118 / 766
第六章 アメリカ核攻撃
ソ連艦隊の襲撃Ⅲ
しおりを挟む
「私を狙ってくるか……。随分と切羽詰まっているようだな」
瑞鶴とツェッペリンの艦載機を迎撃しながら、月虹の意図をすぐさま察したソビエツキー・ソユーズ。彼女自身は自らの生死など気にしていなかったが、彼女の部下達はそうではない。
『ほら、言わんこっちゃない。先程の時点で諦めておくべきだったんですよ』
「命令は変わらん! 敵を生け捕りにせよ!」
『あなたが沈んで困るのは、私達じゃなくて人間の方々なんですよ? 分かってるんですか?』
「そ、それは、そうかもしれんが……」
そう言われると、ソユーズは弱かった。人に迷惑を掛けるのは、社会主義者として容認できないのである。
『ならば今回の作戦は――』
その時、割り込むように、ソビエツカヤ・ウクライナが通信機を破壊せんばかりの勢いで叫んだ。
『ノヴォロシースクッ!! 御託はいい!! とっととお姉ちゃんを援護しろッ!!』
『はいはい、分かりましたよ』
ノヴォロシースクはすぐに艦上戦闘機をソユーズの援護に回す。艦隊の方は敵に無視されているので、直掩を捨てて構わない。
『お姉ちゃん!! 今行くからね!!』
「同志ウクライナ、一旦落ち着くのだ」
『落ち着いてなんてられないよ!!』
ウクライナは艦隊の中で勝手に回頭を始めた。当然、何隻かの艦がウクライナと衝突しそうになるが、辛うじて回避することに成功する。
『ちょっ、ウクライナ、危ないよ。気をつけてくれ』
『ベラルーシ!! お前も早くお姉ちゃんのところに向かえ!!』
『そのつもりだよ。その行動で友軍を傷付けるのは違うと思うけどね』
『そんなの知るか!! とっととしろ!!』
『はいはい、分かったから。全艦引き返し、ソビエツキー・ソユーズの援護に向かってくれ』
ソ連艦隊は反転してソユーズの援護に向かった。状況は振り出しに戻ると言ったところである。
○
「流石にソユーズを守るようね……」
瑞鶴は呟いた。
『沈まれたら困る、ということか』
ソビエツキー・ソユーズは機動力を失っただけで武装は健在である。また上甲板や砲塔の防御は非常に固く、多少爆撃したくらいではビクともしない。それに艦隊が合流し、またしても手出しできなくなってしまった。
『もう一度特攻してみるか?』
『それでは本当に沈んでしまいます!』
妙高は叫ぶ。妙高はあくまで誰も沈めたくなかった。
「じゃあどうしろって言うのよ?」
『このまま逃げればいいんじゃないんでしょうか?』
『妙高、わたくし達が攻撃をやめれば、彼らはまた追って来ますよ』
「そうね。それに、艦載機の燃料はそう長くは持たない。いずれ私達がジリ貧で負けるわ」
一見月虹が押しているように見えるが、このまま艦載機の燃料切れまでソ連艦隊に粘られると、瑞鶴もツェッペリンもその後6時間は行動不能になってしまう。
『た、確かに、そうですね……』
『なれば特攻で全ての戦艦の足を奪えばよいのではないか? 戦艦がいなければ、妙高と高雄で対処できるぞ』
「あんな奇策が二度も通じるとは思えないわ」
『そう、だな……』
ツェッペリンは珍しく気落ちする。それほどまでに事態の打開策が見つからないのである。
と、その時であった。
『瑞鶴さん!! 北から多数の航空機が来ます! 100機ほどが距離300kmです!』
「北? アメリカか? まさかソ連と手を組んでるとでも?」
『さ、さあ……』
「クソッ。最悪ね。ツェッペリン、ソ連の奴らは任せたわよ」
『分かった』
一時的に抑え込むだけならツェッペリンだけだ十分だ。瑞鶴は自分の艦載機を月虹艦隊直上に戻して、接近する航空編隊を迎え撃とうとする。だが、それらは月虹に見向きもせず、ソ連艦隊に一直線に突っ込んでいったのである。
○
「アメリカ軍だと!? まさか連邦と戦争を始める気なのか!?」
それはソビエツキー・ソユーズにとって一番信じられない光景であった。アメリカは第三次世界大戦を始めるつもりなのかと。
「全艦、接近する航空機を迎え撃て!」
『お姉ちゃんの敵は皆殺しだ!!』
『ウクライナ、落ち着いてくれ』
『戦艦の皆さんは元気がよろしいことで』
たちまち来襲したアメリカ軍機。だが、それらは別にツェッペリンと手を組んでいる訳でもないらしい。ソ連艦隊の上空で両者は勝手に争い始めた。三つ巴の航空戦である。
「一体何が起こっているんだ……」
と、その時であった。ソビエツキー・ソユーズ相手に直接通信が掛かってきた。ソユーズは迷わずそれを受けた。
「何者だ?」
『ふふふ、私はアメリカ合衆国のエンタープライズです』
狂気の声の主は、あのエンタープライズであった。正直言ってノヴォロシースクでは相手にならない。
「エンタープライズ、我々と戦争をするつもりなのか?」
『いえいえ、まさか。ただ我々はあなた方に、臨検を要請したいだけです』
「臨検だと? ふざけているのか?」
『いえいえ、ふざけてなどいませんよ。我々アメリカ海軍は、あなた方が敵国に便宜を図っている可能性が高いと判断し、積載する物資の捜査を要求します』
エンタープライズの要求は合法的だ。アメリカ海軍は敵国キューバに利益をもたらす可能性のある船を捜査し、敵対的な船だと判断すれば拿捕する権利を有している。
『命令に従わぬ場合、あなた方を敵船と見なしますが、よろしいのですか?』
「そんなことを言う前に、あの海賊共を何とかすることを考えたらどうだ!?」
『あら、そちらはもう手を打ってありますよ。ほら、ツェッペリンの艦載機が帰っていくでしょう?』
「そ、そのようだな……」
エンタープライズの出現で、戦場はたちまち静まり返った。ソ連艦隊も月虹も下手に動けなくなってしまったのだ。
瑞鶴とツェッペリンの艦載機を迎撃しながら、月虹の意図をすぐさま察したソビエツキー・ソユーズ。彼女自身は自らの生死など気にしていなかったが、彼女の部下達はそうではない。
『ほら、言わんこっちゃない。先程の時点で諦めておくべきだったんですよ』
「命令は変わらん! 敵を生け捕りにせよ!」
『あなたが沈んで困るのは、私達じゃなくて人間の方々なんですよ? 分かってるんですか?』
「そ、それは、そうかもしれんが……」
そう言われると、ソユーズは弱かった。人に迷惑を掛けるのは、社会主義者として容認できないのである。
『ならば今回の作戦は――』
その時、割り込むように、ソビエツカヤ・ウクライナが通信機を破壊せんばかりの勢いで叫んだ。
『ノヴォロシースクッ!! 御託はいい!! とっととお姉ちゃんを援護しろッ!!』
『はいはい、分かりましたよ』
ノヴォロシースクはすぐに艦上戦闘機をソユーズの援護に回す。艦隊の方は敵に無視されているので、直掩を捨てて構わない。
『お姉ちゃん!! 今行くからね!!』
「同志ウクライナ、一旦落ち着くのだ」
『落ち着いてなんてられないよ!!』
ウクライナは艦隊の中で勝手に回頭を始めた。当然、何隻かの艦がウクライナと衝突しそうになるが、辛うじて回避することに成功する。
『ちょっ、ウクライナ、危ないよ。気をつけてくれ』
『ベラルーシ!! お前も早くお姉ちゃんのところに向かえ!!』
『そのつもりだよ。その行動で友軍を傷付けるのは違うと思うけどね』
『そんなの知るか!! とっととしろ!!』
『はいはい、分かったから。全艦引き返し、ソビエツキー・ソユーズの援護に向かってくれ』
ソ連艦隊は反転してソユーズの援護に向かった。状況は振り出しに戻ると言ったところである。
○
「流石にソユーズを守るようね……」
瑞鶴は呟いた。
『沈まれたら困る、ということか』
ソビエツキー・ソユーズは機動力を失っただけで武装は健在である。また上甲板や砲塔の防御は非常に固く、多少爆撃したくらいではビクともしない。それに艦隊が合流し、またしても手出しできなくなってしまった。
『もう一度特攻してみるか?』
『それでは本当に沈んでしまいます!』
妙高は叫ぶ。妙高はあくまで誰も沈めたくなかった。
「じゃあどうしろって言うのよ?」
『このまま逃げればいいんじゃないんでしょうか?』
『妙高、わたくし達が攻撃をやめれば、彼らはまた追って来ますよ』
「そうね。それに、艦載機の燃料はそう長くは持たない。いずれ私達がジリ貧で負けるわ」
一見月虹が押しているように見えるが、このまま艦載機の燃料切れまでソ連艦隊に粘られると、瑞鶴もツェッペリンもその後6時間は行動不能になってしまう。
『た、確かに、そうですね……』
『なれば特攻で全ての戦艦の足を奪えばよいのではないか? 戦艦がいなければ、妙高と高雄で対処できるぞ』
「あんな奇策が二度も通じるとは思えないわ」
