もう二度と離さない~初恋の彼の甘い執着~

本郷アキ

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第七章

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「ん……っ、はぁ、やだぁ……」
「可愛い……静香」
 気づけば密着するように史哉の身体が背後にあって、彼の厚い胸板が背中にピタリとくっついている。耳に直接囁きかけるように名前を呼ばれて、くすぐったいのとは違う下肢が疼くような感覚がせり上がってくる。
 チュッと耳の中に湿った水音が響く。耳に熱いものが触れて、いったいなにかと身を捩ると、史哉の舌先が耳朶をくすぐっていた。クチュクチュと耳朶をしゃぶられて、手に持っていた皿がシンクに落ちる。
「はぁっ、あっ、あ……舐めちゃ、や」
 背中から痺れるような快感が駆け巡って、膝から崩れ落ちそうになる。流されるのはダメだと自分に言い聞かせていても、愛する人に触れられてしまえばとても抗えるものではない。
 ずっと恋い焦がれていた男に好きだと愛を告げられて、可愛いと囁かれて、逃れられる女などいるものか。なにもかもを忘れて、彼の胸に飛び込んでいけたらどんなにいいか。
(私に、史哉を受け入れる権利なんてない……っ)
 静香を躊躇わさせているのは、過去への贖罪だ。奈津子はもう自分を許してあげろと言ったけれど、とても許せるものではない。
 すべてをなかったことにして史哉と幸せになるなんて、許されるべきではないのだ。
 自分の中の感情がぐちゃぐちゃで、どうしていいのかわからなくなる。史哉を好きな気持ちが溢れてきて、でも言葉にはできない。
 頬を伝った涙がシンクに落ちた。
 自分のズルさに気づいてしまった。
 幸太がいれば生きていけるとそう思っていたのに。欲深く彼のことも欲している自分がいる。
 この手を取って、家族になれたら──そんな願いを持ってしまった静香を、圭はけして許さないだろう。


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