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1巻
1-3
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愛おしげな声で囁かれると、些細な疑問などどうでもよくなるほど幸せな心地に包まれた。今このときだけは彼に愛されたくて、抱かれたくてたまらなくなる。
「もっと……もっと、名前、呼んで、ほしいです」
ねだるように言えば、湊斗が辛そうに眉を寄せた。その理由がわからずにいると、囁くように耳に口を近づけられる。
「あまり可愛く誘われたら、葵を気持ち良くしてあげられなくなるよ。余裕ぶってるだけで、本当はもう、挿れたくて仕方ないんだ」
「んっ」
わかるだろうと言うように、熱を持った身体に硬いものを押しつけられて、葵の腰が小さく浮き上がった。スラックスの中で張り詰めた彼のものが、布地を押し上げている。
葵はこくりと喉を鳴らし、うっとりと目を細めた。
彼の汗ばんだ手のひらがますます淫猥に動かされて、ついに乳嘴を捉える。きゅっと軽く摘まみ上げられると、そこからじんとした甘い痺れが生まれ全身に広がっていく。
「ん、あっ、そこ、だめ」
腰が震えるような快感に襲われ、葵は咄嗟に彼の腕を掴んでいる手に力を込めてしまう。
「乳首が弱いの? それともさわられたくない?」
葵がだめだと言ったからだろう、湊斗が指の動きを止めて聞いてくる。ただ、彼の言葉は試すような響きをしていて、あえて葵に言わせようとしているかのようだ。
「ち、が……やっ、恥ずかしい、んです」
「恥ずかしいから、なに? やめる?」
身体を昂らせるような淫らな言葉にどこまでも翻弄される。上司でしかなかった湊斗の、男としての一面を見せられて、なにもかもを忘れて受け入れたくなる。
女としての自分の本能が欲望を露わにし、自分を欲しがる彼の声を聞きたいと言ってくるのだ。
「や、やめないで、ほしいです」
葵がそう言えば、湊斗がうっとりとするほど綺麗な微笑みを返す。
その顔に見蕩れたのは一瞬。乳首をきゅっと摘まみ上げられて指の腹で捏ねられ、理性ごとどこかに流されてしまう。
「あっ、あぁっ」
「脱がすよ」
スカートのホックを外され、足から引き抜かれる。ストッキングが伝線しないように丁寧に下ろすその手つきが、やたらと手慣れていた。
「こういうこと、私以外にも、たくさんしてるんですか?」
つい尋ねてしまったのは嫉妬に駆られたからではない。湊斗の声で「葵だけだ」と言ってほしかったのだ。たとえうそだとしても、葵がほしい言葉をくれるのではないかという期待もあった。
湊斗はストッキングを脱がす手を止めないまま、葵を見つめて口を開く。
「これからは、葵にしかしない。それに、自分から好きになったのは君だけだ」
「好き?」
湊斗が自分を好きだなんてあるはずがないから、リップサービスだろうか。酔いが回り、聞き間違えただけかもしれない。
先程までただの上司と部下だったのだ。急にそんな感情が芽生えることはないだろう。それは葵も同じだ。
それでも、もっともっと湊斗の声に包まれていたい。ただ、己の本能が彼を求めている。自分に向けられるこの声に、胸が沸き立ってしまうのを止められなかった。
「あぁ、好きじゃなきゃ、こんなことをしない」
「ん……っ」
昂った肉棒をふたたび腰に押しつけられて、葵の口から甘やかな吐息が漏れた。無意識に腰をくねらせ、上げた膝が開いてしまう。
「触れてないのに、もうこんなに濡れてるのか」
劣情を孕んだ目が葵の足の間を凝視している。
「見ないで、ください」
「それは無理だろう」
湊斗は小さく笑うと、興奮しきった顔を隠すことなく、片方の手でベルトを外して前を寛げた。
隙間から見える下着の一部が色を変えている。彼のものはありありとその形がわかるほど、下着の中で窮屈そうにその存在を主張していた。
濡れたショーツが足から引き抜かれると、秘めた部分を目を凝らすように見つめられる。
「たくさん可愛がって、達かせてやる」
普段見ることのない獰猛な表情を浮かべた上司がそこにいた。この美貌でどれだけの女性を虜にしてきたのだろう。
足の間に近づいてくる顔をぼんやりと眺めながらそんなことを考えていると、ぬるりとした感触が伝わり、鋭い快感が全身を駆け抜けた。
「ひぁっ、あっ……やぁっ」
熱を持った舌で花弁をぬるぬると擦り上げられ、溢れる愛液をじゅっと啜られると、腰が砕けてどうにかなってしまいそうになる。
男性と関係を持つのはずいぶんと久しぶりだ。それに、過去に一人だけいた恋人とのセックスとはまるで違う。初めての感覚に衝撃を受ける。
「あっ、ん、それ、だめぇっ、だめっ」
いやいやと首を振り、湊斗の髪に指を絡ませると、足の間から彼が顔を上げた。濡れた口元がいやらしくて直視できない。
「気持ち良くないか? 強すぎる?」
「ち、がっ、それ……変に、なりそ……なの……っ」
葵が涙を浮かべて言うと、湊斗の口の端が緩やかに上がった。
「達かせてやると言っただろう。たくさん変になっていい」
湊斗はそう言って、ふたたび葵の股間に顔を下ろすと、ますます淫猥に舌を這わせた。襞を広げながら、愛液の溢れる蜜口からつんと勃ち上がる淫芽まで舌で擦り上げてくる。
「あぁっ!」
これでは彼の声にうっとりと聴き入るどころではない。
舌が動かされるたびに、腰から迫り上がってくる凄絶な快感に全身が支配されていく。意識が陶然とするほど気持ち良くて、腰が勝手にがくがくと揺れてしまう。
「舐めても舐めても溢れてくる。感じやすいんだな」
