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第十九章 メキシコ戦役
エンタープライズの攻勢
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「だがエンタープライズ、やり合うのはいいとして、お前の飛行甲板はぶっ壊れてるじゃないか? どうする気だ?」
「あなた達が何とかしてくださいよ。何の為に私に乗っているのですか?」
エンタープライズ含め、船魄達は基本的に無人運用を前提にしているので、艦載機を格納庫からエレベーターで飛行甲板に上げてカタパルトに取り付けて発艦させるまでの過程は全て自動化されている。それ故に飛行甲板に支障が出ると無力化されてしまうのだが、アメリカ軍は基本的に全ての軍艦に人間を乗せているので、こういうトラブルにも対処することが可能なのだ。
「何を出せばいい?」
「取り敢えず、コメットを更に出しましょう。ソ連海軍を下がらせることは必要です」
「了解だ。任せておけ」
飛行甲板は真ん中に穴が空いているのでコメットを端の方に置いて、発艦を始める。エンタープライズの長大な飛行甲板があればカタパルトがなくても離陸することは可能である。それに他の空母は無傷である。
「発艦に多少時間がかかりますが、大した問題ではないですね」
「人間にやらせたいことがあったら言ってくれ。頼んだぞ」
「ええ。全機、特攻を開始します」
再び放たれたコメット隊は、圧倒的な速度で日ソの航空隊をすり抜けていった。
○
『長門、エンタープライズがまたコメットを出してきたわよ』
瑞鶴はすぐに報告を飛ばした。今回は敵がコメットを出した瞬間に察知することができるのである。
『分かった……。全艦、対空戦闘用意!』
今度も全て撃ち落とすのは不可能だと察しつつも、長門は全艦に迎撃を命令する。だが手の内を変えていない訳ではない。
『妙高、水際防御を頼んだぞ』
「は、はい!」
どうせ狙いはソビエツキー・ソユーズだろう。ソユーズの前ではウクライナが盾になっているが、長門は更にその前に妙高・高雄・愛宕を配置して、何としてでもソ連艦隊が撤退するのを防ぐ構えでいる。
『三式弾撃ち方始め!! 一機たりとも敵を通すな!!』
前回よりもやや少ないようであるが、敵は今回も30機ばかり。戦艦が主砲斉射を行い、数秒遅れて重巡達も斉射を行う。しかし鈍重な主砲の動きはすっかり読まれているのか、まだ半分が残っている。
「高角砲、機銃、全力で撃ってください!!」
やはり敵の狙いはソビエツキー・ソユーズのようだ。ソユーズとウクライナと共に、妙高達は全力で射撃を行う。
『ここで、何としてでも落とさなければ……』
『あら、今回もダメな気がするわ、お姉ちゃん』
『何を――これは……!?』
愛宕がその予兆を嗅ぎ取った直後であった。コメットの編隊が突如として凄まじい勢いで上昇を始めたのである。高角砲ではその動きを追うことすらできない。
「な、何をする気なの!?」
『急降下し――本当にしてきたわね』
数秒で3kmほど上昇した後、今度は一転して急降下。あまりの激しい動きに歴戦のソビエツキー・ソユーズですら対応できない。そしてコメットが突入した先は、ソビエツカヤ・ウクライナであった。ウクライナの一番主砲塔の周囲に4機のコメットが突き刺さって爆発する。
『同志ウクライナ!!』
『う、ぐ、ああっ……お姉、ちゃん……』
『今すぐ弾薬庫に注水しろ!! 誘爆したら死ぬぞ!!』
ソユーズは有無を言わさぬという声で叫んだ。ウクライナの心配よりも、まずは弾薬庫の誘爆だけは阻止しなければならない。
『うん……わ、分かった……』
『急げ!! 全力で注水しろ!!』
『も、もう、お姉ちゃん、そのくらい、できるよ……』
『……それなら、いいのだ』
艦内では火災が起こっているが、ウクライナは弾薬庫に海水を素早く流し込んで水浸しにし、これで誘爆が起こることはない。一先ずの危機は回避された。
『それで……同志ウクライナ、損害はどれほどだ?』
『一番砲塔が使えなくなっちゃったけど、他は問題ないよ!』
『そうか……。それは、よかった……』
と、ソユーズが安堵するも束の間、ベラルーシが冷ややかな声で呼び掛ける。
『姉さん、どうやらよくないみたいだ』
『どうした?』
『たった今、同志フルシチョフ第一書記から連絡が入った』
『それは、同志ウクライナを撤退させろという話か?』
『ああ、その通り』
ソビエト連邦の最高指導者ニキータ・フルシチョフはウクライナ育ちである。ウクライナの名を冠する艦が沈むことは許されないのだ。
『クソッ。またか……』
『姉さんだって、ウクライナに沈んで欲しくはないだろう?』
『それはそうだが……。だが、撤退するのは同志ウクライナだけだ。我々は戦闘を継続する。それでいいな?』
『ああ、それでいい。エンタープライズは恐らく、追い打ちをすることはないだろう』
エンタープライズの一先ずの目的は連合艦隊の数を減らすことであろう。であれば、逃げる敵を追撃することにコメットを浪費するのは非合理的である。
『いや、しかし、ここで同志ウクライナを攻撃すれば、同志ウクライナを護衛せざるを得なくなるのではないか?』
