軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~

takahiro

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第二十一章 北太平洋海戦

二線級の戦艦達

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 この場にいる全ての戦艦の砲火が武蔵に集中する。その主砲は実に52門。一斉に放たれた砲弾はもちろん全て命中することはないが、実に12発が武蔵の各所に命中し、武蔵は一時的に爆炎に包まれた。

『あらあら~。大丈夫ですか、武蔵さん~?』
「これは流石に、厳しいものではありますが……航行に支障はないので、あります……」
『ちょっと装甲を貫通されているみたいですけど、大丈夫ですか~?』
「端っこが多少破壊されたところで、問題は、ないのであります」

 戦艦の防御というのは中央部のバイタルパートに集中しており、先端や後端の防御は薄い。艦首や艦尾に命中した41cm砲弾は舷側装甲を貫き艦内で爆発していた。武蔵の前後から煙が絶えることなく上がり続けている。

 しかし同時に、バイタルパートというのはそれだけで浮くよう設計されている部分である。その装甲が撃ち抜かれない限り、武蔵が沈むことは決してない。

「それよりも、攻撃を始めるのであります。土佐は同航の敵艦隊に牽制を。本艦は正面の敵を食い破るのであります」
『了解です~』

 武蔵は艦橋より前の2基の主砲塔を1基ずつ正面の敵艦に向けた。そして後方の主砲塔は同航戦中の敵艦に向け、砲撃を始めた。そして同時に天城に命令を飛ばす。

「天城、正面の敵部隊、先頭の敵艦を全力で攻撃するのであります」
『敵の目を引きつけよ、ということですか』
「そうであります。全艦、全力で攻勢に出るのであります」

 武蔵正面にいる3隻の敵戦艦。そのうち1隻の相手は天城が担い、もう2隻の相手は武蔵が主砲塔1基ずつで担うという寸法である。

 武蔵は主砲斉射を行ない、その砲弾は2隻の戦艦に1発ずつ命中した。初弾から命中である。敵はサウスダコタ級戦艦のようだが、武蔵主砲に耐えられる筈もない。装甲を貫徹した徹甲弾は一撃で多大な損害を与えた。特に片方の戦艦は第一主砲塔直下の火薬庫に引火して、主砲塔が吹き飛ばされた。

「廃艦所要弾数は9発……。まだまだ沈みはしないようでありますが」

 と言っている間に、敵艦隊も再び斉射。武蔵に20発の砲弾が命中し、舷側の高角砲などは既に跡形もなく吹き飛ばされている。だが、もちろん主砲と副砲は無事であるし、船体に損傷はない。

 しかし、流石にこれだけの砲撃を受けると、武蔵の戦闘継続に支障が出てくる。

「レーダーが故障、測距儀も歪んでいる……。目視で戦闘する他ないようであります」

 敵までの距離を測定する重要な道具が二つとも故障してしまった。直接に砲撃を受けた訳ではないが、爆発の衝撃波で壊れてしまったのである。敵戦隊までの距離はおよそ15km。既に目視で敵を捉えている。観測機を発艦させている余裕はないので、武蔵は自らの目で次の主砲斉射を行った。

「外れ、でありますか……」

 急な射法の変更は、流石の武蔵にも厳しかったらしい。主砲弾は全て外れてしまった。こうなったら古典的に夾叉を狙って行く他ない。武蔵は交互撃ち方で照準を調整し始めるが、その間にアメリカ軍からの砲弾がまたしたも飛来。18発が命中した。少しは減り始めたようである。

「クッ……。高角砲も機銃も粗方吹き飛びましたか……。土佐、もっと火力を上げられないのでありますか?」
『そんなことをしたら、私が狙われちゃいますよ~』

 土佐は意図的に射撃の精度と頻度を落としていた。そのせいで10門の主砲があるにも拘わらず、敵に与えた損害は主砲塔一つを無力化するに留まっている。

「合理的ではありますが……事前に言ってください」
『すみません~』
「まあいいでしょう。今のまま適当に撃っていてください。天城は今のままで、敵艦と一対一で戦っていて欲しいのであります」
『巡洋戦艦のこの身に、戦艦と真正面から戦わせるとは……』
「そう一瞬で撃沈されるものではありますまい。頼むであります」
『承りました……』

 天城は敵の戦艦一隻――サウスダコタ級の一隻と真正面から砲撃戦を演じており、敵の目を引くという目的は完全に果たしている。武蔵は砲撃を続ける。

「次弾は……敵艦の前方に命中。夾叉。これならいけるのであります」

 かなり運がよく、二度の射撃で敵艦を挟み込むことに成功した。武蔵はその中間くらいに照準を合わせ、砲撃を再開する。第三主砲塔の照準には集中していられないので、側面の敵戦隊には牽制として適当に撃ちまくっている。

 武蔵は15発程度の砲弾を継続的に喰らいつつ、正面の敵艦を確実に仕留めていく。

 ○

「馬鹿なッ……。武蔵は何発撃てば沈黙するんだ!」
「もう軽く100発以上は命中している筈なんですが……」
「バイタルパートの装甲を貫通できた砲弾は、恐らく一発もありません。副砲を破壊するか、バイタルパート外の装甲を貫通するか。それだけかと」

 一見すると武蔵は相当に損傷しているように見える。艦尾と艦首は崩れて中身が見えているし、中央部には破壊された高角砲の残骸が転がっている。だが武蔵の戦闘能力の中核を成す機関と主砲は無傷であった。

「クッ……。何て奴だ……」
「戦車を機関銃で何万発撃っても無駄、ということでしょうか」
「無駄に的確な例えを持ち出すな」
「す、すみません……」
「謝る必要はない。だが甘く見ていた……。何とか、武蔵だけは無力化しなければ……」
「戦艦に体当たりさせる他にないのでは?」
「体当たりか……。ああ、それしかないな」

 シャーマン大将は武蔵の無力化さえできればよいとして、サウスダコタに次の作戦を命じた。

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