クラスメイトのなかで僕だけ異世界転移に耐えられずアンデッドになってしまったようです。

２９：村人強襲

　広場に、死神から借りた魔道具の拠点を設置し、その中で灰田さんが雑貨屋で買ったものを選別している。自分で持ち歩く用の物と死神の腕輪に収納しておいて貰うようの物だ。

　雑貨屋で買い物した感じや、雑貨屋のおばちゃんの話を聞く居た限り、１ギールは日本円に換算すると大体１０～１５円程度になりそうだ。ただし、物の価値が日本とは大分違うので、大雑把な指標にしかなりそうにないけど。
　例えば、野菜や肉（ただし魔物の肉）は日本で買う時と大体同じぐらいの価値だとして、紙なんかは以上に高いし質もかなり悪い。だいたいノート１冊分で３００ギール、日本円で大体３千円以上となる。ちなみに、トイレットペーパーの様な物はないらしく、村人はどうしているのかを、灰田さんがおばちゃんに小声でヒソヒソ聞いていた。詳細は分からない。

　暫くして、灰田さんが眠りについたので、眠らない僕は何となく拠点の外に出た。

　（囲まれてる？）

　外はすっかり暗くなっているが、【暗視】のスキルのお陰ではっきりと見えている。
　遠目からこちらを伺う複数の人間、手には弓や剣を持っている人間が多い、他には鍬や鋤などの農具を持った人間もいるようだ。
　彼らに恨みを買うような事をした覚えなどないが、どう見てもこちらを殺しに来ているようにしか思えない。
　もしかして僕がアンデッドだという事がバレたのだろうか？
　理由を考えながら観察していると、雑貨屋のおばちゃんの姿を発見した。
　おばちゃんは武器や農具などは持っておらず、近くにいる爺さんに何やら話しかけているようだ。流石に距離があり過ぎて表情までは伺えない。

　あ、おばちゃんが突き飛ばされた。

　突き飛ばされたおばちゃんは尻もちを付き、突き飛ばした爺さんは、おばちゃんを無視して他の村人を引きつれながらこちらに向かってきている。
　灰田さんは寝ているし、しょうがないので僕が対応することにする。
　
　あまり拠点に近づかれると面倒な気がしたので、こちらから一気に村人側に走り寄る。向かうのは先ほどおばちゃんを突き飛ばした爺さんの元だ。

　爺さんの目の前まで一気にダッシュし、そこで急制動する。

　『何か御用ですか？』
　「んなっ！！？」

　僕が声を掛けると爺さんは驚愕の表情を見せ、声を上げた。
　周りの村人たちも同様だ。
　幾ら暗闇と言っても月明かりなどはあるのだ、流石に何も見えていない訳でもなかろうに、何でそんなに驚くのか？まぁ、それはいいか。

　『もう一度お伺いします。何か御用ですか？』
　「こ、殺せ！！」

　こちらが対話を望んでいるのに爺さんの第一声はそれだった。
　これはやっぱり僕がアンデッドだとバレたのかもしれない。

　「うおおお！」

　爺さんの指示を受け、中年のおじさんが剣を振りかざす。
　
　銅製と思しきその剣は、いたるところが刃こぼれしていて、とてもではないが切れ味など期待できそうにない。

　なぜ、斬りかかられているのにそんな事を考える余裕があるのかといえば、余りに遅いからだ。
　スローモーションにしか見えない。
　これなら対処は簡単だろう。

　さて、どう対処するかが問題だ。
　相手がイキなり殺しに来たのだから、反撃で殺してしまっても問題ないとも思うのだが、相手は人間だ。出来るだけ人殺しは避けたい。
　とはいえ、話を聞こうにも向こうは会話をする気など毛頭なさそうだ。

　となれば、先ずは話を聞いてもらえるようにしよう。

　僕が下した判断はずばり、半殺し！