1 / 138
0日目 ※
しおりを挟むアキラが目を覚ますと、そこはファンタジーRPGの世界だった。剣と魔法の世界だと直感的に感じたが、なぜそう思うのかはわからない。
彼は青緑の目を持ち、短い金髪にスリムな体型をしている。軽装の冒険者風の革製の服を着て、ツールベルトを締めリュックを背負っていた。
新品のブーツが、彼が冒険者になりたてであることを示していたが、その歩き方には元気が溢れていた。
「やったね。とりあえず、お城でも目指そうか」
そう言って歩き出そうとしたが、目の前には一面の野原が広がっていた。草原の中で、アキラはふとスライムのようなものが目の前にいるのに気づいた。
興味本位で近づいてみると、スライムは「ぼよん、ぼよん」とバウンドしながら勢いよくアキラにぶつかり、彼は尻もちをついた。
「なんだよ、痛いじゃん!」
アキラは大声を上げ、立ち上がりながら怒りを露わにした。何度目かの回し蹴りでようやくスライムに当たり!
スライムは水風船のように歪み、炸裂して弾け飛んだ。
その瞬間、「経験値 1p 獲得しました」「金 5 ゴールド獲得しました」という文字がアキラの視界に浮かび上がった。続いて、突然頭の中で女性の声が響いた。
「おめでとうございます!」
「まあね」アキラは内心の興奮を隠しつつ、余裕を装って答えた。本当はたまたま当たっただけなのだが。
アキラは頭の中の声に話しかけた。
「君は?神様か?」
「違います。私はこのゲームのナビゲーターです」どこかで聞いたことがあるような、懐かしい声が響いた。
「じゃあ、神様は?」
「そのうち会えるといいですね」
「いつ?」
「……」
「どこで?」
「……」
「秘密なんてずるくない? 神様の手違いで死んだんだから、チート能力をもらわないといけないんだけど。クズスキルに見えて、実はものすごい能力とか」
「それは勝手な設定ですね」彼女は笑いながら答えた。
「こちらにも情報開示の決まりがあるので、答えられないこともあります。ごめんなさい」
「じゃあ、質問を変えるよ。ここは異世界?それともゲームの世界?」
「それは微妙ですね。定義が曖昧ですから」
「ということは、誰かを助けようとトラックに飛び出して轢かれたとか?」アキラは興奮気味に言った。
「ちょっと違いますね」彼女はやんわりと否定した。
「実は陰陽師の生まれ変わりで」
「未練を残した勇者が生まれ変わって」
「違います」「違います」「どんどん答えから遠ざかっていますよ」
「じゃあ、蜘蛛になったり、剣になったり、豚になったりするのかな」
「手を見てください。どう見ても人間でしょう。いろんな物語のトレースですね。落ち着いてください」
「いやいや、十分冷静だよ。冗談だからね」アキラは肩をすくめながら答えた。
ナビゲーターは苦笑しながら言った。
「すいません。それでは、そろそろ始めてもいいですか? 後でゆっくりお話ししますので」
※
その瞬間、目の前が暗くなり、ファンタジー映画のようなオープニング映像が展開された。
アキラは「まあ面白そうじゃないか」と思い、左下に「Now Loading 100%」と表示された瞬間、「アルカディアクロニクル -理想郷の冒険-β版 five color」というタイトルロゴが輝いているのを見て、少し興奮した。
「どうでしたか? なかなかのものだったでしょう?」彼女の自慢げな声が響いた。
「うん、よくできてる。でも、どこかで見たことがある感じがするなぁ」アキラは答えた。
映像が特別に美しいとか、迫力のある動画というわけではない。短い映像が繰り返されたが、なぜか心に残った。
「良かったです」と彼女は心底嬉しそうな声で言った。
「ゲームは実際にやってみないとわからない!」アキラは信念をもって答えた。
「そうですね。では、早速スタートボタンを押してください!」
「ちょっと待ってよ。実は記憶が朧げなんだ。思い出せないことが多くて」アキラは焦った本音を漏らした。
「特に自分についての記憶だけが抜け落ちてる感じがして、不安で……」
「そうですか。教えてあげたいところですが、これも情報開示不可です。私はゲームのナビゲーターに過ぎないので」と彼女は答えた。
その答えを聞いてアキラは少しガッカリしたが、予測していたものだった。
「でも、あなたの性格なら分析結果をお話しできると思います」
「それって意味ある?」
「どんな人生を歩んできたか、運の部分を除けば何となくわかるのではないですか?」
「そうかもね」
「アキラさんは、悩んでいても元気で、創造的な思考を持ち、人との協力を大切にし、柔軟な対応ができ、効率的な方法を模索する人です。本当に優しくて、困っている人を助ける人です。好きですよ」
「もう一度、ゆっくり言って!」アキラはいたずらな微笑みを浮かべながら頼んだ。
「二度とは言いません!」とナビゲーターは強い拒否を示した。
「いい加減だし、他人を巻き込むし、無理な要求するし、納期には厳しいし……」
彼女は恥ずかしさのあまり、思わず本心ではない悪口を小声でつぶやいてしまったが、アキラにはしっかりと聞こえたようだ。
「そうか、そうだよね……」アキラは少し寂しげな表情を浮かべ、スタートボタンを押した。きっと、ろくでもない人生だったのだろう。
※※※
「ねえ、山吹。同人ゲームの都市伝説って知ってる?」
「知らない。興味ない」友人がこんな話を持ちかけてくることに、山吹は少しうんざりした。大学の帰り道にする話題じゃない。
赤い電車が遮断機の向こうを高速で通り過ぎていく。風圧で髪が揺れ、無表情な乗客たちが外を眺めているのが妙に印象に残った。誰かと目が合った気がした。
「そのゲームをするとね、失踪したり、蒸発するんだって」
「ただの偶然でしょ。で、何て名前のゲーム?」質問した自分を、山吹はすぐに後悔した。これじゃ終わらない。
「アルカディア・クロニクル、それを作ったのが、うちのゼミの先輩らしいよ。写真見たけど、あの人、かっこいいけど、ちょっと影があるよね」
「影なんて無いでしょ。あの人、面倒くさいだけ」
「でもさ、仲がいいんでしょ? そのゲーム出来ないかな? 確かめてみたく無い?」
そんな必要はない。
だって、知っているから。
8
あなたにおすすめの小説
ガチャと異世界転生 システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!
よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣
織部
ファンタジー
ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。
背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。
母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。
セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。
彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。
セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。
「セラ、ウミ」
「ええ、そうよ。海」
ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します!
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。
世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~
きよらかなこころ
ファンタジー
シンゴはある日、事故で死んだ。
どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。
転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。
弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる