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帰り着いた場所
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※※※
ラピスの部屋。ディスプレイを観ながら、彼女は大声をあげた。
「えっ……嘘でしょう? 何なのよ、あの子。素直じゃないし、意味がわからない……!」
ラピスは机に突っ伏す勢いで頭を抱えた。
「アキラ、ノワールの武器と衣装、ちょっと保留にさせて。ごめんね」マイクを通じて話しかける。
「え? どうかしたの?」
アキラが少し首をかしげて、心配そうに聞いてくる。
「こっち、ちゃんと上級ジョブでプラン組んでたんです。戦術も装備も、丸ごと全部。そのために徹夜で、細かいパラメータまで調整して……なのに」
ラピスは深く息をついた。「なのに、彼女、初級ジョブを選んできたんですよ」
「ええ……?」
「そう、ありえない。計画がぜんぶ崩れた。衣装も一からやり直しです」
語尾を震わせながら、ラピスは拳をぎゅっと握った。
「ジョブが変われば、動きも変わる。武器の重さ、衣装のバランス、戦闘中の姿勢や脚の開き方まで。全部、ぜんぶ関係してくるんです……!」
「ラピさん、すごいね……」
アキラは少し目を見張ったあと、ふっと微笑んだ。「ほんと、優しいんだね。ノワールのために、そこまで考えてあげてる」
その言葉に、ラピスの肩から少しだけ力が抜けた。頬に、ふわりと赤みが差す。
「……別に。仕事ですから」
強がる声が、少しだけ柔らかく揺れていた。
――これが、このゲームの怖いところ。
誰もが自分のキャラだけを見ている。でもラピスは違う。そのキャラが”どう生きるか”まで想像してしまう。妥協なんて、できるわけがなかった。
――まあ、見てなさいよ。ノワール。
絶対、後悔させてあげるんだから。
※
川の流れに逆らいながら、船はゆるやかに島の船着場へと近づいていった。到着の瞬間、ノクスが身軽に跳び降り、舫い綱を舟留めに素早く結びつける。
「アキラ様、お帰りなさい!」
船を降りたアキラの胸に、ステラが勢いよく飛び込んできた。
「おっと……ただいま。えっと、セレナ姉さんは?」
「ちょっと里帰り中だよ」
「ふうん……」
ステラは一瞬だけ首をかしげたが、すぐにうなずいた。
「ステラ、ノワールの手伝いお願い。荷下ろし、急いでるんだ」
アキラは柔らかく言って、そっと彼女の背を押した。
村の人々が船の到着に気づき、次々と船着場に集まってくる。ノワールは牛や鶏、そして伝令用の鳥たちを、手際よく船から降ろしていた。
「ダリオスさん、荷物は僕の家の地下倉庫に運んでおきました。必要な分はギルドホールへどうぞ。はい、契約書類です」
アキラは笑顔で書類を渡すと、どこか満足げに腕を組んだ。
「まったくもう……」
ラピスがちらりとアキラを見やり、あきれたように呟く。
「まずは検品して、在庫の確認を。その後、正式な引き渡しと署名をお願いします」
「了解です、ラピさん。印鑑、はんこ、あるといいね?」
「……楽したいだけでしょう」
ラピスはため息まじりに机を軽く叩いたが、その口元はわずかに緩んでいた。
「ところで、アキラ様。さきほど空を飛んでいたメッセリウス、あれは商会への通信ですか?」
「ああ、あの鳥のこと? そうそう。預かって場所を覚えてもらった」
「なるほど……」
ダリオスはその鳥がかつて自分の飼っていたものだと気づき、目を細めて笑った。
「さて、みんな。積み荷の確認と、家畜の畜舎作りだ!」
ダリオスは村人たちに声をかけ、動き始める。
少し遅れて、ヴァイオレット王女たちが姿を現した。動物の世話はノクスとステラに任せ、ノワールはすぐに戻ってくる。
「ただいま戻りました、ヴァイオレット様」
ノワールは膝をつき、静かに頭を下げた。
「……あら。ほんの少し、大きくなったようですね」
王女は微笑みながらも、どこか寂しげな声を乗せる。
「……」
ノワールは黙って立ち上がると、その目にわずかな陰を宿しながらも、表情は変えなかった。
「まったく、あなたという人は……ちゃんと、気づいているでしょう?」
「何のことでしょう?」
ノワールは伏せ目がちに答える。だが、その声には僅かに温度があった。
「ふふ。いいわ。まずはお話を聞かせていただきたいの。アキラ様、お時間いただけますか?」
「もちろん」
アキラは頷きつつも、ヴァイオレットの瞳をじっと見返した。「ただし、印鑑が要らない話だけにしてほしいな」
王女は小さく笑った。
「アダム、リリィ」
ノワールが声をかけ、リストをアダムにひょいと投げ渡す。
「この品、倉庫の北側から引き取って。位置は昨日の地図のとおりよ」
そう言い残して、ノワールはすたすたと歩き出した。背筋の通ったその歩みには、言葉よりも多くのものが込められていた。
