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高校生編
第28話 相談
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「実はこの前、学生時代の友達と遊びに行った時のことなんだけど……」
こう言って朋花はあの日のことを瞳に説明し始めた。
いつもは瞳の悩み事を朋花が聞くが、今日は瞳が聞き役である。
事情を話す朋花の言葉に瞳は耳を傾けていた。
「……それでどうにも告白されたようなんだけど、傷付けずに断る返事が思い付かなくて悩んでいたの。心配を掛けてごめんね」
少し元気の無い声で話し終えた朋花に対して瞳が返事をする。
「そういうことだったんだね。話してくれてありがとう。それでお母さんは何で断るの?その人のことは好きじゃないの?」
「いや、嫌いじゃないし、どちらかと言えば好きな方なんだけどね……。うーん、やっぱり今は瞳と過ごす時間の方が大事だし、他事を考える余裕が無いから恋愛は出来ないかな」
ストレートな瞳の質問に戸惑いながらも、朋花は今は佐藤と付き合えない理由を述べた。
それを聞いて自分が原因の1つになっていると思った瞳はそれを取り除こうと説得する。
「私のことは気にしないで。お母さんも自分の幸せを考えてよ。いつか私がこの家を出た後が心配になる」
「うーん、そうなんだけどね……」
そう真顔で瞳に言われるが、朋花の返事は歯切れが悪い。
もう瞳が子どもじゃないのは分かっている。
でも、心のどこかで親である自分が遊ぶのは瞳が可哀想って勝手に思ってしまうのよね。
そんな朋花に対して瞳は新たな提案をした。
「それなら今の気持ちをそのまま話せばいいんじゃないの?」
「そのままってどの部分の事?」
瞳の真意が分からず、朋花は聞き返す。
その朋花の質問を受けて瞳は自分の考えを口にした。
「一方的に拒否したら相手の人はがっかりするだろうけど、お母さんが理由があって断ってるって分かればそんなに傷付けないと思うよ。それに本当に良い人ならお母さんの事情を話せば分かってくれると思う」
その瞳の意見を聞いて朋花は少し考え込む。
確かに佐藤くんは私が瞳を引き取って育てていることを知っているし、この前は苦労話で盛り上がったから悩みが尽きないことも分かってくれる気がする。
告白してくれた事を無下にするのは悪いと思って悩んでいたけど、佐藤くんなら正直に言えば受け入れてくれるかもしれない。
少しずつ朋花の頭の中の霧が晴れていくような感じがした。
どう告白の返事をするか考えが纏まった朋花は瞳に答えを伝える。
「私のために考えてくれてありがとう。瞳のおかげで道が開けたわ。瞳の言う通り、私の事情と気持ちを素直に伝えてみることにするわ。きっと佐藤くんなら分かってくれると思う」
「お母さんの力になれてよかった。さっきよりも表情が晴れやかになっている気がする。私は土日に1人でも大丈夫だから、いつでもお友達と出掛けてきてね」
高校生の瞳に助けられる日が来るとは思ってもいなかった朋花は、瞳の成長に改めて感動していた。
その後は他愛の無い会話に戻り、朋花の表情もいつもの軽やかな顔付きになる。
そして数日後、朋花は佐藤にメールを送ろうとしていた。
この前は美味しいお店に連れていってくれてありがとう。
今度は私のおすすめのお店を教えたいんだけど、ここはどうかな?
来週の土日のお昼で予定が空いている日があったら教えて下さい。
「よしっ、送信っと」
少し緊張しながら佐藤とメールのやり取りを行い、その結果、朋花は来週の土曜日に佐藤と会う約束に決まった。
こう言って朋花はあの日のことを瞳に説明し始めた。
いつもは瞳の悩み事を朋花が聞くが、今日は瞳が聞き役である。
事情を話す朋花の言葉に瞳は耳を傾けていた。
「……それでどうにも告白されたようなんだけど、傷付けずに断る返事が思い付かなくて悩んでいたの。心配を掛けてごめんね」
少し元気の無い声で話し終えた朋花に対して瞳が返事をする。
「そういうことだったんだね。話してくれてありがとう。それでお母さんは何で断るの?その人のことは好きじゃないの?」
「いや、嫌いじゃないし、どちらかと言えば好きな方なんだけどね……。うーん、やっぱり今は瞳と過ごす時間の方が大事だし、他事を考える余裕が無いから恋愛は出来ないかな」
ストレートな瞳の質問に戸惑いながらも、朋花は今は佐藤と付き合えない理由を述べた。
それを聞いて自分が原因の1つになっていると思った瞳はそれを取り除こうと説得する。
「私のことは気にしないで。お母さんも自分の幸せを考えてよ。いつか私がこの家を出た後が心配になる」
「うーん、そうなんだけどね……」
そう真顔で瞳に言われるが、朋花の返事は歯切れが悪い。
もう瞳が子どもじゃないのは分かっている。
でも、心のどこかで親である自分が遊ぶのは瞳が可哀想って勝手に思ってしまうのよね。
そんな朋花に対して瞳は新たな提案をした。
「それなら今の気持ちをそのまま話せばいいんじゃないの?」
「そのままってどの部分の事?」
瞳の真意が分からず、朋花は聞き返す。
その朋花の質問を受けて瞳は自分の考えを口にした。
「一方的に拒否したら相手の人はがっかりするだろうけど、お母さんが理由があって断ってるって分かればそんなに傷付けないと思うよ。それに本当に良い人ならお母さんの事情を話せば分かってくれると思う」
その瞳の意見を聞いて朋花は少し考え込む。
確かに佐藤くんは私が瞳を引き取って育てていることを知っているし、この前は苦労話で盛り上がったから悩みが尽きないことも分かってくれる気がする。
告白してくれた事を無下にするのは悪いと思って悩んでいたけど、佐藤くんなら正直に言えば受け入れてくれるかもしれない。
少しずつ朋花の頭の中の霧が晴れていくような感じがした。
どう告白の返事をするか考えが纏まった朋花は瞳に答えを伝える。
「私のために考えてくれてありがとう。瞳のおかげで道が開けたわ。瞳の言う通り、私の事情と気持ちを素直に伝えてみることにするわ。きっと佐藤くんなら分かってくれると思う」
「お母さんの力になれてよかった。さっきよりも表情が晴れやかになっている気がする。私は土日に1人でも大丈夫だから、いつでもお友達と出掛けてきてね」
高校生の瞳に助けられる日が来るとは思ってもいなかった朋花は、瞳の成長に改めて感動していた。
その後は他愛の無い会話に戻り、朋花の表情もいつもの軽やかな顔付きになる。
そして数日後、朋花は佐藤にメールを送ろうとしていた。
この前は美味しいお店に連れていってくれてありがとう。
今度は私のおすすめのお店を教えたいんだけど、ここはどうかな?
来週の土日のお昼で予定が空いている日があったら教えて下さい。
「よしっ、送信っと」
少し緊張しながら佐藤とメールのやり取りを行い、その結果、朋花は来週の土曜日に佐藤と会う約束に決まった。
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