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第21話 013 東北ユーラシア支部DMZ税関(2)
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「美雪は第一関門を突破しただけだ。おそらくこの認証は、トリプルDESをトラップにして、他暗号を多重実装している」
美雪から引き継いだ画面を見ながら、状況を絵麻に伝えた。
そのまま、ターミナルへとカーソルを合わせる。キーボードに手を置き、端末操作を始めた。
「公開鍵暗号と古典暗号の組み合わせのようね」
絵麻がアドバイスを送ってくる。
「ああ、そのようだな」
絵麻の意見も参考にしながら、ノートパソコンのキーボードを叩き続けた。
ターミナルのウインドウは上下合わせてすでに五つ立ち上げている。目の前にあった白い文字列が踊るようにそれぞれのターミナルの枠外へと消えていく。暗号をすべて複合したが、まだロック解除には時間がかかりそうだ。
「多重暗号化されているだけであればいいのだけれど」
「それは今考えても仕方がない。これはエニグマ暗号、と……よし、解読した」
エンターキーを押すと、文字列が上から雨のように流れてきた。
「おい、まだか?」
八神が俺たちに近づいてくるなり尋ねてきた。
その間も、アサルトライフルとコルトパイソンから弾を放ち続けている。
顔は平然としているが、このような催促をしてくるのは初めてだ。表情からは判別不能だが、おそらくかなり焦っているのだろう。
同種のうめき声が耳に届いた。それもかなりの人数のもの。久しく背後を確認していないが、大量の同種が近くまで寄ってきていることだけはわかった。
だが、もう少しで解読できる。
俺が八神にそう伝えようとした矢先、各ターミナルに異常が発生した。
アラート画面が大量に画面を埋め尽くしたのだ。
「あ、ああ……あれ? 三重パスワードロック、しかも150桁? さらにまた暗号と認証……これは――プログラムを組まなければ解読できない」
真ん中のターミナルに表示されたパスワード入力欄とその他のウインドウ内の黒い画面に流れ落ちる文字の数々を見て、そう解析した。
自分が分析した結果が自らの心に焦燥を生んだ。汗が額から滴り落ち、指がキーボードの上で滑り始める。視界が歪み、喉元から胃液が漏れそうになった。
同種たちの位置を確認するため、画面から目を切り離し、後ろを振り返った。
すでに同種たちは、DMZ敷地内へと到達している。
一日あれば間違いなくロック解除はできそうだが、現在そのような時間の余裕はまったくない。つまり、平常時のような方法を取っていては、到底間に合わないということだ。
「八神さん、もう少し待って。圭介、私も援軍に向かうわ」
隣にいた絵麻はすっとその場を立ち上がり、コルトパイソンを前方へと構える。
青みがかった左目をちらりと俺にやってから、八神たちのいる方へと向かっていった。
再びノートパソコンの画面に顔を向けた俺の耳を、コルトパイソンの銃撃音が貫いた。
C言語で一度プログラムを組んだが、うまくいきそうにもなかった。
急いでアセンブラからコードを組み直す。デバッグしてみると、バイナリのレベルまで落とす必要はなさそうだった。
次にエスケープボタンを押そうとした瞬間、同種の血と見られる液体が画面へと飛び散った。
もうこんなに近くまで、と思う暇もない。
ポケットの中からハンカチを取り出し画面を拭いた。その際、誤ってフラットポイントとそのボタンを誤操作してしまった。
まさか、やり直しか、と思ったが、幸い写真と資料のフォルダが開いただけで済んだ。
「なんだ、これ?」
たまたま表示されたプレビュー画面を目に入れた俺はそう自問した。
それらは宇宙船地球号についての写真と資料のように見えた。
こんなパソコンに入ってはいるが、その質感から何か重要なものであるように思える。だが、じっくり確認する余裕もないので、すぐにそのフォルダを閉じた。
プログラムの微修正を行いその後簡易データベースを作成する。
その簡易データベースの挿入、更新を試してから全データを消去し、もう一度エンターボタンを押した。
プログラムにより各ターミナルの情報がデータベースへ書き込まれ、もうひとつ別作成していたプログラムによって、中央のターミナルに加工されたデータが表示されていく。
その中央ターミナル内で高速にパスワードと認証のトライアンドエラーが繰り返され下部にその結果が表示され始めた。
それを見た俺は、パスワードの解読を確信した。
「開くぞ」
同種のうめき声と銃声が渦巻く中、俺は大声でそう叫んだ。
一呼吸の間もなく、堅く閉じられていたそのドアは音を立てて開いた。
その先の通路には同種の姿は見えなかった。
後程判明したそれを確認することもなく、ノートパソコンを手に持った俺を含めた全員がその中へと飛び込んだ。
ドアは再び閉まり始める。
同種たちは俺たちに飛び掛かろうと、ドアの淵に頭や手足をぶつけながらも身体を中へとねじ込んでくる。
それを見た俺がランボー・ナイフを腰から抜き出し彼らの手足を刈り取ると、八神と早野がそれぞれアサルトライフル、スナイパーライフルを使い、東北ユーラシア側のDMZの彼方へと彼らの身体を吹き飛ばした。
そして、そのドアは完全にその身を閉じた。
美雪から引き継いだ画面を見ながら、状況を絵麻に伝えた。
そのまま、ターミナルへとカーソルを合わせる。キーボードに手を置き、端末操作を始めた。
「公開鍵暗号と古典暗号の組み合わせのようね」
絵麻がアドバイスを送ってくる。
「ああ、そのようだな」
絵麻の意見も参考にしながら、ノートパソコンのキーボードを叩き続けた。
ターミナルのウインドウは上下合わせてすでに五つ立ち上げている。目の前にあった白い文字列が踊るようにそれぞれのターミナルの枠外へと消えていく。暗号をすべて複合したが、まだロック解除には時間がかかりそうだ。
「多重暗号化されているだけであればいいのだけれど」
「それは今考えても仕方がない。これはエニグマ暗号、と……よし、解読した」
エンターキーを押すと、文字列が上から雨のように流れてきた。
「おい、まだか?」
八神が俺たちに近づいてくるなり尋ねてきた。
その間も、アサルトライフルとコルトパイソンから弾を放ち続けている。
顔は平然としているが、このような催促をしてくるのは初めてだ。表情からは判別不能だが、おそらくかなり焦っているのだろう。
同種のうめき声が耳に届いた。それもかなりの人数のもの。久しく背後を確認していないが、大量の同種が近くまで寄ってきていることだけはわかった。
だが、もう少しで解読できる。
俺が八神にそう伝えようとした矢先、各ターミナルに異常が発生した。
アラート画面が大量に画面を埋め尽くしたのだ。
「あ、ああ……あれ? 三重パスワードロック、しかも150桁? さらにまた暗号と認証……これは――プログラムを組まなければ解読できない」
真ん中のターミナルに表示されたパスワード入力欄とその他のウインドウ内の黒い画面に流れ落ちる文字の数々を見て、そう解析した。
自分が分析した結果が自らの心に焦燥を生んだ。汗が額から滴り落ち、指がキーボードの上で滑り始める。視界が歪み、喉元から胃液が漏れそうになった。
同種たちの位置を確認するため、画面から目を切り離し、後ろを振り返った。
すでに同種たちは、DMZ敷地内へと到達している。
一日あれば間違いなくロック解除はできそうだが、現在そのような時間の余裕はまったくない。つまり、平常時のような方法を取っていては、到底間に合わないということだ。
「八神さん、もう少し待って。圭介、私も援軍に向かうわ」
隣にいた絵麻はすっとその場を立ち上がり、コルトパイソンを前方へと構える。
青みがかった左目をちらりと俺にやってから、八神たちのいる方へと向かっていった。
再びノートパソコンの画面に顔を向けた俺の耳を、コルトパイソンの銃撃音が貫いた。
C言語で一度プログラムを組んだが、うまくいきそうにもなかった。
急いでアセンブラからコードを組み直す。デバッグしてみると、バイナリのレベルまで落とす必要はなさそうだった。
次にエスケープボタンを押そうとした瞬間、同種の血と見られる液体が画面へと飛び散った。
もうこんなに近くまで、と思う暇もない。
ポケットの中からハンカチを取り出し画面を拭いた。その際、誤ってフラットポイントとそのボタンを誤操作してしまった。
まさか、やり直しか、と思ったが、幸い写真と資料のフォルダが開いただけで済んだ。
「なんだ、これ?」
たまたま表示されたプレビュー画面を目に入れた俺はそう自問した。
それらは宇宙船地球号についての写真と資料のように見えた。
こんなパソコンに入ってはいるが、その質感から何か重要なものであるように思える。だが、じっくり確認する余裕もないので、すぐにそのフォルダを閉じた。
プログラムの微修正を行いその後簡易データベースを作成する。
その簡易データベースの挿入、更新を試してから全データを消去し、もう一度エンターボタンを押した。
プログラムにより各ターミナルの情報がデータベースへ書き込まれ、もうひとつ別作成していたプログラムによって、中央のターミナルに加工されたデータが表示されていく。
その中央ターミナル内で高速にパスワードと認証のトライアンドエラーが繰り返され下部にその結果が表示され始めた。
それを見た俺は、パスワードの解読を確信した。
「開くぞ」
同種のうめき声と銃声が渦巻く中、俺は大声でそう叫んだ。
一呼吸の間もなく、堅く閉じられていたそのドアは音を立てて開いた。
その先の通路には同種の姿は見えなかった。
後程判明したそれを確認することもなく、ノートパソコンを手に持った俺を含めた全員がその中へと飛び込んだ。
ドアは再び閉まり始める。
同種たちは俺たちに飛び掛かろうと、ドアの淵に頭や手足をぶつけながらも身体を中へとねじ込んでくる。
それを見た俺がランボー・ナイフを腰から抜き出し彼らの手足を刈り取ると、八神と早野がそれぞれアサルトライフル、スナイパーライフルを使い、東北ユーラシア側のDMZの彼方へと彼らの身体を吹き飛ばした。
そして、そのドアは完全にその身を閉じた。
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