クラスメイトのなかで僕だけ異世界転移に耐えられずアンデッドになってしまったようです。

９：ゾンビから進化する先は

　
　『……【サーチ】……ふむ……北に５００メートル程の場所に……ちょうど単独で行動する魔物がいるな……』

　死神が徐に動き出し、僕、灰田さんの順に後を追う。
　暫く進むと死神が動きを止めた。
　死神が見つめる先に居たのは黄金に輝く鶏だった。
　薄暗い森の中だと言うのにヤケに目立つ。

　『……ほう……黄金鳥か……こいつはついているな……奴は素早いだけで……弱い魔物だ……しかし何故か大量の経験値が手に入る………ここらの魔物の中では一番多いな……こいつは幸先が良い……』

　死神が嬉しそうにクククと笑う。
　逃げ足が速くて経験値が多い……某ゲームの某モンスターみたいなヤツだな。
　そんな事を考えていると、死神が何やらスキルを使用した。

　『……【バインド】……』

　すると、鶏が一瞬で陰で出来た触手の様な物に絡めとられて動きを止めた。
　かなり便利なスキルの様に思える。
　それにしても、灰田さんの話だとスキルは１人につき１～３つだと言っていた。
　ということは、この死神のスキルは、【鑑定】【サーチ】【バインド】の３つという事だろうか。

　『……何をボサっとしておる……さっさと黄金鳥を狩らんか……』
　「ア”－－－－－－」

　考え事をする暇さえ与えられず、僕は黄金鳥に歩み寄った。
　
　地球に居た頃は昆虫以外の生き物を殺したことがない。
　影の触手に絡まれもがく鶏を眺め、僕は殺生をする覚悟を決めた。
　目を閉じ、思い切り魂喰いの大鎌ソウルイーターを振り下ろす―――

　≪レベルが上がりました。進化が可能です≫

　………

　恐る恐る目を開けた僕の目に映ったのは、そんなメッセージと、ピクリとも動かなくなった黄金の鶏だった。
　黄金鳥の死骸は暫くすると光の粒子になって空中に消えてしまった。

　「レベルが上がったって、メッセージウインドウに書いてあるわ。でも、どれぐらい上がったとか、ステータスがどうなったとか、分からないわね」

　確かに、灰田さんの言う通りだ。これがゲームだったのならば自分のステータスが確認できないなど、かなりの糞ゲーの気がする。

　『……ステータスは【鑑定】のスキルか……魔道具でしか調べられん……人間の間では冒険者ギルドで無料で調べられるはずだが……自らの手の内を晒したがる奴はかなり酔狂らしい……我は気にせんが…我の場合自分で【鑑定】できるからな……というわけだ……今回は我が調べてやろう……【鑑定】……ふむ……ほう……これは……』

　僕たちは死神の【鑑定】が終わるのを固唾を呑んで待った。
　レベル１０ぐらいにはなったのだろうか。
　それと進化についても教えて欲しい。

　『……先ずは……アンデッドの方……貴様のレベルは１０だ……』

　きっかり１０だった。
　仮にレベルの上限が９９だとすれば、１回の戦闘で１０になるのはかなり美味しい。

　『……ちなみに……現在の種族だとレベル１０が限界だな……強くなるには進化する必要がある……』

　レベル１０/１０だった。
　頭打ち早すぎませんか？
　これはさっさと進化してしまいたい。
　どうやって進化するんだろう。

　『……貴様の現在の種族はゾンビだな……【鑑定】の結果次はミイラマンか……グールの二択だな……』

　……どっちも嫌なんですけど？！
　というか僕、ゾンビだったの？！
　ショックだ。

　『……どちらに進化するか決めたら……頭の中で強く念じろ……それだけだ……』

　何てお手軽な進化なんだ。
　グール……は何か腐ってて臭そうで嫌だな。
　ミイラマンの方がまだマシな気がする。

　≪ミイラマンに進化しますか？≫

　何かメッセージウインドウが出た。
　死神の話だとメッセージウインドウは異世界人にしか見えないらしいから、これは通常の魔物の進化とは何か違うんだろうな。
　とりあえず、僕は頭の中でイエスと答えた。