クラスメイトのなかで僕だけ異世界転移に耐えられずアンデッドになってしまったようです。

大前野 誠也

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26話:踏破

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 (いっそ素手で殴ってみるか?)

 物理攻撃の手段が無い僕が、黄金の騎士に対して攻めあぐねていると、死神が声を掛けて来た。

 『……アンディ……これを使え……』

 死神が腕輪から巨大な斧を取り出すと、それを僕の方に目掛けて投げて来た。
 って!そんな物投げないでよ!
 そういえば出会った時に魂喰いの大鎌ソウルイーターも放り投げて来たな。武器を投げるのが癖なのだろうか。
 巨大な斧が僕の眼前で地面に突き刺さり、柄を上にして停止した。

 『あ、これって』
 『……15階層のミノタウロスの初回報酬の斧だ……筋力上昇の効果があるだけの斧だが……まぁ、あの程度の敵にはそれで十分だろう……』

 やっぱり、高く売れそうだからと死神の腕輪に入れて貰った斧だ。
 地面に刺さった斧を抜き、持ち上げる。思いの他に軽い。

 これならやれる。
 僕はそう確信して、黄金の騎士に向き直る。

 まるで、僕の準備が整うのを待っていたかのように、黄金の騎士も再び長剣と盾を構え、腰を落とす。
 すり足で、少し僕との距離を詰めようとする黄金の騎士に対して、僕は一気に詰め寄ると、高くジャンプした。

 斧を振り上げ、ただ思いっきり叩きつけた。
 黄金の騎士は盾を上に構え、それを迎えうつ。

 僕の一撃は黄金の騎士の盾を割り、そのまま黄金の騎士を切り裂き、さらには地面に巨大なクレーターを作った。
 勝負はそれで終わり。僕の勝ちだ。

 物理攻撃しか効かない事さえわかれば、倒すのは難しくない敵だった。
 ただ、やはり【鑑定】は欲しい。それに、物理攻撃しか効かない敵と、物理攻撃が効かない魔物が存在するなら、もしかしたらその両方の特性を併せ持つ存在も居るかもしれない。そういう敵に対する対抗手段も出来れば用意したい。
 課題がいっぱいだ。

 
 今まで通りなら、フロアボスを倒した証として部屋の中央に初回撃破報酬の宝箱が出現するはずだが、今回現れたのは別の物だった。
 僕の腰より少し高いくらいの台座に、土気色の水晶が乗っている。水晶は薄っすらと光っている様だ。

 『……アレがダンジョンコアだ……』

 水晶を見ながら死神が言った。
 つまりアレを壊せばダンジョン踏破ということなのだろう。

 「アレを壊さずに部屋を出るとどうなるの?」
 『……一定時間は出現したままだな……フロアボスが復活するタイミングで台座も消える……』
 『一定時間って?』
 『……3時間程度だな……』

 つまり、フロアボスのドロップアイテムを狙うなら、3時間まって再戦する必要があるようだ。

 『……さて、灰田亜紀よ……ダンジョンコアを持ち上げろ……』
 「え?壊すんじゃないの?」
 『……アレはどんな攻撃も受け付けん……ただ……台座から外すと消えてなくなる……』
 「へ~……それじゃあ」

 灰田さんがゴクリと唾を呑んで、水晶に手を伸ばした。

 「取るわよ?」

 僕たちが頷いたのを確認すると、灰田さんは水晶を持ち上げた―――
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