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第二十三章 ワシントン決戦
リッチモンドの戦い
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一九五六年七月二十五日、首相官邸ホワイトハウス。
マーシャル元帥はリッチモンドを首都防衛の最後の砦と位置付け、サンローラン線を上回る要塞化を行っていた。サンローラン線にもあった41cm3連装砲も4基配備している。
「80cm列車砲は今のところ確認されておりません。41cm要塞砲に対する脅威はありませんかと」
マーシャル元帥はアイゼンハワー首相に報告した。
「流石のドイツでも、あんなものを量産しようとは思わなかったらしいな」
「あれほど巨大なものを、ベーリング海峡ならともかく、大西洋を越えて輸送しようなどとは、流石に思わないでしょう」
駆逐艦一隻と同じ重さの80cm列車砲は、船の積荷としては規格外の大きさである。総合計で何千トンという積荷を載せられる輸送船でもこれを輸送するのは困難であろう。日本軍が大和型の主砲を運送する為に建造した運搬艦樫野のような特殊な船が必要である。
しかしそういう船は概して遅く、万一にも潜水艦などに捕捉されれば逃げ切れない。1門製造するのに国家予算級の費用がかかる80cm列車砲を何の活躍もさせられずに失うのはドイツでも耐え難いだろう。
「残る脅威は、地中貫通爆弾か」
「はい。あれを喰らえば、流石の要塞砲も耐えられますまい」
動き回る戦艦ならば地中貫通爆弾を回避することは容易だが、要塞砲は当然動けない。地中貫通爆弾が直撃すれば41cm砲に耐え得る装甲も簡単に貫通されてしまうだろう。
○
さて、ビスマルクから支援要請を受けた瑞鶴は、ツェッペリンと鳳翔と共に、早速リッチモンドに艦載機を送り込んだ。
「反撃は一切なし。局地戦闘機も出てこない。何考えてるのかしら」
瑞鶴の航空隊はリッチモンド要塞の上空に辿り着いたが、何の攻撃も受けなかった。地上には高射砲の姿も高射機関砲の姿も見えず、迎撃に戦闘機が出てくることもない。航空機のエンジン音以外何も聞こえない不気味な戦場であった。
『ふはは。アメリカの雑魚共が、最早我らに抗うことを諦めたのではないか?』
ツェッペリンは自信満々に言って高笑いする。
「諦めた、ねえ」
瑞鶴はツェッペリンを馬鹿にする言葉を考えるが、その前に意外な言葉が意外な相手から飛んでくる。
『ツェッペリンさんの言葉も、あながち間違いではないかもしれません』
と、言うのは鳳翔である。瑞鶴はどういうことかと聞き返す。
『リッチモンドまで攻め込まれているということは、アメリカ軍は壊滅的な状況だということです。その状況で制空権を確保することは不可能だと考えるのは、無理もありませんかと』
「だから最初から地下壕に引き籠るつもりってこと?」
『恐らくは。十分に頑丈な地下壕であれば、航空機では手を出せません』
「なるほどね。ツェッペリンはそんなこと考えてないだろうけど」
『わ、我もそのくらい考えておったわ!』
「あー、はいはい凄い凄い」
制空権を確保することが絶望的なら、最初から鉄筋コンクリートを量産することに予算を注いだ方が合理的というものだ。
「まあ、取り敢えず攻撃を試してみましょうか。41cm要塞砲に爆撃するわ」
地上部隊にとって最大の脅威である41cm3連装砲に、瑞鶴の艦上爆撃機が攻撃を仕掛ける。そこまでしてもアメリカ軍は静観したままであった。
「八〇番爆弾投下っと」
800kgの大重量を誇る航空爆弾を水平爆撃で5つ投下する。爆弾は全て要塞砲の天蓋に命中して大爆発を起こすが、煙が晴れた後に見えたのは、多少の凹みが生じた程度で健在な要塞砲の姿であった。
「ま、そうなるわよね」
『瑞鶴さんはアイオワ級を何隻も沈めていらっしゃるのに、無理なのですか?』
鳳翔は問う。
「誰が落とそうと爆弾の威力は変わらないと思うけど、まあそうね。アイオワ級の主砲塔は破壊できた試しがないわ。全部魚雷で転覆させるか、機関室辺りをぶっ壊して撃破したからね」
『そうでしたか……。そうなると、厳しいものがありますね』
戦艦の主砲は直下に大量の爆薬を抱えた弾薬庫があるし、戦艦にとって戦闘能力の中核と言えるものであるから、最も厚く防御されている。それに加え、瑞鶴は知り得ないことであるが、ここの要塞砲は爆撃を受けることを見越して天蓋の装甲が増厚されていた。
『もっと強い爆弾が必要ということであるな』
「そうね。普通、戦艦の主砲塔をぶち抜こうなんて思わないから、そんな航空爆弾はないんだけど。ドイツにもないの?」
『ないな』
「あ、そう。破壊力ってのは私達にはどうしようもないし……どうしよう」
現在の装備ではどう工夫しても無理である。戦艦の主砲塔を貫通できる爆弾を用意するしかない。幸いにして、それは存在するにはしている。
「鳳翔、地中貫通爆弾を用意するよう帝国空軍に連絡してもらえる?」
