いた。
「……まあ、とにかく。一度俺達の安全を確保することが重要だから……、日程では約三日の旅になるな」
「それには……、まずはこのひっくり返った艦をもとに戻さなければならんが……」
ジオの言葉にロバートが続ける。それを聞いてエリオットが頷いた。
「まあ……なんとかなるさ。ドミニク……、とりあえず俺の操艦に合わせて、機関出力の調整を頼む」
「わかった……、指示をくれ」
エリオットの言葉にドミニクが笑って答える。
【では……、各オペレーターは各機能のシステム確認をお願いします】
艦内にティアナの声が響く。それに反応するように各席から声が響いた。
「索敵士――、各種センサーオールグリーン。スッキリくっきり見えてるよ」
「砲術士――、各砲門に異常見られず。いつでもいける」
「機関士――、機関の出力状況異常なし」
「航法士――、各機器に異常なし。いつでも飛ばせるぜ」
その言葉を聞いたロバートは、一つ頷くとブリッジ全体に響く声で号令を発した。
「迅龍――、浮上開始! 船体を安定化せよ!!」
「機関出力、低で安定! 重力場展開、浮力の発生を確認!!」
「おし――、船体起こし!! 始めるぞ!!」
ゆっくりと浮上を始める【迅龍】は、一定の高さまで上昇すると、縦坑道側面を掠ることなくその状態を上下逆に反転させてゆく。
それはまさに神業であり、エリオットの操艦技術の高さの証明だと思えた。
「よし! すげえぜおっさん!!」
「おっさんじゃねえ! エリオットだ!!」
エリオットは笑いながら操縦桿を微妙に動かし、【迅龍】を平行に安定させてゆく。
そして――、
【船体安定を確認――、ご苦労さまですエリオットさん】
そのティアナの言葉にエリオットは笑って手を上げた。それを聞いたロバートは次の命令を下す。
「迅龍、急速浮上――、艦首を空へ! 大気圏離脱開始!!」
「aye aye sir!!」
ブリッジに声が響き――、そして迅龍は艦首を空へと向けた。そして、次の瞬間、艦尾スラスターがまばゆく発光する。
ゴゴゴ……!!
その空間に低音を響かせながら迅龍は空を目指して動き始める。それは、縦坑道を抜けた瞬間に、さらに加速を始めてそのまま大気圏の外を目指した。
「みんな――、準備はいいな? 宇宙空間に出た瞬間に、ヴェロニア艦隊との交戦が予測される」
そのロバートの言葉にブリッジの全員が真剣な表情で頷いた。
――かくして、ジオ達の旅の始まりは告げられ、越えるべき初めての試練が立ちはだかったのである。
◇◆◇
「惑星クランより航宙艦が浮上してきます!」
「……」
「航宙艦の大気圏突破まで約5分ほどだと思われ」
そのオペレーターの言葉にヴェロニアは黙って手を挙げる。それを見た【アガルタ】艦長が命令を下す。
「各艦は先程の指示通りコンバット・ボックスを形成して前進! 浮上してくる航宙艦を航行不能にした後に拿捕する!!」
その命令が各艦に伝達されて一斉に動き始める。
ヴェロニア率いる艦隊は――、
【Lemuria級戦列砲艦四隻】【Canaan級高速砲艦三隻】【120m級突撃艦二隻】、そして旗艦に【Agartha級高速砲艦】という陣容であり、ジオたちにとってはあまりにも突破が困難な試練であった。
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