アルカディア・クロノクル ゲーム世界に囚われた俺を救うのは、妹か、かつての仲間か

織部

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アキラ、ウエストグレンにつく ※ログイン ウエストグレン

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 アキラたちは、道路を避けて迂回しながら、ウエストグレンの町外れにたどり着いた。

 炭鉱の周辺は重苦しい空気に包まれ、下には作業員たちが慌ただしく出入りしていた。アキラたちは足を止め、茂みに身を潜める。重い空気に混ざる鉄と煤の匂いが鼻を突く。

「各班長、作業員を集合させろ! コール支店長から話があるぞ!」

 炭鉱の責任者の声が響き、作業員たちは次々と集まってきた。アキラたちはじっと息を潜め、目の前の状況を見守る。

 しばらくして、コールが作業台の上に軽々と飛び乗った。作業員たちは商会の支店長を軽く見ていたが、全員が静かに注目した。

「話と言っても大したことじゃない。今日をもって、ネグラロサ炭鉱は閉山する。明日からは商会連合が運営することになる。今までネグラロサに貢献してくれてありがとう。」

コールは穏やかな口調で淡々と告げた。

作業員たちはざわめき、怒号が飛び交う。

「おい、給料はどうなるんだ! 減らされるのか?」

「採掘量が減ってるって聞いたが、まさか売り払ったのか?」

責任者が鎮めようと声を上げるが、騒ぎは止まらない。

「黙れ!」

 コールの声が鋭く響き、全員がぴたりと静まり返る。その声は単なる怒りではなく、得体の知れない威圧感がこもっていた。

「何も変わらん。今日の仕事は終わりだ。ネグラロサが用意した退職金は、今夜の酒代と食事代を全額負担する。それで納得したら、さっさと出て行け!」

 コールの言葉に作業員たちは、一瞬戸惑ったようだが、次の瞬間には笑顔で立ち去り、現場から一人残らず消え去った。

「さて、行くぞ。」

 コールは冷静な表情を崩さず、数人の部下とともに坑道の奥へと消えていった。彼がただの支店長ではないことは明らかだった。

「あの男も強い。人間の世界、面白い。」
セレナが微笑みながら、炭鉱の奥に消えていったコールの背中を見つめた。

「ネグラロサが利権を手放すなんて、あり得ない…確実に何かが動いている。」
ノワールが低い声で言い、警戒を露わにする。

「セレナ、ルナに見張りを頼んでいいか? 長居すれば、必ず見つかるだろう。」

アキラは慎重に判断した。

「ルナはさっき、あの怖い男に姿を見られたみたいだし、ちょうどいいかもね。」
セレナが少し微笑みながら応じた。

※※※
 わかりにくい場所に表示されたログイン画面を、時雨は指さした。
 画面に表示されたIDに「アイリス」と入力する。その下にはパスワード入力欄があった。
「ちょっと待って! IDがアイリスなの?」時雨が驚いて声をあげる。
「そうだけど。どうしたの?」

「アルカディア・クロニクルには、二神が信仰されてるの。その一神の名前よ。ごめん、続けて!」

 山吹は手を震わせながら、パスワードを入力しようとした。
「これしか考えられない」と、指が画面上で速く動くが、何度試してもエラーが表示され、パスワードは弾かれ続ける。
「なんで違うの? これしか思いつかないのに……」山吹が悩みながら呟き声をかける。
「ねえ、時雨、パスワードに決まりってあったっけ?」
「うん、文字と数字で八文字以上だったはず」
「じゃあ、これだ!」山吹が新たにパスワードを入力すると、画面が静かに切り替わった。
「そのパスワードは?」

「ええ、兄の名前と誕生日よ」

 画面が暗闇から少しずつ明るくなり、アルカディア・クロニクルのゲーム画面が広がった。
「懐かしいわ、この感じ」時雨は、リアルな風景が広がるゲーム内の背景をじっと見つめる。
「本物みたい…でも、ここは魔物と魔法が存在する世界ね」
「どうすれば良いの?」
「このゲームでは、導かれる者を選んで進めていくの。だけど、この人の場合は…導かれる人がすでに亡くなっている」

 画面に表示された文字が、彼女の名前とステータスを告げていた。

「大聖女アストリア、死亡」

「この人の保護者だったのか! まさか、このことを悲観して…」
「それはありえないわ。彼女は、いずれにせよ長くはなかったんだろう」山吹は冷静に、時雨に言い聞かせるように語った。
「時雨、アストリアを知ってるの?」
「もちろん。王国の大聖女で、魔物騒動を鎮圧した英雄よ。私の守護者も、小さい頃に助けられたの」
 時雨は、ゲーム内の因果を思い返し、しみじみとその場面に浸っていた。
「この世界を見て回れないの? 例えば、あなたが探している人とか?」
「できるわよ!」
 時雨はその目的を思い出し、エリアマップを操作して場所を特定した。

「ウエストグレンという炭鉱の町に住んでるわ」
「何をしている人?」
「商人よ」時雨が『ウエストグレン』と入力すると、地図にその町がズームインされる。
「もちろん、ここにも訪れているわ」ズームしていくと、町の様子が広がる。
「まずは彼の勤めていた商店に行こう」時雨が目を輝かせ、商店の名前が表示された。

「ケイオス商会?」
「あれ? 名前がわかってる……でも」その商店の主が、時雨の守護者の兄弟子であることを思い出す。
「まさか、あの子が生きている可能性があるのか?」時雨の顔に緊張が走る。
 ゲーム内のキャラクター達の会話が耳に入る。

「こんなに大量の注文か……でも早く揃えないと、ハートフェルトに怒られるな」
 少し大人になった守護者の兄弟子の声だ。

「ねえ、どこに私のハートフェルトはいるの? ここにいれば会えるの?」
(アクティブポイントが、マイナスです)
マイクのアイコンには✖️がついており、時雨の声は彼には届かなかった。
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