クラスメイトのなかで僕だけ異世界転移に耐えられずアンデッドになってしまったようです。

大前野 誠也

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30:大捕り物は一瞬で

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 『【シャドウエッジ】』

 先ずは、今斬りかかって来ている男の手から剣を払い退ける。
 そう思い、僕は【シャドウエッジ】で作り出した影の剣で男の銅製の剣を払ったのだが――

 まるで切った感触は無く影の剣は銅の剣をすり抜けた。

 (え!?もしかして【シャドウエッジ】は無機物をすり抜けるのか?!)

 当然そう考えるが違った。

 ボトり。

 銅の剣の刀身は男が振るうのと同時に地面に落ちる。
 どうやら影の剣はちゃんと銅の剣を切っていたらしい。手ごたえすら感じない程の切れ味で。

 「……は?」

 切った僕でさえ多少困惑したのだ。斬られた方の困惑は僕の比ではないだろう。

 森やダンジョンで魔物を切っていた時は、切れ味の悪い包丁で無理矢理肉を切っているような手ごたえだったのに。もしかして逆に無機物に対して切れ味が上がるのだろうか?

 とにかく、これ程簡単に相手の武器を切れることが分かった上、相手の動きは止まって見えるほど遅い。
 ならば話は簡単だ。先ずはこの場に居る全員の武器を切る。それでも襲い掛かってくるなら、その時は改めて抵抗する気がなくなるまでボコボコにしよう。

 そう決めると、僕は一団の中に駆け込んでいった。




 数分、もしくは数秒後、全員の武器や農具を斬り終えた僕は、最初に話しかけた爺さんの元へ向かった。
 【シャドウエッジ】は消し、手ぶらだ。ちなみに、魂喰いの大鎌ソウルイーターは村に入る時に死神に渡してある。あんな物持って村には入れないからね。

 『さて、と。話をする気になりましたか?』
 「ひぃ!!ば、化け物!!」

 確かに、僕はアンデッドなので、人間に化け物と呼ばれるのは仕方ないかもしれない。…ちょっと凹むけど。

 『僕が化け物かどうかは置いておいて、何で急に襲ってきたのか聞かせて貰えますか?』
 「…………」

 この期に及んで、爺さんはだんまりを決め込む。
 やっぱり痛い目にあわせた方が良いいだろうか?
 僕がそんな物騒な事を考えていると、この爺さんに突き飛ばされていた雑貨屋のおばちゃんがとぼとぼと歩いてこちらに寄ってきた。

 「私が説明するよ」
 『お願いします』

 「アンタ等がウチで買い物を済ませた直ぐ後に、村の者がウチに来てね。私は早速アンタ等から買った肉をソイツに売ったのさ。そしたらそれを聞きつけた他の連中も挙ってウチに肉を買いに来てね、あっという間に全ての肉が捌けたんだ」
 『商売繁盛の様で何よりです』
 「……それで、売り切れた後にウチに来た連中は、アンタ等がもっと肉を持ってるんじゃないかと、広場に様子を見に行ったんだ。そしたらそこにあったのがさ」
 
 おばちゃんが指をさした先にあったのは、死神に借りている魔道具の拠点だ。

 「あんな立派な魔道具、私も勿論、村長だって、他の村人の誰だって見たことがない。これは肉やあの魔道具以外にもたんまりとお宝を持っているに違いないと、村の連中が騒ぎだしてね」

 え?ちょっと待って?ということは僕らが襲われた理由って、僕がアンデッドだからとかじゃなくて―――

 「どうせこんな辺境の村にくる訳アリ連中なら、消えても誰も気づかないだろう、とかふざけた事を言いだしたんだよ。この馬鹿連中は」

 強盗殺人かよ!?
 こわ!!異世界こわ!!!
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