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5:これからの話をしよう
しおりを挟む「何はともあれ、人に会いたいわね。人が住んでる場所が近くにあると良いんだけど…」
そう言って彼女はきょろきょろと簡単に辺りを見回した後、大きなため息を付いた。
「望み薄いわね。大森林の奥部って言ってたし。仮に居たとして原住民って話が通じなそうなイメージなんだよね」
それは偏見では?とはいえ僕もテレビなどで得た知識では、森の奥にひっそりと暮らしてる部族にはちょっと怖いイメージを持ってしまっている。
「あと、異世界で森と言ったらエルフとか?私あんまりその手の話詳しくないのよね。漫画とかラノベとか。まぁその辺の知識がどのぐらい役に立つか分からないけど」
ラノベの知識かぁ。こういう時のお決まりと言えば「ステータスオープン」って言ったら自分のステータスが見れるとかかな?
「ア”ア”-ア”ア”-ア”-ア”ア”ァ」
何も起きない。これは発音できてないから何も起きないのか、それともアンデッドだからか。はたまたそんなものは最初からないのか。気になるな。
そして僕は近くに落ちていた枝を拾って、地面に文字を書こうとして気が付いた。
腕が上手く動かせない。
ある程度は自由に動かせるのだが、細かい作業が出来ないのだ。
どんな感覚か伝えるのは難しい。たまに夢で似たような感覚の夢を見ることはあるが、それもやはり口頭で伝えるのは難しいだろう。
僕は枝で字を書くのを止めて、足で落ち葉をどけた後、手の指で汚い字を書いた。
「これを読めば良いの?えっと……スチーヌス、オーブン…うーん、ステータスオープン…かな?」
僕は大きく頷く。
「【ステータスオープン】」
…………
彼女は何の反応も示さない。
先ほどのメッセージウィンドウの様にステータスが表示されるかと思ったんだが。
「何も起きないわね…多分【鑑定】のスキルが無いと確認出来ないんだと思うわ。あるいは何かアイテムとかあるのかも。ゲームだとXボタンを押すだけ、とかで楽なんだけどな」
彼女が愚痴る。
スキルか。そういえば異世界から来た人間はみなスキルを1~3つ授かるって言ってたっけ?
僕も何かスキルを持っているのだろうか?それとも異世界を渡りきる前に死んでしまったから授かれなかったとか?はたまたアンデッドになって失った可能性もあるのか…確認したいな。
せっかくの異世界なのだからカッコイイスキルに憧れるのは勿論あるが、いざという時自分に何が出来るのか把握しておきたい。やはり鑑定を持っている人に見てもらうしかなか。
というかアンデッドって人前に出ても大丈夫なのか?その他にも色々気になるぞ、今は昼だけど深い森の中に居るせいで日の光にあまり当たってないけど、直射日光にあたったらどうなるんだ?平気なのだろうか?ゲームとかラノベとかだとアンデッド弱点だらけなんだよな。回復魔法や回復アイテムでダメージを受けるし、死者蘇生する系の魔法で即死するゲームもあったし。あと火の魔法に弱かったりするけど、これは普通人間は火あぶりにされたら大ダメージなのだから気にしなくていいか。
「とにかく、いつまでもここに居ても仕方ないわ。兎に角移動しないと。といっても遭難した時って闇雲に動き回るのは良くないって聞くわよね?待ってても救助が来るわけじゃないから移動するのは当然として、何か目印が無いかしら……」
2人して周囲を見渡す。
周囲は木々が生い茂っており、360度どこも似たような景色だ。
その時、一部の草木が大きく音を立てて揺れた。
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