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6話〜目標と準備2
しおりを挟む休憩が、終わって座学の後半が始まる。
「さて、みんな席についたな。
では、座学の後半を始めようか」
子供達は、「はーい」と返事をする。
マユキは、ニコリと笑う。
「前半で戦玉の説明と戦気を使うために流派がある事を勉強したな」
「後半は、戦玉から力を与えられる条件を話そう」
「条件?何かする必要があるの?偉い人が貰うんじゃないの?」
子供達が話し始める。
マユキが子供達を見渡している。
「なぁみんな、偉い人が貰うと言うのは、誰から聞いたんだ?」
子供達が答える
「里の大人達が言ってた!偉い人の家族が力を貰えるから、私たちは頑張っても偉い人には敵わないって」
「そうか…」
マユキは、難しい顔をしている。
(子供達の耳にまで入っているのか。あまり真実を伝えすぎるのも子供達の身に危険が及ぶか……影の動きが思ったより早いな。)
マユキが子供達を見渡して、話し始める。
「一般的にはそう言われているな。完全に間違いではないが…誤解している部分がある」
「おそらくみんなが聞いているのは、地位の高い家系のものが血筋によって力を得ているというものだろう。確かに地位が高いものが力が強いのは事実だ」
マユキは頷く。
「しかし、それは血筋によって力が得られているというものではない。教育と訓練によるものだ」
マユキは、子供達を見回す。
子供達は、不思議そうな様子。
「理解が難しいよな。説明する。
資料にもあるが、戦玉は文化と精神性が具現化したものだ。文化と精神性を得るために必要なもの…わかるか?ペン汰」
ペン汰は、しばらく考える。
「……たぶん…教育だと思います。僕たちがマユキさんにしてもらっている事。勉強と訓練と生活だと思います」
マユキは、驚きと喜びが入り混じったような表情をして話し出す。
「ペン汰、それだ!成長したな!私は嬉しいよ」
ペン汰は、照れ笑いしている。
マユキは続けて話し出す。
「補足して説明する。地位が高い者が強いというのは、それだけ教育と訓練を受けやすい環境にいるからだ」
「残念ながら、一般のもの達は教育も訓練も受ける機会が少ないのが現実だ。力の差は、そこからきているといえる」
「しかしだ、教育も訓練も、いつから始めても遅くはない…そうだろう?」
子供達は、ウンウンと頷く。
「国としては、強い者が多い方が良いはずだ。にもかかわらず、一般に教育や訓練を受けられる場所が少ない」
「矛盾があるよな…その先は、君たちがそれぞれに理由を考えてみてくれ」
子供達は、うーんと頭をひねっている。
「みんなちょっと頭を上げてくれ」
マユキが声のトーンを上げる。
「今の事は、それぞれがゆっくり考えればいい」
「今君たちが気づかなければいけないことがある。なんだかわかるか?ソータ?」
ソータは上を見たり下を見たり真剣に考えている。
と、その時ソータはひらめいた。
「あ!!さっきペン汰が言ってた!」
「僕達は、勉強も訓練も生活もマユキ先生に毎日教えてもらってるんだ!だから…戦気が使えるはず!」
マユキは、パンっと手を叩いた。
「ソータ良くできました。そうなんだ、孤児院に訓練施設があるのを不思議に思う者もいると思うが…そういう理由なんだ」
マユキが訓練場を指差す。
「この事実を知ったからと言って、無闇に他人に言いふらすのはダメだぞ。今はな。変な奴と思われるのは嫌だろう?」
子供達は頷く。
「いつか、皆の誤解が解ける日が来ると、私は思っている。君達は、自分の行動や言動の責任を自分で取れるぐらい強くなるまでは、自分のための努力を優先しなさい」
マユキは、子供達の表情を確認して話を続ける。
「さて、さっきソータが言った事で、君達は自覚したはずだ。戦玉から戦気を貰うための条件を満たすための努力をしてきた事を」
「その自覚が最も大事なことでもある。条件を満たしていても、自覚がなければ力は発動しにくい」
マユキは、木刀を取り出した。
「力の発動とは、こういう事だ」
マユキが構えの型に入る。すると青い霧のようなものがマユキの体を覆い始める。
「これが戦気というものだ。青色に見えるのは蒼気を発しているという事。これが他国であれば赤色、緑色、黄色と見た目が違う」
「我々ペンギン族は、冷気に耐える忍耐力や冷静さ、集団に対する誠実さに秀でた種族だ!誇るべき特性だ!」
「その特性が色に現れ力となっている。この気の力は律動と制御だ。熟練すれば武器にも防具にも纏わせる事が可能となる。君達も、この気の力の一端を使うことが可能になっているはずだ」
子供達は、椅子から立ち上がりマユキに釘付けになっている。ペン汰も、目を輝かせている。
「よし、大体わかったかな」
マユキが戦気解くと、霧状の気は無くなった。
「あー、消えた」
子供達は、残念そうにしている。
「おそらく一般のもの達は、教育や自覚が出来ていないため、気を纏うことが出来ないはずだ。だから、力の差が出てしまう」
「今日の座学は、これで終わるが。明日からの訓練や座学は、今日教えた事を少しずつ体現し深めていく。厳しいものになるが、頑張ろう」
マユキは、笑顔で子供達を見る。
「はい!頑張ります!」
子供達は、一斉に返事をした。
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