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4:感謝とは違うけれど
しおりを挟む「ア”ア”ア”~~」
彼女の言葉の意味が上手く咀嚼出来ずに唸っていると、彼女は何処か申し訳なさそうに説明してくれた。
「困惑するよね。アンディって元々体が弱かったでしょ?学校も休みがちだったもんね。それで、あの爺さんが言うには異世界を渡る衝撃にアンディの体が持たなかったんじゃないかって言ってた。他の人たちも私も別に衝撃なんて感じなかったから、言葉通りの意味かどうかは分からないけど……」
「ア”ァ~…」
死んだ、のか?僕は……それで、彼女のスキルで生き返った?いや、アンデッドだから生き返ってないのか?
さっきから喋ろうとしても唸る事しか出来ないのはアンデッドになったせい…なのか?
「……勝手にアンデッドにしてしまったことは悪いと思う。けどね、私以外に死んでしまったアンディをどうこう出来るスキルを持ってる人はいなかったの。それに、私も自分の身を護るために私の【ネクロマンス】が有用なスキルだって証明しなきゃならなかったの……まぁ、結果は御覧の通りだけど……」
勝手に、と言えば確かにそうだ。ドナー登録などと違って事前に確認するすべ等なかったし、死者が応える訳もない。ただ、自分を勝手にアンデッドにした彼女に文句があるかと言えば微妙な心境だ。
確かに、アンデッドという響きは微妙だ。良くないイメージが付きまとうし、死者の魂を冒涜する行為だ、なんて騒ぎ出す人間もいるかもしれない。
それでも、僕にとっては悪い事ばかりではない。
実は先ほどから体の不調を驚く程感じないのだ。
3時限目の時は意識を失う程だったのに、今は倦怠感や悪寒、節々の痛み、頭痛、腹痛、その他もろもろを感じない。こんなに体調が良いのは生まれて初めてかも、と思えるほどだ。
感謝する、とまでは言えないのが僕の器の小ささなのだろうが、少なくとも恨んだりはしていない。
僕は問題ないと強く念じ、彼女に気持ちを伝える。
「……ありがとう。少しは気が楽になるわ。そうそう、話の続きね。あの場所では【鑑定】ってスキルを持った人が次々とクラスメイト達を鑑定していったんだけど。使えないスキルとか、もしくは危険なスキルなんてのもあって、そんなスキルを持ってるって鑑定した人に言われた生徒は、あの老人に魔法みたいな力で次々に何処かに転移させられてしまったの」
転移。つまり僕たちもその魔法でこの地まで飛ばされたという事だろう。あの男性は確か何とか大森林の奥地、みたいな事を言っていたな。
「私のスキルはかなり特殊な物だったらしく、今までの文献にも無い物だったらしいの。ただ、【鑑定】のスキルである程度効果がわかったらしいわ。それが、死者をアンデッドにして使役出来る、よ。もしその効果が有用そうなら追放しないでいてやるって言われたのよ。そこにちょうど居たのが、死んでしまったアンディってわけ」
都合よくスキル発動に必要な死体があったわけね。
それにしても、普通そんな危なそうなヤツの下でダンジョン攻略なんてさせられるぐらいなら追放の方がマシに聞こえるけど、彼女はなんであんなに追放されるのを嫌がったんだろうか?
「ん?ああ、追放された方がマシじゃないかって考えてる?それがね、私の前に転移魔法で小林君が飛ばされた後、そこは魔物が闊歩する場所で1日も生きられないだろうって言ってたの。確か魔法を使う時、エウローバ山脈とかなんとか。私たちの時はゴドン大森林って言ってたから明らかに違う場所ね。別の場所に飛ばした意図は分からないけど……」
ん~結託させると万が一にも生き残る可能性があるから、とか?
そもそも何で使えないからって追放なんだ?捨て駒としてダンジョンに放り込んだ方が良い気がする。
処分出来るし、万が一活躍したら儲けもの程度に考えそうだけどな。
まぁ、それは今考えても仕方ないか。それよりも今考えなければいけないのは――
「それじゃ、今後について話し合いましょう」
それだ。
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