コアラの歩み

三条 よもぎ

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番外編

宝物(瞳の誕生) 後編

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半年後、瞳はすくすくと成長し、瞳の成長を記録した写真もどんどん増えていった。
ある日曜日、梨花はデジカメを手に持って理人に話し掛ける。

「ねえ、瞳の写真が溜まってきたからそろそろ写真屋さんで印刷して貰おうかと思っているんだけど、来週の土曜日に一緒に行かない?」

瞳を抱っこしていた理人は梨花に話し掛けられたことに気付いて、瞳を抱いたまま梨花の方へ振り返った。
そして、梨花の言葉を聞いた理人は、それは名案だと閃いた表情で返事をする。

「おっ、いいね!ちょうど僕が撮った写真もいっぱいになってきたなと思っていたんだ。一緒に印刷して貰おう」

梨花が日々の様子をデジカメで撮るのと同様に、瞳を可愛がっている理人も自分の一眼レフカメラでよく瞳の写真を撮っていた。
その後、休日に写真屋を訪れた2人は撮り溜めた写真の中から厳選して注文したが、それでも半年で500枚以上となった。


写真を受け取った梨花は瞳がお昼寝をしている間に少しずつアルバム作りを進めていた。

理人くんもたくさん撮ってくれたから写真がいっぱいね。
半年前の瞳はこんなに小さかったのね。

写真を見返していると瞳の成長がよく分かり、梨花は懐かしい気持ちになっていた。
そして、コメントを書きながら梨花はその写真をアルバムに収めていく。
1ページ目は生まれたばかりの瞳の写真を入れ、その下に瞳の名前の由来を丁寧な字で書いた。

瞳が大きくなった時にこのアルバムを見てパパとママの愛情が伝わるといいな。
これからも元気に育ってね。

アルバムを作る梨花の心は温かい気持ちになっていた。
梨花が柔らかな笑みでアルバムに収められた写真を見ていると、瞳が目覚めたようで泣き声が聞こえてくる。

「あっ、起きたのね。おはよう。すぐに行くからちょっと待ってね」

アルバムを机の上に置くと梨花は立ち上がり、ベビーベッドに近付く。
そして、泣いている瞳を抱っこするとあやし始めた。


こうやって約1ヵ月間、毎日こつこつと梨花が作業を進めた結果、印刷した半年分の写真を全てアルバムに収めることが出来た。
梨花は完成したアルバムを持って理人に近付く。

「ねえ、理人くん。これを見て。じゃじゃーん!瞳のアルバムが完成したよ」
「おっ、素敵なアルバムだね。作ってくれてありがとう。見てもいい?」
「もちろん!はい、どうぞ」

梨花からアルバムを受け取った理人は1ページずつじっくりと見ていく。

「やっぱり梨花ちゃんはセンスが良いなあ。僕は写真を撮るのは好きだけど、こうやってアルバムにする技能は無いから助かるよ」
「理人くんが撮った写真は瞳が可愛く撮れているから、作っていて楽しかったよ。こちらこそいつも良い写真をいっぱい撮ってくれてありがとうね」

アルバムを見る2人は柔らかな笑みを浮かべている。
とある日の昼下がり、お昼寝をしている瞳の横で両親は心安らぐ時を過ごしていた。
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