湊斗は敏感なクリトリスを口に含み、舌を小刻みに動かした。くちゅくちゅと、彼の唾液と己の愛液がかき混ぜられる音がして、あまりの羞恥に全身が熱くなる。
「あぅ……っ、ん、気持ち、よすぎて、だめになっちゃう」
いやいやと髪を振り乱しながらも、葵は気づくと湊斗の顔に押しつけるように腰を浮き上がらせていた。彼の髪をぐしゃぐしゃにかき乱し、身悶える。
「いいよ。気持ち良くなってるところを俺に見せてくれ」
湊斗の舌の動きがいっそう素早くなる。ざらついた舌を動かしながら、時折、腫れた淫芽を強く吸い上げられて、激しい快感に襲われた。
「あぁっ、だめ、恥ずかし、から……っ」
みだりがわしい声を抑えることもできず甲高く喘ぐと、閉じた陰唇に指が這わされ、愛液にまみれたそこをぬるぬると擦られた。
「恥ずかしいなんて言うと、男をより興奮させるだけだぞ」
「あっ、あ……擦っちゃ、や」
全身がかぁっと熱くなり、腰ががくがくと震えて止められない。さらに、上唇と舌で挟んだクリトリスを巧みな動きで扱かれ、蜜口から大量の愛液が溢れ出た。
「ひぁぁっ、もぅっ……それ、だめぇっ」
秘裂を擦る指先で蜜口の浅いところをかき混ぜられて、同時に敏感な淫芽を舐められる刺激に耐えきれず、葵は背中を仰け反らせながら悲鳴のような声を上げた。
足の間からは引っきりなしにじゅぶじゅぶと卑猥な音が響き、その音に煽られるかのように淫らな感覚が増していく。
「音……やぁっ」
いやいやと髪を振り乱しながらそう叫ぶものの、湊斗を求める身体は正直で、男の指を咥え込む媚肉が気持ちいいとばかりにうねった。
「今、中がきゅうって締まった。一緒にするの、気持ちいいか?」
湊斗は花芽にねっとりと舌を這わせたまま、脚の間から顔を上げずに言った。彼の口から漏れる息遣いにさえ感じ入ってしまい、葵は全身を真っ赤に染めて目を潤ませる。
「気持ち、い……っ、あぁぁっ」
「いいね、素直で可愛い」
潤さまに似た声で〝可愛い〟と言われると、それだけで下腹部の奥が切なく疼く。もっと気持ち良くしてほしいと身体が求めているかのようだ。
そんな葵の反応を見てか、蜜穴の浅瀬をかき回していた指が、より深く差し入れられた。指が増やされたのか、体内の圧迫感も増す。
「ほら、もっと気持ち良くなって」
隘路を広げるように指を小刻みに揺らされ、蜜襞を擦り上げられる。滲み出た愛液が摩擦をなくし、指を抜き差しされるたびに愛液が泡立つ音が響いた。指を根元まで突き挿れ、深いところをあますところなく擦り上げられ、舌先でくりくりと淫芽を突かれ続ける。
「ん、あぁっ、指……も、それ、気持ち、いっ」
葵は途切れがちに声を漏らし、背筋を波打たせた。彼の指の動きに合わせて腰がびくびくと跳ね上がり、媚肉が淫らに蠕動する。開いた脚が痙攣し、宙で揺れ動く足の先がぴんと張った。
「ここ? あぁ、本当だ。指を動かすと、抜かないでほしいってひくひくして締めつけてくる」
湊斗はそう言いながら、葵の感じやすいところを幾度となく擦り上げた。執拗に同じところを愛撫されて、次から次へと鋭い快感が迫り上がってくる。
「ふぁ……っ、あぁっ、そこ、そこ、だめっ」
指を小刻みに揺らされ、ぴんと勃ち上がるクリトリスを唇と舌でこりこりと扱かれた。
引きも切らずに凄まじい快感に襲われ、意識がどこかに引っ張られそうになる。葵を追い詰めるかのように、舌と指の動きが速さを増し、あまりの快感に目の前が涙で滲んだ。
「あぁぁっ、もう……もぅ……っ」
葵はいやいやと頭を振り、苦しげな声を漏らした。
このままでは、過ぎる快感に、全身が蕩けてなくなってしまう。下腹部の奥が痛いほどに疼き、理性をかなぐり捨てて、本能のままに彼を求めたくなる。
結合部から漏れる愛液が尻を伝いソファーを濡らすが、肌にじっとりと張りつくような不快さも気にならないほど、全身が快感に支配されていた。
「おねが……っ、あっ、もう、なんか、きちゃ」
「もう達きそう?」
「あぁっ、達く……達くぅっ」
媚びるような甘い声が室内に大きく響く。
大きな快感が波のように何度もやって来て、なにかがぱちんと弾けそうな気配がする。
葵は腰をくねらせながら髪を振り乱し、湊斗の頭をぐっと掴んだ。手も足も、みっともないほどぶるぶると震えている。
「いいよ、ほら、達って」
ひときわ強く花芽を吸われ、じゅっと卑猥な音が立った。同時に、絶妙な指の動きで感じやすいところをぐりぐりと擦り上げられて、凄まじいまでの喜悦に全身が硬直する。
「――っ!」
身体の中と外から与えられる凄絶な刺激に息が詰まり、官能の深い渦に呑み込まれ、葵は声も上げられないまま絶頂に達した。
頭が真っ白になり、下腹部の奥が痛いほどに収縮する。背中が波打ち、腰がびくびくと震えて、中に入った彼の指をぎゅうっと締めつけてしまった。
「あっ、あ……はぁっ」
一気に深く息を吸い込み、吐くと同時に脱力する。気怠さに襲われ動けずにいると、汗がじわりと滲み出て肌を濡らした。
「葵の達ってるときの顔、可愛いな」
達した直後の敏感な身体は、彼の甘い声にまた反応を示す。
湊斗は身体を起こし、葵の髪を軽く撫でた。
「ちょっと待っていて」
彼は乱れた格好のままソファーから下りると、収納棚を開けてなにかを取りだし、すぐに戻ってくる。彼の手には避妊具が握られていた。
小さな袋を器用に破り、下着をずり下げる様をじっと見てしまう。葵の視線に気づいたのか、湊斗は苦笑を漏らし葵の片脚を持ち上げた。
「まだ終わりじゃないぞ。俺を君の中で受け止めてくれ」
くるぶしにちゅっと口づけられて、足先がぴくりと跳ねる。切っ先を蜜口にあてがわれたかと思った途端、硬く張った先端が押し込まれ、極太のものがずぶずぶと身体を割って入ってきた。
