320 / 766
第十七章 大西洋海戦
第五艦隊の到着
しおりを挟む
「これで双方の戦力は互角……いえ、エンタープライズと鳳翔であればエンタープライズの方が強力な船魄ですから、我が方が有利になったと言えます」
グラーフ・ローンはビスマルクとティルピッツに言う。鳳翔の方が艦載機搭載数は多いのだが、鳳翔は一度の実戦を経験したこともなく、エンタープライズに比べれば見劣りすると言わざるを得ない。故に天秤はドイツ軍に傾いているのだ。
「しかし、それで瑞鶴が降伏してくれるでありましょうか?」
「それは私には分かりませんが、瑞鶴は倍の敵を前にしても臆しないと聞いています」
「だが、それは逃げ道がある時の話だ。実際、日本艦隊と刃を交えた時は我が国に逃げ込んできたんだからな」
「ふむ……。こういう時は瑞鶴に聞いてみるのであります」
ビスマルクはそう思い立つと早速瑞鶴に投降を呼び掛けた。が、瑞鶴は『降伏なんてするわけないでしょ』と言って交渉する気もないようであった。
「うむ……。やはり圧倒的な戦力がなければ降伏してはくれないのでありますか」
「優勢ですが圧倒的とは言い難いですからね」
「圧倒的と言ってもいいくらいの戦力差はあると思うんだがな」
ドイツ側の空母はペーター・シュトラッサー、エーギル、ニョルズ、エンタープライズであり、月虹側の空母は瑞鶴、グラーフ・ツェッペリン、鳳翔である。艦載機は合計して450対280であり、相当に優勢である。
「どうしたものか……」
「姉さん、そもそもの話だが、仮に戦闘状態に入ったら、鳳翔は本当に月虹と共に戦うのか?」
ドイツの軍艦と日本の軍艦が戦闘状態に入れば、最悪の場合は戦争に発展するかもしれない。その危険を日本が冒すだろうか。
「我々と鳳翔が交戦した場合、我が国と日本の関係が非常に悪化することは間違いないのであります。しかし戦争などにはならないでしょう。何故ならば、どちらも戦争を望んでいないからであります」
「戦争にならないから、日本軍は私達と戦うことにも躊躇しないと?」
「そうであります。そして日本は自らの船魄技術が流出することを非常に恐れているのであります。故に、瑞鶴やその他日本の船魄が他国に奪われることは絶対に許容しないでしょう」
「分かった。なら、とっとと戦闘を始めた方がいいんじゃないか? 日本軍の援軍がまた来るかもしれない」
「ティルピッツの言う通りであります。本当は話し合いだけで解決したかったものですが、仕方がないのでしょう。ティルピッツ、OKWに戦闘開始の許可を取って欲しいのであります」
「了解だ」
ティルピッツは国防軍最高司令部に現況を伝え戦闘開始の許可を求めた。が、OKWはなかなか結論を出せず、6時間が経っても返答はなかった。
「まったく、OKWは何をやってるんだ……」
「まあまあティルピッツ。国家の重大な決定なのでありますから、そう簡単に結論は出ないというものでありますよ」
「それはそうかもしれないが……」
と、その時であった。グラーフ・ローンが緊張した声で言う。
「お二人とも、大変です。西から接近する未知の艦影を探知しました。それも単艦ではなく艦隊です」
「どうやら、噂をすればというものでありますな。日本軍の増援でしょう」
「どうすんだ、姉さん?」
「困ったものでありますな。ティルピッツ、一先ずはOKWにこのことを伝えてください。それとグラーフ・ローン、シュロス基地に偵察機を飛ばして敵の戦力を把握するよう伝えてください」
そういう訳で人間の偵察機が掴んだ情報は、ビスマルクの予想した通りであった。日本海軍の第五艦隊、戦艦二隻と空母二隻を含む有力な艦隊である。特に旧式とは言え戦艦が敵に加わった影響は大きい。
「敵は西から来ています。このままでは第二隊群が挟み撃ちにされますが」
「そうでありますな。これで挟撃は意味をなくしてしまいました。直ちに第二隊群は第一隊群に合流させます」
「シュロス基地は放っておいていいのですか?」
