大陸アニマ〜そのペンギンと紡ぐ世界〜

garato

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3話〜予感と現実

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――ペン汰は、6歳になった。
 相変わらず、おじいちゃんとの楽しい生活は続いている。僕も、出来ることが増えてきた。

 おじいちゃんの修行のおかげで、少しずつ戦えるようになってきた。
 ハグレ魔獣は、強いけど、とても動きが読みやすい。
 1匹だけなら僕でも対処できるようになったのが、とても嬉しい。

 
 でも、気になっていることがある――

 最近おじいちゃんの様子がおかしい。
 薪を集めに行くのは、いつものことだけど。
 帰りが遅い日が多くなっている。
 しかも、すごく疲れた様子……。

 僕に気付かれない様に、いつもと同じ笑顔を見せてくれるけど。
 いつもと違う…疲れと焦りと緊張の様なものが伝わってくる。
なぜそれが分かるのか説明は出来ないけど。
 確かに僕に伝わってくる。
 ……何かが変わるような。



 ――1週間後
 夜になっても、おじいちゃんが帰ってこない。
ご飯の支度をしたいけど、まだ火は扱うなって。
お昼の残りがあるから、これを食べて待っていよう。

 何故だか涙が溢れてくる……
 泣き疲れてペン汰は、眠る―

 次の日の朝、まだ白カラスは帰らない。
 ペン汰は、食べられるものと木剣だけ持って探しに出かける。

 ――もう3日は、探しただろろうか。
 ペン汰は、服もボロボロになり空腹でフラフラとしている。
 ……まだ白カラスは、見つからない。
「グルルッ」
 犬型のハグレ魔獣が草むらから飛び出してきた

ペン汰は、もうフラフラの状態で、戦う気力が残っていない。
 ……こんな時に…
 おじいちゃん、助けて…
 倒れそうなペン汰に魔獣が襲いかかる。

 その時。
 ペンダントが、眩しく光りだす。
 
 『ペン汰…目を閉じて…流れを感じるんだよ』
 おじいちゃんの声が聞こえた気がした。
「うん、川の流れだね。わかったよ、おじいちゃん」
 ペン汰は、目を閉じた。

時間がゆっくり進み、ペン汰と魔獣を水が包み込むような感覚になる。
 
(なんだこれ…魔獣の動きが頭に流れてくる。)
(ここに、剣を置けば倒せる…)
 ペン汰は、最後の力を振り絞って、魔獣が襲いかかる軌道上に木剣を突き出す

 徐々に時間が流れ出す…
 タイミングよく突き出された剣に、魔獣は避ける事は出来なかった。
 ペン汰の木剣は魔獣の頭部を貫いた。

 不思議な感覚が消えるとともに、ペン汰倒れるように横たわる。

 ……おじいちゃん、ありがと…う。
 ペン汰は、力尽きた。


――ペン帝国の帝国兵は、ハグレ魔獣や他国の偵察対策に巡回をしている。
 帝国兵が足を止める。
「おい、あそこに倒れてるのは子供か?」
「わからん、見てみるか」
 警戒しながら近寄る。
「子供だな」
「おい!大丈夫か!」
 ペン汰を抱きかかえる。
「……」ペン汰は目を覚さない。

 
 帝国兵は、顔を覗き込む。
「幼いな。まだ10歳にもならないだろう。
 …気を失っているみたいだな。服もボロボロだ。」
 周囲を見回っていた兵が魔獣に気付く。
「おい!魔獣が死んでるぞ、頭を貫かれてる!」
「この子がやったのか……」
 兵達はペン汰をみる。
「どうする……」
「どうするといってもな、この辺りじゃ見ない子だぞ」
 しばらく沈黙が続く。

「おい!こんな時こそ、あの方に相談してみるべきじゃないのか?」
 兵達は顔を見合わせる。
「そうだな!それが良さそうだ!行ってみよう」
「お前達は、巡回を続けてくれ。隊長には、事情を説明しておいてくれ」
「わかった」

 ――ペン汰を抱いて兵は里に向かう

「ようやくついたな」
 兵は孤児院の前に立ち止まる。
「マユキ様!いらっしゃいますか!マユキ様!」

「なんだ!うるさい!」
 中からマユキが険しい顔で出てくる
「何の用だ!」

 兵は、ビクッと背が伸びる。
「すいません!マユキ様!ご相談がありまして」
 兵は、抱えたペン汰をマユキの前に出す。

「ん?なんだ、この子は…」
「気を失っているのか?服もボロボロたけど」
「お前まさか」
マユキは、キッと兵をにらむ。

「ち…ちがいます!!」
 兵慌てて答える
「里から離れた森の入り口あたりに倒れていたのです!
 近くに倒された魔獣も一緒に」

 マユキの顔がゆるむ。
「冗談だ、しかしこんな子供がねぇ。魔獣をねぇ」

 マユキは、ペン汰を覗き込む。
「ん?」
 マユキは首をかしげる。
「このペンダント見覚えがあるな」
 その瞬間、ペンダントが一瞬淡く光る。
 (間違いない、白カラスのものだ。)
 (ということは、この子はあの時の……)
 (もしかしてあいつ……)

 兵が不思議そうな顔をしてマユキを見ている。
「もしかして、マユキ様のお知り合いの子ですか?」

 マユキは、小さいため息。
「そのようだ、この子の近くに白い鳥はいなかったか?」
「……」
「いえ、この子と魔獣のみでした」
 兵は首を横に振る
「そうか……」
「居なかったか…」
「わかった!この子は、預かるよ」
 マユキは、ペン汰を抱き抱える。

 兵は、安堵した表情。
「そうでしたか!やはりマユキ様に相談して良かったです!」
「よろしくお願いします!」
 兵は、ビシッと敬礼する。

「おい、敬礼はないだろう。それにマユキ様もやめろ」
「わたしは、すでにその立場にない」
 と言いながらも少し照れた表情

 兵は、敬礼姿勢のまま
「何をおっしゃいます!
 我々にとっては、マユキ様がどんな立場だろうと、
 いつまでも国の象徴です!」
兵は、再度頭を下げて
「それでは!」と場を立ち去る。
 

「こいつらは、変わらないな」ニコリと笑う。
 マユキは、厳しい表情に戻る。
「やはり乱れているのは、上層か」
「白カラス…この子の状況を考えると…」
「いや、今はやめよう。とにかくこの子の手当てだな」

 そう言うと、マユキはペン汰を連れて孤児院の中に入った。
 
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