「ひぁぁっ!」
指とは段違いの圧迫感に襲われる。長大な肉塊に埋め尽くされていく感覚に身体が慄き、無意識に開いた脚が強張った。
しかし、中を広げるように小刻みに腰を揺らされると、張りだした亀頭の先端で敏感な蜜襞をぐりぐりと擦り上げられ、ふたたび気持ち良さが膨れ上がってくる。
「ひぁっ……今、だめぇ……く、るし……」
いまだ絶頂の余韻から抜けだせていない葵には、強すぎる刺激だった。とんとんと軽く腰を突き立てられるだけで、媚肉が物欲しげにうねり、男根をきゅうきゅうと締めつける。
「……っ、く……締めつけすぎ、だ」
湊斗が動きを止めて、呻くような声を漏らす。
彼は手を伸ばし乳房を鷲掴みにすると、上下左右に押し回し、指の腹で掠めるように乳首に触れる。そしてゆっくりと腰を動かし始めた。
「ん、はぁ……っ、あ」
ぴりぴりと小さな刺激が胸から伝わり、強張った下肢から力が抜けていくと、頭上にいる湊斗がほっと息を吐いた。
「情けない男にさせないでくれよ」
湊斗は汗ばんだ髪をかき上げ、軽く頭を振って言う。
葵は薄く目を開けて、その様子をぼんやりと見つめた。
(かっこいい……)
気持ち良さげに目を細めた色気たっぷりの顔。いつの間にワイシャツのボタンを外したのか、シャツの隙間から覗く逞しい胸元。そのすべてに目を奪われる。
今さらだが、自分が湊斗に抱かれていることが非現実的に思えてきた。
「どうした? 痛むか?」
湊斗が身体を倒すと、また違った角度で中を穿たれて、葵の口から甘ったるい吐息が漏れる。
「は……っ、ちが……副社長……かっこいいなって」
自分でもどうしてそんなことを口に出したのかわからなかった。本心であることはたしかだが、この場の空気に呑まれたのかもしれない。
「ふ……っ、そうか」
葵の言葉が心底意外だったのだろう。湊斗は驚いた様子で目を瞬かせたあと、嬉しそうに笑った。その顔が子どもっぽくて、また意外な彼の一面を知る。
「好きな女性にかっこいいと思われているのは嬉しいが……副社長じゃなくて、名前で呼んでくれたらもっと嬉しい。葵も、名前を呼べと言っただろう?」
湊斗はゆっくりと腰を揺らして浅瀬を擦り上げながら、艶めかしい微笑みを浮かべた。愛液がかき混ぜられ、腰の動きに合わせてぷちゅぷちゅっと耳を塞ぎたいほどの淫音が立つ。
「な、まえ?」
「そう……俺の名前、言えるか?」
「あっ、み、なと、さん?」
葵が名前を呼ぶと、正解だとばかりに抽送のスピードが速まる。
徐々に腰の動きも大きくなっていき、指では届かない深いところを張りだした亀頭の先端で擦り上げられた。
「はぁっ、あっ、あぁっ」
得も言われぬ快感が迫り、葵は白い首を仰け反らせて喘ぎ続ける。
「湊斗さん……っ、湊斗さっ……音、やっ」
「音? あぁ、これか?」
湊斗は楽しげに口の端を上げながら、とんとんと浅瀬を突くように腰を揺らした。切っ先が蜜洞に埋まるたびに、ぐちゅっと空気が抜けたような音が立つ。
「それ……やぁ、音、立てない、で……っ」
「葵が気持ち良くなってくれている証拠だろう?」
湊斗はそう言いながら、至極楽しげに腰を突き立てた。ぐちゅんっとひときわ大きく音が立ち、結合部から溢れた愛液が臀部に流れ落ちる。
「んっ、わざと、してる、でしょう……っ」
睨むようにして彼を仰ぐと、胸の中心でつんと勃つ乳首を指の腹で転がされた。
「仕方ないだろう。恥じらう葵が可愛くてたまらないんだ。会社では見られない君が、俺にそんな顔を見せてくれていると思うと……な。ほら、もっと乱れて、気持ち良くなって」
湊斗は恍惚とした目で葵を見据えると、勢いよく腰を突き上げた。
「ひぁぁっ」
突然の強烈な刺激に背中が波打ち、悲鳴のような甲高い声が漏れた。
ぐりぐりと激しく蜜襞を擦り上げられ、長大な陰茎を奥へ奥へと押し込まれる。激しい律動を繰り返されて、羞恥心を感じる余裕が失せていく。
「ほら、さっきよりぐちゃぐちゃになってきた」
湊斗は興奮しきった声を漏らし、腰を突き立てながら葵の乳房をぐいぐいと押し回す。
これ以上ないほど奥深くを穿たれ、互いの恥毛が擦られる刺激さえも快感となる。
「あっ、あぁあぁぁっ」
苦しいほどの愉悦に押し流され、葵は縋るように湊斗の腕を掴んだ。感じやすいところをくまなく擦り上げられて、あまりの気持ち良さに目眩がしてくる。
「湊斗さっ……あっ、ん、それ……気持ちいっ」
「たまらないな……っ、君が、こんなに可愛い女性だとは思わなかった」
湊斗の荒い息遣いと、淫らな言葉にますます身体が昂り、下腹部がきゅうっと張り詰める。彼の口から発せられる甘い言葉の数々に、わずかに残った理性が奪われた。
「可愛いって、もっと……言って、ほし……っ」
湊斗の背中に腕を回し縋りつきながら言うと、身体の中で脈打つ怒張が大きく膨れ上がった。
「ったく、止まらなくなるだろう……っ」
ぱんぱんと肌を打ちつけるように激しく貫かれる。切っ先が最奥に触れるたび子宮が悦び、下腹部の奥がきゅんきゅんと甘く疼いた。
「ひぁっ、あぁっ、も……また、だめに、なっちゃう」
気持ち良さが限界まで膨らみ、繋がったところから全身が蕩けてしまいそうだった。意識が陶然として、もう達することしか考えられない。
「葵、中が……すごくうねってる。また、達きそう?」
短く呼吸を漏らしながら尋ねられ、葵は必死に首を縦に振った。
「ん、達く、達っちゃう……あぁっん、もっと、してぇっ」
葵は湊斗の首筋に顔を埋めて、よがり声を上げ続けた。
律動はさらに激しさを増していき、乳房を揉みしだく手の動きもいっそう淫らになっていく。肉を掴まれ、ぐいぐいと上下左右に押し回される痛いほどの刺激にも感じ入ってしまう。