「流石に我が国の領土――ああいえ、イギリスの領土に直接攻撃してくることはないでしょう。戦力としても偵察にしか役に立たないのでありますし」
「分かりました。では陣形を再構築しましょう。ついでにエンタープライズとも合流するのはいかがですか?」
「名案であります。そのようにしましょう」
大洋艦隊はエンタープライズの許に集結し、空母達を中心にした輪形陣を敷いた。
○
「まさかあんたまで来るとは思わなかったわ、長門」
『命令で来ただけだ』
「あ、そう」
相変わらず瑞鶴と長門の仲は最悪である。
「取り敢えず、第五艦隊には私の指揮下に入ってもらおうかしら」
『……分かった。それが最も合理的だ』
今回の連合艦隊は空母が主体である。瑞鶴が指揮するのが適切だろう。
「それと、鳳翔にも私の指揮を受けるように言っておいて」
『人を召使いのように……』
と言いつつも、長門は鳳翔艦隊にも連絡を付けて、瑞鶴の指揮下に入ることを納得させた。そういう訳で日本艦隊も空母を中心とした輪形陣を組み、両軍はおよそ80kmという近距離に対陣した。
グラーフ・ローンはビスマルクとティルピッツに言う。鳳翔の方が艦載機搭載数は多いのだが、鳳翔は一度の実戦を経験したこともなく、エンタープライズに比べれば見劣りすると言わざるを得ない。故に天秤はドイツ軍に傾いているのだ。
「しかし、それで瑞鶴が降伏してくれるでありましょうか?」
「それは私には分かりませんが、瑞鶴は倍の敵を前にしても臆しないと聞いています」
「だが、それは逃げ道がある時の話だ。実際、日本艦隊と刃を交えた時は我が国に逃げ込んできたんだからな」
「ふむ……。こういう時は瑞鶴に聞いてみるのであります」
ビスマルクはそう思い立つと早速瑞鶴に投降を呼び掛けた。が、瑞鶴は『降伏なんてするわけないでしょ』と言って交渉する気もないようであった。
「うむ……。やはり圧倒的な戦力がなければ降伏してはくれないのでありますか」
「優勢ですが圧倒的とは言い難いですからね」
「圧倒的と言ってもいいくらいの戦力差はあると思うんだがな」
ドイツ側の空母はペーター・シュトラッサー、エーギル、ニョルズ、エンタープライズであり、月虹側の空母は瑞鶴、グラーフ・ツェッペリン、鳳翔である。艦載機は合計して450対280であり、相当に優勢である。
「どうしたものか……」
「姉さん、そもそもの話だが、仮に戦闘状態に入ったら、鳳翔は本当に月虹と共に戦うのか?」
ドイツの軍艦と日本の軍艦が戦闘状態に入れば、最悪の場合は戦争に発展するかもしれない。その危険を日本が冒すだろうか。
「我々と鳳翔が交戦した場合、我が国と日本の関係が非常に悪化することは間違いないのであります。しかし戦争などにはならないでしょう。何故ならば、どちらも戦争を望んでいないからであります」
「戦争にならないから、日本軍は私達と戦うことにも躊躇しないと?」
「そうであります。そして日本は自らの船魄技術が流出することを非常に恐れているのであります。故に、瑞鶴やその他日本の船魄が他国に奪われることは絶対に許容しないでしょう」
「分かった。なら、とっとと戦闘を始めた方がいいんじゃないか? 日本軍の援軍がまた来るかもしれない」
「ティルピッツの言う通りであります。本当は話し合いだけで解決したかったものですが、仕方がないのでしょう。ティルピッツ、OKWに戦闘開始の許可を取って欲しいのであります」
「了解だ」
ティルピッツは国防軍最高司令部に現況を伝え戦闘開始の許可を求めた。が、OKWはなかなか結論を出せず、6時間が経っても返答はなかった。
「まったく、OKWは何をやってるんだ……」
「まあまあティルピッツ。国家の重大な決定なのでありますから、そう簡単に結論は出ないというものでありますよ」
「それはそうかもしれないが……」
と、その時であった。グラーフ・ローンが緊張した声で言う。
「お二人とも、大変です。西から接近する未知の艦影を探知しました。それも単艦ではなく艦隊です」