『ふむ……。そういう可能性もあるね。いずれにせよ敵の出方次第だけど』
『分かった。まずは同志ウクライナを撤退させよう』
ウクライナはまだ戦えると言って譲らなかったが、ベラルーシが粛清をチラつかせて無理やり撤退させた。
「あなた達が何とかしてくださいよ。何の為に私に乗っているのですか?」
エンタープライズ含め、船魄達は基本的に無人運用を前提にしているので、艦載機を格納庫からエレベーターで飛行甲板に上げてカタパルトに取り付けて発艦させるまでの過程は全て自動化されている。それ故に飛行甲板に支障が出ると無力化されてしまうのだが、アメリカ軍は基本的に全ての軍艦に人間を乗せているので、こういうトラブルにも対処することが可能なのだ。
「何を出せばいい?」
「取り敢えず、コメットを更に出しましょう。ソ連海軍を下がらせることは必要です」
「了解だ。任せておけ」
飛行甲板は真ん中に穴が空いているのでコメットを端の方に置いて、発艦を始める。エンタープライズの長大な飛行甲板があればカタパルトがなくても離陸することは可能である。それに他の空母は無傷である。
「発艦に多少時間がかかりますが、大した問題ではないですね」
「人間にやらせたいことがあったら言ってくれ。頼んだぞ」
「ええ。全機、特攻を開始します」
再び放たれたコメット隊は、圧倒的な速度で日ソの航空隊をすり抜けていった。
○
『長門、エンタープライズがまたコメットを出してきたわよ』
瑞鶴はすぐに報告を飛ばした。今回は敵がコメットを出した瞬間に察知することができるのである。
『分かった……。全艦、対空戦闘用意!』
今度も全て撃ち落とすのは不可能だと察しつつも、長門は全艦に迎撃を命令する。だが手の内を変えていない訳ではない。
『妙高、水際防御を頼んだぞ』
「は、はい!」
どうせ狙いはソビエツキー・ソユーズだろう。ソユーズの前ではウクライナが盾になっているが、長門は更にその前に妙高・高雄・愛宕を配置して、何としてでもソ連艦隊が撤退するのを防ぐ構えでいる。
『三式弾撃ち方始め!! 一機たりとも敵を通すな!!』
前回よりもやや少ないようであるが、敵は今回も30機ばかり。戦艦が主砲斉射を行い、数秒遅れて重巡達も斉射を行う。しかし鈍重な主砲の動きはすっかり読まれているのか、まだ半分が残っている。
「高角砲、機銃、全力で撃ってください!!」
やはり敵の狙いはソビエツキー・ソユーズのようだ。ソユーズとウクライナと共に、妙高達は全力で射撃を行う。
『ここで、何としてでも落とさなければ……』
『あら、今回もダメな気がするわ、お姉ちゃん』
『何を――これは……!?』
愛宕がその予兆を嗅ぎ取った直後であった。コメットの編隊が突如として凄まじい勢いで上昇を始めたのである。高角砲ではその動きを追うことすらできない。
「な、何をする気なの!?」
『急降下し――本当にしてきたわね』
数秒で3kmほど上昇した後、今度は一転して急降下。あまりの激しい動きに歴戦のソビエツキー・ソユーズですら対応できない。そしてコメットが突入した先は、ソビエツカヤ・ウクライナであった。ウクライナの一番主砲塔の周囲に4機のコメットが突き刺さって爆発する。
『同志ウクライナ!!』
『う、ぐ、ああっ……お姉、ちゃん……』
『今すぐ弾薬庫に注水しろ!! 誘爆したら死ぬぞ!!』
ソユーズは有無を言わさぬという声で叫んだ。ウクライナの心配よりも、まずは弾薬庫の誘爆だけは阻止しなければならない。
『うん……わ、分かった……』
『急げ!! 全力で注水しろ!!』
『も、もう、お姉ちゃん、そのくらい、できるよ……』
『……それなら、いいのだ』
艦内では火災が起こっているが、ウクライナは弾薬庫に海水を素早く流し込んで水浸しにし、これで誘爆が起こることはない。一先ずの危機は回避された。
『それで……同志ウクライナ、損害はどれほどだ?』
『一番砲塔が使えなくなっちゃったけど、他は問題ないよ!』
『そうか……。それは、よかった……』
と、ソユーズが安堵するも束の間、ベラルーシが冷ややかな声で呼び掛ける。
『姉さん、どうやらよくないみたいだ』
『どうした?』
『たった今、同志フルシチョフ第一書記から連絡が入った』
『それは、同志ウクライナを撤退させろという話か?』
『ああ、その通り』
ソビエト連邦の最高指導者ニキータ・フルシチョフはウクライナ育ちである。ウクライナの名を冠する艦が沈むことは許されないのだ。
『クソッ。またか……』
『姉さんだって、ウクライナに沈んで欲しくはないだろう?』
『それはそうだが……。だが、撤退するのは同志ウクライナだけだ。我々は戦闘を継続する。それでいいな?』
『ああ、それでいい。エンタープライズは恐らく、追い打ちをすることはないだろう』
エンタープライズの一先ずの目的は連合艦隊の数を減らすことであろう。であれば、逃げる敵を追撃することにコメットを浪費するのは非合理的である。
『いや、しかし、ここで同志ウクライナを攻撃すれば、同志ウクライナを護衛せざるを得なくなるのではないか?』
『ふむ……。そういう可能性もあるね。いずれにせよ敵の出方次第だけど』
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