生徒会長と番長

ユキ

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俺と夜(過去編)

12話(過去編)

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「両思いなら早く言えよ…お前」













誰かが俺の手を掴んでいる。

懐かしい声、俺の好きな落ち着く声。

俺は恐る恐る声の主の方へ振り向いた。

それと同時に、腰に手をまわされ体が洸夜に向かって縺れた。

「…なんでっ…んっ!」

塞がれる唇、目の前に迫る好きだった人。

いつまでそうしていたのだろうか?

お互いの唇が離れると、洸夜そっと俺の髪を数本手に絡めるとそこに唇を落とす。

「お前の髪が好きだ。そうやって自分に素直になれないお前も好きだ。卑屈な部分も含めて全部受け入れてる。お前はゴミなんかじゃない、綺麗だ。俺だけを瞳に写したい。けど、流石にやりすぎたって後悔してる、ごめん。お前の気持ちに気づかなくてごめん。次はちゃんとお前も俺に話せ、辛いことも楽しいことも悩みも、全部だ。今度はお前を幸せにする、今更なんて言うなよ。

俺は今もお前が好きだ___日陰」

温かいぬくもり、日陰って名前は嫌いだけど、洸夜に呼ばれると胸の奥がじんわりと熱を持つ。

「お前は俺のこと嫌いになった?」

少し苦しそうな顔で洸夜は俺に言葉を求めてくる。

「嫌いじゃ無いよ…!むしろ好きだ!けど…っそれじゃあダメだ…俺はお前に最低なことした…だからっ!」

「それがなんだって言うんだ?俺言ったよな?全部受け入れてるって。お前の言う最低な事ってのはもう過去の話だ。お前はそうやって過去に縛られて本当の気持ちを閉じ込めるのか?」

「っ…」

まっすぐな瞳、洸夜は出会ってからも出会う前からもずっとそうだ。

正しくないことは正しくないってはっきり言うし、正しいことは正しいと真正面から言い張る。

俺には出来ないこと、俺には出来なかったこと。

洸夜はいつだって前を歩きつづける。

俺は、止まってばかりだ。

誰かに支えてもらわないと進めない。

「最低だ…俺は…最低で!お前に…ッ酷いことして!」

目から溢れた暖かい涙で、しっとりと肌が湿って行く。

泣くなんていつ以来だろうか。

「俺だって酷いことした。お前を閉じ込めた…けど、今度はお前と向き合ってる。やっと前に進めるんだよ…俺とお前」

気づけば洸夜の腕の中に居て、力強く抱きしめられていた。

それに、なんだか凄く落ち着く自分がいた。

今までのことが全て嘘で、まやかしで、誰かが苦しんでいた事実なんて無かったかのように暖かく包み込まれる。

「泣いてばかりじゃわかんねぇぞ…言ってみろ、お前の本音を」

こうやって優しく問いかけてくれる誰かがいて、こうやって俺の言葉と俺自身に向き合おうとしてくれる人がいる。

俺だってわかってる。

立ち止まっては行けない、前と同じに戻りたくない。

亮太や、不良で喧嘩もするけど優しい人たち、俺を変えてくれた洸夜との出会い。

全てなかったことになんかしたくない、なかったことになんか出来ない。

「言ってみろ…お前がこれからどうしたいのか」

どうしたいのか…俺は、

















俺は______…!
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