『もちろんです。しかし、先日の二の舞になるのではありませんか?』
地中貫通爆弾を運べる戦略爆撃機は戦闘機のいい標的である。その存在が知れればアメリカ軍も全力で迎撃してくることが予想される。
マーシャル元帥はリッチモンドを首都防衛の最後の砦と位置付け、サンローラン線を上回る要塞化を行っていた。サンローラン線にもあった41cm3連装砲も4基配備している。
「80cm列車砲は今のところ確認されておりません。41cm要塞砲に対する脅威はありませんかと」
マーシャル元帥はアイゼンハワー首相に報告した。
「流石のドイツでも、あんなものを量産しようとは思わなかったらしいな」
「あれほど巨大なものを、ベーリング海峡ならともかく、大西洋を越えて輸送しようなどとは、流石に思わないでしょう」
駆逐艦一隻と同じ重さの80cm列車砲は、船の積荷としては規格外の大きさである。総合計で何千トンという積荷を載せられる輸送船でもこれを輸送するのは困難であろう。日本軍が大和型の主砲を運送する為に建造した運搬艦樫野のような特殊な船が必要である。
しかしそういう船は概して遅く、万一にも潜水艦などに捕捉されれば逃げ切れない。1門製造するのに国家予算級の費用がかかる80cm列車砲を何の活躍もさせられずに失うのはドイツでも耐え難いだろう。
「残る脅威は、地中貫通爆弾か」
「はい。あれを喰らえば、流石の要塞砲も耐えられますまい」
動き回る戦艦ならば地中貫通爆弾を回避することは容易だが、要塞砲は当然動けない。地中貫通爆弾が直撃すれば41cm砲に耐え得る装甲も簡単に貫通されてしまうだろう。
○
さて、ビスマルクから支援要請を受けた瑞鶴は、ツェッペリンと鳳翔と共に、早速リッチモンドに艦載機を送り込んだ。
「反撃は一切なし。局地戦闘機も出てこない。何考えてるのかしら」
瑞鶴の航空隊はリッチモンド要塞の上空に辿り着いたが、何の攻撃も受けなかった。地上には高射砲の姿も高射機関砲の姿も見えず、迎撃に戦闘機が出てくることもない。航空機のエンジン音以外何も聞こえない不気味な戦場であった。
『ふはは。アメリカの雑魚共が、最早我らに抗うことを諦めたのではないか?』
ツェッペリンは自信満々に言って高笑いする。
「諦めた、ねえ」
瑞鶴はツェッペリンを馬鹿にする言葉を考えるが、その前に意外な言葉が意外な相手から飛んでくる。
『ツェッペリンさんの言葉も、あながち間違いではないかもしれません』
と、言うのは鳳翔である。瑞鶴はどういうことかと聞き返す。
『リッチモンドまで攻め込まれているということは、アメリカ軍は壊滅的な状況だということです。その状況で制空権を確保することは不可能だと考えるのは、無理もありませんかと』
「だから最初から地下壕に引き籠るつもりってこと?」
『恐らくは。十分に頑丈な地下壕であれば、航空機では手を出せません』
「なるほどね。ツェッペリンはそんなこと考えてないだろうけど」
『わ、我もそのくらい考えておったわ!』
「あー、はいはい凄い凄い」
制空権を確保することが絶望的なら、最初から鉄筋コンクリートを量産することに予算を注いだ方が合理的というものだ。
「まあ、取り敢えず攻撃を試してみましょうか。41cm要塞砲に爆撃するわ」
地上部隊にとって最大の脅威である41cm3連装砲に、瑞鶴の艦上爆撃機が攻撃を仕掛ける。そこまでしてもアメリカ軍は静観したままであった。
「八〇番爆弾投下っと」
800kgの大重量を誇る航空爆弾を水平爆撃で5つ投下する。爆弾は全て要塞砲の天蓋に命中して大爆発を起こすが、煙が晴れた後に見えたのは、多少の凹みが生じた程度で健在な要塞砲の姿であった。
「ま、そうなるわよね」
『瑞鶴さんはアイオワ級を何隻も沈めていらっしゃるのに、無理なのですか?』
鳳翔は問う。
「誰が落とそうと爆弾の威力は変わらないと思うけど、まあそうね。アイオワ級の主砲塔は破壊できた試しがないわ。全部魚雷で転覆させるか、機関室辺りをぶっ壊して撃破したからね」
『そうでしたか……。そうなると、厳しいものがありますね』
戦艦の主砲は直下に大量の爆薬を抱えた弾薬庫があるし、戦艦にとって戦闘能力の中核と言えるものであるから、最も厚く防御されている。それに加え、瑞鶴は知り得ないことであるが、ここの要塞砲は爆撃を受けることを見越して天蓋の装甲が増厚されていた。
『もっと強い爆弾が必要ということであるな』
「そうね。普通、戦艦の主砲塔をぶち抜こうなんて思わないから、そんな航空爆弾はないんだけど。ドイツにもないの?」
『ないな』
「あ、そう。破壊力ってのは私達にはどうしようもないし……どうしよう」
現在の装備ではどう工夫しても無理である。戦艦の主砲塔を貫通できる爆弾を用意するしかない。幸いにして、それは存在するにはしている。
「鳳翔、地中貫通爆弾を用意するよう帝国空軍に連絡してもらえる?」
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