軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~

takahiro

文字の大きさ
141 / 766
第七章 アメリカ本土空襲

艦隊決戦Ⅲ

しおりを挟む
 瑞牆率いる水雷戦隊は、米戦艦ミズーリを中心とする前衛部隊と激しい砲撃戦を続けていた。

 既に米側の重巡洋艦2隻を撃沈、2隻を大破炎上させ、駆逐艦3隻を撃沈しているが、瑞牆は10発以上の41cm砲弾を喰らって2番主砲塔が大破、高雄は4番5番主砲塔が使用不能という状況であった。妙高は幸いにして大きな損傷はない。

『ま、まったく……戦艦の相手なんて、するもんじゃないね……』
「瑞牆さん……」
『ああ、大丈夫だ。君達より装甲は厚いしダメージコントロールもできる』

 瑞牆は強がって平気そうにしているが、既に浸水が広がって艦が沈んできており、本来なら今すぐ撤退すべき状況であった。

『あの戦艦を相手にしていては、いずれわたくし達が撃ち負けるだけです。そろそろ攻勢に出るべきかと』

 高雄はそう提案した。

『そうだね。そろそろ潮時だ。雪風、いいなな?』
『もちろんです。雪風に仕事を任せて、結果は保証できませんが』
『君は相変わらずだねえ。任せたよ』
『はい。全力は尽くします』

 駆逐艦4隻、即ち雪風、峯風、綾波、天津風がついに動く。敵の前衛が壊滅したところでミズーリに対し雷撃を仕掛けるのである。

 ○

「駆逐隊、全艦散開。各々ミズーリに突撃せよ」

 船魄化によってお互いの連携を取るのは非常に容易である。であれば、わざわざ一纏まりになって敵の艦砲の的になる必要もない。駆逐隊は分散して、敵艦隊の三方から攻め懸かるのである。

「さて、今度も誰も死なないといいのですが……」

 残った重巡とミズーリの副砲の攻撃をジグザグ機動で回避しながら、雪風は全速前進する。駆逐艦は本気を出せば時速80kmは出せるので、それが本気で回避行動を取れば砲弾を命中させるのは非常に困難である。

『こちら峯風。敵戦艦を射程に収めた』
「流石、島風型は速いですね。魚雷全門発射してください」
『無論だ』

 峯風は魚雷15本を一気に発射する。ミズーリが回避行動を取っても当たるように扇状に撃っているので、3本も当たれば十分である。

 だが、その魚雷は突如として間に割って入ってきた駆逐艦によって阻まれた。

『何? まだ生きていたのか?』
「たった今死にましたがね」
『そ、それはそうだが』

 どうやら死んだフリをして好機を待ち構えていたらしい駆逐艦は、峯風の酸素魚雷を舷側にモロに喰らい、たちまち船体が真っ二つになって沈んでいった。

「峯風、一旦退避し魚雷の装填を。っと、こちらにも敵が来たようです」

 もう死んだフリは通用しないと思ったのか、駆逐艦が一隻、雪風に突進して来た。刺し違えてでも食い止めるといったところだろう。

『主砲が全部高角砲になっていて対処できるのか?』
「雪風は問題ありませんよ。12.7cmもあれば、攻撃力は十分です」
『そういう問題か……?』

 一部の主砲を高角砲に置き換えるくらいなら駆逐艦でよくあることだが、雪風は珍しく全ての主砲を高角砲に換装していた。具体的には12.7cm連装高角砲が先頭に、後ろの2つは長10cm連装高角砲である。

「普通の主砲に航空機は狙えませんが、高角砲は航空機も水上艦艇も狙えるんですよ」
『な、ならいいが……』
「問題ありませんよ」

 単純な攻撃力なら普通の駆逐艦の主砲と大差ない。雪風は敵駆逐艦の砲撃を回避しながら、早速全ての高角砲で砲撃を開始した。12.7cm砲弾が1発、10cm砲弾が2発命中する。

「ふむ、やはり10cmで対艦攻撃は無理がありましたか」

 いずれも炸裂弾である。12.7cmの方は敵艦の艦橋前方の甲板を吹き飛ばしたが、10cmの方は装甲表面で食い止められてしまった。元より航空機を狙うものであり、紙装甲とは言え駆逐艦には相性が悪い。

「まあ、それはそれで、主砲塔一基に集中できるのはいいことですね」

 雪風は長10cm砲は牽制に適当に撃つだけで、きちんと狙いを定めるのを12.7cm砲に絞った。雪風が本気を込めた主砲はたちまち10発以上の命中弾を与える。だが雪風も12.7cm砲弾を4発は、それも対艦用の徹甲弾を喰らっていた。

「なかなか、沈みませんね……」
『おい大丈夫か、雪風?』

 凛々しい声で尋ねてくるのは駆逐艦綾波であった。長門並に軍人気質の船魄である。

「敵もそろそろ落ちますよ。あなたは自分のことに集中してください」
『そうか。しかし、こちらも敵艦の妨害に遭い戦艦に近寄れぬ』
「そっちに駆逐艦を引き付けてくれていれば、問題ありません。引き続きそのままで」
『承知した』

 雪風が放った砲弾が命中すると、敵の駆逐艦は弾薬に引火して大炎上し、戦闘能力を完全に喪失した。綾波と天津風が敵を引き付けているお陰で、雪風を阻むものは何もない。

「さて、それでは行きましょうか。峯風、魚雷の用意はいいですか?」
『いつでもいいぞ!』
「では、魚雷斉射」

 峯風と雪風が魚雷を放つ。峯風は15本、雪風は8本である。放射状に描かれる雷跡は美しく斜交し、ミズーリに逃げ場などない。

『命中。4本は当たったぞ!』
「こちらも2本は当たりました。勝ちみたいですね」

 ミズーリは6本の魚雷を喰らい沈黙した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

天竜川で逢いましょう 〜日本史教師が石田三成とか無理なので平和な世界を目指します〜

岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。 けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。 髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。 戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!!??? そもそも現代人が生首とか無理なので、平和な世の中を目指そうと思います。

If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら? 国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。 真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…分水嶺で下された「if」の決断。 破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦を描く架空戦記。 現在1945年夏まで執筆

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

処理中です...