「葵……俺も、もう達きたい。君の中で達っていいか?」
艶めかしい囁き声が耳の近くで聞こえて、下腹部がずんと重くなる。
彼の声に反応してか媚肉がうねり収縮する。思わず怒張を締めつけてしまうと、湊斗の口から喘ぐような吐息が漏れて、さらに素早く腰を押し込まれた。
最奥を穿たれ、子宮口を押し上げるように切っ先をぐりぐりと擦りつけられた途端、ひときわ大きな快感の波がやって来て、腰が大きく跳ね上がった。
「ん……っ」
「あぁぁっ!」
全身が燃え立つように熱くなり、脳天まで痺れるような凄まじいまでの喜悦が腰から駆け上がる。
「~~~~っ!」
頭の中が真っ白に染まり、葵は声も上げられないまま呆気なく達した。
全身が痛いほどに強張り、うねる媚肉が身体の中を埋め尽くす剛直を締めつけると、それがさらに大きく膨れ上がる。
「く……っ」
湊斗は切なげに眉を寄せると、叩きつけるような勢いで腰を振り立ててきた。
「ひぁぁ、あっ、だめぇっ、今、達ってる、からぁっ」
「悪い……っ、もう、少し……っ」
蜜壺をぐちゃぐちゃにかき混ぜられて、角度を変えながら最奥を突き上げられる。気持ちいいのか苦しいのかさえわからず、葵はただ喘ぐしかない。
またもや軽く達してしまい、腰がびくびくと大きく跳ねて、全身からどっと汗が噴きだした。
「……っ」
葵が達したのと同じタイミングで、湊斗も息を詰まらせた。
彼は凄絶なまでの色香を振りまき、艶めかしく目を細めると、腰の動きを緩やかにして大きく息を吐きだす。
「はぁ……はっ、あ……」
二度目の絶頂に達して、いよいよ意識が保てなくなった葵は、深酒のせいもあり、そのまま眠りに落ちてしまったのだった。
葵は、いつもと手触りの違うシーツと布団の感触に違和感を覚えた。
「ん……」
重いまぶたをゆっくりと持ち上げると、自分の部屋と異なる窓の位置や家具が視界に入る。続いて昨夜の記憶が蘇ってきた。
(副社長と……寝るなんて)
隣に目を向ければ、そこには自分の上司である湊斗が眠っていた。上半身裸の湊斗が視界に入り、思わずぱっと目を逸らす。
ようやく、うちの女性社員たちが『副社長は観賞用』と公言していたのに納得した。手を伸ばすのを躊躇ってしまうほどの相貌だ。葵はそんな男に昨夜、抱かれた。いやらしい言葉と巧みな腰使いで葵を翻弄する彼を思い出すと、たちまち顔が熱くなってしまう。
葵は深く息を吐き、湊斗を起こさないようにそっと布団を捲り、ゆっくりとベッドから下りた。葵が身につけているのは、ぶかぶかのシャツと下着だけ。
足を下ろすと、下半身に違和感を覚えて、またもや昨夜のあれこれを思い出した。今度は芋づる式に「可愛い」とか「好き」とか言われたことまで頭に浮かぶ。
この男に抱かれたいと、名前を呼んでほしいと、凄絶なまでに昂ったことも。
(ただのリップサービスだとしても、あの声と顔はずるいよ。仕事中と全然違うし、エッチなことばっかり言うし)
仕事中にあんな色気を振りまかれていても、それはそれで困るが。
(私、なんであんなことしちゃったんだろう)
湊斗の腕に縋りついて、散々甘えた。現実と夢の狭間にいたのはたしかだが、家に誘われたときに断ることだってできたはずなのに、葵はそうしなかった。
酔った勢いだけで男性と関係を持つほど、葵の警戒心は薄くない。不本意なあだ名で呼ばれてしまうくらい、男嫌いを拗らせすぎている自覚もある。普段の葵なら、酒に呑まれて一夜の関係を持つなんてあり得なかった。
宮岡のせいで深酒をした。湊斗の声が推しとそっくりだった。そんな中で、たまたま湊斗の発した言葉が、葵の大好きな『先輩の初めてを俺にくださいⅡ』の始まりと酷似していた。
(潤さまと同じ声に、流されちゃったのかな……)
まるで夢から醒めたように、今はただ、上司と寝てしまった気まずさだけが残る。
ひとまず昨夜についての記憶を振り払うように首を振り、綺麗に畳んで置いてあった服を手に取ると、ストッキングに足を通した。
(昨日のアレはただの一夜の過ち。副社長だって、きっとそれを望んでる)
湊斗は上司として信頼し尊敬する相手であり、今まで一度たりとも彼から下心を感じたことはない。葵がきっかけを作らなければ、昨夜のようなことは起こりえなかったのだから。
着替え終えて、さてどうしたものかと眠る湊斗を見ていると、湊斗が布団の中で身動いだ。長いまつげが震えて、ゆっくりとまぶたが持ち上がる。
「ん……葵? もう起きたのか?」
葵、と名前を呼ばれ、心の内側にあるなにかが引っ張りだされるように胸が疼いた。昨夜の余韻を自分もまだ引きずっているのかもしれない。
湊斗の目がこちらを捉えたのを見計らい、葵はベッドの脇に立ち、姿勢を正した。
「はい……あの、昨日は申し訳ありませんでした」
仕事でミスをしたときのように、きっちりと両手を揃えて頭を下げる。すると、湊斗がベッドから身体を起こし、頭を横に振った。
すっかり覚醒している葵と違い、彼はまだ夢現なのかぼんやりしている。
彼の寝乱れた姿を見た女性はこれまで何人いるのだろうと、つい無粋なことを考えていると、湊斗が眠気が残る掠れた声で「いや」と短く言った。
「……俺も、調子に乗ってやりすぎた。辛くないか?」
たしかに、思い出すのも恥ずかしいくらい、貪られた記憶はある。
酔って記憶ごと失ってしまえればよかったのに、「もっと」と彼の背中に縋ったことも、いやらしい言葉で責め立てられたことも、しっかりと覚えている。
必死に頭の隅に追いやった記憶を呼び起こされて、顔中に熱が集まってきそうになるが、なんとか動揺を押し隠し、冷静であれと自分に言い聞かせる。
「あ、はい……大丈夫です」
