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1章

2.運命。

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「……く。……く!リク!」
「っ……あぁ、ルナ。」
「もー、いつまで寝てんの。」
「わりぃ。」
「リクが起きるの遅いから、もう行かなきゃいけなくなっちゃったじゃん。」
「?……今日、デートだっけ?」
「違うよ!私1人で行かなきゃいけないの!」
「どこに?」
「んー、どこだろ。」
「なんだそりゃ。」
「とにかく……もう行かなくちゃ。」
「は?」
「じゃあ、行ってくるね。」
「お、おい…ルナ?」
「バイバイ。リク。」
「おい!待てってルナ!ルナ!」
必死に伸ばしたその手は、ルナの背中を掴むことなく、虚しく俺の瞳に映った。

「…な!ルナ!」
ツンツンッ。
「うわぁ!」
バッターンッ!
「痛ッ!」
「何してんだ、リク。」
「っ⁉︎せ……先生。」
社会科の鬼教師が見下ろすのを見て、ようやく状況を察した。
どうやら俺は、この鬼教師の授業中に居眠りした挙句、椅子から転げ落ちてしまった様だ。
「リク……俺の授業で寝るとは良い度胸じゃねぇか。」
「っっ!さーせん!」
こういう時は、開口一番謝るのが1番咎めが少なくて済む。
「元気が良いのは分かったがな?寝言言う程爆睡されたのは初めてだ。」
「え。俺……寝言……?」
(まさか……ルナとか……言ってねぇよな?)
「なんて言ってたか知りてぇか?」
「はい。」
「ルナ!待てってルナ!」
「わぁ~もう良いです先生!」
(恥ずい!恥ずかし過ぎる!)
チラリとルナの方を見れば、
『バカ。』
と、口パク。
(ば……バカって言われた!)
「ったく。そんなにルナが好きなのかよ。」
呆れた様に言う先生。
爆笑するクラスメート達。
冷たい視線を送ってくるルナ。
(あぁ……穴があったら入りてぇ。)
そう思いながら席に着くと、前の席に座る友達・ユウキが、
「夢の中にまでルナが出るとか……最早運命だろ。」
と、からかってきた。
再び爆笑するクラスメートと先生。
冷たいを通り越して鋭い視線を送ってくるルナ。
俺は溜息を吐きながら、ふと、先程見ていた夢を思い出す。
(運命……か。そういえば、夢の中のルナ……どこ行こうとしてたんだ?)
どこか心に引っ掛かりを感じた。
しかし。
呆れる程に馬鹿な俺は、休み時間中クラスメートに揶揄われ続けたお陰で、次の時間には、すっかり忘れてしまっていたのである。

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