動物好きだとは言いましたが、犬に転生させろとは言ってません! ~チートフェンリルさんによる101匹ワンワン領地運営&軍団形成~

白石新

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群れのボスは私だ! と、仕方ないのでざまあします。

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 その日の夜。

 私はクロ君に寝込みを襲われた。
 危険察知スキルのおかげで噛み付かれる前に起きることはできた。
 けど、完全に相手に間合いに入ってしまってる。まあ、所詮はレベル1のスキルってことだろう。

 で、現状はこっちは丸まって寝てる状態で――相手との距離差は目と鼻の先。
 もしも、こちらが立ち上がる素ぶりを見せた途端、向こうは瞬く間に飛びついてきてマウントポジションを取ってくるだろう。

 で、この場合はやっぱり下になったほうが圧倒的に不利なんだよね……はてさて、どうするか。
 けど、危険察知系のスキルってどうやったらレベル上がるのかな?
 これが、レベル2とか3だったら恐らくはこうなる前に危険を察知できたんだろうけどさ……。

【熟練度が一定に達しました。スキル:危険察知Lv1のレベルが上がります】

【熟練度が一定に達しました。スキル:空間索敵Lv1のレベルが上がります】

 いや、遅いから。

 まあ、ともかく危険な状態になったら熟練度上がるんだろね。

 とか、そんなことを考えているとクロ君が念話で勝ち誇ったようにこんな感じのことを伝えてきた。


 ――目には目、歯には歯……汚い真似には汚い真似で返させてもらうぜ!


 あー、そうなっちゃったか……。
 
 結局は、さっきのアレも不思議な力での不意打ちってことになってるんだろうね。

 普通は、あれだけの一方的な展開を見せつけられた二度と歯向かわないと思うんだけど……。

 脳筋というかなんというか……まあ、この辺りは狼の悲しさなんだろう。
 で、クロ君は私を睨みつけながらこう言ってきたんだ。


 ――群れのボスは俺だ!


 いや、だからそれはお譲りしますって言ったじゃん。

 と、そこでクロ君がこちらに飛びかかってきて、馬乗りになって私の首筋に向けて噛み付いてきた。

 ああ……もう仕方ないね。
 私としては最大限に穏便に済ます努力はしたんだけどな……。

 言っても聞かない分からない。
 なら、どうするか?


 ――徹底的にわからせるしかないでしょ!


 クロ君の噛み付きで、首筋に激痛が走る。

 けど、やられる直前に身を捻って頸動脈は外してる。さすがに急所にモロに食らったら不味いかんね。

 で――。
 急所への一撃を外したこの時点で、私の勝ちは確定した。

 そう、私と君じゃあ基本の性能差が違うんだよクロ君。

 魔狼以外のスキルも使わないし、人間としての知恵も使わない。

 ただ、魔狼として、攻撃を受けて……今から君を純粋な力でねじ伏せちゃうよ?

 当然ながら、敵になるかもしれないクロ君のステータスは既に調査済み。

 せいぜいが君の攻撃力は25程度で、私は30を超えている。

 そして、君のHPは30程度で、私は60近くて……ほぼ2倍だ。


 ――土台、私は君が勝てる相手じゃないんだよ。


 もつれあいながら、私たちはゴロゴロと転がる。

 そうして純粋なパワーの違いから今度は私が馬乗りになったけれど、首筋は狙わない。

 急所を狙うなんてことをすれば、この子はきっとまた調子に乗る。

≪たまたま上手く、偶然にも急所に一撃を決めることができた≫

 そんな都合の良い解釈なんて、入り込む余地がないように――今度は徹底的に叩きのめす。

 背中の肉をガブリと一口。

「キャインっ!」

 悲鳴には取り合わず、そのまま上半身を起こして相手を持ち上げ、噛み付いたまま宙に浮かせて――


 ――振り回す


 ブオンブオンと風切り音と共に、ヘヴィメタルのヘッドバンキングよりも更に激しく首を振る。

「キャ、キャ、クフーーーンっ!!!!」

 2回、3回、4回、5回。

 振り回すごとに牙が食い込み、クロ君は悲鳴をあげ続ける。

 そして、私はそのまま上に向けてクロ君を放り投げた。

 円弧を描いてドサリと落ちて、駆け寄る私は更に追撃を仕掛ける。

「キャインっ!」

 右前足の太い部分を一噛み、そして再度の――


 ――ヘッドバンキング


 ブオンブオンと風切り音と共に、2回、3回、4回、5回と振り回して放り投げる。

「キャインっ! キャインっ! キャインっ! キャインっ!」

 再度落下したところで、今度はクロ君の首の後ろに噛みついた。
 うん、この位置なら大きな血管とかはないだろう。とりあえず、死にはしない。

「ク、ク、クゥーーーン……」

 ま、まさか、またやるつもりですか?

 そんな感じの情けない鳴き声だった。

 で、私としては――


 ――当然、またやるつもりです。


 ってことで、さあ、食らえ! これが本日最後の――


 ――ヘッドバンキング!


 今度は念入りに10回ほど頭を振ったところで放り投げたわけだ。

 そして、ゆっくりとクロ君に私が歩いていったところで、クロ君は怯えの表情と共に光速でこちらにお腹を見せてきた。


 ――服従のポーズ


 本能で分かる。
 狼の中で、そのポーズが何を意味するのか、そしてどれほどの覚悟と共にそのポーズを取ったのか。

 戦いの最中に相手にお腹を見せるとは、つまりは内臓を相手にさらけ出すに等しい。

 煮るなり焼くなり好きにしろ……事実として無条件降伏という意味を持つポーズなのだ。


 私はそこで足を止めて、無言のままで……軽く溜息をついた。

 そして、寝床としているお気に入りのワラ敷きのスペースへと戻っていったのだった。




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