葵が言うと、彼が次の言葉を探すかのように口を開いては閉じた。どうしていいのかわからず、でもなにか言わなければと、葵は必死に考えを巡らせた。
「もっと……もっと、名前、呼んで、ほしいです」
ねだるように言えば、湊斗が辛そうに眉を寄せた。その理由がわからずにいると、囁くように耳に口を近づけられる。
「あまり可愛く誘われたら、葵を気持ち良くしてあげられなくなるよ。余裕ぶってるだけで、本当はもう、挿れたくて仕方ないんだ」
「んっ」
わかるだろうと言うように、熱を持った身体に硬いものを押しつけられて、葵の腰が小さく浮き上がった。スラックスの中で張り詰めた彼のものが、布地を押し上げている。
葵はこくりと喉を鳴らし、うっとりと目を細めた。
彼の汗ばんだ手のひらがますます淫猥に動かされて、ついに乳嘴を捉える。きゅっと軽く摘まみ上げられると、そこからじんとした甘い痺れが生まれ全身に広がっていく。
「ん、あっ、そこ、だめ」
腰が震えるような快感に襲われ、葵は咄嗟に彼の腕を掴んでいる手に力を込めてしまう。
「乳首が弱いの? それともさわられたくない?」
葵がだめだと言ったからだろう、湊斗が指の動きを止めて聞いてくる。ただ、彼の言葉は試すような響きをしていて、あえて葵に言わせようとしているかのようだ。
「ち、が……やっ、恥ずかしい、んです」
「恥ずかしいから、なに? やめる?」
身体を昂らせるような淫らな言葉にどこまでも翻弄される。上司でしかなかった湊斗の、男としての一面を見せられて、なにもかもを忘れて受け入れたくなる。
女としての自分の本能が欲望を露わにし、自分を欲しがる彼の声を聞きたいと言ってくるのだ。
「や、やめないで、ほしいです」
葵がそう言えば、湊斗がうっとりとするほど綺麗な微笑みを返す。
その顔に見蕩れたのは一瞬。乳首をきゅっと摘まみ上げられて指の腹で捏ねられ、理性ごとどこかに流されてしまう。
「あっ、あぁっ」
「脱がすよ」
スカートのホックを外され、足から引き抜かれる。ストッキングが伝線しないように丁寧に下ろすその手つきが、やたらと手慣れていた。
「こういうこと、私以外にも、たくさんしてるんですか?」
つい尋ねてしまったのは嫉妬に駆られたからではない。湊斗の声で「葵だけだ」と言ってほしかったのだ。たとえうそだとしても、葵がほしい言葉をくれるのではないかという期待もあった。
湊斗はストッキングを脱がす手を止めないまま、葵を見つめて口を開く。
「これからは、葵にしかしない。それに、自分から好きになったのは君だけだ」
「好き?」
湊斗が自分を好きだなんてあるはずがないから、リップサービスだろうか。酔いが回り、聞き間違えただけかもしれない。
先程までただの上司と部下だったのだ。急にそんな感情が芽生えることはないだろう。それは葵も同じだ。
それでも、もっともっと湊斗の声に包まれていたい。ただ、己の本能が彼を求めている。自分に向けられるこの声に、胸が沸き立ってしまうのを止められなかった。
「あぁ、好きじゃなきゃ、こんなことをしない」
「ん……っ」
昂った肉棒をふたたび腰に押しつけられて、葵の口から甘やかな吐息が漏れた。無意識に腰をくねらせ、上げた膝が開いてしまう。
「触れてないのに、もうこんなに濡れてるのか」
劣情を孕んだ目が葵の足の間を凝視している。
「見ないで、ください」
「それは無理だろう」
湊斗は小さく笑うと、興奮しきった顔を隠すことなく、片方の手でベルトを外して前を寛げた。
隙間から見える下着の一部が色を変えている。彼のものはありありとその形がわかるほど、下着の中で窮屈そうにその存在を主張していた。
濡れたショーツが足から引き抜かれると、秘めた部分を目を凝らすように見つめられる。
「たくさん可愛がって、達かせてやる」
普段見ることのない獰猛な表情を浮かべた上司がそこにいた。この美貌でどれだけの女性を虜にしてきたのだろう。
足の間に近づいてくる顔をぼんやりと眺めながらそんなことを考えていると、ぬるりとした感触が伝わり、鋭い快感が全身を駆け抜けた。
「ひぁっ、あっ……やぁっ」
熱を持った舌で花弁をぬるぬると擦り上げられ、溢れる愛液をじゅっと啜られると、腰が砕けてどうにかなってしまいそうになる。
男性と関係を持つのはずいぶんと久しぶりだ。それに、過去に一人だけいた恋人とのセックスとはまるで違う。初めての感覚に衝撃を受ける。
「あっ、ん、それ、だめぇっ、だめっ」
いやいやと首を振り、湊斗の髪に指を絡ませると、足の間から彼が顔を上げた。濡れた口元がいやらしくて直視できない。
「気持ち良くないか? 強すぎる?」
「ち、がっ、それ……変に、なりそ……なの……っ」
葵が涙を浮かべて言うと、湊斗の口の端が緩やかに上がった。
「達かせてやると言っただろう。たくさん変になっていい」
湊斗はそう言って、ふたたび葵の股間に顔を下ろすと、ますます淫猥に舌を這わせた。襞を広げながら、愛液の溢れる蜜口からつんと勃ち上がる淫芽まで舌で擦り上げてくる。
「あぁっ!」
これでは彼の声にうっとりと聴き入るどころではない。
舌が動かされるたびに、腰から迫り上がってくる凄絶な快感に全身が支配されていく。意識が陶然とするほど気持ち良くて、腰が勝手にがくがくと揺れてしまう。
「舐めても舐めても溢れてくる。感じやすいんだな」
湊斗は敏感なクリトリスを口に含み、舌を小刻みに動かした。くちゅくちゅと、彼の唾液と己の愛液がかき混ぜられる音がして、あまりの羞恥に全身が熱くなる。
「あぅ……っ、ん、気持ち、よすぎて、だめになっちゃう」
いやいやと髪を振り乱しながらも、葵は気づくと湊斗の顔に押しつけるように腰を浮き上がらせていた。彼の髪をぐしゃぐしゃにかき乱し、身悶える。
