もう二度と離さない~初恋の彼の甘い執着~

本郷アキ

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第二章

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 足の間に手を伸ばして太ももの内側を撫でる。肌の朱色がますます色濃くなり、羞恥に潤んだ目が不安げに揺れた。もしかしたら、本当にこの手のことに慣れていないのかもしれない。もしこれが演技だったならば、ここまで煽られている自分は完全に彼女の手のひらで転がされていることになる。
「あぁっ、やっ……そ、んなとこっ」
「ああ、もう濡れてるな。ボディーソープつけなくても、とろとろだ」
 クチュンと淫らな音が浴室内に響く。わざと音を響かせるように閉じた陰唇の上をなぞれば、泣きそうに歪んだ静香の顔にますます嗜虐心が煽られる。
 彼女の愛液とボディーソープで指先はふやけんばかりに濡れていく。男を受け入れる形に開き始める秘烈に喉を鳴らしながら、焦らすように表面ばかりを擦り上げる。
「もう、やっ……んっ、はぁっ、あぁっ……」
 ひっきりなしにクチクチと淫音が響くようになると、もう立っていられないらしく史哉に体重を預けてくる。
 髪と肌を濡らし、トロンと潤んだ目で宙を見ている様はすさまじく妖艶で、挿れてもいないのに自身の先端は待ちきれないとばかりに先走りを溢れさせた。
「流すぞ……」
 手早く自分の身体も洗ってシャワーで流していく。静香は足の間にシャワーが当たるだけでも感じてしまうのか、必死に声を殺しながら身体を震わせていた。
 早く彼女の中に入りたい。けれど、歳上としての意地もあった。
 史哉は静香の前にしゃがみ込むと、閉じようとする足を押さえて開かせる。しかしさすがの彼女のこれには抵抗を見せた。
「やっ、やだ……なにして」
「なにって……普通だろ。いいから、そのまま感じてろよ」
 普通という言葉に、静香はそうなのかと動揺を見せる。ああ、やはり行為に慣れていないのだと知れば、史哉の中には喜びしかなかった。
 初めてではないかもしれないが、夜毎男を誘うような女ではない。それは確かだ。ではなぜ突然史哉を誘うような真似をしたのかと疑問が芽生える。
(まぁ、今は……どうでもいいことだ)
 同じ銀行で働く同期だ。これからでも時間はある。恋人関係になってからでも遅くはない。もしかしたら、ずっと史哉を好きでいてくれた、なんて答えが聞けるかもしれない。そんな想像に史哉は頬を緩ませた。
(俺……けっこう、ハマってんな……)
 身体から始まる恋もある。なんて別に信じてはいないが、おそらく静香のことはそれなりに気に入っていたのだろう。
 でなければ、いくら歳が近いと聞いていたとはいえ、自身の歓迎会でわざわざ離れた席にいる静香に話しかけになどいかない。ただ、同じ支店で働いているという面倒さがストッパーになっていただけだ。
 シャワーで洗い流しても、静香の陰唇は愛液で濡れていた。舌先で淡い茂みの中をかきわけてつつくように触れると、静香の腰が無意識に揺れる。
「はぁっ……や、舐めちゃ」
「セックスしてるんだ……舐めるくらいするだろ」
 史哉の漏らす吐息がかかるのか、静香は腰をくねらせながら甘く感じ入っている。
「あぁあっ、あっ、あっ、はぁっ」
 唾液を舌に絡ませて、ヌルヌルと陰唇の上を幾度も擦る。気持ちいいのか、漏れる声が途切れがちになり、彼女は必死に史哉の肩を押さえていた。
 クチュクチュと蜜口から溢れる愛液を舌先でかき混ぜつつ、まろみ出た花芯を転がした。もともと体毛が薄いのか、静香の花芯は陰毛に隠れてはおらずいやらしくピンと尖った様まで丸見えだ。
「やらしい身体してんな」
「そんなの……わ、かんなっ」
「これ、舐めるの……好きか? 気持ちいい?」
「ひぁっ、あぁぁっ……」
 静香は悲鳴じみた声を上げ頭を仰け反らせた。爪先が食い込むほどの力で肩を掴まれて多少の痛みはあったが、彼女が感じてくれている証ならばどうでもいい。
 クリュクリュと舌先で尖った粒を捏ねくり回しながら、指で蜜口の浅い場所を弄る。相当に快感を得ているのか、芽を弄るたびに蜜口からは大量の愛液が溢れ手のひらまで滴り落ちてくる。
「ダメ、それ……なんか、変っ、あぁっ、や、あっ、はぁっ」
「達きそうなんだろ。中、俺の指、美味しそうにしゃぶってるもんな」
 指を抜き差ししながらより奥を擦り上げる。濡れていても締めつけのキツかった濡れ襞が柔らかく解れ、指を中へ引き込むような動きを見せている。
 尖った花芯ごと口の中に含み、チュルチュルと吸いながら舌先でつつく。静香は腰をくねらせながら、たまらないといった表情であられもない声を上げた。
「あぁぁっ、だめ、だめ、なのっ」
 指を含んだ柔襞がキュウっと収縮する。指を小刻みに動かしザラザラした内壁を何度も擦り上げながら、感じやすい花芽を捏ねると、指の隙間から大量の愛液が溢れ、静香は息を詰めながら全身を痙攣させた。
「────っ‼︎」
 膣襞が収縮し溢れた愛液が指に絡まる。指に吸いつくように蠕動する静香の蜜襞に、突き挿れたい衝動が抑えられない。
「もう、挿れるぞ」
 彼女との初めての行為が浴室でなんて。
 ベッドで甘やかしながら、時間をかけて蕩けさせて、なんてそんな余裕は史哉にはまったくなかった。ただただ静香が欲しくて堪らない。衝動に突き動かされた。
 片足を抱え上げ、蜜口に太い亀頭を呑み込ませると、達した直後の静香の身体がビクビクと震えた。
「ひぁっ、あっ……入っちゃ……あぁっ」
 片足で立っていられないのか、史哉の首に腕を回して全体重をかけられても、静香は軽かった。ズブズブと容赦なく硬く張った陰茎を抜き差ししながら、奥へ奥へと進んでいく。
 滾った怒張を締めつける肉壁があまりにも気持ちよくて、先端から精液が溢れ出てしまう。ダメだ、出すなら外で。
 そう頭ではわかっていても、このまま深い場所で達したい本能的な欲求が頭をもたげる。
 史哉が腰を穿つたびに、グチュグチュとひっきりなしに淫音が聞こえる。同時に静香の鼻にかかった喘ぎ声が耳元で聞こえて、繋がった場所が燃え上がるように熱くなっていく。
「あぁ……すっげ、気持ちい……っ」
 史哉が堪らずに声を漏らすと、静香の蜜襞は肉棒を放すまいとするようにジュルジュル吸いついてくる。
「ふ、みやっ……あぁっ、いいっ」
 静香の声に煽られるように抽送は速まっていく。ヌルリと濡れ襞を刮げながら陰茎を引き抜き、また深い場所までズブズブと呑み込ませていく。
 足を持ち上げながら、繋がった下肢に視線を移す。赤黒く血管が浮き出るほどに昂った己が蜜口を抜き差しする様は息を呑むほどに淫らだ。
「俺も……よすぎて、出そ」
「んんっ、む……はぁっ、はっ」
 彼女の顎を持ち上げて口づける。身体を揺さぶりながら口腔を舐め回し、唇もまた深い場所で繋がった。
 口腔内に溢れる甘い唾液を啜り上げ、下肢では溢れる愛液を泡立つほどにかき混ぜる。
「ダメだ……もうっ」
「な、か……っ」
「え……?」
「中に、欲しいのっ……おねがっ」
 静香は足で腰を離すまいとしがみつく。結合部から飛沫が上がり、蜜襞が肉棒から白濁を搾りとるように絡みつき、熱が一気に膨れ上がる。
「や、ばっ…………っく、あっ」
 ビュルッと亀頭から射液が迸る。慌てて引き抜こうとしてももう遅い。温かな蜜襞が残滓までも吸いとるようにキュウキュウと締めつけてくる。
「はぁっ……はっ、静香……っ……ちょっと、待て」
 遊びでいいと言ったって、いくらなんでも自分を安売りしすぎだろう。
 そう思ったものの、これでもし静香が妊娠すれば彼女を自分のものにできるのではという身勝手な欲が芽生えてくる。彼女がそう望んでいるんだから、と。
 まったく収まるところを見せない肉棒を引き抜くと、結合部から白濁が流れ落ちる。軽くシャワーで洗い流していると、静香の手が史哉の腕に触れた。
「史哉……もっと、中に、いっぱい出して……」
「…………っ」
 艶めかしい男を誘う女の顔をして、静香は微笑んだ。遊びでもいい、そう言った時と同じ顔をして。
 あとはもう本能のままに静香の身体を貪り尽くした。ベッドで、ソファーで。
 何度も何度も欲望のままに白濁を静香の中に放出しさすがに腰やら足が気怠くなると、静香もまた限界だったのか気を失うように意識を手放した。


 翌朝起きると、もう静香の姿はなかった。
 冷たくなったシーツと、情事の名残だけがシーツに残されていて、いっそう史哉をやるせなくさせた。
 今までは静香に恋慕を抱いていたことはなかった。
 けれど、もうすでにどっぷりとハマっている。自分に恋をしているかのようにうっとりとした視線を向けてくる静香に囚われてしまったのはたしかだ。
「勝手に帰るんじゃねぇよ。絶対、終わらせないからな……っ」
 一人呟いた言葉は想像以上に侘しい。
 女を抱いて、腕枕で朝を迎えるなんてかったるいとさえ思っていたし、ベッドだけの相手だっていた。
 それなのに、静香のことはどうしてもかつての女性たちと同じだと思えなかったのだ。
 自分を見つめてくるあの目が忘れられない。泣きだしそうに潤んでいるのに、意志だけは強くて、昨夜の時点でもうなにも言わずに帰ることさえ決めていたように思える。
 一度だけ関係を持ちたかったならほかの男を選べばよかったのに。どうしてわざわざ後々面倒なことになりそうな史哉を選んだのか。
 それを聞いたところで彼女が素直に答えるとは思えなかったが、史哉の直観が告げていた。静香は自分に対して思慕を抱いているのだと。
 ただ、同時に恋人関係になるつもりではないという意思も窺えた。
(さて……どうしたもんか……)
 静香から飛び込んできたのだ。それをみすみす手放すつもりはない。
 滅多なことでは執着しない史哉だが、一度何かにはまると飽きることはない。Yシャツやスーツもずっと同じブランドと決めているし、時計や鞄もそうだ。
 願掛けというわけでもないのに、事務用品まで同じ物を使い続けているせいで、受験の時なんかは周りにからかわれもしたものだ。
 今日が休みでよかった。よほど深く眠っていたのか、すでに朝の九時を過ぎていた。仕事ならば完全に遅刻だ。
 史哉がチェックアウトを申し出ると、すでに部屋の精算は済まされていて、ますます困惑が深まるばかりだ。
 静香がいったいどうしたいのかよくわからない。告白されてもいないのに、勝手に別れを告げられているような気になってくる。
 異動はまだ先だ。静香と二人で話す時間くらいあるだろう、とこの時の史哉はたかを括っていたのだ。


 辞令が正式に出た日、史哉は得意先への挨拶回りに追われていた。引き継ぎだって何週間かで終わらせなければならず、これからほとんど出ずっぱりの毎日が続くだろう。
 窓口にいる静香とランチに行く隙さえなく、苛立ちはピークだ。日曜から電話をかけているものの、史哉からの着信を拒否にしているのか、彼女のスマートフォンは繋がらない。
 別れるつもりでいる、という史哉の想像もあながち外れてはいないような気がした。
 なんとしてでも仕事終わりの静香を捕まえてやる、そう意気込んで中央支店に戻ると、ちょうど出先から戻ってきたばかりの圭に声をかけられる。
「史哉。ちょっといいか?」
「圭……どうした?」
「時間あるならどうだ?」
 圭がグラスを持つ仕草をしたところで、飲みへの誘いだと気づいた。
「あ~ちょっと……待って……」

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