ラピスの部屋。ディスプレイを観ながら、彼女は大声をあげた。
「えっ……嘘でしょう? 何なのよ、あの子。素直じゃないし、意味がわからない……!」
ラピスは机に突っ伏す勢いで頭を抱えた。
「アキラ、ノワールの武器と衣装、ちょっと保留にさせて。ごめんね」マイクを通じて話しかける。
「え? どうかしたの?」
アキラが少し首をかしげて、心配そうに聞いてくる。
「こっち、ちゃんと上級ジョブでプラン組んでたんです。戦術も装備も、丸ごと全部。そのために徹夜で、細かいパラメータまで調整して……なのに」
ラピスは深く息をついた。「なのに、彼女、初級ジョブを選んできたんですよ」
「ええ……?」
「そう、ありえない。計画がぜんぶ崩れた。衣装も一からやり直しです」
語尾を震わせながら、ラピスは拳をぎゅっと握った。
「ジョブが変われば、動きも変わる。武器の重さ、衣装のバランス、戦闘中の姿勢や脚の開き方まで。全部、ぜんぶ関係してくるんです……!」
「ラピさん、すごいね……」
アキラは少し目を見張ったあと、ふっと微笑んだ。「ほんと、優しいんだね。ノワールのために、そこまで考えてあげてる」
その言葉に、ラピスの肩から少しだけ力が抜けた。頬に、ふわりと赤みが差す。
「……別に。仕事ですから」
強がる声が、少しだけ柔らかく揺れていた。
――これが、このゲームの怖いところ。
誰もが自分のキャラだけを見ている。でもラピスは違う。そのキャラが”どう生きるか”まで想像してしまう。妥協なんて、できるわけがなかった。
――まあ、見てなさいよ。ノワール。
絶対、後悔させてあげるんだから。
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川の流れに逆らいながら、船はゆるやかに島の船着場へと近づいていった。到着の瞬間、ノクスが身軽に跳び降り、舫い綱を舟留めに素早く結びつける。
「アキラ様、お帰りなさい!」
船を降りたアキラの胸に、ステラが勢いよく飛び込んできた。
「おっと……ただいま。えっと、セレナ姉さんは?」
「ちょっと里帰り中だよ」
「ふうん……」
ステラは一瞬だけ首をかしげたが、すぐにうなずいた。
「ステラ、ノワールの手伝いお願い。荷下ろし、急いでるんだ」
アキラは柔らかく言って、そっと彼女の背を押した。
村の人々が船の到着に気づき、次々と船着場に集まってくる。ノワールは牛や鶏、そして伝令用の鳥たちを、手際よく船から降ろしていた。
「ダリオスさん、荷物は僕の家の地下倉庫に運んでおきました。必要な分はギルドホールへどうぞ。はい、契約書類です」
アキラは笑顔で書類を渡すと、どこか満足げに腕を組んだ。
「まったくもう……」
ラピスがちらりとアキラを見やり、あきれたように呟く。
「まずは検品して、在庫の確認を。その後、正式な引き渡しと署名をお願いします」
「了解です、ラピさん。印鑑、はんこ、あるといいね?」
「……楽したいだけでしょう」
ラピスはため息まじりに机を軽く叩いたが、その口元はわずかに緩んでいた。
「ところで、アキラ様。さきほど空を飛んでいたメッセリウス、あれは商会への通信ですか?」
「ああ、あの鳥のこと? そうそう。預かって場所を覚えてもらった」
「なるほど……」
ダリオスはその鳥がかつて自分の飼っていたものだと気づき、目を細めて笑った。
「さて、みんな。積み荷の確認と、家畜の畜舎作りだ!」
ダリオスは村人たちに声をかけ、動き始める。
少し遅れて、ヴァイオレット王女たちが姿を現した。動物の世話はノクスとステラに任せ、ノワールはすぐに戻ってくる。
「ただいま戻りました、ヴァイオレット様」
ノワールは膝をつき、静かに頭を下げた。
「……あら。ほんの少し、大きくなったようですね」
王女は微笑みながらも、どこか寂しげな声を乗せる。
「……」
ノワールは黙って立ち上がると、その目にわずかな陰を宿しながらも、表情は変えなかった。
「まったく、あなたという人は……ちゃんと、気づいているでしょう?」
「何のことでしょう?」
ノワールは伏せ目がちに答える。だが、その声には僅かに温度があった。
「ふふ。いいわ。まずはお話を聞かせていただきたいの。アキラ様、お時間いただけますか?」
「もちろん」
アキラは頷きつつも、ヴァイオレットの瞳をじっと見返した。「ただし、印鑑が要らない話だけにしてほしいな」
王女は小さく笑った。
「アダム、リリィ」
ノワールが声をかけ、リストをアダムにひょいと投げ渡す。
「この品、倉庫の北側から引き取って。位置は昨日の地図のとおりよ」
そう言い残して、ノワールはすたすたと歩き出した。背筋の通ったその歩みには、言葉よりも多くのものが込められていた。
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