「どうやら、噂をすればというものでありますな。日本軍の増援でしょう」
「どうすんだ、姉さん?」
「困ったものでありますな。ティルピッツ、一先ずはOKWにこのことを伝えてください。それとグラーフ・ローン、シュロス基地に偵察機を飛ばして敵の戦力を把握するよう伝えてください」
そういう訳で人間の偵察機が掴んだ情報は、ビスマルクの予想した通りであった。日本海軍の第五艦隊、戦艦二隻と空母二隻を含む有力な艦隊である。特に旧式とは言え戦艦が敵に加わった影響は大きい。
「敵は西から来ています。このままでは第二隊群が挟み撃ちにされますが」
「そうでありますな。これで挟撃は意味をなくしてしまいました。直ちに第二隊群は第一隊群に合流させます」
「シュロス基地は放っておいていいのですか?」
「流石に我が国の領土――ああいえ、イギリスの領土に直接攻撃してくることはないでしょう。戦力としても偵察にしか役に立たないのでありますし」
「分かりました。では陣形を再構築しましょう。ついでにエンタープライズとも合流するのはいかがですか?」
「名案であります。そのようにしましょう」
大洋艦隊はエンタープライズの許に集結し、空母達を中心にした輪形陣を敷いた。
○
「まさかあんたまで来るとは思わなかったわ、長門」
『命令で来ただけだ』
「あ、そう」
相変わらず瑞鶴と長門の仲は最悪である。
「取り敢えず、第五艦隊には私の指揮下に入ってもらおうかしら」
『……分かった。それが最も合理的だ』
今回の連合艦隊は空母が主体である。瑞鶴が指揮するのが適切だろう。
「それと、鳳翔にも私の指揮を受けるように言っておいて」
『人を召使いのように……』
と言いつつも、長門は鳳翔艦隊にも連絡を付けて、瑞鶴の指揮下に入ることを納得させた。そういう訳で日本艦隊も空母を中心とした輪形陣を組み、両軍はおよそ80kmという近距離に対陣した。
0
あなたにおすすめの小説
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
徳川慶勝、黒船を討つ
克全
歴史・時代
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
尾張徳川家(尾張藩)の第14代・第17代当主の徳川慶勝が、美濃高須藩主・松平義建の次男・秀之助ではなく、夭折した長男・源之助が継いでおり、彼が攘夷派の名君となっていた場合の仮想戦記を書いてみました。夭折した兄弟が活躍します。尾張徳川家15代藩主・徳川茂徳、会津藩主・松平容保、桑名藩主・松平定敬、特に会津藩主・松平容保と会津藩士にリベンジしてもらいます。
もしかしたら、消去するかもしれません。
防空戦艦大和 太平洋の嵐で舞え
みにみ
歴史・時代
航空主兵論と巨砲主義が対立する1938年。史上最大の46cm主砲と多数の対空火器を併せ持つ戦艦「大和」が建造された。矛盾を抱える艦は、開戦後の航空機による脅威に直面。その真価を問われる時が来る。
日本が危機に?第二次日露戦争
杏
歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。
なろう、カクヨムでも連載しています。
小沢機動部隊
ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。
名は小沢治三郎。
年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。
ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。
毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。
楽しんで頂ければ幸いです!
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる