296 / 766
第十五章 第二次世界大戦(攻勢編)
ユニコーンの最期
しおりを挟む
「ユニコーン、完全に沈黙しました」
「うむ。終わったようだな」
ユニコーンは艦橋を吹き飛ばされ、完全に無力化された。グラーフ・ツェッペリンの勝利である。
「では、せっかくだしユニコーンに乗り込むとしよう」
ツェッペリンは唐突に提案した。
「どうしてそうなる?」
「ユニコーンは生きているかもしれないし、そうであれば捕獲することに意味はあるのではないか?」
「確かに、合理的な見解だな。そうしよう」
そういう訳で早速、ツェッペリンとシュニーヴィント上級大将は完全武装の兵士200名ばかりを率いて、沈黙したユニコーンに乗り込んだ。ユニコーンの乗員はツェッペリンと同様、通常の空母と比べて遥かに少なく、艦内はまるで無人のようであった。
稀に見つけた兵士は戦うまでもなく投降し、ツェッペリンは檣楼を登って艦橋に迫った。階段を登っていくと、その時、銃声が響き渡った。
「隠れろ!!」
「まだ抵抗する気があるとは。とっとと殲滅せよ」
「彼らは君の部下ではないんだがなあ……」
シュニーヴィント上級大将が改めて命じて、小さな銃撃戦が始まったが、結果は言うまでもない。護身用程度の拳銃しか持っていないイギリス兵など、突撃銃の集中砲火であっという間に皆殺しにされた。
「敵は全滅しました!」
「うむ。大義である。行くとしよう」
水兵に先導されつつ、ツェッペリンはユニコーンの艦橋に入った。艦橋はあちこちが焼け焦げていたが、既に火は消し止められていた。しかし爆死して四散した死体や焼死した死体があちこちに転がっている。
「ふむ。ユニコーンも死んでしまったか……」
「こっちだ! こっちに、ユニコーンがいるぞ!」
「何?」
兵士が呼ぶところに行っていると、額から長い角の生えた少女が横たわっていた。その左脚は太腿の辺りから切断されており、到底助からないほどの血を流していたが、まだ意識はあった。
「お前が、ユニコーンか」
「あ、あなたが……ツェッペリン、ですか……?」
今にも途切れそうな声でユニコーンは問う。
「いかにも」
「そう、ですか……。今すぐ、殺してさしあげたい、ですが……武器もなく、手も動きません……。残念、ですわ……」
「そうか。せっかくの同類ができたと思ったが、残念だ」
「残念……? 何を、言っているんですか……?」
「何でもよかろう。ただ、もう少し話をしたかったというだけだ。最期に言い残すことは?」
「そう、ですね……。英国と、国王陛下に……栄光、あれ…………」
そうして、ユニコーンは眠るように死んだ。船魄として生まれてから僅かに10日ほどの一生を終えたのであった。ユニコーンの遺体はツェッペリンに運び込まれ、大戦終結の後にイギリスに返還された。
空母ユニコーンはドイツ海軍によって鹵獲され、ドイツの船魄技術に多少の見識をもたらしたが、余りにも損傷が激しく、調査の後に解体された。なおラムゼー大将は空軍の爆撃で既に死亡していた。
しかしツェッペリンも左舷を大きく損傷して大破判定であり、少なくとも半年はドックに籠らないと応急修理すらままならないという状況であった。とは言え、ヨーロッパを主戦場にしている限りは地上の飛行場が使えるので、ツェッペリンはまだ暫く酷使されることとなるのだが。
○
さて、イギリス軍はユニコーンという最後の希望を失い、ドイツ軍に抵抗する能力を完全に失った。事実上の最高指揮官になっていたモンゴメリー元帥は無条件降伏の意思を固め、国王にそれを上奏した。
イギリス国王は急遽モンゴメリー元帥を首相に任命し、イギリスはモンゴメリー首相の名でドイツに対して無条件降伏を申し入れた。ついに悪の連合の一角が崩れたのである。
また、イギリスが降伏すると同時に、ツェッペリンはユニコーンがチャーチルを殺していたことを知った。
「ほう、ユニコーンがそんなことを。とんだ忠義者だな、奴は」
「上司を裏切ったのだから、忠義者とは真逆じゃないのか?」
シュニーヴィント上級大将は不思議そうに聞き返した。
「チャーチルは世界の癌だが、イギリスにとっても癌そのものであった。ユニコーンは国王への忠義故に、寄生虫を駆除したのであろう」
「なるほど。そういう考えもあるな」
そんな下らない話をしつつ、一行が向かったのはベルリンであった。連合国の無差別爆撃から解放されたとは言え、未だに活気の戻らぬベルリンである。ツェッペリンは総統官邸に呼び出された。
総統の宮殿のような執務室にツェッペリンは一人だけ呼び出された。緊張して中に入ると、総統と数名の高官が待ち構えていた。
「さあツェッペリン、緊張しないで、こっちに来てくれ」
「は、はい!」
ツェッペリンは肩身が狭そうにしながら総統の机の前に立った。そして総統は、ツェッペリンに桐の箱を自ら手渡した。
「こ、これは……?」
「大鉄十字章だ。君の貢献に報いるには、これを贈る他にはないと思ってね」
第一次世界大戦以降では、ゲーリング国家元帥に次いで2人目の受賞である。
「わ、わざわざこのようなものを下さるとは、感謝のしようもありませんッ!」
「喜んでもらえたなら、私も嬉しいよ。本当にありがとう。君のお陰で、ドイツは救われたのだ」
ソ連との戦争はまだ継続しているが、米英の支援が途絶え、制海権も奪われた赤軍に、ドイツに侵攻する力は最早残されていない。ヨーロッパはツェッペリンによって救われたのだ。
「うむ。終わったようだな」
ユニコーンは艦橋を吹き飛ばされ、完全に無力化された。グラーフ・ツェッペリンの勝利である。
「では、せっかくだしユニコーンに乗り込むとしよう」
ツェッペリンは唐突に提案した。
「どうしてそうなる?」
「ユニコーンは生きているかもしれないし、そうであれば捕獲することに意味はあるのではないか?」
「確かに、合理的な見解だな。そうしよう」
そういう訳で早速、ツェッペリンとシュニーヴィント上級大将は完全武装の兵士200名ばかりを率いて、沈黙したユニコーンに乗り込んだ。ユニコーンの乗員はツェッペリンと同様、通常の空母と比べて遥かに少なく、艦内はまるで無人のようであった。
稀に見つけた兵士は戦うまでもなく投降し、ツェッペリンは檣楼を登って艦橋に迫った。階段を登っていくと、その時、銃声が響き渡った。
「隠れろ!!」
「まだ抵抗する気があるとは。とっとと殲滅せよ」
「彼らは君の部下ではないんだがなあ……」
シュニーヴィント上級大将が改めて命じて、小さな銃撃戦が始まったが、結果は言うまでもない。護身用程度の拳銃しか持っていないイギリス兵など、突撃銃の集中砲火であっという間に皆殺しにされた。
「敵は全滅しました!」
「うむ。大義である。行くとしよう」
水兵に先導されつつ、ツェッペリンはユニコーンの艦橋に入った。艦橋はあちこちが焼け焦げていたが、既に火は消し止められていた。しかし爆死して四散した死体や焼死した死体があちこちに転がっている。
「ふむ。ユニコーンも死んでしまったか……」
「こっちだ! こっちに、ユニコーンがいるぞ!」
「何?」
兵士が呼ぶところに行っていると、額から長い角の生えた少女が横たわっていた。その左脚は太腿の辺りから切断されており、到底助からないほどの血を流していたが、まだ意識はあった。
「お前が、ユニコーンか」
「あ、あなたが……ツェッペリン、ですか……?」
今にも途切れそうな声でユニコーンは問う。
「いかにも」
「そう、ですか……。今すぐ、殺してさしあげたい、ですが……武器もなく、手も動きません……。残念、ですわ……」
「そうか。せっかくの同類ができたと思ったが、残念だ」
「残念……? 何を、言っているんですか……?」
「何でもよかろう。ただ、もう少し話をしたかったというだけだ。最期に言い残すことは?」
「そう、ですね……。英国と、国王陛下に……栄光、あれ…………」
そうして、ユニコーンは眠るように死んだ。船魄として生まれてから僅かに10日ほどの一生を終えたのであった。ユニコーンの遺体はツェッペリンに運び込まれ、大戦終結の後にイギリスに返還された。
空母ユニコーンはドイツ海軍によって鹵獲され、ドイツの船魄技術に多少の見識をもたらしたが、余りにも損傷が激しく、調査の後に解体された。なおラムゼー大将は空軍の爆撃で既に死亡していた。
しかしツェッペリンも左舷を大きく損傷して大破判定であり、少なくとも半年はドックに籠らないと応急修理すらままならないという状況であった。とは言え、ヨーロッパを主戦場にしている限りは地上の飛行場が使えるので、ツェッペリンはまだ暫く酷使されることとなるのだが。
○
さて、イギリス軍はユニコーンという最後の希望を失い、ドイツ軍に抵抗する能力を完全に失った。事実上の最高指揮官になっていたモンゴメリー元帥は無条件降伏の意思を固め、国王にそれを上奏した。
イギリス国王は急遽モンゴメリー元帥を首相に任命し、イギリスはモンゴメリー首相の名でドイツに対して無条件降伏を申し入れた。ついに悪の連合の一角が崩れたのである。
また、イギリスが降伏すると同時に、ツェッペリンはユニコーンがチャーチルを殺していたことを知った。
「ほう、ユニコーンがそんなことを。とんだ忠義者だな、奴は」
「上司を裏切ったのだから、忠義者とは真逆じゃないのか?」
シュニーヴィント上級大将は不思議そうに聞き返した。
「チャーチルは世界の癌だが、イギリスにとっても癌そのものであった。ユニコーンは国王への忠義故に、寄生虫を駆除したのであろう」
「なるほど。そういう考えもあるな」
そんな下らない話をしつつ、一行が向かったのはベルリンであった。連合国の無差別爆撃から解放されたとは言え、未だに活気の戻らぬベルリンである。ツェッペリンは総統官邸に呼び出された。
総統の宮殿のような執務室にツェッペリンは一人だけ呼び出された。緊張して中に入ると、総統と数名の高官が待ち構えていた。
「さあツェッペリン、緊張しないで、こっちに来てくれ」
「は、はい!」
ツェッペリンは肩身が狭そうにしながら総統の机の前に立った。そして総統は、ツェッペリンに桐の箱を自ら手渡した。
「こ、これは……?」
「大鉄十字章だ。君の貢献に報いるには、これを贈る他にはないと思ってね」
第一次世界大戦以降では、ゲーリング国家元帥に次いで2人目の受賞である。
「わ、わざわざこのようなものを下さるとは、感謝のしようもありませんッ!」
「喜んでもらえたなら、私も嬉しいよ。本当にありがとう。君のお陰で、ドイツは救われたのだ」
ソ連との戦争はまだ継続しているが、米英の支援が途絶え、制海権も奪われた赤軍に、ドイツに侵攻する力は最早残されていない。ヨーロッパはツェッペリンによって救われたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
徳川慶勝、黒船を討つ
克全
歴史・時代
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
尾張徳川家(尾張藩)の第14代・第17代当主の徳川慶勝が、美濃高須藩主・松平義建の次男・秀之助ではなく、夭折した長男・源之助が継いでおり、彼が攘夷派の名君となっていた場合の仮想戦記を書いてみました。夭折した兄弟が活躍します。尾張徳川家15代藩主・徳川茂徳、会津藩主・松平容保、桑名藩主・松平定敬、特に会津藩主・松平容保と会津藩士にリベンジしてもらいます。
もしかしたら、消去するかもしれません。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
改大和型戦艦一番艦「若狭」抜錨す
みにみ
歴史・時代
史実の第二次世界大戦が起きず、各国は技術力を誇示するための
「第二次海軍休日」崩壊後の無制限建艦競争に突入した
航空機技術も発達したが、それ以上に電子射撃装置が劇的に進化。
航空攻撃を無力化する防御陣形が確立されたことで、海戦の決定打は再び「巨大な砲」へと回帰した。
そんな中⑤計画で建造された改大和型戦艦「若狭」 彼女が歩む太平洋の航跡は
蒼穹の裏方
Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し
未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
小沢機動部隊
ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。
名は小沢治三郎。
年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。
ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。
毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。
楽しんで頂ければ幸いです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる