クラスメイトのなかで僕だけ異世界転移に耐えられずアンデッドになってしまったようです。

大前野 誠也

文字の大きさ
6 / 39

6:死神

しおりを挟む
 
 一言でそれを表現するならば、死神。
 全身を黒いローブで覆ったそれは宙に浮いており足は確認できない。
 顔はフードを被っていて見えにくいが、髑髏の様に見える。
 体より大きな鎌を持っており、口は動いてないのに、何処から発しているのかカラカラと笑い声の様な音が聞こえてくる。

 「ひぃ!!」

 彼女はその姿にすっかり怯えてしまっている。
 尻もちをつき、その姿のまま後ろにズリズリと下がる。

 僕は咄嗟に彼女の前に出た。
 普段の僕なら彼女と同じように怯えて尻もちをついていただろう。
 アンデッドになった影響で恐怖の感情が薄れたのだろうか?
 そしてこれもアンデッドになった影響か、それとも【ネクロマンス】の影響か、相手との各の差が分かってしまう。
 恐らくアレは僕と同じアンデッドに分類される魔物なのだろう。
 本能が、魂が、絶対に勝てないと訴えている。

 それでも、僕は彼女の前を退かない。というか動けない。まるで何かの強制力が働いている様だ。

 死神が、徐に動き出した。ゆっくりと、それでも確実に僕に近づいてくる。
 そして眼前で止まると、大鎌を振り上げた。

 あ、これは死んだ。
 いや、もう死んでたんだった。
 刹那の間にそんなしょうもない事を考えていた僕の体を大鎌が通り過ぎた。

 ……
 …………
 ………………

 何も起きない。
 上半身と下半身がお別れしたわけでも、とんでもない激痛が走るわけでもない。
 どうなっているんだ?
 僕が不思議に思い自らの体をペタペタと触っていると、不意に脳に響くような声が聞こえた。

 『…貴様…………アンデッドか?……』

 しゃ、喋ったー!!
 え?喋れるの?
 というか僕はこの死神がアンデッドだと直感で分かったけど、もしかして彼方は分からないのか?
 と、とにかく話が通じるのならば助かるかも知れない。
 僕は必死に見逃してくれるように交渉を持ちかける。

 「ア”ア”ア”ア”ーーーーァア”(こちらに戦う意志はありません!)」

 って、僕の方が喋れないんだったー!!
 これじゃ交渉なんて無理だ!
 残りの頼みの綱は……
 僕は期待を込めて彼女を見た。

 彼女は顔面を蒼白させて、全身を小刻みに震わせながら、涙を滲ませた顔をフルフルと左右に振っている。

 「む、むり……」

 とても交渉なんて出来る雰囲気じゃない。どうすれば……

 『………ふむ……………気配も感じられない程の下級アンデッドの分際で思考出来る精神があるのか……おもしろいな………』

 死神はなにやら考え込んでいる。もしかしたら見逃して貰えるかも知れない。そんな甘い考えが僕の脳裏をよぎる。

 『……どれ……【鑑定】……』

 え?!
 今もしかしてこの死神は鑑定のスキルを使ったのか?
 アンデッドもスキルを使えるのか?!だとすれば僕も?この状況を打開出来るようなスキルがあれば…って、自分のスキルも分からないのにどうやって。

 『……ふむふむ……なるほど。後ろの女、名は灰田はいだ 亜希あき。異世界人か。面白いスキルを持っているな。【ネクロマンス】。なるほどなるほど……そちらのアンデッドはお前のスキルで生み出したものか……ならばこそ低級のアンデッドであるコヤツが思考回路を有しているわけだな……ククク……実に興味深いな…』

 カタカタという笑い声の様な音と、クククという含み笑いが重なる。中々器用な笑い方だな。
 というか、彼女の名前灰田さんか。言われてみればそんな名前だった気がする。忘れないようにしよう。

 『さらに低級アンデッドである貴様が2つもスキルを有していることから察するに、貴様も異世界人だな?……いや、元異世界人か。……同郷の人間を殺して配下にしたのか?……なかなかどうして……業が深いではないか……』

 死神は実に愉快そうに笑う。

 「こ、殺してない!」

 喋るのも苦しそうな灰田さんだが、そこだけは大声で否定した。
 チロリと死神の視線が灰田さんを見据えた。

 『……まぁ、どちらでも良いことだ……娘。殺されたくなければ我の言う通りにして見せろ……』

 死神の興味は僕から灰田さんに完全にシフトしたようだ。
 く、僕の2つのスキルって何と何なんだ?!気になる。って今はそんな事を気にしている場合じゃ無かった!
 こいつ、灰田さんに一体何を命令するつもりだ。

 「な、なによ?」
 『我に【ネクロマンス】のスキルを使って見せろ』
 「………は?」

 …………は?

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

処理中です...