「いいよ。気持ち良くなってるところを俺に見せてくれ」
湊斗の舌の動きがいっそう素早くなる。ざらついた舌を動かしながら、時折、腫れた淫芽を強く吸い上げられて、激しい快感に襲われた。
「あぁっ、だめ、恥ずかし、から……っ」
みだりがわしい声を抑えることもできず甲高く喘ぐと、閉じた陰唇に指が這わされ、愛液にまみれたそこをぬるぬると擦られた。
「恥ずかしいなんて言うと、男をより興奮させるだけだぞ」
「あっ、あ……擦っちゃ、や」
全身がかぁっと熱くなり、腰ががくがくと震えて止められない。さらに、上唇と舌で挟んだクリトリスを巧みな動きで扱かれ、蜜口から大量の愛液が溢れ出た。
「ひぁぁっ、もぅっ……それ、だめぇっ」
秘裂を擦る指先で蜜口の浅いところをかき混ぜられて、同時に敏感な淫芽を舐められる刺激に耐えきれず、葵は背中を仰け反らせながら悲鳴のような声を上げた。
足の間からは引っきりなしにじゅぶじゅぶと卑猥な音が響き、その音に煽られるかのように淫らな感覚が増していく。
「音……やぁっ」
いやいやと髪を振り乱しながらそう叫ぶものの、湊斗を求める身体は正直で、男の指を咥え込む媚肉が気持ちいいとばかりにうねった。
「今、中がきゅうって締まった。一緒にするの、気持ちいいか?」
湊斗は花芽にねっとりと舌を這わせたまま、脚の間から顔を上げずに言った。彼の口から漏れる息遣いにさえ感じ入ってしまい、葵は全身を真っ赤に染めて目を潤ませる。
「気持ち、い……っ、あぁぁっ」
「いいね、素直で可愛い」
潤さまに似た声で〝可愛い〟と言われると、それだけで下腹部の奥が切なく疼く。もっと気持ち良くしてほしいと身体が求めているかのようだ。
そんな葵の反応を見てか、蜜穴の浅瀬をかき回していた指が、より深く差し入れられた。指が増やされたのか、体内の圧迫感も増す。
「ほら、もっと気持ち良くなって」
隘路を広げるように指を小刻みに揺らされ、蜜襞を擦り上げられる。滲み出た愛液が摩擦をなくし、指を抜き差しされるたびに愛液が泡立つ音が響いた。指を根元まで突き挿れ、深いところをあますところなく擦り上げられ、舌先でくりくりと淫芽を突かれ続ける。
「ん、あぁっ、指……も、それ、気持ち、いっ」
葵は途切れがちに声を漏らし、背筋を波打たせた。彼の指の動きに合わせて腰がびくびくと跳ね上がり、媚肉が淫らに蠕動する。開いた脚が痙攣し、宙で揺れ動く足の先がぴんと張った。
「ここ? あぁ、本当だ。指を動かすと、抜かないでほしいってひくひくして締めつけてくる」
湊斗はそう言いながら、葵の感じやすいところを幾度となく擦り上げた。執拗に同じところを愛撫されて、次から次へと鋭い快感が迫り上がってくる。
「ふぁ……っ、あぁっ、そこ、そこ、だめっ」
指を小刻みに揺らされ、ぴんと勃ち上がるクリトリスを唇と舌でこりこりと扱かれた。
引きも切らずに凄まじい快感に襲われ、意識がどこかに引っ張られそうになる。葵を追い詰めるかのように、舌と指の動きが速さを増し、あまりの快感に目の前が涙で滲んだ。
「あぁぁっ、もう……もぅ……っ」
葵はいやいやと頭を振り、苦しげな声を漏らした。
このままでは、過ぎる快感に、全身が蕩けてなくなってしまう。下腹部の奥が痛いほどに疼き、理性をかなぐり捨てて、本能のままに彼を求めたくなる。
結合部から漏れる愛液が尻を伝いソファーを濡らすが、肌にじっとりと張りつくような不快さも気にならないほど、全身が快感に支配されていた。
「おねが……っ、あっ、もう、なんか、きちゃ」
「もう達きそう?」
「あぁっ、達く……達くぅっ」
媚びるような甘い声が室内に大きく響く。
大きな快感が波のように何度もやって来て、なにかがぱちんと弾けそうな気配がする。
葵は腰をくねらせながら髪を振り乱し、湊斗の頭をぐっと掴んだ。手も足も、みっともないほどぶるぶると震えている。
「いいよ、ほら、達って」
ひときわ強く花芽を吸われ、じゅっと卑猥な音が立った。同時に、絶妙な指の動きで感じやすいところをぐりぐりと擦り上げられて、凄まじいまでの喜悦に全身が硬直する。
「――っ!」
身体の中と外から与えられる凄絶な刺激に息が詰まり、官能の深い渦に呑み込まれ、葵は声も上げられないまま絶頂に達した。
頭が真っ白になり、下腹部の奥が痛いほどに収縮する。背中が波打ち、腰がびくびくと震えて、中に入った彼の指をぎゅうっと締めつけてしまった。
「あっ、あ……はぁっ」
一気に深く息を吸い込み、吐くと同時に脱力する。気怠さに襲われ動けずにいると、汗がじわりと滲み出て肌を濡らした。
「葵の達ってるときの顔、可愛いな」
達した直後の敏感な身体は、彼の甘い声にまた反応を示す。
湊斗は身体を起こし、葵の髪を軽く撫でた。
「ちょっと待っていて」
彼は乱れた格好のままソファーから下りると、収納棚を開けてなにかを取りだし、すぐに戻ってくる。彼の手には避妊具が握られていた。
小さな袋を器用に破り、下着をずり下げる様をじっと見てしまう。葵の視線に気づいたのか、湊斗は苦笑を漏らし葵の片脚を持ち上げた。
「まだ終わりじゃないぞ。俺を君の中で受け止めてくれ」
くるぶしにちゅっと口づけられて、足先がぴくりと跳ねる。切っ先を蜜口にあてがわれたかと思った途端、硬く張った先端が押し込まれ、極太のものがずぶずぶと身体を割って入ってきた。
「ひぁぁっ!」
指とは段違いの圧迫感に襲われる。長大な肉塊に埋め尽くされていく感覚に身体が慄き、無意識に開いた脚が強張った。
しかし、中を広げるように小刻みに腰を揺らされると、張りだした亀頭の先端で敏感な蜜襞をぐりぐりと擦り上げられ、ふたたび気持ち良さが膨れ上がってくる。