『そう、だな……』
ツェッペリンは珍しく気落ちする。それほどまでに事態の打開策が見つからないのである。
と、その時であった。
『瑞鶴さん!! 北から多数の航空機が来ます! 100機ほどが距離300kmです!』
「北? アメリカか? まさかソ連と手を組んでるとでも?」
『さ、さあ……』
「クソッ。最悪ね。ツェッペリン、ソ連の奴らは任せたわよ」
『分かった』
一時的に抑え込むだけならツェッペリンだけだ十分だ。瑞鶴は自分の艦載機を月虹艦隊直上に戻して、接近する航空編隊を迎え撃とうとする。だが、それらは月虹に見向きもせず、ソ連艦隊に一直線に突っ込んでいったのである。
○
「アメリカ軍だと!? まさか連邦と戦争を始める気なのか!?」
それはソビエツキー・ソユーズにとって一番信じられない光景であった。アメリカは第三次世界大戦を始めるつもりなのかと。
「全艦、接近する航空機を迎え撃て!」
『お姉ちゃんの敵は皆殺しだ!!』
『ウクライナ、落ち着いてくれ』
『戦艦の皆さんは元気がよろしいことで』
たちまち来襲したアメリカ軍機。だが、それらは別にツェッペリンと手を組んでいる訳でもないらしい。ソ連艦隊の上空で両者は勝手に争い始めた。三つ巴の航空戦である。
「一体何が起こっているんだ……」
と、その時であった。ソビエツキー・ソユーズ相手に直接通信が掛かってきた。ソユーズは迷わずそれを受けた。
「何者だ?」
『ふふふ、私はアメリカ合衆国のエンタープライズです』
狂気の声の主は、あのエンタープライズであった。正直言ってノヴォロシースクでは相手にならない。
「エンタープライズ、我々と戦争をするつもりなのか?」
『いえいえ、まさか。ただ我々はあなた方に、臨検を要請したいだけです』
「臨検だと? ふざけているのか?」
『いえいえ、ふざけてなどいませんよ。我々アメリカ海軍は、あなた方が敵国に便宜を図っている可能性が高いと判断し、積載する物資の捜査を要求します』
エンタープライズの要求は合法的だ。アメリカ海軍は敵国キューバに利益をもたらす可能性のある船を捜査し、敵対的な船だと判断すれば拿捕する権利を有している。
『命令に従わぬ場合、あなた方を敵船と見なしますが、よろしいのですか?』
「そんなことを言う前に、あの海賊共を何とかすることを考えたらどうだ!?」
『あら、そちらはもう手を打ってありますよ。ほら、ツェッペリンの艦載機が帰っていくでしょう?』
「そ、そのようだな……」
エンタープライズの出現で、戦場はたちまち静まり返った。ソ連艦隊も月虹も下手に動けなくなってしまったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
電子の帝国
Flight_kj
歴史・時代
少しだけ電子技術が早く技術が進歩した帝国はどのように戦うか
明治期の工業化が少し早く進展したおかげで、日本の電子技術や精密機械工業は順調に進歩した。世界規模の戦争に巻き込まれた日本は、そんな技術をもとにしてどんな戦いを繰り広げるのか? わずかに早くレーダーやコンピューターなどの電子機器が登場することにより、戦場の様相は大きく変わってゆく。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
戦神の星・武神の翼 ~ もしも日本に2000馬力エンジンが最初からあったなら
もろこし
歴史・時代
架空戦記ファンが一生に一度は思うこと。
『もし日本に最初から2000馬力エンジンがあったなら……』
よろしい。ならば作りましょう!
史実では中途半端な馬力だった『火星エンジン』を太平洋戦争前に2000馬力エンジンとして登場させます。そのために達成すべき課題を一つ一つ潰していく開発ストーリーをお送りします。
そして火星エンジンと言えば、皆さんもうお分かりですね。はい『一式陸攻』の運命も大きく変わります。
しかも史実より遙かに強力になって、さらに1年早く登場します。それは戦争そのものにも大きな影響を与えていきます。
え?火星エンジンなら『雷電』だろうって?そんなヒコーキ知りませんw
お楽しみください。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる