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始まりと転校生
3話
しおりを挟むin 生徒会室
チクタク チクタク
時計の秒針によって刻まれる音__それは今、妙な静けさに包まれた生徒会室に響いている。
生徒会の業務の始まりは放課後からで、俺は授業が終わってすぐに仕事に取り掛かかっていた。
そして今の今まで、書類の一つ一つを片していた所だ。
「はぁ…」
ずっと同じ体勢でいたせいか、身体の節々が痛い。
不意に窓の外を見ると茜と淡い青が混ざり合った、独特で目を引くような印象を持った光景が見渡せた。
そこで俺は、はっと我に返ったように、もう既に日が暮れていると言うことに気づかされた。
そうなれば行動は早い。
少し早いが、”そろそろ寮に戻らないと…”と帰る準備を進める。
荷物を纏め終わると足早に扉の前に向かった。
そして、ドアノブに手を掛けようとしたその時だった、会計の龍御がポツリと一言声を上げた。
「…ねぇ、カイチョー、副カイチョーも書記も帰ってこないよ…どーなるのかな生徒会…」
その言葉共に俺の動きは一瞬凍るように、ピタリと止まる。
いつもなら、話し声とか、明るい雰囲気で賑わう生徒会役員の姿は此処には無い。
何故なら俺の周りや学校の環境は、一週間前のとある出来事から、恐ろしく変わってしまったからだ。
勿論それはいい意味とかでは無くて。
「…あぁ…そうだな」
俺は何て声をかければ良いか分からなくなって、曖昧な返事で返してしまう。
…現在生徒会室には会計の龍御と俺しか居ない。
副会長の正博はあれからすぐに転校生の和馬とやらに付きっきりで、音信不通だ。
書記の夏樹は転校生に”無理して喋らなくて良いぞ!俺ならお前を分かってあげられる!”的な事を言われたらしく、今や転校生の側にピッタリだ。
だが二人共生徒会室には来ないが、仕事はちゃんと自室でやっているらしい。
何故分かるのかと問われれば、正博と夏樹の机には書類は一切無いし、他の委員会の委員や顧問が書類を届けに来るが、貰うのは龍御と俺の書類しか無い。
多分と言うか、恐らくあの二人は本気で転校生を好きなのだろう。
それが一目惚れで、相手の事をよく知らなくても、恋に落ちれば人は真っ直ぐで一直線だ。
そんな真っ直ぐな龍御と夏樹を見ていると俺には”帰ってこい”なんて到底言えなかった。
転校生と一緒に居られる時間を作る為に、寮にまで仕事を持ち帰って、自分の職務を全うする二人だ。
それに俺は、転校生に一途に恋をしている正博と夏樹を心の中で、自分の恋人である人物と並べてしまっているところがあった。
俺の恋人もとにかく真っ直ぐで、一直線で、それでいて自分の思いに純粋な人だ。
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