「ひぁっ……今、だめぇ……く、るし……」
いまだ絶頂の余韻から抜けだせていない葵には、強すぎる刺激だった。とんとんと軽く腰を突き立てられるだけで、媚肉が物欲しげにうねり、男根をきゅうきゅうと締めつける。
「……っ、く……締めつけすぎ、だ」
湊斗が動きを止めて、呻くような声を漏らす。
彼は手を伸ばし乳房を鷲掴みにすると、上下左右に押し回し、指の腹で掠めるように乳首に触れる。そしてゆっくりと腰を動かし始めた。
「ん、はぁ……っ、あ」
ぴりぴりと小さな刺激が胸から伝わり、強張った下肢から力が抜けていくと、頭上にいる湊斗がほっと息を吐いた。
「情けない男にさせないでくれよ」
湊斗は汗ばんだ髪をかき上げ、軽く頭を振って言う。
葵は薄く目を開けて、その様子をぼんやりと見つめた。
(かっこいい……)
気持ち良さげに目を細めた色気たっぷりの顔。いつの間にワイシャツのボタンを外したのか、シャツの隙間から覗く逞しい胸元。そのすべてに目を奪われる。
今さらだが、自分が湊斗に抱かれていることが非現実的に思えてきた。
「どうした? 痛むか?」
湊斗が身体を倒すと、また違った角度で中を穿たれて、葵の口から甘ったるい吐息が漏れる。
「は……っ、ちが……副社長……かっこいいなって」
自分でもどうしてそんなことを口に出したのかわからなかった。本心であることはたしかだが、この場の空気に呑まれたのかもしれない。
「ふ……っ、そうか」
葵の言葉が心底意外だったのだろう。湊斗は驚いた様子で目を瞬かせたあと、嬉しそうに笑った。その顔が子どもっぽくて、また意外な彼の一面を知る。
「好きな女性にかっこいいと思われているのは嬉しいが……副社長じゃなくて、名前で呼んでくれたらもっと嬉しい。葵も、名前を呼べと言っただろう?」
湊斗はゆっくりと腰を揺らして浅瀬を擦り上げながら、艶めかしい微笑みを浮かべた。愛液がかき混ぜられ、腰の動きに合わせてぷちゅぷちゅっと耳を塞ぎたいほどの淫音が立つ。
「な、まえ?」
「そう……俺の名前、言えるか?」
「あっ、み、なと、さん?」
葵が名前を呼ぶと、正解だとばかりに抽送のスピードが速まる。
徐々に腰の動きも大きくなっていき、指では届かない深いところを張りだした亀頭の先端で擦り上げられた。
「はぁっ、あっ、あぁっ」
得も言われぬ快感が迫り、葵は白い首を仰け反らせて喘ぎ続ける。
「湊斗さん……っ、湊斗さっ……音、やっ」
「音? あぁ、これか?」
湊斗は楽しげに口の端を上げながら、とんとんと浅瀬を突くように腰を揺らした。切っ先が蜜洞に埋まるたびに、ぐちゅっと空気が抜けたような音が立つ。
「それ……やぁ、音、立てない、で……っ」
「葵が気持ち良くなってくれている証拠だろう?」
湊斗はそう言いながら、至極楽しげに腰を突き立てた。ぐちゅんっとひときわ大きく音が立ち、結合部から溢れた愛液が臀部に流れ落ちる。
「んっ、わざと、してる、でしょう……っ」
睨むようにして彼を仰ぐと、胸の中心でつんと勃つ乳首を指の腹で転がされた。
「仕方ないだろう。恥じらう葵が可愛くてたまらないんだ。会社では見られない君が、俺にそんな顔を見せてくれていると思うと……な。ほら、もっと乱れて、気持ち良くなって」
湊斗は恍惚とした目で葵を見据えると、勢いよく腰を突き上げた。
「ひぁぁっ」
突然の強烈な刺激に背中が波打ち、悲鳴のような甲高い声が漏れた。
ぐりぐりと激しく蜜襞を擦り上げられ、長大な陰茎を奥へ奥へと押し込まれる。激しい律動を繰り返されて、羞恥心を感じる余裕が失せていく。
「ほら、さっきよりぐちゃぐちゃになってきた」
湊斗は興奮しきった声を漏らし、腰を突き立てながら葵の乳房をぐいぐいと押し回す。
これ以上ないほど奥深くを穿たれ、互いの恥毛が擦られる刺激さえも快感となる。
「あっ、あぁあぁぁっ」
苦しいほどの愉悦に押し流され、葵は縋るように湊斗の腕を掴んだ。感じやすいところをくまなく擦り上げられて、あまりの気持ち良さに目眩がしてくる。
「湊斗さっ……あっ、ん、それ……気持ちいっ」
「たまらないな……っ、君が、こんなに可愛い女性だとは思わなかった」
湊斗の荒い息遣いと、淫らな言葉にますます身体が昂り、下腹部がきゅうっと張り詰める。彼の口から発せられる甘い言葉の数々に、わずかに残った理性が奪われた。
「可愛いって、もっと……言って、ほし……っ」
湊斗の背中に腕を回し縋りつきながら言うと、身体の中で脈打つ怒張が大きく膨れ上がった。
「ったく、止まらなくなるだろう……っ」
ぱんぱんと肌を打ちつけるように激しく貫かれる。切っ先が最奥に触れるたび子宮が悦び、下腹部の奥がきゅんきゅんと甘く疼いた。
「ひぁっ、あぁっ、も……また、だめに、なっちゃう」
気持ち良さが限界まで膨らみ、繋がったところから全身が蕩けてしまいそうだった。意識が陶然として、もう達することしか考えられない。
「葵、中が……すごくうねってる。また、達きそう?」
短く呼吸を漏らしながら尋ねられ、葵は必死に首を縦に振った。
「ん、達く、達っちゃう……あぁっん、もっと、してぇっ」
葵は湊斗の首筋に顔を埋めて、よがり声を上げ続けた。
律動はさらに激しさを増していき、乳房を揉みしだく手の動きもいっそう淫らになっていく。肉を掴まれ、ぐいぐいと上下左右に押し回される痛いほどの刺激にも感じ入ってしまう。
「葵……俺も、もう達きたい。君の中で達っていいか?」
艶めかしい囁き声が耳の近くで聞こえて、下腹部がずんと重くなる。
彼の声に反応してか媚肉がうねり収縮する。思わず怒張を締めつけてしまうと、湊斗の口から喘ぐような吐息が漏れて、さらに素早く腰を押し込まれた。
最奥を穿たれ、子宮口を押し上げるように切っ先をぐりぐりと擦りつけられた途端、ひときわ大きな快感の波がやって来て、腰が大きく跳ね上がった。
「ん……っ」
「あぁぁっ!」
全身が燃え立つように熱くなり、脳天まで痺れるような凄まじいまでの喜悦が腰から駆け上がる。
「~~~~っ!」
頭の中が真っ白に染まり、葵は声も上げられないまま呆気なく達した。
全身が痛いほどに強張り、うねる媚肉が身体の中を埋め尽くす剛直を締めつけると、それがさらに大きく膨れ上がる。
「く……っ」
湊斗は切なげに眉を寄せると、叩きつけるような勢いで腰を振り立ててきた。
「ひぁぁ、あっ、だめぇっ、今、達ってる、からぁっ」
「悪い……っ、もう、少し……っ」
蜜壺をぐちゃぐちゃにかき混ぜられて、角度を変えながら最奥を突き上げられる。気持ちいいのか苦しいのかさえわからず、葵はただ喘ぐしかない。
またもや軽く達してしまい、腰がびくびくと大きく跳ねて、全身からどっと汗が噴きだした。
「……っ」
葵が達したのと同じタイミングで、湊斗も息を詰まらせた。
彼は凄絶なまでの色香を振りまき、艶めかしく目を細めると、腰の動きを緩やかにして大きく息を吐きだす。
「はぁ……はっ、あ……」
二度目の絶頂に達して、いよいよ意識が保てなくなった葵は、深酒のせいもあり、そのまま眠りに落ちてしまったのだった。
葵は、いつもと手触りの違うシーツと布団の感触に違和感を覚えた。
「ん……」
重いまぶたをゆっくりと持ち上げると、自分の部屋と異なる窓の位置や家具が視界に入る。続いて昨夜の記憶が蘇ってきた。
(副社長と……寝るなんて)
隣に目を向ければ、そこには自分の上司である湊斗が眠っていた。上半身裸の湊斗が視界に入り、思わずぱっと目を逸らす。
ようやく、うちの女性社員たちが『副社長は観賞用』と公言していたのに納得した。手を伸ばすのを躊躇ってしまうほどの相貌だ。葵はそんな男に昨夜、抱かれた。いやらしい言葉と巧みな腰使いで葵を翻弄する彼を思い出すと、たちまち顔が熱くなってしまう。
葵は深く息を吐き、湊斗を起こさないようにそっと布団を捲り、ゆっくりとベッドから下りた。葵が身につけているのは、ぶかぶかのシャツと下着だけ。
足を下ろすと、下半身に違和感を覚えて、またもや昨夜のあれこれを思い出した。今度は芋づる式に「可愛い」とか「好き」とか言われたことまで頭に浮かぶ。
この男に抱かれたいと、名前を呼んでほしいと、凄絶なまでに昂ったことも。
(ただのリップサービスだとしても、あの声と顔はずるいよ。仕事中と全然違うし、エッチなことばっかり言うし)
仕事中にあんな色気を振りまかれていても、それはそれで困るが。
(私、なんであんなことしちゃったんだろう)
湊斗の腕に縋りついて、散々甘えた。現実と夢の狭間にいたのはたしかだが、家に誘われたときに断ることだってできたはずなのに、葵はそうしなかった。
酔った勢いだけで男性と関係を持つほど、葵の警戒心は薄くない。不本意なあだ名で呼ばれてしまうくらい、男嫌いを拗らせすぎている自覚もある。普段の葵なら、酒に呑まれて一夜の関係を持つなんてあり得なかった。
宮岡のせいで深酒をした。湊斗の声が推しとそっくりだった。そんな中で、たまたま湊斗の発した言葉が、葵の大好きな『先輩の初めてを俺にくださいⅡ』の始まりと酷似していた。
(潤さまと同じ声に、流されちゃったのかな……)
まるで夢から醒めたように、今はただ、上司と寝てしまった気まずさだけが残る。
ひとまず昨夜についての記憶を振り払うように首を振り、綺麗に畳んで置いてあった服を手に取ると、ストッキングに足を通した。
(昨日のアレはただの一夜の過ち。副社長だって、きっとそれを望んでる)
湊斗は上司として信頼し尊敬する相手であり、今まで一度たりとも彼から下心を感じたことはない。葵がきっかけを作らなければ、昨夜のようなことは起こりえなかったのだから。
着替え終えて、さてどうしたものかと眠る湊斗を見ていると、湊斗が布団の中で身動いだ。長いまつげが震えて、ゆっくりとまぶたが持ち上がる。
「ん……葵? もう起きたのか?」
葵、と名前を呼ばれ、心の内側にあるなにかが引っ張りだされるように胸が疼いた。昨夜の余韻を自分もまだ引きずっているのかもしれない。
湊斗の目がこちらを捉えたのを見計らい、葵はベッドの脇に立ち、姿勢を正した。
「はい……あの、昨日は申し訳ありませんでした」
仕事でミスをしたときのように、きっちりと両手を揃えて頭を下げる。すると、湊斗がベッドから身体を起こし、頭を横に振った。
すっかり覚醒している葵と違い、彼はまだ夢現なのかぼんやりしている。
彼の寝乱れた姿を見た女性はこれまで何人いるのだろうと、つい無粋なことを考えていると、湊斗が眠気が残る掠れた声で「いや」と短く言った。
「……俺も、調子に乗ってやりすぎた。辛くないか?」
たしかに、思い出すのも恥ずかしいくらい、貪られた記憶はある。
酔って記憶ごと失ってしまえればよかったのに、「もっと」と彼の背中に縋ったことも、いやらしい言葉で責め立てられたことも、しっかりと覚えている。
必死に頭の隅に追いやった記憶を呼び起こされて、顔中に熱が集まってきそうになるが、なんとか動揺を押し隠し、冷静であれと自分に言い聞かせる。
「あ、はい……大丈夫です」
葵が言うと、彼が次の言葉を探すかのように口を開いては閉じた。どうしていいのかわからず、でもなにか言わなければと、葵は必死に考えを巡らせた。
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