軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~

takahiro

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第七章 アメリカ本土空襲

艦隊決戦

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「閣下! 敵艦隊、二手に分かれて進行している模様です!」 
「典型的な戦術だが……」

 比較的遅く重装甲の艦で砲撃戦をしている間に比較的快速で軽装甲の艦を遊撃に回すというのは、日清戦争以来の伝統的なやり方である。

「しかし、この別働隊の狙いは我々のようだな」
「わ、我々ですか?」
「ああ。いくら日本の船魄でもアイオワ級4隻を沈めるのは手間だろう。それならこちらを狙った方が合理的だ」
「で、では、戦艦で迎え撃ちますか?」
「このまま輪形陣を維持か。その選択肢もなくはないが、それはそれでこちらの空母が敵の戦艦の射程に収められてしまうだろうな」
「では、どうすれば……」

 アメリカの巡洋艦で瑞牆などを迎え撃つというのは、端から選択肢に入っていない。例え船魄の質が同等でも艦の性能差で負けるような戦い、アメリカの船魄に勝てる訳がないのだ。

「それならばいっそ、こちらから仕掛けるんだ。アイオワ級を……ミズーリだけ残し、他を敵主力艦隊に突撃させるんだ」
「つまり、殺られる前に殺るということですか?」
「そういうことだ。これに掛けるしかない。上手くいけば、我々の勝利は確実だ」

 空母本体を沈められると航空隊ごと無力化されるというのが船魄の欠点である。この戦いはどちらが先に空母を叩き潰せるかの勝負なのだ。

 ○

『敵の戦艦が出てきたわね。どうするの、長門?』
「決まっている。私とお前で迎え撃つのみ」
『3隻でも大変だと思うけどねえ』
「足止めなら十分だ。こんなところで怖気付いたんじゃないだろうな?」
『まさか。私がアメリカなんかに怖気付くなんてあり得ないわ。舐めないでくれる?』
「その意気だ。決して空母達に近付けはしない。打って出るぞ」
『ええ、もちろん』

 長門と陸奥は空母部隊を離れ、敵戦艦の迎撃に向かう。その一方で瑞牆を旗艦とする水雷戦隊は戦艦などとは比べ物にならない速度でアメリカ艦隊に接近していた。

 ○

 上空では両軍の航空部隊が互角の戦いを演じ、次から次に航空機が墜落している。水雷戦隊は第2艦隊まで50kmに迫っていた。

『敵には戦艦がいるねえ。ボクは戦艦とはやり合うのは勘弁なんだけど』

 アメリカ艦隊は戦艦ミズーリを先頭にし、重巡洋艦級4隻と共に単縦陣を組んで水雷戦隊を迎え撃とうとしていた。巡洋艦と戦艦を一列に並べているのは定石から外れるやり方である。

「瑞牆さんは……戦艦ではないのですか?」

 妙高は問う。何せ瑞牆は見た目だけなら長門より遥かに大型なのである。

『ボクはあくまで巡洋艦だよ。だって、君と同じく山の名前をしてるだろう?』
「た、確かに」
『積んでるのも30cm砲だし、あれと撃ち合うなんて無理だよねえ』
「こっちに戦艦がないのが、厳しいですね……」
『巡洋戦艦の一隻でもいればよかったんだけどね』

 戦艦と正面からやり合える戦力がないというのが問題である。アメリカ軍はそれを突いてきた。こんなことになっているのは、日本軍は敵を積極的に攻撃しなければならず、アメリカ軍はそれを泰然と待っていればいいからである。

『瑞牆さん、どうするおつもりですか?』

 高雄は冷たい声で尋ねた。瑞牆を信用していないし、その作戦で妙高が傷付くなど論外だからである。

『まあまあ、そう気を張らないでくれたまえよ』
『何か作戦が?』
『ああ。ボクと君と妙高が囮になっている間に、駆逐艦の子達に戦艦を攻撃してもらおう。いいかな?』
『わたくし達を囮に……?』
『ボクも囮になるって言ってるじゃないか。駆逐艦と比べれば、ボク達は遥かに打たれ強いからね』
『そ、それはそうですが……』
「高雄、妙高は大丈夫だよ。その為の重巡洋艦なんだから」
『戦艦相手には話が違うと思いますが……分かりました。勝算があると言うのなら、瑞牆さんに従います』
『うん。ボクは白人の悪鬼如きに負ける気はないよ。じゃあ行こうか。敵の左翼を突き崩す。全艦、突撃!』

 瑞牆、妙高、高雄は横一列に並び、単縦陣の敵艦隊に斜め前から突撃を仕掛ける。陣形としては非常に不利だが仕方がない。あくまで囮なのだから。

「敵戦艦、撃ってきます!」
『よーし。こっちに注意を向けられたようだね。こっちも撃ち返すよ。戦艦は無視して巡洋艦を排除しよう』
「はい!」
『承知しました』

 ミズーリは余裕を持って、妙高達は射程ギリギリで砲撃を開始した。こちらは艦橋より前にある主砲しか使えないが。

 ミズーリの主砲斉射は一先ず当たらず、至近弾もない。反対に瑞牆は3発、妙高と高雄は2発ずつの命中弾を出した。日米の船魄の性能差である。敵の重巡一隻は瑞牆の主砲弾を主砲塔に喰らい、3連装砲塔が一つ吹き飛んだ。妙高と高雄はそれぞれの目標に命中弾を与えるが、戦闘能力を削るには至らない。

『流石は超甲巡ですね。重巡洋艦の主砲をあっさりと……』
『それがボクの役目だからね。君達も頑張ってくれないと困るよ?』
『言われなくても、です』
「高雄、一隻を一緒に狙おう!」
『承知しました!』

 思ったより米重巡の装甲が堅く、妙高は確実に一隻ずつ無力化することを選択した。未だ敵の命中弾が出ない内に、二人は合わせて10発以上を一隻の重巡洋艦に叩き込み、大破炎上させることに成功した。
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