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1話〜始まりの出会い
しおりを挟む――ペンギンの赤ん坊が泣いている――
あたりには、誰の気配もない――
街から離れたこんな場所には、誰か来るはずもない。
泣きづける赤ん坊の肌を、冷たい風が無慈悲に吹きつける。この地は、大陸の中でも特に冷気が強い場所。
この子のいる大陸はアニマ――
雲を遥かに超える岩山『天峰』(てんほう)
周囲に広がる山岳地帯を中心に、楕円形に広がる広大な大地。
この大地を4つに割るように、全く異なる地形が広がる。そして、地形によって気候が全くちがう。
北は、亜熱帯のような気候の森林地帯。
西は、乾燥地帯で一部砂漠化も目立つ。
東は、温帯地帯で暮らしやすい平地。
南は、冷地で年中冷気が漂い、1年の半分は雪が降る。四季というほど規則性がある訳ではないが、ある程度暖かい時期もある。
そしてこの4つの地形には、それぞれ異なった文化を持った動物達が国を作って生活している。
――ここは大陸の南
ペンギン達が国を治めるペン帝国
その更に南の端。
静けさ漂う森の入り口
心ばかりの布切れに包まれたペンギンの赤ん坊は、泣き続けている。
そこへ、老いた白いカラスが足を止める。
しかし、どこか威厳のある凛とした雰囲気の銀白の羽毛だった。食糧調達の帰りだろうか、腰のバックには魚が数匹。
胸元には、ペンダントが光る。
何かのカケラだろうか、銀色の装飾を纏う宝石。
透き通った純白で、淡く光るこのペンダントは、不思議な力を感じる物だった。
周囲を警戒しながらも、泣き続ける赤ん坊に近寄っていく。
(こんなところに、可愛い赤子を置いていくとは……
この時期は冷える。このまま置いていけばこの子の命はないだろう)
白いカラスが赤ん坊を抱きかかえた。その表情は怒りにも悲しみにも見える。
周囲を見渡し、また、赤ん坊に目を向ける
(こんなところ、わし以外に誰も通らんしな、このままだとハグレ魔獣のエサだ。……置いていくわけにもいかんか。)
(これは、運命か――それとも偶然か。)
白カラスは、泣き続ける赤ん坊を見つめる。
「不自由かけるかもしれんが、わしと共にくらそう」
そう言って、1人暮らしの家に赤ん坊を連れて帰った。
白カラスの家は、街から離れた一軒家。
他人との交流は、ほとんどない。むしろ避けているとさえ思えるほどに。
何かから、身を隠しているのか――
とにかく、ひっそりとした地で白カラスに拾われたペンギンの赤ん坊は、この老いた白いカラスと生活していく事になる。
ここで問題が……
白カラスは、子供を育てたことがない。
泣いている赤ちゃんに戸惑うばかり。
(何を食べさせたらいいのか…)
(……うーん)
(あまり気は進まないが…仕方ない。あの者に聞くしかないか)
白カラスは、覚悟を決めて里に行く準備をした。
目立たないように、辺りが暗くなってから出掛けた。
里の端に、不思議な存在感のある孤児院がある。
建物も大きく、何より戦闘訓練場があるというのが異質感を際立たせている。
この孤児院の院長は、マユキという。
コンコン――
マユキの部屋の窓を白カラスがノックする。
「ん?…誰だい。こんな夜更けに」
マユキがカーテンを開ける。
「これは、珍しいお客様だね」
マユキは、驚いた様子。
白カラスは、申し訳なさそうにして、赤ちゃんを抱いている。
「可愛い赤ちゃんじゃないか」
「…あんたの子…な訳ないか」
「事情があるようだね。中に入りな」
周りを気にしながら、白カラスは、窓から部屋へ入る。
マユキは、外を確認して、窓とカーテンを閉める。
「……珍しいね。事情は、見ればわかるが」
「つけられてないだろうね」
マユキの顔が厳しい表情になる。
「それは大丈夫だ。夜更けに申し訳ない。」
白カラスは、頭を下げる。
ふっとマユキの顔がほころぶが、
すぐに、真剣な顔つきになる。
「それで…預かれと?」
白カラスは、首を横に振る。
「この子は、わしが育てたい」
「伝えたいこともある…」と、赤ちゃんの顔を見る。
ペンギンの赤ちゃんは、ニッコリ笑う。
白カラスの表情は、とても穏やかでありながら、瞳は真っ直ぐに真剣さを物語っていた。
マユキは、察した表情。
「そうかい。じゃあ食べ物から教えるよ……」
そう言うと、マユキは赤ちゃんの育て方をメモに書いて、白カラスに渡した。
「数日分のすり身は、入れておくよ。あとは、頑張るんだね」
マユキの顔は、母性に溢れていた。
白カラスは「ありがとう、感謝するよ」と。
深々と頭を下げる。
マユキは、ニコリと笑う。
しばらく沈黙が続いて、マユキが真剣な顔つきで話しかける。
「わかってると思うけど、影が動き出している。少しずつ国の内部が乱れてる」
「もう、私がどうこう出来る立場じゃない」
「うちには、子供達もいる、手助け出来そうにない……
大丈夫なのか?あんたが最後なんだよ?」
白カラスは、深いため息をついた。
「身を隠して、この子と出来るだけ静かに暮らしてみるよ」
「今のところは、居場所までは気づかれていない」
マユキは、真っ直ぐ白カラスを見つめる。
「そうか、あんたが決意したのなら、私は何も言えないな」
「がんばりな」
白カラスは、もう一度深く頭を下げて、家に戻った。
(わしが与えられるものは、全てこの子に与えてあげたい)
深く決意をした。
赤ちゃんは、スヤスヤと眠っている
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