119 / 766
第六章 アメリカ核攻撃
エンタープライズの欲望
しおりを挟む
「マッカーサー、これはどういうつもりかしら?」
瑞鶴はエンタープライズ座乗のマッカーサーに問いかける。
『エンタープライズの言った通り、俺達はただ、アメリカの近海を彷徨く不審なソ連艦隊の臨検に来ただけだ』
「しらばっくれないで。普段はそんなことしないでしょ。何が望み?」
『そうだなあ、お前達がソ連海軍などに鹵獲されるのは不愉快だってのもあるが――』
と、その時、マッカーサーの言葉を遮り通信にエンタープライズが割り込んで来た。
『あなたが、あなたが欲しいんです、瑞鶴。アメリカ海軍は敵国の艦であるあなた達にも臨検を行います。そして愛しいあなたは私にプレゼントされることに決まっているんです。ああ、大丈夫ですよ。あなたの取り巻きも丁重に扱ってもらうつもりですから。私のモノになってください、瑞鶴。例え拒否されても、無理やり私のものにさせていただきます』
「え、キモ……。お前そんな感じだったっけ」
瑞鶴はドン引きした。エンタープライズなどに愛の告白などされても全く嬉しくない。
『すまんな瑞鶴。こいつは蘇ってからずっとこんな感じなんだ』
「あ、そう。臨検を拒否したらどうなるの?」
『もちろん、敵対的な艦と見なし撃沈します。ああ、もちろん、あなただけは沈まない程度に破壊して、私のモノにさせてもらいますけどね』
「じゃあ拒否するわ。バイバイ」
『え、待ってくだ――』
瑞鶴は通信を強制的に切断した。
『瑞鶴さん……ど、どうするんですか?』
「決まってるでしょ。エンタープライズと戦うのよ。申し訳ないけど、エンタープライズ相手に手加減なんてしてられないわ」
沈めてしまう可能性もあるということだ。
『し、仕方ないです』
妙高もエンタープライズの能力についてはある程度見知っている。手加減していられるような相手ではない。
「ツェッペリン! エンタープライズを迎え撃つわよ!」
『言われずとも。アメリカの野蛮人共など消し炭にしてくれよう』
「頼んだわよ」
アメリカ海軍の人間を乗せた艦艇はソ連艦隊の臨検に向かう。そしてエンタープライズは150機ばかりの艦載機で月虹に攻撃を仕掛けてきた。瑞鶴とツェッペリンがそれぞれ80と60機ほど出せるので、数の上では同等である。
『ふん。数で負けなければ我らが負ける筈があるまい』
「調子に乗らないことよ、ツェッペリン。あいつは頭がおかしいから」
『何を――何!?』
瑞鶴が警告した次の瞬間であった。ツェッペリンの艦戦にエンタープライズの艦攻が体当たりしてきて、自機諸共に爆発したのである。
『航空特攻だと……? エルベのつもりか?』
「どうやら、私達の戦闘機を全滅させたいみたいね」
アメリカ海軍の予備戦力は豊富だ。月虹の艦上戦闘機さえ全滅させてしまえば後はどうとでもなる。流石の瑞鶴でも戦闘機なしに空中戦はできない。
『何なのだこいつは。狂っているぞ』
「そう言ったでしょ。エンタープライズはこういつ奴なのよ」
『クソッ。馬鹿げている』
エンタープライズは全く躊躇なく、攻撃機や爆撃機で戦闘機に特攻しようとする。一度そうと分かれば瑞鶴もツェッペリンもそうそう被弾はしないが、戦場の全ての機体に警戒しなければならないというのは骨が折れる。
『瑞鶴さん、大丈夫ですか……?』
「妙高、悪いけど今はちょっと集中させて」
『す、すみません』
瑞鶴には余裕がなかった。数は同数とはいえ、仮に全滅しても予備戦力がいくらでもあるアメリカ軍と月虹とでは、勝利条件が違い過ぎる。圧倒的な勝利を収め続けなければならない月虹にとって、互角というのは劣勢に等しいのである。
だが、その時であった。突如として銃火が途絶えた。
「は? 何?」
『あやつが逃げるだと?』
エンタープライズの艦載機は突如として引き返し、あっという間に姿を消したのである。何が何だか分からないうちに戦闘は収束してしまった。瑞鶴はすかさず偵察機を出してエンタープライズの様子を探るが、エンタープライズはアメリカ本土に帰投していくようであった。
○
何が起こっていたかと言えば、エンタープライズにこんな通信が掛かってきたからである。
『マッカーサー!! この馬鹿野郎!! 何を考えている!! ソ連と戦争でもするつもりか!?』
「おいおい、落ち着けよ、アイゼンハワー」
現アメリカ首相、かつての連合国軍最高司令官、その前はマッカーサーの部下、軍人上がりの最高指導者アイゼンハワー首相が、エンタープライズに直接掛けてきたのである。
『落ち着いていられるものか!! 万一にもソ連と戦争になればカナダに500万のソ連軍がなだれ込むと知らんのか!?』
「そんなことは分かってる。俺達に何が言いたいんだ?」
『そんなこと分かるだろ!! エンタープライズは今すぐその場から引き上げさせろ!!』
臨検自体は合法的なので、不自然ではあるが特に問題はない。問題なのはエンタープライズがソ連海軍を攻撃したことである。
「だそうだ、エンタープライズ。帰るぞ」
「そんな、待ってくださいよ。せっかく瑞鶴を手に入れられるチャンスだと言うのに!」
「マッカーサー元帥、言葉で聞かせられないのなら、力で脅すしかないかと」
お目付け役の兵士は言う。エンタープライズ艦内にはエンタープライズが暴走した時に備えて小隊規模の陸軍部隊が常設されているのである。
「だそうだが、それでもやるか、エンタープライズ?」
「……はいはい、命令に従いますよ、元帥閣下。こんなところで死んだらこの手で瑞鶴を抱けませんから」
「それでいい」
かくしてエンタープライズは撤退して、ソ連艦隊はアメリカ軍の臨検で暫く動けなくなる。エンタープライズがいないアメリカ海軍など敵ではない。月虹にとっては最高の状況だ。
瑞鶴はエンタープライズ座乗のマッカーサーに問いかける。
『エンタープライズの言った通り、俺達はただ、アメリカの近海を彷徨く不審なソ連艦隊の臨検に来ただけだ』
「しらばっくれないで。普段はそんなことしないでしょ。何が望み?」
『そうだなあ、お前達がソ連海軍などに鹵獲されるのは不愉快だってのもあるが――』
と、その時、マッカーサーの言葉を遮り通信にエンタープライズが割り込んで来た。
『あなたが、あなたが欲しいんです、瑞鶴。アメリカ海軍は敵国の艦であるあなた達にも臨検を行います。そして愛しいあなたは私にプレゼントされることに決まっているんです。ああ、大丈夫ですよ。あなたの取り巻きも丁重に扱ってもらうつもりですから。私のモノになってください、瑞鶴。例え拒否されても、無理やり私のものにさせていただきます』
「え、キモ……。お前そんな感じだったっけ」
瑞鶴はドン引きした。エンタープライズなどに愛の告白などされても全く嬉しくない。
『すまんな瑞鶴。こいつは蘇ってからずっとこんな感じなんだ』
「あ、そう。臨検を拒否したらどうなるの?」
『もちろん、敵対的な艦と見なし撃沈します。ああ、もちろん、あなただけは沈まない程度に破壊して、私のモノにさせてもらいますけどね』
「じゃあ拒否するわ。バイバイ」
『え、待ってくだ――』
瑞鶴は通信を強制的に切断した。
『瑞鶴さん……ど、どうするんですか?』
「決まってるでしょ。エンタープライズと戦うのよ。申し訳ないけど、エンタープライズ相手に手加減なんてしてられないわ」
沈めてしまう可能性もあるということだ。
『し、仕方ないです』
妙高もエンタープライズの能力についてはある程度見知っている。手加減していられるような相手ではない。
「ツェッペリン! エンタープライズを迎え撃つわよ!」
『言われずとも。アメリカの野蛮人共など消し炭にしてくれよう』
「頼んだわよ」
アメリカ海軍の人間を乗せた艦艇はソ連艦隊の臨検に向かう。そしてエンタープライズは150機ばかりの艦載機で月虹に攻撃を仕掛けてきた。瑞鶴とツェッペリンがそれぞれ80と60機ほど出せるので、数の上では同等である。
『ふん。数で負けなければ我らが負ける筈があるまい』
「調子に乗らないことよ、ツェッペリン。あいつは頭がおかしいから」
『何を――何!?』
瑞鶴が警告した次の瞬間であった。ツェッペリンの艦戦にエンタープライズの艦攻が体当たりしてきて、自機諸共に爆発したのである。
『航空特攻だと……? エルベのつもりか?』
「どうやら、私達の戦闘機を全滅させたいみたいね」
アメリカ海軍の予備戦力は豊富だ。月虹の艦上戦闘機さえ全滅させてしまえば後はどうとでもなる。流石の瑞鶴でも戦闘機なしに空中戦はできない。
『何なのだこいつは。狂っているぞ』
「そう言ったでしょ。エンタープライズはこういつ奴なのよ」
『クソッ。馬鹿げている』
エンタープライズは全く躊躇なく、攻撃機や爆撃機で戦闘機に特攻しようとする。一度そうと分かれば瑞鶴もツェッペリンもそうそう被弾はしないが、戦場の全ての機体に警戒しなければならないというのは骨が折れる。
『瑞鶴さん、大丈夫ですか……?』
「妙高、悪いけど今はちょっと集中させて」
『す、すみません』
瑞鶴には余裕がなかった。数は同数とはいえ、仮に全滅しても予備戦力がいくらでもあるアメリカ軍と月虹とでは、勝利条件が違い過ぎる。圧倒的な勝利を収め続けなければならない月虹にとって、互角というのは劣勢に等しいのである。
だが、その時であった。突如として銃火が途絶えた。
「は? 何?」
『あやつが逃げるだと?』
エンタープライズの艦載機は突如として引き返し、あっという間に姿を消したのである。何が何だか分からないうちに戦闘は収束してしまった。瑞鶴はすかさず偵察機を出してエンタープライズの様子を探るが、エンタープライズはアメリカ本土に帰投していくようであった。
○
何が起こっていたかと言えば、エンタープライズにこんな通信が掛かってきたからである。
『マッカーサー!! この馬鹿野郎!! 何を考えている!! ソ連と戦争でもするつもりか!?』
「おいおい、落ち着けよ、アイゼンハワー」
現アメリカ首相、かつての連合国軍最高司令官、その前はマッカーサーの部下、軍人上がりの最高指導者アイゼンハワー首相が、エンタープライズに直接掛けてきたのである。
『落ち着いていられるものか!! 万一にもソ連と戦争になればカナダに500万のソ連軍がなだれ込むと知らんのか!?』
「そんなことは分かってる。俺達に何が言いたいんだ?」
『そんなこと分かるだろ!! エンタープライズは今すぐその場から引き上げさせろ!!』
臨検自体は合法的なので、不自然ではあるが特に問題はない。問題なのはエンタープライズがソ連海軍を攻撃したことである。
「だそうだ、エンタープライズ。帰るぞ」
「そんな、待ってくださいよ。せっかく瑞鶴を手に入れられるチャンスだと言うのに!」
「マッカーサー元帥、言葉で聞かせられないのなら、力で脅すしかないかと」
お目付け役の兵士は言う。エンタープライズ艦内にはエンタープライズが暴走した時に備えて小隊規模の陸軍部隊が常設されているのである。
「だそうだが、それでもやるか、エンタープライズ?」
「……はいはい、命令に従いますよ、元帥閣下。こんなところで死んだらこの手で瑞鶴を抱けませんから」
「それでいい」
かくしてエンタープライズは撤退して、ソ連艦隊はアメリカ軍の臨検で暫く動けなくなる。エンタープライズがいないアメリカ海軍など敵ではない。月虹にとっては最高の状況だ。
0
あなたにおすすめの小説
徳川慶勝、黒船を討つ
克全
歴史・時代
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
尾張徳川家(尾張藩)の第14代・第17代当主の徳川慶勝が、美濃高須藩主・松平義建の次男・秀之助ではなく、夭折した長男・源之助が継いでおり、彼が攘夷派の名君となっていた場合の仮想戦記を書いてみました。夭折した兄弟が活躍します。尾張徳川家15代藩主・徳川茂徳、会津藩主・松平容保、桑名藩主・松平定敬、特に会津藩主・松平容保と会津藩士にリベンジしてもらいます。
もしかしたら、消去するかもしれません。
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
日本が危機に?第二次日露戦争
杏
歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。
なろう、カクヨムでも連載しています。
久遠の海へ 再び陽が昇るとき
koto
歴史・時代
第2次世界大戦を敗戦という形で終えた日本。満州、朝鮮半島、樺太、千島列島、そして北部北海道を失った日本は、GHQによる民主化の下、急速に左派化していく。
朝鮮半島に火花が散る中、民主主義の下、大規模な労働運動が展開される日本。
GHQは日本の治安維持のため、日本政府と共に民主主義者への弾圧を始めたのだ。
俗に言う第1次極東危機。物語は平和主義・民主化を進めたGHQが、みずからそれを崩壊させる激動の時代、それに振り回された日本人の苦悩から始まる。
本書は前作「久遠の海へ 最期の戦線」の続編となっております。
前作をご覧いただけると、より一層理解度が進むと思われますので、ぜひご覧ください。
小沢機動部隊
ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。
名は小沢治三郎。
年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。
ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。
毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。
楽しんで頂ければ幸いです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる